勢力戦勃発14
「いいか、カレラとユーノの攻撃は基本1対1を想定されたものだ」
氷原のバトルステージへとやってきた颯太はクレアの話しを聞いていた。
「だから颯太にはひたすら私と打ち合いをしてもらう。つまりまぁ、君の1対1での戦闘スキルを磨きあげるというものだ」
「分かりました」
「よし、では行くぞ!」
本当にBクラスか怪しい疑惑の速度に颯太は苦笑いしつつも大剣をばっくりと裂き、剣を2本に分けると右手に握った剣で振り下ろされたクレアの大剣を滑らせるように受け流し、そして空いた左手の剣を水平に薙ぐ。
しかし、クレアの身体に当たる前に手鏡サイズの分厚い氷が突然現れ、剣を弾いた。
それに苦い顔もせず颯太はすぐさま後ろに飛んで一度態勢を整え、再びクレアへ突進する。
「――ッ!!」
鋭く息を吐き、颯太は双剣による連撃を繰り出す。
颯太の神器であるレーナは事対人において凄まじい力を誇る。一度剣に触れてしまえば混沌が流れ込み、相手を蝕むありとあらゆる状態異常を引き起こす。それはクレアも例外ではなく、この嵐のような颯太の連撃が一太刀受ければ彼女はまともに動けなくなってしまう。
ちなみにクレアと颯太のPVPは即死攻撃ありである。ここまで言えば後は分かることだろう。
ここまで言葉を並べるとクレアは相当なハンデを背負っているように見える。クレアの攻撃ランクが能力込みでAランク相当だとしても颯太はCという並みの耐久を持つ。まず彼女の攻撃力では1撃で落とせないだろう。
だが、たとえ即死持ちの神器が相手でも1世代目最強クラスの神器が後手に回るということはまずありえないのだ。
「ちっ…!」
颯太の攻撃がクレアに届きそうになると必ず彼女の身体を守るように氷の鏡が出現する。
その壁は的確に攻撃予想ポイント上に現れ、剣の軌道を先読みして攻撃を防ぐのだ。その氷の鏡はクレアが操っているのか、それとも自動で発動する防御スキルなのか彼には分からないが、厄介極まりない事だった。
「雷撃ッ!」
「―――ッ!」
双剣を瞬時に合わせて大剣に戻し、颯太は右肩に担ぐようなモーションを取ってから雷撃を放った。
クレアは素早く後ろに下がると巨大な氷の壁を生み出して荒れ狂う雷蛇を冷静に防ぐ。だが、それは悪手だ。
「吹っ飛べ!!」
「なにッ!?」
氷の壁が消えた瞬間クレアの眼前にハンマーを横薙ぎに振るった颯太がいた。
「ぐッ!」
咄嗟に氷の大剣で防いだものの今の一撃でHPバーが1割程度削れる。どうやらあまりの威力にダメージを吸収しきれなかったらしい。
足が浮く事はなかったが、クレアは後方に滑るように吹っ飛ばされる。その間にも颯太は銃を乱射しながら接近して攻撃の手を緩めず、クレアは銃弾の嵐から逃れるように右に転がり、そして瞬時に立ち上がって自分が持てる最大の加速を持って走り始めた。
走り始めたクレアを見た颯太は銃を大剣に戻し、地を踏む足にぎゅっと力を入れる。
「―――ッ!」
カタパルトのように飛び出した颯太はたった数歩で加速のトップギアに躍り出てクレアと並走する。
クレアとは15m程度離れているが、このくらいの距離ならば颯太の攻撃圏内だ。それを知っているからこそクレアは並走する颯太に向かって氷の礫を飛ばして牽制し、彼を近づけさせないようにしている。
颯太は一度攻撃の手を止め、大剣を再び双剣に戻して氷の礫を迎撃しながら次の手を考える。
そして何かを思いついた颯太はクレアから一度顔を離して前を向くと、一気に加速して彼女を追い抜く。追い抜いた颯太はそこからクレアへ向けて勢いよく飛び上がった。
「飛翔剣!」
「面白い…!!」
空中で弓のように身体を捻り、そこから放たれた双剣は回転しながら一直線にクレアに襲い掛かる。
受けて立つ気になったクレアは氷風を大剣に纏わせ、飛んできた双剣を大剣の腹で受ける。
ガガガガガガ―――と大剣と双剣がせめぎ合い、辺りに大剣から弾け飛んだ氷の欠片が美しく戦いを彩る。
「おお!!」
そこへ更に颯太の高空からの飛び蹴りが炸裂した。しかし、クレアはノックバックせず、見事双剣と颯太の飛び蹴りを受け切った。
ダメージを与えていないと分かるとすぐに颯太は地に降りて、彼が地につくと同時に手に戻ってきた双剣を手にして連撃を繰り出す。
颯太はクレアにノールンスマッシャーを打たせない気でいる。打たせれば間違いなく自分のHPバーが弾け飛ぶに決まっているからだ。たとえ耐えたとしても凍結は免れない。そして凍結してしまえば自分は動けないのだから後はもう料理されてお終いだろう。
「ふふ、そんなに打たせたくないのか?」
「当たり前です!」
そんな颯太の返答にクレアは怪しく笑うと―――
「なら頑張って防いでみろ」
「なッ!?」
連撃の一瞬をついたクレアは、颯太の腹部にミドルキックを叩き込み、地を転がる彼をロックオンしてアイスコフィンを召喚する。
「やられてたまるか!」
颯太は跳び起きて雷撃をチャージし、大剣が激しく放電し始めた瞬間背中から抜き放った。
雷が落ちたような衝撃が辺りに響き渡り、先ほど放った雷撃とは比べ物にもならない雷撃が遠くにいたクレアにも襲い掛かる。
「ちっ…」
クレアは小さく舌打ちしてノールンスマッシャーの構えを解くと軽く腕を振り、空から巨大な氷の塊を召喚して雷蛇を押し潰す。
当然今の一撃でアイスコフィンを突破した颯太は、そのまま持前の速度を生かして一気にクレアに近づき、氷塊ごと大剣で水平に切り裂いてその奥にいるクレアを狙った。
「おっと」
クレアは帽子を左手で抑えながらしゃがんで躱す。そして―――
「こいつはどうかな?」
左手の指を鳴らすと切り裂いた氷塊が一瞬で粉々に砕け、その破片が一斉に颯太に襲い掛かった。
「―――ッ!?」
颯太は咄嗟に大剣を地に突き立てて盾にするが、大剣を持つ手に何発か当たってジリジリとHPバーが削られて行く。
「私が動けることを忘れないで貰おうか」
「あッ――――!」
氷の礫を防ぐ事で頭がいっぱいになっていた颯太の背後にいつの間にか回っていたクレアの声が聞こえると同時に彼の腹部に氷の大剣が突き刺さった。
「やれやれ颯太はまだまだ―――」
「まだ終わりじゃない!」
「なッ!?」
HPバーが減り続ける中、颯太は腹部に突き刺さったクレアの大剣を掴んで抜けさせなくすると、右手に握った双剣で自分ごと刺して背後にいるクレアの胸を貫いた。
「へへ、今回は相打ちにさせて貰いますよ」
「ぐふ………まさかギリギリで耐えていたとは…」
クレアは苦しげな表情を浮かべると派手にポリゴンを散らした。
彼女が消えるとHPバーが完全に真っ黒になる前に颯太がクレアに止めを刺したことになり、デュエルの勝者は颯太となった。
「か、勝ったのか……?」
初めてクレアに勝利した颯太の表情は晴れず、曇りきったままだった。
「今度は不意を突いたものじゃなくて、正面から戦って勝ちたい……」
純粋にそう思った。まだまだ自分はクレアさんに遠く及ばないと。
クレアの真骨頂は能力によるスキル連打のゴリ押しなのだが、今回の彼女は3回しかスキルを使用しなかった。
「俺……本当に勝てるのかなぁ…あの人に……」
颯太はそう呟いてクエストエリアから出て行くのであった。
2話連続投稿です!ということで、前回の後書きから続きまして、工場系のバイトって途中で抜けられるとかなり困る感じでして、そりゃもう正社員並みに働くわけですよ。
まぁ時給も悪くないということでお世話になっているんですが、これがもう辛くて辛くてやばいです。まぁ最近は慣れてきたということで、こうやって小説をアップする時間も出てきたのですが(出来ると言っても休みの日だけ
なんでバイトなんか始めたかと言うと新しいPCを自分の貯金で買ってしまったので、その使った貯金分を再び貯めなおそうとしているんです。
まぁ貯金の10割を稼げるかと言われれば否と答えるしかないんですが、それでも自分が将来車とか買う時に頭金くらい出せるくらいにはためておきたいんですよね。
えっと、それじゃここいらでじゃあのしますが、今月の21日までこんな感じで投稿日があやふやになるので、そこのところよろしくお願いします…。
あぁ、本当の最後の最後に!ご意見ご感想いつでもお待ちしております!!ホントどうでもいいことや、ポケモンのことや、こうした方がいい!とか誤字ってますよー!というところも!何でもください!皆さんのコメントや感想が私の活力に繋がります!