表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
敏捷値が高い=強い(旧題ランゲージバトル)  作者: また太び
5章 青の領域と赤の領域(続)
77/172

勢力戦勃発12

「3人とも北の拠点までの道筋は頭に入れたか?」



加山によって選ばれたプレイヤーが続々と北の拠点へ出発しているなか、颯太達は北までの道を頭に叩き込んでいた。



「問題ない。私はいつでも出発出来るぞ」


「ん~……お~?」


「わたしと竜也も大丈夫……行こう」


「なんだか竜也が地図を見て唸っているが、俺達からはぐれなければ問題はないか」


「いや~日常生活で地図ってあんま見ないからな。なかなか頭に入ってこねえんだ」



地図をしまった竜也は頭を掻きながら『面目ない』と言う。



「それじゃ中央拠点のことは任せた」


「うん。颯太くんも頑張ってね」


「香織のことはユキナが守るから心配いらないよ~!」


「伊澄さんも頑張ってね~」


「うん……カレラとユーノの事が気になるけど、わたし達が留守だとバレるまで襲ってこないはず…」


「一番の問題はそこだな……――――だが、気にしていてはいつまでも出発出来まい。ここは一度奴らのことは忘れるべきだ」


「そうだね……それじゃ、行ってくる…」



クレアの言葉に同意した伊澄も颯太と竜也を追って歩きはじめる。

そして最後に残ったクレアは香織へ向き直り、優しく微笑んだ。



「颯太のことは心配しなくていい」


「あ、えっと…」


「ふふ、相変わらず香織は表情に出やすいな。大丈夫だ、私たちは負けはしない」



クレアは香織の肩を数回叩いてから先で待っている颯太達の方へ歩いて行った。



「行っちゃったね」


「ええ、そうね…」


「感傷に浸っている場合じゃないぞ。忙しくなるのはこれからだ。なんせ俺達は抜けて行った1世代目と2世代目の神器4体分の穴を埋めなくてはならないからな」


「ユキナ!頑張っちゃうぞ!」


「ユキナちゃんには期待しているわ。でも、あんまり頑張りすぎないでね」


「あたしも本気出すとしますか!」


「よし、皆!頑張りましょう!」


『おー!!』



滉介を除く2人が元気よく掛け声に応じるのであった。



「この大移動が敵にバレなければいいんだが……」



ゾロゾロと北の拠点に向けて歩くプレイヤー達の流れに乗りながら颯太は周囲を警戒していた。



「あちら側にバレたとなれば作戦が成功する確率がかなり低くなるな」


「わたしと颯太の索敵スキルを超えるプレイヤーなんて早々いないと思うけど…」



伊澄も颯太同様に目だけで周囲を観察しており、今のところ索敵範囲に敵の反応はないようだ。



「確かに俺の目と伊澄さんの目から逃れられる奴なんてそれこそ1世代目くらいの神器じゃなきゃ不可能だが、6世代目の中で隠密性に長けた奴なら話は違ってくる」


「だけど、ここは俺達の領域だぜ?この前のイズルのような奴が珍しかったんだよ。普通は入って来れない」


「だが、警戒しておいて損はあるまい。颯太、索敵範囲はどれくらいにしている?」


「大体1kmくらいです。2kmくらいとなると負担がやばいので、1kmにしています」


「伊澄は?」


「わたしは2km……ガンドレアは機械だから精神を使わない…」


「ふむ、颯太と伊澄の2重索敵で大丈夫だろう。たとえ伊澄が逃したとしても1km圏内に入れば間違いなく颯太が見つける」


「どうしてっすか?伊澄さんのと颯太のは違うんです?」


「伊澄のは言ってしまえば視覚範囲の拡張だ。例えばゲームとかでよくあるプレイヤーの位置を示す矢印だけが描かれた地図があるだろう?」


「あぁ、なるほど。あれっすか、新しい場所で地図を貰う前にフィールドを歩けば正確な地図がどんどん出来上がって行くやつ」


「そんな感じだ。して話を戻すが、伊澄のはその歩けば正確に記される範囲が2kmにまでわたるというだけの話しだ。通常は10m程度の範囲しかマッピング出来ないが、伊澄のは索敵能力の中でもずば抜けているチート能力だ」


「うわ……すげえ………マッピングも楽々じゃないっすか…」


「そしてこのランゲージバトルの世界は自分の周囲に敵がいれば赤いマークがつくだろう?ようするに視覚を拡張させてマップ内にいる敵の場所を掴むというものなのだ」



竜也の尊敬の視線を受けて伊澄は頬を赤く染めてそっぽを向く。



「それで颯太はマッピングこそ出来ないが、1km範囲にいる敵の位置を正確に掴むことが出来る」


「伊澄さんのは精神も何も使わないハイテクもんだが、俺の場合この目を使うとレーナとリンクするから混沌が流れ込んできてなかなか辛いんだ」


「わたしは制限時間付き……だけど、颯太はその混沌さえ我慢すればいつまでも使える…」


「ま、そういうことだ。分かったか?」


「あぁ、似ているけど全然違うもんなんだな」


「ふむ、視覚の話しが出たついでに香織の能力も説明しておこうか」


「香織さんのは鷹の目でしたか」


「そうだ。鷹の目は混沌の目の弱体化みたいなものでな、使用するには予め敵の位置を知っておく必要がある」


「まぁそもそも香織さんのは索敵用でもない、完全な戦闘の補助スキルみたいなものだしな」


「颯太に全て言われてしまったな」


「俺もそういうの欲しかったぜ。射撃の神器なのに脳筋みたいなことしか出来ないんだ」



竜也は『俺も颯太みたくアクロバットに動きたかった…』と愚痴る。



「竜也のボルケーノは敏捷が最低のEだからなぁ…」


「Bランクだと少し数値が足りない感じだな。補助スキルを敏捷に回せば何とかAランク台に乗せられるが、そうすると次は火力が落ちる。難しい問題だ」


「わたしはブースターを使って敏捷数値を誤魔化している感じ……数値だけ見るのなら竜也とそう変わらない…」


「あれ?伊澄さんのガンドレアって敏捷Eなの?」



颯太の質問に伊澄はこくりと頷く。



「筋力B+…耐久A++…敏捷E+…幸運D……かな――――でも、ブースターで敏捷数値を大幅に伸ばしているから実質B-程度はある…」


「え!?ブースター付けるだけで敏捷ランクそこまで上がるの!?」


「うん……竜也も足とかにブースターでも付けたら…?」


「おお!そうするぜ!なぁなぁボルケーノ―――」


『無理だ。我にそんなハイテク装備を付けることなど出来ん』


「………」


「…竜也どんまい…」



無邪気な笑顔でボルケーノに話しかけたらこれである。提案した伊澄も申し訳ないと思っているのか、無表情ながらも竜也の肩に手を乗せた。



「ブースターが使えないとなると、大砲をブースター代わりに使うってのはどうだ?」



そんな竜也が見ていられなくなった颯太はふとそんな事を言いだした。



「どういうことだよ?」


「確かその大砲って炎吐けるんだろ?なら、その炎を推進ロケットエンジンみたくすればいい。その代わり、代償として移動中は攻撃が出来なくなるデメリットがあるが」


「それいいかも……」


「それいいな!ボルケーノ!」


『それなら出来るかもしれん。だが、竜也。我の炎となれば火力が強すぎて壁に激突する恐れがあるぞ』


「そういうのはやって調整していくもんだろ?今はとにかく俺にも移動手段が出来たことを喜ぶべきだぜ!」


「良かったな竜也」


「あぁ!颯太、サンキューな!」


「私達のグループの中で一番敏捷値が低いのは竜也だったからな。それでボルケーノ。もし竜也がそのスキルを取得することが出来ればどれくらい敏捷値が上昇する?」


『ふっ……ビャッコすら抜いてみせよう』


『おおお!(おお…)』



もしボルケーノが武器になっていなければ間違いなく彼は今ドヤ顔をしていただろう。



「凄い自信だな。でもさ、そうなるとどれだけ爆発的な加速になるんだ?」


「竜也の身体が細切れになるくらいの加速か……面白い」


「竜也バラバラ…?」


「いやいやいや!!ぼ、ボルケーノ!俺にも分かるように説明してくれ!」


『ふむ……加速には二通りあってな、まず颯太達のような一般的な加速はゼロから始まる加速だ。それは段階的に上昇する加速で、颯太達はこれに当てはまる。颯太、お前は何歩目でトップギアに入れる?』


「俺は……4……いや2、3歩か」


「は、はや…」


『この通り最初は遅くとも段階を踏むことで加速していく種類のものなのだ。次に二通り目の加速だが、これは我とガンドレアに当てはまる』


「わたし…?」


『ガンドレアのブースターはイオンブースターと呼ばれるもので、段階を踏むことはない、最初からトップギアの加速を生み出す爆発のような加速だ。颯太が竜也に提案した加速とはこれに当てはまるのだぞ。そうだな、先ほど挙げたビャッコを抜くとなれば竜也のバラバラ化は防げんな』


「ドヤ顔でビャッコを抜いた瞬間バラバラ………ふふ…」


「それは最高に面白いな…」


「くそ、想像してしまった!」


「わ、笑ってんじゃねえよ!と、とにかく火力さえ気を付ければ敏捷の低さもカバーできるんだよな?」


『可能だとも。しかし、竜也でも扱えるとなるとCランク程度のものとなるな』


「Cランク?十分だとも!」


「なぁ竜也、私は君が一度バラバラになるところが見てみたい。出来るならコメディ要素を含んだもので―――」


「や、やらないっすよ!!」


「どうなるんだろうな……うぼあああ!って言いながらバラバラになるのか、それとも速すぎルウウウ!って言ってバラバラになるのか」


「だからバラバラになるまでの火力は出さねえって!!」


「やらないのか。最近少し笑いに飢えていただけに残念だ……」


「残念……」


「竜也、笑いを取る所を逃したな…」


「おい、マジでここ最近俺の扱いが酷くないか」


『自覚がないのか…』



本当に残念そうにしている3人を見て竜也は皆からの評価が真剣に気になった。

さてさて、今回はほとんど特に動きがないまま会話だけで終わってしまいました。

どういうことかと言うと、颯太達は絶賛移動中でありまして、緊張感がないまま楽しげに北の拠点に向かっているというわけです。



一応竜也はクレアの次に颯太達の年上なのですが、なんだか全然年上って感じがしないですね。

ゲームの中に年齢など関係ありません。皆、等しくゲームプレイヤーなのです。

まぁ竜也の場合、たとえ皆がリアルの彼を知ったとしても扱いは変わらなかったでしょうな……(遠い目

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ