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敏捷値が高い=強い(旧題ランゲージバトル)  作者: また太び
5章 青の領域と赤の領域(続)
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勢力戦勃発11

「まだお仕置きが足りないようだね」



レーナは颯太の膝に座ったままナイフを取り出し、彼の腹部へ突き刺そうとするが、颯太は彼女の手を掴んだ。



「あ…!ちょ、ちょっと離して!」


「レーナ」


「うるさい!うるさい!うるさい!」



今度は空いてる手にナイフを持って突き刺そうとするが、颯太はその手首を掴んで防ぐとそのままベッドに組み伏せる。対格差で有利なことから組み伏せるのは簡単だった。



「やだ!やだやだやだ!颯太やめてよ!」


「レーナ、もうこんなことはやめよう」


「何を言っているのか全然分からない!何をやめるっていうの!?」


「本当は分かっているんだろ?痛みは何も生まないって」


「―――ッ!!」


「なぁ、今まで傷つけて何か変わったか?」


「し、知らない……」



颯太の拘束から抜け出したレーナはベッドから降りて逃げようとする。しかし、そんなレーナの肩を颯太は強く掴んで再び自分と向き合わせる。



「変わったのは自分を見る人の視線だろ?」


「い、いやぁ………」



颯太の“人の視線”にびくりと反応したレーナは首を左右に何度も振る。



「その視線にはどんな想いが込められていた?」


「知らない知らない知らない知らない知らない……―――」


「………――――それはお前を恐れて軽蔑する憎悪の目だ」


「あぁ……ぁ…」


「分かるだろ?お前の最初の主も次の主も2人とも同じ目をしていたはずだ」



レーナは首をがっくりと落としてその事を思いだす。常に自分を避けて戦いのとき以外は全く喋らなかった自分の主のことを。その時のレーナはつまらないから殺した。自分とは合わないご主人だったから殺した。混沌に耐えきれなかったから仕方がない。そんな適当な理由をつけて殺してしまった。



「殺された2人には家族がいたはずだ。きっと殺された2人のことは運営が記憶処理を行い綺麗さっぱりに最初からいなかったことになる。でもな、思い出っていうもんは消えないんだ」


「………」


「俺の陸上のトロフィーのように忘れたくても忘れられない記憶だってあるんだ。いくら記憶上から消そうともその人の心に刻み込まれてしまうもんなんだよ」


「………その2人にもお爺ちゃんとお婆ちゃんいた…」



レーナの瞳からポロポロと大粒の涙が零れ始める。



「私とは話さなかったけど、お爺ちゃんとお婆ちゃんとはよく話してた……楽しそうに…………そ、それを………わ、わわわ私は…こ、こわ…」



“壊した”と言いかけて、そこからはもう言葉にはならなかった。レーナは颯太に抱き付いてわんわんと泣き叫び、颯太はそれを強く抱きしめた。


自分の過ちを認めるということは、その瞬間に自分が今まで犯した罪の重さを知り、そして罪の意識に心が潰されてしまうのだ。

それを承知で颯太はレーナと向き合った。まだレーナはやり直せる、きっとレーナなら乗り越えてくれる、そう信じて。


彼女が犯した罪は一生消えることはないだろう。それこそたとえ記憶の中から消されようとも決して消えることはない心のドロなのだ。


レーナは変われる。それがどう転ぶかは誰にも分からない。だが、颯太はそんな彼女をずっと見守って行くつもりだ。



『そのためにも俺は絶対に負けられない』



ランゲージバトルの覇者となり、運営の中心部へと辿りつき、そしてランゲージバトルのシステムを全ては破壊する。

そうすればレーナはもちろんボルケーノ達も解放され、このくだらない闘争にケリを付けることができるはずだ。


この自分の胸で泣く小さな女の子のためにも。




「俺、完全復活です」


「リーナも完全に回復した。問題ない」



次の日の夜、颯太と滉介は無事ランゲージバトルの世界へとやってきた。



「ホント1世代目の神器は洒落にならないわね。あんなの1度でも当たれば終わりじゃない―――って颯太、レーナはどこかしら?」


「あぁ…レーナは今でてきたくないらしくてな、さっきからずっと大剣のままだ」



いつもなら颯太の腕に抱き付いているはずのレーナがいない事にリーナは不思議そうにしていた。



「まぁ何はともあれ2人とも無事で何よりだ。それで颯太、昨日起きたことを簡単に説明しておこう」


「お願いします」


「昨日青側の拠点の1つが落ちた」


「ど、どこですか!?」


「南側だ。中央拠点から大部隊が移動したらしくてな、その部隊が向かった拠点が南に位置する拠点なのだが、どうやら他の拠点からもプレイヤー集めて戦力を集中していたそうだ」


「一気に落としにかかったみたいでさ、電光石火の戦術だったよ」


「俺らの援護も間に合わなくてよ、あっという間だったぜ」


「移動したってことは目の前の拠点ががら空きになるはずですが?加山さんはどうしていたんですか」


「無論我らもチャンスとばかりに中央拠点を攻めにかかったわけだが、レギュンとあの双子が守りに徹していたせいで攻めきれなかったのだ」


「もうあのガキむかつくー!ユキナことお子ちゃま言ったんだよ!」


「城壁に炎の壁が設置されて私の矢も届かないし、兄さんとクレアさんと伊澄さんだけしか炎の壁を通れなかったわ」


「竜也はまだレギュンと戦うくらいに成長していない……残念だけど、今回は諦めるしかなかった…」


「無理とわかれば早々に撤退して南側の拠点の援護に向かったわけだが、先ほどティアが言った通り電光石火の如く、我らが着いた時には遅かったのだ」


「完全にしてやられたようだな。それで加山はこれからどうすると?」


「これから加山に判断を窺うところだ。颯太は我らのリーダーだからな。リーダーが来てから行こうと思っていたのだ」


「分かりました。行きましょう」



颯太達はいつもの中庭から拠点内に入り、加山の作戦室を目指す。



「失礼します、颯太ですが」


『あ、どうぞどうぞ!』


「失礼します」



中に入ると加山は慌ただしく資料を片づけていた。



「取り込み中でしたか?」


「いえいえ!それで皆さんは恐らく今後の動きについて聴きたいのでしょう?」


「はい。昨日南側の拠点が落とされたと聞いたので」


「ええ、あれは本当にしてやられました。後方の拠点にいたプレイヤー達を全て集めて銀二達がいない南側の拠点を一気に落としにかかったんです」


「確かここから南側まで行くには敏捷Aクラスで20分ですよね。そんな短時間で落とされたんですか?」


「本当にあっという間でした。恐らく1万人以上のプレイヤーが導入されたと連絡が入りました」


「あぁ…確かにあの数は1万超えてたぜ…」


「完全な数に物を言わせた戦術だな。それで加山、私たちはどうする?」



その時加山がにやりと笑った気がした。



「我々もただやられているばかりじゃないという事で、明日銀二が今回やられた方法をそっくりそのまま真似して返してやると言っていました」


「ほう?」


「そこで銀二からの勅命です。混沌、氷帝、戦神、炎龍を含む精鋭を100人寄越せと」



その加山の言葉を聞いた時颯太はクレアの顔を覗くと、彼女はあからさまに不機嫌になっていた。伊澄は相変わらず無表情だが、どこか納得が行ってない様子。



「はぁ……クレアさんの仰りたいことはよ~く分かります。颯太さんとクレアさんの2人が抜けたらここの守りはどうなるという事ですよね」


「分かっているじゃないか」


「そう言ったんですけどねぇ……銀二は寄越せの一点張りでして…」


「ふむ……加山、守り切れるのだな?」


「もちろんです。南側にいたプレイヤーの皆さんがこちらに来ているので、戦力も申し分がない。絶対に守ってみせます」


「………――――分かった。颯太、私と伊澄は行ってもいいぞ」


「え……わたしに拒否権は…?」


「ない」


「しょぼーん…」


「俺も構わないです。竜也、行くか?」


「あぁ、やってやるぜ」


「良い報告お待ちしております」



皆が出て行くなか、颯太とクレアと伊澄と香織の4人は加山の部屋に残った。



「まだなにか?」


「加山さん、大事な話があります」


「えっと、それは僕だけにしか言えないお話ですか?」



詩織達が出て行った扉を見ながら加山は颯太に尋ねる。



「はい」


「分かりました」



加山は姿勢を正して真剣な表情で颯太を見据えた。



「恐らくこの銀二が提案してきた作戦は間違いなく成功すると思います」


「どうしてそう思うんですか?」


「今赤側は落とした南側を再び襲われないように防御で固めているはず。つまり、そこに人数が集中しているわけですから、接戦状態を維持している北側に戦力を回している余裕はないはずなんです」


「そこで我々は北側を落としたらそのまま中央拠点に奇襲をかける」


「―――ッ!まさか北側を落としたらそのまま中央へ仕掛けるんですか!?」


「私達がいないと分かればすぐにでもレギュン達は猛攻を仕掛けてくるだろう。そこで我々はその隙を狙い、そのまま中央拠点を背後から攻め落としにかかる」


「加山には挟撃に参加してもらいたいってこと…」


「出来れば接戦になるような状況が望ましいのですが、レギュンとあの双子が相手ではそううまくいかないでしょう」


「颯太くん、本当にそんなこと可能なの?」


「出来る。出来なきゃこんな作戦立てやしない」


「時間との勝負だが、北側の拠点は接戦状態だ。我々が加わればその均衡が一瞬で崩壊するだろう」


「大した自身ですね……今日はやけに気合が入っているようで」


「あぁ、颯太がいつにしなくやる気に満ち溢れているのでな、何故か私も気を引き締めなければと思ってしまうのだよ」


「この作戦聞いた時…颯太はドSだと思った……」


「ここが正念場なんだ。やるしかない」


「それに南側が落とされたのだぞ?今流れに乗っている赤側を止めなければ青側はこのまま押し切られる」


「それもそうですよね――――――分かりました。その作戦、僕も命を懸けて参加しましょう」


「ありがとうございます」


「やり遂げましょう、颯太さん!」


「はい!もちろんです!」



椅子から立ち上がった加山と颯太は硬い握手を交わし、無事挟撃作戦は受諾された。


まる11と打とうとしたら①①になってしまったのでござる、どうもまた太びです。


さて今回は勢力戦が遂に動き出しました。赤側の猛攻により、わずか数十分足らずで落ちてしまった南側の拠点。そこで銀二が出した作戦はまさかの真似ただけのお返し作戦。

その作戦に呼び出された颯太、クレア、伊澄、竜也の4人は銀二の作戦に呆れつつも北側の拠点を落とすために作戦参加に強い意志を見せる。

しかし、颯太達は北側の作戦など眼中にあらず、本当の目的は北側を制圧後すぐに反転して中央を落としに行くというとんでも作戦だった。颯太の強い瞳に加山も力強く頷き、挟撃作戦に出ることが決まったのであった。 決戦は明日である。


とまぁこんな感じですかね。レーナの話はこの次の話しか、それともその次かもしれないです。

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