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敏捷値が高い=強い(旧題ランゲージバトル)  作者: また太び
5章 青の領域と赤の領域(続)
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勢力戦勃発9

「やっと解放されたか……」



警察の事情聴取が約2時間近く続いて颯太は心身ともに疲弊していた。それもこれも倭の切り傷が警察側は気になるらしく、何故か颯太も疑われる羽目になったのだ。



「よ。車で来たから乗ってけよ」


「あ、颯太が出てきた」


「兄貴、レーナ」



警察署から出ると外で和彦とレーナが颯太の帰りを待っていた。



「大変だったなぁ」


「そうだな」


「今日は疲れただろ?早く家に帰ってゆっくりしよう」


「あぁ…」



颯太は和彦の言葉に相槌を打つ程度でしか返さなかった。



「それで、被害者の男性は大丈夫だったのか?」


「分からない。かなりの重症で助かる確率は限りなく低いと警察の人から言われたけど……俺は助かると思う」


「ほう?根拠は?」


「ない。でも、あの人は助からなくちゃいけないんだ」


「神器が自分の命と引き換えにご主人を守ったんだもんね。逆に助かって貰わなくちゃあの神器が浮かばれないよ」


「あぁ、今回の事件はランゲージバトル絡みだったのか。どうりでお前が首を突っ込んだわけだ」


「あの人はランゲージバトルの事を知りすぎたんだ。それで、口封じのために殺されかけた」


「運営側が直接手を出してくるときもあるのか……」



颯太の言葉に和彦は驚愕した。



「颯太、1ついいか?その男性が助かったとしてもまた殺される可能性はないのか?」


「それは………―――レーナ、どうなんだ?」


「神器を損失した場合はランゲージバトルの特別ルールに基づき、プレイヤーの記憶を消去することが求められる。イズルの時と一緒だよ」


「記憶操作か……一体どうやって…」


「恐らく神器とリンクした時にプレイヤーの脳と直結する回線を弄ったりすることで記憶を消したりしているんじゃないかなと思う」



そしてレーナは小さい声で『私も自分の記憶がないからね……』と言った。



「あ~なるほどな。たとえ神器がなくなったりしたとしても神器とプレイヤーを繋ぐ回線はまだ残っているというわけか。そしてその回線のONとOFFの切り替えもも運営側次第でいくらでも弄れるしな」


「そういうこと」


「逆にない記憶を植え付けることも出来るというわけだな」


「それはないかも。運営側だってこれは1つの娯楽として提供している事だし、プレイヤー側を変に混乱させたりするような事はしない」



和彦の言葉をレーナは否定する。



「まぁ出来る出来ないで言えば出来ると思うけどね」


「でもなぜだ。俺だってランゲージバトルという世界に疑問を抱き始めている。なら、そういう不安要素は早急に取り除くべきだと思うんだが」


「さぁ?そういうのも含めて運営さんは楽しんでいるんじゃないの?別に知られそうになったら警告を込めて神器を送りつければいいんだしね。実際颯太だってパラセクトソルジャーが来た時怖かったでしょ?」


「あぁ……あれは生きた心地がしなかった」


「記憶を処理したところでまた同じ事を繰り返すだけかもしれない。なら、記憶があるうちにこちら側に2度逆らえないような恐怖を与えればこれ以上知ろうと思わないよね」


「確かにレーナの言うとおりだな」


「まぁ颯太とかクレアのようなおバカさんには執行者直々に最終警告を伝えに来るというか、実際来たんだけど、颯太達は全く懲りないね」



レーナはがっくりと肩を落としながら颯太をジト目で見る。



「わ、悪い……それで執行者っていうのはなんだ?」



駐車場に停めた和彦の車の後部座席に乗りながら颯太はレーナに尋ねる。



「そのまんまの意味だよ。ランゲージバトルの秘密を守る番人。秘密を知ろうとすれば必ず出てくる厄介者」


「あいつの威圧は半端じゃなく怖かった……あの剣で一体何人もの人を殺して来たんだ…」



レーナも颯太の隣に座り、ドアが閉まると車はゆっくりと走り始めた。



「颯太はそんな危ない奴と出会ったのか?」


「あぁ、今日出会った倭っていうプレイヤーもその執行者に殺されかけていたんだ」


「颯太、ランゲージバトルの秘密を探るのもいいが、怪我などしたら母さん達が黙っていないぞ。流石の俺も庇い切れん」


「分かっているよ、兄貴」


「ねえ、普通そこは探るのを止めようとする場面だと思うんだけど」


「ふむ、確かにそうだな。だが、レーナも数か月颯太と過ごして少しは分かって来たんじゃないのか?颯太はドがつくほどの馬鹿だと」


「なッ!?それはどういう意味だよ!」


「あ~そう言えばそうだね。うん、颯太は馬鹿だ」


「一体どういう目で見られているんだ……」



颯太の疑問に2人は笑っているだけだった。










「颯太!東の部隊が少々押されているようだ!ユキナと竜也を借りて行くぞ!」


「了解しました!御武運を!3人とも聞いていたな!?これからユキナとクレアさんの穴を埋めるぞ!」


「分かったよ!」


「休む暇がないな…!!」



今夜の勢力戦は颯太達も参加していた。

加山によれば昨日の戦いでペナルティを背負ったプレイヤーが増えてしまい、今夜は颯太達が後方の拠点で休んでいるプレイヤー達の分まで働くということなのだ。

しかし、今まで安定していた戦線がどうして急に崩れ始めたのか。

クレアの見解は『恐らく今まで後方で休んでいた1軍が前線に加わったのだろう』ということなのだが、颯太達青側のプレイヤーも平均的に見ればかなり強い方だ。それが経った一晩で崩れるとは余りにも現実的ではない。



『腑に落ちないな……』


「混沌が来たぞ!!あの剣には絶対触れるな!!」



先ほどから颯太を狙い続けている射撃部隊に狙いを定め、僅か3歩で颯太は最大速度まで加速する。



「ティア!射撃部隊を潰す!援護してくれ!」


「任せて!」



颯太の速度に追いついたティアは彼を追い越し、前方に爆弾を投げつけた。



「うお!?」


「な、なんだこれ!?」


「煙幕だ!」



爆発した爆弾は射撃部隊周辺に煙を発生させ、彼らは突然の煙幕に驚いて攻撃の手を止めてしまった。



「迅雷…!!」



大剣を水平に寝かせると同時に颯太は更に加速した。凄まじいGをものともせずに颯太は煙の中へ飛び込んで左目を覚醒させる。



「うおおお!!」



自分の視界に映る神器を捉えて颯太は敵を切り刻む。触れれば即死とは行かないが、確実に行動不能にさせる大剣は唸りを上げて紫電を散らす。



「おっと!」



射撃部隊を倒した颯太の煙の中へ銃弾の嵐が叩き込まれ始めた。咄嗟に大剣を盾にして銃弾の嵐を凌ぐ。



「ちっ!これじゃ動けないな…」



敵はここで何としてでも混沌を潰したいのだろう。周りで戦っている滉介と詩織を無視して確実に颯太を狙い始めた。



「だが、俺の部隊はあともう1人いるぞ。射撃に長けた人が」


「ぐはッ!?」


「うわ!?」



颯太を狙っていた他の射撃部隊の攻撃が止む。



「流石だなッ!」



香織の妨害によってほんの数秒攻撃が止んだ瞬間を颯太は見逃さない。



「雷撃ッ!!」



地面に突き立てた大剣を引き抜くと同時にチャージを開始し、大剣が頭上の上まで上がった瞬間颯太は大剣を大地へ叩きつけた。


ゴオオオオオ――――という大地の雄叫びは大気を揺るがし、雷撃を受けた者はもれなく混沌支配の効果も受けるため、バタバタと敵側のプレイヤーが地面と熱いキスを交わす事となる。



「すげえ……これが混沌のグループかよ…」


「けた違いすぎるだろ…」



颯太達と共に戦っていた他のグループはその桁違いの強さを間近で見せられて唖然としていた。



「颯太、引いて行くようだな」


「そのようだ。一度戦線を立て直すつもりだろう」


「一旦お疲れさん~!」


「颯太くん、これからどうしようか」



引いて行く敵陣を見て颯太が足を止めると他の3人が集まって来た。



「俺は追撃を提案する」


「あたしも追撃を推薦しま~す」


「でも、後ろには控えの敵陣が敷いてあるかもしれないわよ?危険だわ」


「俺も香織さんの意見に賛成だ。俺達だってもし前線が維持できなくなった時のために後方で控えてくれているプレイヤー達がいる。きっと相手側だって同じのはずだ」


「だが、いずれは後方部隊とも戦わなければいけない時が来る。ここで痛手を与えるのが得策だと思うが」


「ありゃりゃ、見事に意見が分かれたね。どうするよ」


「他のグループのリーダーと話してくる。香織さん、来てくれ」


「分かったわ」


「追撃は迅速に、だ。答えを出すなら早くしてくれ」


「了解だ。他のグループのリーダーの皆さん!少し集まって貰えませんか!?」



颯太と香織は少し後方にいる他のグループリーダーに呼びかけながら集め始めた。




追撃するか否かを皆に聞いたところ、僅かに追撃する側が票を上回り、追撃する事が決定した。

しかし、1部隊だけはこの事を報告するため至急後方部隊と加山に知らせるため下がる事となった。



「ラインを上げるぞ!」



颯太との声と共に人やモンスター達が一斉に前へ走り始めた。



『颯太、左目解放した方がいいよ』


「そうだな。たとえ茂みに隠れていようがこの左目だけは誤魔化せない。シーザー!」



宝玉を握りつぶして召喚したシーザーを踏み台にして颯太は茂みに隠れているプレイヤー達の下へ飛び込んだ。



「ひゅ~速いね。それじゃ、レックスも行くよ!」


「追いつく俺の身にもなれ…!」


「はは!なら滉介も早くテイムモンスターを手に入れることだね!」



滉介と香織を置き去りにして詩織も颯太に続いた。琥太郎の能力の加速によって彼女の速度は一気にトップギアへ躍り出る。



「レックス!」



詩織は自身の右腕をグッと引き金のように絞ると、八咫烏であるレックスは彼女の右腕に停まって翼を折り畳む。



「魔弾!レイヴンストライク!」



そして空中に飛び上がった詩織は、空気を裂くように右腕を突きだした。次の瞬間レックスは蒼い炎を纏って流星のように今まさに青側と交戦しようとした敵陣目掛けて飛んで行った。

小さな流星は地面に衝突すると凄まじい爆発を巻き起こし、辺りにいた敵側のプレイヤーとテイムモンスターを大量に巻き込み、HPをごっそりと削って行く。




まず勢力戦勃発③らへんでガンドレアの世代表記を6世代と書いていたことに対して謝らなくてはなりません。

誤表記を直すのも忘れており、この章を書き終わった時に見直したら6世代と書いてありまして、本当に皆さん方に混乱を招いてしまったことに対して申し訳ございませんでした。修正前に読んでくださった方は『あぁ、そうだったんだ』くらいの認識でお願いします。修正後に読んでくださった方は『そんなことあったんだ』程度で流しておいてください。


えっと、それじゃこれくらいにして、今回の話に移りたいと思います。

今回は颯太と滉介マジピンチという回でした。

勢いよく敵陣に攻め込んだ颯太達でしたが、敵司令塔のヘルヘイムを操るレギュンたった一人によって颯太たちは壊滅的な被害を受けてしまいます。

皆の退路を確保するため颯太と滉介は2人でレギュンを相手にしますが、全く歯が立たず防戦一方の展開に強いられてしまいます。

そんな中颯爽と駆けつけたヒロインクレアですが、彼女の隣には見慣れないプレイヤーが一人。伊澄と呼ばれた少女はなんと2世代目の中でもボルケーノと並ぶ凶悪さを誇る戦神ガンドレアの神器使いでした!

というあらすじみたいな後書きですが、今後ともよろしくお願いします!

あ、あと!ご意見ご感想お待ちしておりますよー!

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