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敏捷値が高い=強い(旧題ランゲージバトル)  作者: また太び
1章 ランゲージバトル
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妹さんの正体

「メールか?」



FDではなく、自分の携帯のランプが点滅している事に気が付いた颯太は携帯を開く。

どうやらメールではなく、着信だったようで掛けて来たのは香織だった。



「委員長?何の用事だ」



出るか分からないが、とりあえず掛けてみたが出る気配はない。



「出ないか。急ぎの用事ならメールで済ませるだろうし、別にいいか」


「家族~♪家族~♪」


「レーナ、ランゲージに行くぞ」


「うん!行こう行こう!」



颯太はFDを握りながらランゲージバトルの世界へ飛び立った。



「ログインっと」


「颯太颯太!タツヤからメール!」



すっかり機嫌が戻ったレーナはFDが点滅しているのを指差す。



「おっと」



メールを開くと、そこには短く『遊ぼうぜ。昨日の噴水で待っている』と書いてあった。



「タツヤが遊びたがっているようだ。噴水のところに行こう」


「ボルケーノにまた会える~!」


「気に入ったのか?」


「ん?ボルケーノは昔からの知り合いだよ?いくら話しかけても返事をくれない他の魔物と違うの」


「返事してくれたのか」


「うん。だからボルケーノは殺さないし、いつまでも仲良くしていたいお友達」


「あちらは余り友好的ではないようだが」


「照れ隠しだよ。ボルケーノは友達を作るのが下手だったから、ぶっきらぼうな事しか言えないの」


「まぁ…確かに…?」



余り話したことがない颯太は何とも言えなかった。



「よう!」


「おっす」


「ボルケーノ!」


「む、混沌か」



噴水エリアに着いた颯太は木陰で座っているタツヤとボルケーノを発見した。



「今日お前のせいで危うく先生に怒られるところだったんだぞ」


「あ、授業中送ったことか?いや~すまんすまん!でも、なんか言いたくなってしまってよう」


「まぁおかげでマナーモードに設定する良い機会になったけどさ」



颯太はタツヤの隣に座って何となく噴水を眺める。



「お前がログインする前にレベリングしてたんだけどよ、面白い地図見つけたんだ」


「地図?」


「ダンジョンだよダンジョン…!もしかしたら一儲けできるかもしれない宝の地図だ!」


「へえ、報酬の宝箱から出たのか。運が良いな」


「今日はこれ行こうぜ」


「いいね。面白そうだ」


「ちなみに妹も行くことになった。もう少ししたら来る」


「お、妹さんもか。俺が来ることは知っているのか?」


「あぁ、知っているぜ。柄にもなく緊張しててよ」


「まぁ分からないまでもないけどさ」


「兄さ~ん!遅れました!」



颯太は後ろから響いた声に目が飛び出るかと思った。



「あ、その黒い服の方が兄さんのフレンドさんですか?初めまして、カオリと申します」


「い…」


「い?」


「なんで委員長がここにいるんだああああ!」


「あ、天風くん!?」



振り返るとやはり委員長だった。

どうも短いスカートが目に入る。



「あれ?お前ら同じ学校だったの?」


「まさかソウタさんって天風くんの事だったなんて」


「どうもお前から妹の相談されていた時から共通点がうちの委員長とまる被りだと思っていたよ!」


「もしかして仲直りしたっていうのもソウタのこと?」


「そうだよ!」


「目から血が出て倒れたっていうのも?」


「俺だよ!」


「あら~珍しいこともあるのね~」


「棒読みしてんじゃねえよ!なんでこんなに世間は狭いんだ!」


「天風くんが混沌使いだったなんて…」


「まぁまぁ!ギスギスした雰囲気にならなくてむしろ良かったと俺は思っているよ。ほら、フレンドパス交換しておけよ」


「あ、うん。天風くんいいかな」


「いいよ。それとこっちの世界では颯太で頼む。出来ればリアル割れはしたくない。俺も委員長じゃなくて香織さんって呼ぶからさ」


「分かった。よろしくね、颯太くん」


「こちらこそよろしく頼む。香織さん」



二人はフレンドパスを交換した。



「タツヤ、そのダンジョンはレベルが高いのか?」


「いや?そんなことはないんじゃねえかな~?」


「なんで疑問形なんだ…」


「いやいや、俺もダンジョン自体は初めてでよ。というか、ダンジョン自体凄く珍しいんだ」


「へえ?ならその地図高く売れそうだが」


「ばっか…お前、そんな一人だけ盛り上がるような事をするかよ」


「タツヤ……お前、良い奴だな…」


「颯太行かないの?」



タツヤと盛り上がっているところでレーナがイライラしだした。



「うくッ!わ、分かった。タツヤ、そろそろ行こう。じゃないと俺の目がやばい」


「目?あ、まぁ行くか。どれくらいかかるか分からないしな」



左目を抑えた颯太を不思議そうにタツヤは見てからとりあえず城まで歩きだした。



「颯太くん…」


「あ、そう言えば香織さんの神器は人間なんだな。なんていうんだ?」


「え?あぁ、えっとアルテミスっていうんだけど」


「よろしくお願いします」



透き通るような声だった。

しかし、その声にはどこか警戒の色が混じっている。それもそうだろう。彼女が見つめる先にはボルケーノの肩に乗っているレーナの姿があるのだから。



「あぁ、こちらこそよろしく。まぁ無理な相談かもしれないが、レーナは人を殺すような事はしない。俺の言う事も聞いてくれるし、一度叱りつけてから大人しくなった」


「叱った?あの混沌を?殺されなかったのですか?」


「その前までは少し危なかったけど、レーナは泣きだしながら俺に謝ってくれたんだ」



アルテミスは理解出来ない、と言った顔をした。

それだけレーナがこのランゲージバトルにもたらした恐怖が強いのだろう。



「天風くん……そのやっぱり…」


「俺の本名言うなよ…」


「その左目、おかしいわよね」


「え?な、何が?」


「天風くんがハンカチを押し当てようとした時にちょっとだけ見ちゃったんだけど。その左目、なんだか怖かった…」


「何でもないよ。まぁ血が出てて香織さんには怖く見えたんだろ?」


「いや、そうじゃなくて―――」


「いいから、リアルの話しを余り持ちだすな。それに香織さんとならいつでも会ってるじゃないか。その時に話せばいい」



話しを打ち切るように颯太は前を歩くタツヤと話を始めた。



「アルテミスを神器にしているから、私は目がいいんだよ……あれは見間違いじゃない…」


「香織の思考とリンクして見せて貰いましたが、あれは人間の目ではありません。恐らく混沌の……能力」


「でもどうして?なら、どうしてそんな自分の主を殺そうとする神器と一緒にいるの?」


「もう少し様子を見てみましょう。香織、明日彼に聞いてみるべきです」


「そうだね。明日聞いてみるわ……あっちで話しかけるのは勇気いるけど…」


「何故です?」


「い、色々事情があるの!」



またアルテミスは理解出来ないようで、どこか困ったような顔をしていた。



「まぁダンジョンと言えば遺跡、洞窟が相場と決まっているか」


「よ~し!張り切って行こうぜ!」


「私も頑張る!」



ちなみに颯太のレベルは54。タツヤは52。香織は43となっている。

香織もタツヤ同様遠距離武器の弓のようなので、結局前衛は颯太任せになるようだ。



「いや~ソウタがいてくれて助かったぜ。香織とパーティー組むとどうしても接近戦が苦手でな~」


「まぁこれでバランスは取れたか」


「ごめんなさい、颯太くん任せになっちゃうのは」


「いや、後方支援が豊かになると前衛の俺も戦いやすい。レーナ、今日も頼むぞ」


「うん!私は颯太の武器だから」



レーナは颯太に頼られるのが嬉しいのか、笑顔で腕に抱き付いて剣へと身体を変える。

タツヤもドラゴンの口のようなランチャーを持ち、香織は神々しい天使のような白銀の弓を持つ。



「レーナ、今回は混沌の支配なしで行きたいんだが」


『うん、いいよ。私が発動しちゃったら後ろの二人が暇になっちゃうもんね~』


「という事なんだが、いいか?俺ばかり無双してしまうと腕が上達しないからさ」


「了解だぜ。そろそろ俺の腕をソウタに見せる時が来たようだな」


「分かった。私も頑張ってみるわ」


「それじゃ行くぞ~!俺に続けー!」


「前衛は俺なんだが……」


「兄さんはいつもあんな感じだから」



やけに張り切っているタツヤは2人を置いて洞窟の中を走って行ってしまった。

前衛の颯太は呆れてため息をつく。それを見た香織が申し訳なさそうにして先に行ってしまった兄を追う。



「颯太くん、兄さん。奥に魔物が見えるんだけど」


「へえ、香織さんは目が良いんだな」


「香織はな、アルテミスの神器とリンクした事によって視力が恐ろしい事になっているのだ」


「なんでお前が誇らしそうに語るんだよ。香織さん、距離は?」


「えっと、大体800mかな」


「凄いな……何体いる?」


「5体かな……そのうち2体は寝てる」


「釣ってみるか………香織さん、起きている魔物に弓を当てて釣ってみてくれないか?」


「釣る?あぁ、おびき出すってことね。もう分からずらいなぁ…」


「ネット用語なんだ、覚えてくれよ」


「善処します!」



光の矢を構えると、香織は薄暗い洞窟の奥へ矢を放った。



『オオオオン!!』


「おお、命中命中!どんどんやれやれ!」


「起きている奴は全部だ。恐らく寝ている奴は一定の距離まで近づかない限り起きない。気にせずどんどん釣ってくれ」


「兄さんと違って弓は難しいんです!連射は難しいんだから!」


「さて、香織さんが釣っている間に俺とタツヤはこっちに来た魔物を狩って行こう」


「あいよ!」



ドドドドドド―――!!地響きと共に現れたのは2mある鎧を纏ったオオカミだった。



「バトルウルフっていうのか。速そうだ」


『レベルは65だよ。気を付けて』


「あぁ、分かっている!タツヤ!ヘイトはこちらが引き受ける!俺に構わず撃ち尽くせ!」



颯太は駆け出した。

数は2体。ジグザグに飛びながら颯太は大剣から銃に変形させて牽制する。

矢を当てた香織に向かおうとしたバトルウルフは赤い眼光を颯太に向けて、飛びかかって来た。



『あは!遅いねえ』


「全くだ!」



颯太を捉えたバトルウルフは彼の頭を噛み砕こうと口を開くが、颯太はオオカミの顎を蹴りあげた。


自分の舌を噛み切ったバトルウルフは目を見開く。だが、そこで颯太の攻撃は終わらない。



「おおおりゃああああ!」



大剣の柄を変形させて颯太はまるでブーメランのように大剣をスローイングした。

紫電を散らす大剣はバトルウルフの鎧など紙同然のように切り裂く。



「まずは1体だ」



大好きな主の元に帰る犬のように大剣は美しい軌道を描いて颯太の下へ戻り、颯太は大剣を掴んで見せる。



「やっぱ頭で考える事は何でも出来るんだな」


『颯太かっくい!』


「へッ!負けられないな!」


『張り合うな、あの男と』



素早い動きでバトルウルフは仲間を殺した颯太に襲い掛かるが、背中に火炎玉が直撃する。



「お?もしかして属性耐性高いのか?」


『そのようだな。収束させてみろ。貫通能力ならば行けるはずだ』


「オーケー!」



ドラゴンの口から小口径の大砲が顔を出す。

今の攻撃でヘイトが颯太からタツヤに移るとバトルウルフはクルリと向きを変えてタツヤに牙をむき出して飛び上がった。



「飛び上がってくれて嬉しいぜ!喰らえ!プロミネンスレーザー!」



強烈な熱線が飛び出した。

熱線は飛び上がったバトルウルフを貫通し、洞窟の壁を深く溶かす。



「よっしゃ!いっちょ上がり!」


「なんだその技名」


「か、かっこいいだろ!お、お前こそ技名付けようと思ったことないのかよ!」


「考えておくよ」



にやにやしながら歩いてくる颯太にタツヤは顔を赤くしながら少しむきになって反論する。

颯太はそんな彼に目をくれずに汗を流す香織を見た。



「当たらない…!」


「ソウタ」


「いや、ここは香織さんに任せるべきだ」



援護に入ろうとしたタツヤを颯太は手で制す。



『焦ってはいけません。狩猟は常に冷静に、心を落ち着かせて相手を射るのです』



どうやら相手も警戒しているようで、洞窟の壁を使って徐々に近づいてくる。



「ふぅ………」



相手を前にして香織は一度構えを解いて弓を降ろす。



『さぁ、見えるはずです。いつ、どのタイミングで弦を引くか』



香織は目を開くと弓を構えて光の矢を引いた。



「いま!」


「グルア!」



薄暗い洞窟から飛び出したバトルウルフの額を光の矢が貫いた。



「お見事だ」


「ひやひやさせんなよ~」


「少し疲れました…」


「始まったばかりなんだが…」


『体力ないね~』



肩を降ろす香織の肩を叩いて颯太はどんどん先へ進んでいく。



「索敵してくれるだけでもいいんだぜ」


「そ、そういうわけには行きません!」



颯太に続いて先に行くタツヤにそう言われた香織はむっとして彼らを追った。

早速お気に入りにしてくれた事に深く感謝いたします!

しかし、やっぱりファンタジー系は書きやすいですね。VRMMO系の小説は多いですが、皆さんが書きたがる気持ちがわかります。

やっぱりこういうオンラインゲームがあったら楽しいよな~とか思いますよね。

私だったらこういう話にする。とか、色々発想が出てくるわけで、私も楽しく書かせてもらっています。

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