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敏捷値が高い=強い(旧題ランゲージバトル)  作者: また太び
5章 青の領域と赤の領域(続)
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勢力戦勃発4

その後、1日目の戦いは青側が善戦する形で終了し、青側の領域が若干増える事となった。

今回の勝利の鍵となったのはやはり前半のうちに暴れまくったクレア達のおかげであることは言うまでもない。

お互いの拠点側の戦力からすると五分五分と言ったところだが、これから1世代目の神器達が出て来るようなことになればあっさりとその均衡は崩れ去る事だろう。



「はぁ……やっと1日目が終わったか」


「戦いはこれからだね」



自室に戻った颯太は自分の布団に倒れ込み、レーナはベッドに腰掛ける。



「レーナは今回の戦闘を見てどう感じた?」


「とりあえず敵側は雑魚しか送ってきてなかったね」


「雑魚ってお前……まぁ、3世代目がちょっとだけいて、あとはほとんど4世代目だったな」


「出方を見られたのは痛手かな」


「そうだな。でもさ、俺達の姿を見たってことは少なくとも警戒させる事が出来る。こっちには混沌と氷帝と炎龍がいるんだぞって」


「逆に私やニヴルヘイムとボルケーノにも対抗できる神器が来ることも考えられるんだよ。やっぱり痛手だと思うな~」


「見られた事実はもう覆らないさ。ならせめてポジティブな方向へ持っていこう」


「まぁ颯太もクレアも強いからいいけどね。多分今の颯太達なら何が来ても負けないと思う」


「へえ、随分と大きく出たな」


「自分のご主人だからっていうのもあるけど、颯太は普通に強い。私が戦ったどの神器使いよりもね」


「なんか照れるじゃないか」


「実際颯太ってクレア以外に負けたことないよね」


「ん…?あぁ……確かにそう言えばそうだな」


「負けた時の味も覚えた方がいいんだけど、颯太が強すぎて負ける機会がクレアとのPVPしかないっていうのも考えものだね」


「というか俺の知り合い以外でPVPしてくれる人がいないんだ。PVPが盛んに行われている拠点の広場だって俺のことガン無視じゃん。あいつら」



いつも颯太達が焚火をしている広場は主に腕を競い合うプレイヤー達で溢れ返っているわけで、あそこにいるイコールPVPのお誘い待っていますよ~という意思表示でもあるのだが、今まで颯太とPVPしようという“猛者”は誰一人としていない。



「皆、私の能力が怖いんだよ」


「しかし、香織さんとか竜也も大分動きが変わって来たよな。あの2人が他のプレイヤーとPVPしているのを見ていると別人のようだ」



しゅんとしてしまったレーナを見て颯太は『やってしまった』という顔をしてから慌てて話題を変える。



「確かに最初の頃と比べれば格段と動きがよくなった。やっぱりうまいプレイヤーが傍にいると自然に学ぶものなんだね」


「確か香織さんは詩織に稽古をつけて貰っていると言っていたな」


「詩織は近接の神器だよね?教えられるの?」


「別に神器が近距離だろうと詩織も立派なゲーマーだ。弓とか射撃系の武器だってどっかのゲームで扱ったことぐらいあるだろうさ」


「ふむふむ、ゲームの前知識って偉大だね」


「そういうことだ。俺だってゲームをやっていなければあんな動きは出来なかっただろうし、ホントゲームさまさまだよ」



颯太は充電していた携帯をテーブルに手を伸ばして手に取る。



「そろそろ良い時間帯だし寝るぞ~」


「りょ~か~い。アラームは7時?」


「あぁ、いつも通り7時だ」


「ん~………明日は何して遊ぼうかなぁ……」



バチンと颯太によって部屋の明かりが消され、レーナはもそもそと自分のベッドに潜って行く。



「ユウスケの散歩でもしたらどうだ?喜ぶぞ」


「ユウスケはいつも私が散歩してあげているんだよ」


「ありゃ、そうだったのか」


「モフモフしてて可愛いんだ~。それでね、ぎゅーってしてあげると顔舐めてくるの」


「我が家の番犬もレーナに懐いたか。良かったよかった」


「えへへ~明日はユウスケと遊ぼうかなぁ………」



幸せそうにそう言ったきり、レーナからはやがて寝息が聞こえてきた。それを聞いた颯太もどこか満足げな顔をして布団にくるまるのであった。





颯太は草原に立っていた。周りを見渡せばそこは緑豊かな芝生とそれを食べる牛達がいて、遠くには風の力でゆっくり回る風車があった。



『…………』



声は出ない。



『お姉ちゃん待ってー!』


『ほらほら!早く来ないと花の冠の作り方教えないわよー!』



ふと後ろから楽しげな少女たちの声が聞こえてきた。


振り返ればその少女たちはとても彼に馴染みのある2人だった。



『ええー!そんな意地悪しないでよ~!』


『冗談よ!ほら、レーナ。ここにお花がいっぱいあるわ!』


『わぁ!早く早く教えて!』



そう、美しい金髪の少女と銀髪の少女はレーナとリーナだった。



『ちゃんと教えてあげるからそんなに急かさないの』



2人は牧場の中でも一際白い花が一面に咲き誇る地へ腰を下ろすと、リーナは慣れた手つきで花の冠をレーナの前で作って見せた。



『お姉ちゃんすごーい!』


『ふふん!どうかしら!わたくしにかかればこんなの朝飯前よ!はい、これはレーナにあげるわね』



花の冠を頭に乗せられたレーナは零れんばかりの笑みを浮かべて大いに喜んだ。



『それじゃ今度は私が作るね!今ので覚えたんだから!』


『そう?なら頑張ってみなさい』



花の冠に悪戦苦闘するレーナとそれを微笑みながら見守るリーナ。そんな様子を見ていた颯太は牧場に忍び寄る黒い影に気が付いた。

牧場の芝生を踏み潰してやってくるのは全身黒服で固めた男たち。



『むむ……難しいなぁ…』


『レーナ、ちょっとあっちの小屋に行ってきなさい』


『え?なんで?』


『いいから早く!それといいこと?わたくしが迎えに行くまで絶対小屋から出ちゃダメよ?』


『う、うん。分かった』


『さぁ、早く行きなさい』



男たちに気が付いたリーナはレーナに怒鳴った。レーナは訳も分からず目を白黒させるが、やがて作りかけの花の冠を持ちながら丘にある小屋へ向けて走って行った。男たちに気付かず。


そこで颯太の視界が暗転した。

何が起きたのか分からず驚く颯太だったが、やがて視界が明けて場面は藁で山になった小屋に移る。



『ん~……なんでお姉ちゃん怒っていたんだろ………いつも怒ってばっかりのお姉ちゃんだけど、なんかいつもと様子が違っていたなぁ…』



少し涙目のレーナは口を尖らせながら花の冠を作っていた。



『むむむ、よ、よっと!む~うまく結べないなぁ……』



草の長さが足りず、うまく結ぶ事が出来ないレーナは一端手を止める。



『この藁使っちゃダメかな……――――ダメだよね。んじゃ、ここどうしようかな~』



頑張ってちぎれない程度に力を入れて結ぼうと何度も試みるが、どうもうまく行かない。

やがてレーナは――――



『ああもう!新しく作り直そう!』



そしてレーナはリーナの言いつけを忘れて小屋から出てしまった。



『あうっ!』


『おや、やっぱりいたんじゃないか』



レーナが小屋から外に出ると、いかにも高級そうな黒いコートを着た男の背中に顔をぶつけた。



『あっ……』



その拍子に頭から姉が作ってくれた花の冠が落ちてしまい、レーナの視線は地に注がれる。



『はっはっは、危うく君のお姉さんのせいで出直すところだったよ』


『よほど自分の妹が大事だったんだろうな』



黒服を着た2人の男は怯えるレーナの前で豪快に笑う。



『………ッ!!!』



颯太は無駄だと分かってもレーナに声をかけずにはいられなかった。だが、言葉が口から発せられる事はない。



『だ、誰……お姉ちゃんは…?お爺ちゃんは…?』


『ふむ……私は余り小さい子を傷つけるような事は言いたくないんだけどねえ……どうしたものやら…』


『俺も同じだ』


『世の中馬鹿な大人だらけでさ』



大柄の男はレーナの前にしゃがむとポケットから銀紙に包まれた板チョコをレーナの前に出した。



『金に困った大人はどうすると思う?』



レーナは涙目になりつつも首を横に振った。

『分からない』『分かりたくもない』と。



『……………―――君と君のお姉ちゃんはね、親に売られたんだよ』


『…………』



レーナの表情が凍りついた。



『こんなでかい牧場があるんだから牛でも売ってしまえば借金なんか払えるのによ、あのくそ野郎どもと来たら大事な子供を売るって言ったんだぜ?』


『ディーン』


『はいはい、すみませんね』


『チョコレートはいらないのかい?』



今度は首を縦に振った。



『そうか。なら、これを飲んでくれるかな?出来れば手荒な真似はしたくないんだ。あぁ、大丈夫だよ。これは睡眠薬だから身体に害はない』



大柄の男は粒状の白い薬と水の入った水筒をレーナに出してみせ、レーナは光を失った目でそれを見た。

そして10秒くらいだろうか。短くも長く感じられた時間が経つとやがてレーナは大柄の男から薬を受け取って勢いよく薬と水を飲み干した。

すると彼女の足がぐらつき始め、それと同時に颯太の視界も段々闇へと染まって行く。



『――――ッ!!!――――ッ!!!』



颯太は声が出ずともレーナの名を叫び続けた。



『車まで運べ。あの研究者との取引があるんだからな。傷一つつけるなよ』


『了解でっせ。しっかし、あの研究者も変な男ですよね~』


『お前は知らない方がいい』


『触らぬ神に祟りなしって奴ですかい』


『無駄口を叩くな。ほら、行くぞ』



睡眠薬によってぐったりとしたレーナを肩に背負った細身の男は、大柄の男の後に続いて行く。その後を必死に颯太は追うが、視界はまるでテレビのように一瞬で暗転してしまった。



「あ…………」



カチカチ―――と部屋にある時計が秒針を刻む音が耳に響いてきた。



「颯太…?大丈夫…?」


「レーナ……?」


「なんだかうなされていたよ?」



目を開けると心配そうな顔をしたレーナが颯太の前髪をすいていた。



「……悲しい夢を見ていた気がするんだけど、よく思い出せないんだ…」


「どんな夢だったの…?」


「……お前が…………知らない奴に連れて行かれる夢で…」



颯太は身体を起こして額に手を当てながら断片的に思い出したことをレーナに聴かせた。



「私はここにいるよ…?」


「あぁ…そうだな。お前はここにいる。すまんな、変なことで起こしてしまって」


「ううん。それにもうすぐ朝だし」



時計を見ると、時刻は午前4時を回った所だった。



「もう朝か。う~ん……今寝てしまうと起きれない可能性が出て来るな」



颯太はそこで閃いた。



「よし、ランゲージにでも行って時間潰すか」


「それがいいね。今起きちゃうと皆に迷惑かかっちゃうし」


「フリーマップとか行ったことなかっただろ?行ってみようぜ」


「うん!私海のマップ行ってみたい!」


「んじゃ、海のフリーマップ行くか!」



颯太が見た夢はかつて神器となる前の少女の記憶だった。

それが何故夢となって彼の世界を侵食したのかは分からない。

もしかしたらリンクしたことによって少女が記憶の果てに置いて来てしまった記憶を掘り起こしてしまったのかもしれない。



『あの夢はなんだったんだろう……』



颯太は海ではしゃぐ少女を眺めながら先ほど見た夢に想いを馳せる。


もう記憶に靄がかかってほとんど思い出せないが、レーナは誰かと物を作っていた。

しかし、それはまだ作りかけで――――――それで…それで……―――。



「はぁ……そこまで気になる夢だったのか?」



颯太は難しい顔をしながら顎に手を当てて考える。

もちろんそれで何か変わったりなどしないのだが。



「まぁいっか」



そして思考を放棄した。



「お~い!後ろにモンスターがいるぞ~!」


「うわああ!?そ、颯太早くインストールしてー!!」



楽しそうにしていた顔が焦りに変わり、レーナは慌てて颯太の下まで走ってくる。



「よし!行くぞ!!」


『オーケー!私の楽しい楽しい時間を邪魔した罪は重いよ!』



黒い大剣を握った颯太は海から上がって来たワニのようなモンスターへと駆け出した。

最近かなり忙しいまた太びです。

休み気分がまだ残っている感じですが、頑張って1月を乗り切りたいと思っています。

そして1次選考の結果発表が1月終わりということもあり、既に緊張しています。

まぁ初めての投稿なので、結果はお察しのような気がしますが、それでも自分の実力がどこまで届くのかを知る機会にしたいと思っています。

落ちたらどうしよう。また新しい小説を書くしかないのかな……?いや、それだとこちらが疎かになってしまう………となると、もしかして最初で最後のチャンスになるのかな?wwあらら?ww

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