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敏捷値が高い=強い(旧題ランゲージバトル)  作者: また太び
5章 青の領域と赤の領域(続)
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勢力戦勃発3

しばらくしてクレア達が無事帰還し、それぞれの席に着いた彼女らは疲れている様子だった。

颯太と詩織はそうでもないが、クレア達は今も無言でテーブルに置かれたカップや天井を見ている。

加山がクレア達に撤退の伝令が届くまで要した時間が30分。そして前線を安定させるためにそこから更に1時間戦い抜き、後続に引き継ぎながら走ってここまで帰って来たのだ。疲れるのも仕方がないことだろう。



「ただいま戻りました」


「おかえり、颯太」


「あ、おかえり。確か颯太はコーヒーで良かったよね」


「ありがとう」



加山に戦況を聴きに行っていた颯太が帰ってくるとレーナと詩織だけが声をかけてくれた。



「颯太、戦況はどうなっている」


「はい、今現在の戦況ですが、青が若干有利のようです」



クレアが息を吐きながら颯太に尋ねる。



「そうか」



それだけ言ってクレアは帽子を深く被って目を瞑ってしまう。そんな様子のクレアが気になっていることを見抜いた香織が隣に座った颯太に耳打ちする。



「クレアさん……他のグループに被害が行かないようにスキルを連続で使って精神的に疲れているの…」


「あぁ…なるほど……」


「なぁ颯太、銀二って人のとこはどうなんだよ?」


「銀二の所はかなり強い人達が集められている事から結構善戦しているみたいだ」


「ま、今日は初日だよ。これからこれから」


「赤の力量が全然分からないものね」


「まぁガイエンとシンがいないだけいいんじゃない?」


「ユキナには分かるのか?」


「うん。だって同じ四神だし、近くにいれば分かるよ」


「今日はもう出撃しないんだな?」


「ええ、緊急の事態が無い限り」


「少し席を外す」



クレアは帽子を深く被ったまま部屋を出て行ってしまった。それを見た滉介も無言のまま部屋を出て行く。



「クレアさん、相当疲れているみたいだね」


「これじゃこの先もたないぜ?」


「加山さんの判断は正しかったみたいだな……」


「何か考えないといけないわね……」



颯太はメンバー配置を考え直す事にした。




「どうした滉介少年」



クレアの後をついて行くと見晴らしのいい場所に出た。

この拠点から周りを全て見渡せそうな場所には今日も気持ちのいい夜風が吹いている。



「何となくアンタの後をついて来ただけだ」


「ストーカーだな」



クレアはそう言って小さく笑う。滉介は遠くで見える戦いの景色を眺めながらクレアに歩み寄る。



「なんであんな力の使い方をしたんだ?」


「ん?あぁ、それは自分が出せる限界っていうものを見てみたかったんだ」


「精神力を消費するスキルの限界か?」


「私のたった1人の友の話しをしよう」


「ん?えっと、それはこの世界のことか?」



自分の質問に答えず突如始まったクレアの話しに滉介は少し面食らう。



「そうだ。確か年齢は颯太より1つか2つ下だったな。あぁ、先に言っておくが、ちゃんと生きているぞ」


「この世界で人を殺す事が出来るのはレーナだけよ」


「なんだ、起きていたのか」



滉介の背中からひょっこり現れたリーナはクレアの隣に座って遠くの戦いを眺める。



「それで彼女の神器は精神ばかり使うものでな、いつも息を切らしながら私と日々力を高め合っていたよ」


「アンタがたまにいなくなる時はそのフレンドと会っていたんだな」


「おっと、バレてしまったか。まぁ別に隠すようなことではないのだが、どうも彼女は人見知りの傾向が強くてね。何故か私以外の人には懐かないんだ。恐らく颯太達に言えばティア辺りが紹介してくれっていいそうだしな」


「だから皆にも内緒で会っているのね」


「彼女がログアウトするほんの数十分だよ。そしてその数十分の間に何時間にも思える戦いを何度も繰り返す」


「アンタが強い理由が分かった気がしたな」


「ふふ、今度私の友人と会ってみるかい?」


「俺がか?」


「あぁ、君だ。何故だろうな、君なら会ってくれる気がするんだ」


「滉介はボッチだもんね。ボッチ同士なら分かり合えるんじゃない?」


「ボッチは関係ないだろ。俺は好んでソロプレイヤーとして生きているんだ」


「ならどうしてレーナのグループにいるのよ」


「効率の問題と精神的な問題だ!」


「ふふふ、君達は仲がいいな」


「そう?」


「アンタは神器と仲が良くないのか?」


「そうではない。まぁお互い喋りたがり屋というわけではないのだ」


「意外ね」


「そうかな?実はこう見えて私はつまらない人間だぞ」



クレアは夜空に浮かぶ美しい星を見ながら独り言のように呟く。



「それなら俺はアンタよりもつまらない人間だと思うがな」


「そう切り返してくるか。なるほど、ネガティブさでは負けないと」


「そうね。ホント滉介は無趣味すぎて困るわ。ねえ、レーナのとこはどんな生活をしているの?」


「お前ら……」


「ふむ……颯太も自分のプライベートを語るような人間ではないのだが、最近は確か颯太の父親がレーナにゴルフを教えていると言っていたかな」


「ご、ゴルフ?あのレーナが?」


「あぁ、ご本人が熱心に語っていたことだ」


「へえ?お前ら神器ってスポーツとか出来るのか?」


「出来るわよ。神器専用のネットワークに繋いでルールやプロの選手のモーションを真似ればちょちょいのちょいよ」


「それなんだが、レーナは神器専用のネットワークを使っていないようだ」


「え?なんで?あれ凄く便利よ?人間社会を知るためにも、色々な情報を仕入れるためにも神器には必要不可欠のものよ?」


「見たものを感じ、触れて、そして自分の情報にしたいと言っていた」


「なによそれ……まるで人間みたいじゃない……――――理解出来ないわ…」


「…………君らは人間だぞ。間違いなくな」


「何を根拠に言っているのかしら。私達は人間に作られたデータよ?」



少し悲しげに言うクレアにリーナは混乱するだけだった。



「アンタ、何を知っている?」


「何を知っているんだろうね」


「誤魔化すのか」


「さぁね」


「………まぁいい―――俺は巻き込まれたくないからな」


「ねね、さっきのフレンドの話しの続きをしなさいよ」


「ふむ、何を語ったらいいものか……」


「んじゃ、俺から質問しよう。何世代目の神器を使っているんだ?」


「2世代目の神器だ。確か名前はガンドレアと言ったかな」


「ガンドレア………リーナは分かるか?」


「ええ、全身機械の獣よ。なんだか身体にごちゃごちゃ武器くっ付けていて、ミサイルとかレーザーぶっ放すヒョウね」


「ヒョウがモデルなのか」


「神器と一体化する特殊な神器だ。2世代目の神器だから火力も高く、尚且つ無属性に属す珍しい神器なんだぞ」


「無属性なのか……それはやりづらいな」



神器には属性が付属されている。炎、水、雷、土、氷、聖、闇の7属性。炎は氷に強く、氷は雷に強く、雷は水に強く、水は土に強く、土は炎に強い。そして聖と闇はお互いの弱点をつける属性になっている。

しかし、この7属性の他に稀に無属性という弱点がない神器が存在するのだ。

無属性の神器最大の魅力は今言った通り弱点がないことと、闇、聖を除く属性を扱うことが出来る事にある。

その全属性を扱うことが出来ることについて細かく説明すると、つまり攻撃スキルに5属性のどれかを纏わせることが可能なのだ。

クレアのフレンドの少女はそのことを“トリガーシステム”と呼んでおり、プレイヤーが任意で攻撃スキル使用時に属性を決めることができ、腕が上達すれば常に相手の弱点をついた行動をとることが出来るのである。


だが、無属性には一つだけ欠点がある。

それは精神の消耗が著しく激しいという欠点だ。無属性のスキルの9割方精神を消耗するスキルであり、分かりやすく言うのであれば香織の精密射撃を常に発動しているようなものである。

だから長期戦には向かない。瞬間的な火力を見るのであれば神器中トップクラスに躍り出る事も出来る。しかし、それはあくまで瞬間火力だ。つまり長期的な戦闘になれば真っ先にダウンしてしまう燃費の悪い神器なのだ。



「まぁ私も能力で炎属性のダメージを6割カットすることが出来るからお互い様なのだよ」


「アンタが敵じゃなくて本当に良かったよ」


「ふふ、幸運に思うといい」


「でも滉介、12月の最後になればクレアも敵よ」


「あぁ、その時は全力で倒しに行くさ」



ちなみに他の神器の属性は言うまでもないような気がするが、一応載せておこう。

レーナはぴゅあでダーク☆な誰もが認める闇属性。

ボルケーノは見るより明らかな炎属性。

アルテミスはこう見えて実は雷属性。

琥太郎はアイエエエエ!?忍者ナンデエエエエ!?というわけではなく、見た目からしてどう見ても闇属性。

ニヴルヘイムは言わずとも分かる氷の女帝ということで氷属性。

リーナは性格が若干小悪魔だが、心はとってもピュアな聖属性。

ビャッコはアルテミス同様疾風迅雷の雷属性。

ゲンブは大地を操る力を持つ土属性。

セイリュウはまだ登場していないが、一応水属性。



「私は別に願いなどないのだが……」


「確かに、なんだかアンタは日々の生活に満足しているようだ」


「そうだな……――――――この世界にやってきたプレイヤーの大半がこれと言って重要な願いなど持っていないだろう。お金持ちになりたいとか、あれが欲しいとか、有名になりたいとか、努力すればほとんど自分の手で掴めるようなものばかりだろうな―――――滉介少年は何か願いごとでもあるのかな?」


「俺か……俺は……―――」



滉介は言葉に詰まった。それを見たクレアはクスリと小さく笑い、視線を戦場に戻す。



「ふふ、まだ決まっていないようだな」


「そうみたいだ」


「颯太は決まったのかしら」


「ん?颯太か………颯太はレーナを救うとか言っていたような…」


「レーナを?どういう意味かしら…」


「詳しくは言えないが、レーナと本物の家族になりたいという事だろうな」



そう言ってクレアは点滅するFDを操作しながら立ち上がり『では、友人が呼んでいるのでな』と拠点を後にした。



「レーナを救う……か…」


「クレアもなかなか謎めいた女ね~」


「……そうだな…」



滉介の頭の中に浮かんだ漠然とした想い。それはこの世界に対する疑問と颯太というプレイヤーに対する興味。



「滉介?どうしたの?」


「あ、いや、何でもない」


「クレアの言葉が気になったの?」


「まぁな…」


「余り首を突っ込んでいい話題ではなさそうだけれど」


「…………少し気になった程度だ。気にするな」


「そう」



滉介から興味を失ったリーナは足をバタバタさせながら遠くで上がる戦火を見つめる。


今前線で約3000のプレイヤー達が戦っている。下では生成されたばかりのストーンゴーレムの行列が前線へ向けて歩き出し、その近くを他のプレイヤーが怒声を上げながら指示を飛ばしていた。

人手が足りないやら、回復ポーションが足りないやら、壁のストーンゴーレムはまだかとか、皆慌ただしく動いている。



「なぁ、変な事を聞いてもいいか?」


「なにかしら」


「お前は、俺の家にいて楽しいか?」


「………本当に変な質問ね」



リーナは立ち上がり、その白いドレスが風に舞う。



「そうね。楽しい楽しくないと言われれば――――楽しくないわね」


「…そうか」


「がっかりするのなら人の話を最後まで聞いてからにしなさい」



少しだけ肩を落とした滉介を見たリーナは猫のように可愛らしく笑う。



「あなたがどういう意図を持って私にこんな質問をしたのか分からないけれど、監禁にも近いあの部屋の中で楽しいと答える方がおかしいわ。いいこと?私を楽しませたいのならあなたが努力すべきなの」


「努力って……」


「はぁ……あなたって本当に人付き合いが苦手なのね」



真剣に悩みだした滉介にリーナは思わず額に手を当てる。



「いいわ。今から言うことを今月中に実施すること」


「なんだ?」


「わたくしをプールに連れて行きなさい!」


「ぷ、プール?」


「ええ、日本はこれから猛暑になるわ。その暑さから逃れるためにも涼しい場所に行きたいの」


「部屋にエアコンついているじゃないか」


「そういうことじゃないの!遊べる場所で尚且つ涼しい場所に行きたいの!海と言われないだけましだと思いなさい!」


「あ、あぁ……分かった。プールな?確か今月オープンのテーマパークがあったはず」


「それよ!そこに行きましょう!実はわたくし、水で遊ぶの初めてなの!」


「そうなのか。まぁ、とにかくそこでいいんだな?」


「ええ!楽しみだわぁ……」



テーマパークに想いを馳せるリーナはここまで来てふと気付いたことがある。



「でも、どういう風の吹き回し?あなたがわたくしを外に出すなんて」


「なんでだろうな……何となくお前と遊んでみたいと思ったんだ」



その滉介の答えにリーナは一瞬きょとんとするが、すぐに優しい笑みを浮かべて『そう』と答えた。

正月気分も抜け、やっと今年も始まるのか~と思い始めています。

皆さんはどうお過ごししていましたか?私と言えばゴロゴロですねぇ……朝起きれば無言でコタツの前に座り、みかんをむき、そして駅伝をぼーっと見る。

それを実家の犬は隣でみかんを貰えないかじっと私の手元を見ているんです。

まぁそんな感じで正月は寝正月となりましたが、目的がないとここまで人間というのは堕落するもんなんだなと改めて実感しましたよ。


さてさて、自堕落な正月を過ごしていた私ですが、ランゲージの方はまだまだ終わりは見えません。

こんな私の話を見ていてくださる皆様方のためにも話を書き続けて行きたいです。

どうぞ、今年もランゲージバトルの方もよろしくお願いします。

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