クレアの相棒
「オオ―――!!オオオオオオオオッ!!!」
「――――ちッ!お前もスーパーアーマー持ちか!」
クレアの攻撃スキルとスノーウルフのスキルがぶつかり合い、お互いの身体にダメージを受けながらすれ違う。
そしてクレアがクルリと自分の後方へ振り返る。
「ガルウウウッ!」
「まだ速度を上げて来るか!面白い!」
自分が予想していた距離感が外れ、クレアは自分の周りに氷の礫を浮かばせながら更に後方へ下がる。
しかし、次の瞬間スノーウルフの姿が掻き消えた。
「なッ!?上か!」
まるでドリルのように回転しながら上から迫るスノーウルフの攻撃をクレアはダメージ覚悟でこちらもスキルを発動して強引に攻めに行く。
「切り裂けッ!」
クレアの周りに浮かんでいた氷の礫が大剣の振り抜きと共にスノーウルフに飛んで行く。
そして大剣の軌跡からは氷の斬撃が生まれ、空中を凍てつかせるように斬撃が制止する。
「くッ!スーパーアーマー同士はやりづらいな!」
氷の礫、氷の斬撃を受けても尚も止まらず回転し続けて弾丸のようにクレアを貫いたスノーウルフは地面を抉り、くるっと宙で1回転してから綺麗に着地する。
「ガアアアアッ!」
雄叫びを上げ、自身の攻撃力を底上げしたスノーウルフはその場で1回転すると、なんと大きな竜巻が巻き起こる。
「そんなもので私を倒せると思うな!」
クレアの声に呼応するかのように空を引き裂いて飛来してきた2つの氷塊が竜巻を押し潰す。
「砕けろ!」
クレアは叫んだ。
それに反応したのは竜巻を押し潰した2つの氷塊。氷塊はバキバキと鈍い音を立てたかと思うと、瞬く間に砕け散り、近くにいたスノーウルフの身体に矢のように突き刺さる。
「グルッ!?」
「その隙は見逃さん!アイスコフィン!」
クレアは走りながら氷の檻を出してスノーウルフを閉じ込める。
閉じ込められたスノーウルフは激しく抵抗を始めるが、なかなか壊せないようだ。
「氷塊!」
氷塊を出すと同時にクレアは空高く飛ぶ。
「ノールンスマッシャーッ!!」
天高く振り上げた氷の大剣に荒れ狂う氷風が包み込む。
「暴れるなよ?氷塊よ!砕けろ!」
今も檻を押し潰そうとする氷塊にクレアが生み出した突風が命中すると氷塊は砕け散り、檻に雨のように氷の礫が降り注ぐ。
「行くぞッ!」
クレアは死の氷風を纏う大剣を地上へ落下しながら檻ごと切り裂くつもりで振り下ろした。
ザン―――――ッ!!!
檻は紙のように切り裂かれ、中にいるスノーウルフにも大剣のスキルダメージが入り――――
「こいつが本命だッ!!」
次の瞬間まるで封印が解かれたかのように飛び出した氷風が大地を深く抉った。
「な、なんだッ!?」
『ニブルヘイムの……ノールンスマッシャー…』
「はぁ!?この音はクレアさんが起こしたものなのか!?」
それはクレアの所へ雑魚を行かせまいと遠くで奮闘していた颯太の耳にもはっきりと聞こえていた。
「キャンッ!」
スノーウルフは大剣のダメージと絶大な威力を誇る氷風に引き裂かれ、地面を数回バウンドしてから冷たい雪原に身体を激しく打ち付けてやっと止まる。
「まだ5割も残すか。お前は本当にタフだな」
「グルルル…!」
右足が全く動かずもがく事しか出来ないスノーウルフは大剣を担いで近寄って来たクレアを睨めつける。
「なぁ、お前。私のものにならないか?最初はこのナイフで止めを刺す予定だったんだが、今の状況を見て気が変わった」
ナイフを取り出したクレアを見たスノーウルフの表情が強張るが、なんとクレアはその場でナイフを捨てて見せた。
そして代わりに取り出したのがモンスターテイム用のエサだった。
「なんだろうな。ナイフの方が明らかに楽だと今も感じている。だが、これからお前と一緒に冒険する事を考えたら相棒を傷つけるのはどうかと思ってな」
くすりと笑ったクレアは手の平にエサを乗せると、スノーウルフ顔の前まで持っていった。
「ガウッ!!!」
「ッ―――!!」
噛みつかれた。今の攻撃でクレアのHPが危険域を知らせる点滅を始めたが、彼女はじっと動かずしゃがんで手を突きだしたままだった。
「ガ………ルルルル…」
「さぁ、食べてくれ。余り痛いのは嫌なんだ」
クレアの腕に噛みついていたスノーウルフは口を開けて彼女の腕から離れると、しばらくの間じっと手の平に乗せられたエサを見ていた。
「私と行こう。君を最強のモンスターにしてやる!」
「オンッ!」
クレアの言葉に頷くようにスノーウルフは手の平に乗せられたエサを舌でペロリと綺麗に平らげた。
『テイム完了。識別モンスター:スノーウルフ☆』
「オン!オン!」
「ははは!顔を舐めるんじゃない!」
クレアのテイムモンスターになった瞬間彼女に飛びついたスノーウルフは嬉しそうに顔を舐めはじめた。
「そうだ、名前をつけてやらんとな。さてどうしたものやら……」
「クウゥン…?」
「よし!お前の名前は今日からフェンリルだ!ニヴルヘイムの北欧神話繋がりだぞ!光栄に思うがいい」
「オオオンッ!」
「うお!?ち、力が強いな!」
「クレアさん!さっきの音は―――って終わっていたか」
『急いできたけど、既に終わっていたみたいだね』
「おいおい、どれだけ舐めるつもりなんだ」
「ワンワン!」
颯太が駆けつけた先には主の顔を一生懸命舐めるフェンリルの姿が広がっていた。
どうも!また太びです。
今回アップしてから気付いたのですが、文字数2000文字ちょいしかなかったですね。
『あ~短いかな~?』なんて思いましたが、とりあえずあげてしまうことにしました。本当は前回の話と一緒にあげたかったというが本心でした。ですが、そうすると1万文字越してしまうような気がしたので、改めて話を見直すのと話の区切りを考えたらこういう形になってしまいました。




