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輝光の騎士団の会議2

「それじゃ、少し出来るまで待っていてね」


と、それぞれのメニューを頼んだ後香織にそう言われて、颯太は暇つぶしを考えていた所にクレアがやってきた。



「颯太、少し話をしよう」


「ん?了解です」



皆がいる厨房から廊下に出たところでクレアは口を開く。



「今朝ここに来る時に詩織と竜也で今日の話し合いについて軽いおさらいをしていたんだが、そこで竜也は面白い事を言ってな」


「面白いこと?クレアさんの面白い事は大体ろくでもないことなんですが」


「まぁそういうな。それで面白い事だが、竜也はもしランゲージバトル内に閉じ込められたら、という言葉をぽつりと漏らしてな。これは流石に神器達の前で話すわけには行かない」


「ランゲージバトルに閉じ込められたら…か………でも、強い衝撃をカードに送れば緊急措置として戻れますよね?」


「今回はその方法もなしとして考えよう。とにかく閉じ込められたらの話しだ」


「とりあえず皆出る方法を考えるのが自然だと思いますが」


「そうだな。だが、出られない。ログアウトも出来ないこの状況で何をすべきだと考える?」



クレアと颯太は外の庭園に出ると、花の蜜を吸いに来た蝶々で溢れかえる花壇へやってくる。



「運営に問い合わせるしかないと思いますが」


「しかし颯太。閉じ込めるような事をする運営に問い合わせたところで無意味だと思わないか?」


「あ、そうですね……んじゃ、どうすれば…」


「ふむ、確かにそこで行き詰まるのも分かる」


「クレアさんの考えは?」


「私の場合とりあえず落ち着くところから始める。難しいだろうがな」


「落ち着くことは大事ですよね」


「そして次の行動だが――――突拍子のないことを言う。まぁとりあえず聞いてくれ」



クレアは至極真面目な様子で颯太を見てからそう言った。



「こちらから運営側に攻め入る、というのはどうだ?」


「え?ええ?運営側にですか?」


「それ以前に運営側に行く道筋やらなんやら何も分からない状態なのだが、とりあえず目標としてはそれが妥当なのではないかなと思ってな」


「そうですね。運営側からアクションがなければ直接こちらから乗り込むしかないですよね」


「現実世界から乗り込むという選択肢もあったが、相手の本拠地は海外にあるかもしれないこの世界の中で、一番現実的じゃない事から候補に入らなかった」


「そもそもその時は既に俺達はランゲージに閉じ込められているわけですし、現実的じゃないですね。まぁあのゲーム自体現実的ではないのですが」


「それもそうだな。自分たちが置かれている状況がとても現実的ではない事くらい皆分かっているはずさ」



クレアは歩き出す。それに着いて行く形で颯太も歩き出す。



「先ほどの話し合いで私は以前に知り合いの大学教授にランゲージバトルについて聴き回っていたと言ったな」


「ええ、クレアさんはそんなに人脈が広いのかと驚きましたが」


「いや、最初に訪ねた先の大学教授の人脈が豊かだったのだ。それを綱渡り上に色々な大学に足を運んでいただけだ」


「で、結果は?」


「何も分からなかったよ。そもそもそんな技術が出来上がるのはあと数百年かかると言われた。小型化、そしてそれを一般人にも行き渡るようにする一般化。それもあんなカードだぞ?とてもじゃないが、現実的じゃないと馬鹿にされたよ」


「カード一枚でダイブですからね。兄貴も驚いていました」


「君のお兄さんは何をしているんだ?」


「大手ゲームメーカーの社員でしたね。名前は忘れましたが」


「自分の琴線に触れない物に対して無関心なのは颯太らしいな。君は中学の頃から何も変わっていないな」


「はい?」


「いや、何でもない。それで、私たちの知り合いでランゲージバトルに参加していない者以外に知っている者は?」


「後は詩織の姉である恵理さんくらいですかね」


「あぁ、ランゲージバトルの記事を見つけたという女性か」


「もちろん恵理さんには俺と詩織が襲われた事は知りません」


「賢明な判断だ。いらん知識を持つとろくな事がないからな」


「クレアさん、どうして俺だけに?」


「ん?それはまぁ………ん?何故だろう」


「い、いや俺に聞かれても…」


「まぁ君が一番話しやすいからだろうか。香織と竜也はゲームの初心者だから除外するとして、詩織はああ見えて繊細なところがある。変に話を吹き込むとパニックになるかもしれないと恐れた部分が大きい」


「クレアさんはよく見ていますね。兄貴以外に尊敬した人は初めてです」


「ふふ、照れるじゃないか」


「っていいながら抱き付かないで貰えますか」


「まぁまぁ私の胸の感触を背中で味わいたまえ」


「気にしないでいようとしていたのにわざわざ言わないで貰えますかね!」


「颯太もやっぱり中身は年相応の男の子だな。そういうの私は好きだぞ」


「くッ、これだから年上はやりづらいんだ…!」



その後、昼食が出来たことで呼びに来た詩織にジト目で見られて颯太はやっと助かった。



「颯太!バスケのコートがあるんだぜ!食事後の運動と行こう!」


「マジかよ……てか、お前ライフル射撃部なのに動けるのか?」


「おいおい、俺はこう見えて運動は出来る方だぜ。文科系の部活だからってそれは偏見だ」


「へえ、ならやるか」


「おお、颯太と竜也がバスケをするのか。アルテミス、紅茶を用意してくれ」


「かしこまりました」


「クレアさんが今さらっとアルテミスをコキ使った……」


「いいじゃない。アルテミスはメイド服気に入っているみたいだし、メイドの仕事も覚えたそうよ」


「ボルケーノもやろうぜ!」


「いいのか?我が入ったらダンクを決めてしまうぞ」


「はっ!神器使いの特権だ!」


「お前卑怯だぞ!ならこっちは琥太郎!カモン!」


「ふっ、颯太殿との共闘か。面白い」


「えええ?琥太郎なんかやる気に満ち溢れていない?」



竜也と颯太はボルケーノと琥太郎を連れてさっさと厨房を出て行ってしまった。



「むう、私もやりたかったなぁ…」


「レーナは背が小さいからな。今回は私達と一緒に颯太の活躍を見守ろうではないか」


「お嬢様、テーブルも用意いたしますのでしばらくお待ちください」


「分かりました。でも、出来るだけ急いでね」


「はい、もちろんでございます」



執事の者にそう答えて香織は先に行ったクレアの後を追う。



「慣れないなぁ……なんだかお友達がお嬢様っていう現実感」



詩織はそう言って皆に着いて行った。



「決めろ!ボルケーノ!」


「むんッ!」


「琥太郎!」


「心得た!!」



竜也からパスをうけたボルケーノはダンクを決めるために高く飛び上がる。そこでいち早く気付いた颯太が琥太郎に呼びかけると、彼は煙に紛れて消え、次の瞬間ゴールの真上に現れてボルケーノが握っているボールをかっさらう。



「颯太殿!」


「ナイスカットだ!」


「なに!?」


「それありかよ!?」



琥太郎はそのまま空中で身を捻ってボールを颯太へ向けて投げる。

ゴール目前でパスを貰った颯太はそのまま飛び上がってゴールにダンクシュートを決めた。



「わーい!颯太が決めたー!!」


「おお、流石だな、颯太は」


「初めてダンクシュート見たわ…」


「琥太郎凄いね…」


「しかし、神器能力使用はありなのですか?」



優雅に紅茶を楽しんでいる女子たちは男子4人のバスケを観戦していた。

最初こそは真面目にバスケを楽しんでいた4人だったが、段々ボルケーノの凄まじいフィジカルにイラついて来た颯太が琥太郎の能力使用を認めたのである。



「琥太郎のはなしだろ!?どこにいようが必ず守りに入れるじゃねえか!」


「それを言うのならボルケーノの鉄壁さだろ。ボール持ったら取り返せないぞ」


「面白くなってきたな、琥太郎よ」


「これで貴様とも五分五分というものよ」


「ほら見ろ。琥太郎とボルケーノはやる気満々だ」


「よ、よし!ボルケーノ!龍の姿で相手してやれ!」


「それこそなしだ!!!」



異次元バスケになり始めた男子のバスケに女子たちは苦笑いをしながら見守っていた。



「レーナ、君とゆっくり話す機会がなかったからこの際質問させて貰うが、少しいいか?」


「いいよ?」


「ランゲージバトル初期の闘争はどうだったのだ?」


「ん~酷いもんだったね~。覚醒スキルに目覚めたもん勝ちだったし、何より1世代目と2世代目の時代だったから、バトルアリーナになると地獄絵図だよ」


「ボルケーノもそこにいたか?」


「いたよ。でっかい炎の魔神イフリートと戦ってた。ボルケーノの覚醒能力はでっかいドラゴンになる能力でね、使うと誰にも負けないほど強かった。私も1回だけ負けちゃったし」


「ほう、ボルケーノは相当強いんだな」


「うん。だからボルケーノは好き。死なないし、強い。多分今回のランゲージバトルの優勝候補じゃないかな~。竜也次第だけど」


「兄さんは凄い神器を引き当てたのね…」


「初期を生き抜いてきた覇者だもの。あの頃に破壊された神器は数知れないし、そのせいで私の周りはほとんど欠番だらけ」


「神器コアだったか。それを破壊されると神器は一生生き返らないんだってな」


「ボルケーノは私の一番古いお友達。だから死んでほしくない。死んだら、寂しい…」


「大丈夫だ。竜也は強い。きっとボルケーノをうまく操って見せるさ」


「うん…」



クレアの声にレーナは小さく頷いた。



「どあああ!?火を吹くなぁあああ!!」


「ふっ、涼しい程度に抑えた」


「それでも火は火だろうが!いやいや、熱いわ!!」


「颯太殿、火炎陣の許可を」


「それは流石にダメだ!」


「おらおら!攻めて攻めまくるぜええ!」


「なんか俺が知っているバスケじゃなくなってんだけど!?」



「颯太達は楽しそうだな」


「颯太が疲れているだけに見えるけど」



クレアは微笑みながらそう言ったが、詩織は冷静だった。




「あ~疲れた」


「さて、話し合いも後半戦だ」



休憩の時間も終わり、再び会議室に集まった皆はクレアの声に耳を傾ける。



「これはバトルアリーナの時に出会ったのだが、見たことがない神器に私と颯太は出会った」


「あぁ、滉介とリーナか…」


「誰?」


「レーナと瓜二つの神器だ」


「瓜二つ!?え!?姉妹か何か!?」


「さぁ?私はあんな神器知らない」


「滉介の方はともかく、リーナの方は敵意丸出しだったな」


「我も知らぬな。混沌と瓜二つとは」


「私が知らないんだから他の神器が知っているはずがないよ」


「我も一つ思い出したが、こちらも記憶にない神器に出会ったな」


「あ!だよな!あの岩女!」


「竜也の方でも出会ったか」



竜也も思い出したのか、ボルケーノに同乗するように言葉を口にする。



「倒したのか?」


「あぁ、もちろん倒してやったぜ」


「でも、その後兄さんが気を失って大変な目にあったのを忘れて貰っちゃ困るわ」


「…すまん…」


「6世代目以前の神器達が知らない新たな神器……仮に7世代目と名付けておこう。そこで颯太、その滉介という男と会えないか?」


「それは分かりませんよ。この前はたまたま城で会いましたけど、レーナが早く行きたがっていたのでろくに会話もしませんでしたし」


「なら今度のイベントで会えるといいな」


「敵なら色々面倒ですが」


「で、その神器は7世代目に当たる神器なのかしら?」


「可能性としては十分にありえるな」



香織の言葉にクレアは頷く。



「チート揃いの1世代目、1世代目のカウンターとして機能する2世代目、バランスに属する3世代目、ピーキーで扱いづらい4世代目、3世代目より少しテコ入れされた5世代目、トリッキーな動きを得意とする6世代目。んじゃ、7世代目はどうなるの?」


「戦った俺からすれば十分1世代目、2世代目と渡り合える力を持っていた。少なくともバランスとピーキーの線は捨てていい」


「俺と戦った蛇女も1世代目と戦って生き延びていたそうだからな。とにかく7世代目も厄介な世代だと思うぜ」


「運営側は何も言ってないわよね?その、7世代目の神器が出たことを」


「言うわけがないよ。今までそんな告知何てしなかったし、してどうするの?ランゲージバトルに参加する人は全員新規の人なんだよ」


「あ、それもそうよね…」



レーナに鋭く指摘されて香織は口ごもる。



「やはり7世代目神器を使っている者に直接聞くしかないだろう。緊急メンテナンスの終了は何時だったか?」


「今が14時ですから、終わるのはあと8時間後ですね」


「ふむ、なかなか長いな」



香織にそう言われてクレアは考える素振りを見せた。



「とりあえず皆のこれからの予定を聞いておこうか。颯太達はこれからテストだろう?」


「あたしは夏休み終わってからすぐかな。だからそこまで気にしてないね」


「俺と香織さんは7月終わりごろだ」


「ええ、夏休み入る前の一週間ね」


「俺もだな。まぁ、これで就活の仮評定が出るわけだ」


「なんだか余裕そうだな?」


「まぁ、既に親父の会社に入る事が決まってますから、気楽なもんですよ」


「決まっていると言っても入社試験はやるって言っていたじゃない。それに面接を受けにくる他の人たちにも迷惑なのよ?兄さんを入れるためだけに空いている枠を1つ先に決めてしまうのだから、本当は受かる人が蹴り落とされる気持ちを考えたことあるのかしら」


「うぅ……耳が痛いぜ…」


「そうだな。就活に命を懸けている若者たちが来るところが会社なのだ。その中で親のコネで入るという行為に対して自覚を持った方が良い。明らかに自分よりうまく喋れていた者が新入社員として入って来た時にいなかったら、それは君の枠に収まるはずの者だったと思うはずだからな」


「あ~3年生は大変だな」


「他人事みたく言っているけれど、私と颯太くんもあと1年後の話しなのよ?既に進路相談も始まっているじゃない」


「俺は大学に行くからいいんだよ」


「え…?颯太くん、大学いくの?」


「あぁ、やること見つかってないからとりあえず大学に行くんだよ。そういう奴多いだろ」


「へえ、あたしも大学に進む予定なんだけど、颯太はどこに行くの?」


「ん~…とりあえず経営を学べる大学かな」


「わあ!一緒!あたしも会計学学びたいから経営の大学に進むの!」


「目標がしっかりしているな……」


「颯太と一緒の大学生活かぁ……楽しそうだなぁ…」


「おい、俺はまだ詩織と同じ大学に進むとは言っていないぞ―――って聞いてないな」



颯太の声も詩織には届かず、彼女は夢見心地で何やら思いふけっている。



「クレアさんの方は?」


「私は特にないな。もし他の子が体調を崩して撮影に出られなくなった時は呼び出されるかもしれんが」


「あれ?休止しているんじゃ?」


「休止していても代わりに出ることはある。まぁマネージャーが分かってくれている人だから頻繁に呼ばれるって事はない」


「あ~そう言えばクレアさんはモデルだったな~」


「そうだぞ」



竜也が今更のように呟く。



「クレアさんすっごい有名なんだからね!」


「まぁ男子である竜也と颯太には分からないだろう」


「有名人といる実感がわかねえけどな」


「それでいい。私も腫れ物を触るようなよそよそしい態度を取られても困るからな」



クレアはクスリと笑い、そしていつもの表情に戻ると話を切りだす。



「これで皆の一通りの予定が分かった事だし、話し合いはここまででいいだろう」


「今日はこれで解散か」


「各自家に戻ったらもう一度今日話し合った事を思いだして頭の中で整理して欲しい。1人でいると頭が冴える者もいるからな」



そこでクレアはチラリと颯太を流し目で見た。



「だが、帰るのはまだ早いぞ。香織、いいんだな?」


「はい、既に材料は準備していますから」


「今日は香織の家でバーベキューと行こうではないか」


「あ、それいいね!!」


「颯太、バーベキューってなに?」


「皆で焼き肉をする事だよ。でも、本当にいいのか?」


「あぁ、構わねえぜ。正直友人を呼ぶなんて颯太達が初めてだからな。使用人の人たちも張り切っていたぜ」


「22時までメンテなのだ。ゆっくり楽しもうじゃないか」


「確かにそうですね」


「まだ外も明るい。私の家から持ってきたテレビゲームで遊ぼう」


「クレアさん準備いいねー!ふふ、どれも名作ばかり……!颯太!これやろ!」


「あぁ、やろう」



クレアが運んできた箱の中に入ったゲーム機とソフトを見て舌なめずりをした詩織は、ソフトを取り出して颯太に見せる。



「香織ー!どこのテレビ使っていいの~?」


「あぁ、こっちのリビングに大きなテレビがあるわ」


「ほいほーい!竜也さんも手伝ってー!」


「あいよ!」


「颯太はこっちを持っていってくれ」


「了解です」


「んじゃ、私はアルテミスと一緒に紅茶を淹れてくるわね。行くわよ」


「はい」



颯太は基本ソロプレイを好むプレイヤーだった。

だが、今こうして仲間に囲まれながらするゲームも悪くないな、とそう思えた。

ふう、24時間以内に何とか2話投稿することが出来ました。

丸々2話トークというのも初めての経験でしたが、何とか出来ました。

物凄く短いですが、眠気が来ているのでここいらでドロンです…

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