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レーナの怒り

「こちらで少し話を進めておこうか」


「そうですね。何も知らないまま話し合いに臨むのはよくないですし」



クレアが運転する車の中で彼女はそう話を切りだした。



「まぁ俺もそこまで知っているわけじゃないんですが、俺から言えることは颯太の状況ですかね」


「あぁ、それで構わない。私と詩織は颯太の身に起きたランゲージバトルでの出来事を知っている。それと竜也が知っている事を混ぜて話を繋げていこう」


「では―――――まずクレアさんの予想通り香織がカードに触れたら颯太はこっちの世界に戻ってきました」


「ふむ、まぁそれは事前に颯太自身から確認が取れていた事だ。私も目の前で颯太がログアウトするのを見たことだしな」


「変な話だよね~。私もさ、話し合いするって言うから昨日部屋に戻ってから説明書読んでいたんだけど、ログアウトに関する項目にそんな裏ワザ載ってなかったよ?」


「恐らく不正ログアウト防止のためだ」


「あ~なるほど。言われてみればそうかも」


「不正ログアウト?」


「そうだ。まぁこの方法は第2者の存在がなければ出来ないが、竜也も知っている通りダンジョン、またはクエスト中はログアウトが出来ない事は知っているだろう」


「ええ、クエストエリアを抜けなればログアウトできませんね。メニューバーにあるログアウトが真っ黒に染まっていますし」


「そこでこの方法を使えば簡単にログアウトが出来るわけだ。デスペナルティを回避する方法としてな」


「デスペナを回避するのはいいですよね。5時間ステータス20%減少は痛いですもん」


「デスペナはまだ可愛い物だと思うぞ。もし、この方法が知れ渡ればバトルアリーナにも影響が出てくる。そうすればもうゲームとして成り立たなくなる可能性が出てくる。詩織、分かっていると思うが……――――」


「わ、分かっていますよ!それにランゲージ側から現実世界に伝える通信手段がないんですし、無理ですよ」



バックミラー越しにクレアから疑惑の目を向けられた詩織は、慌てて手を振って否定する。



「ならいいんだがな」


「しかし、あれですよね。もし、俺達がランゲージバトルに閉じ込められる、何て事態が起きたらどうすればいいんでしょうね。あっちがログアウト出来る権限を握っているわけですし」


「竜也……それは…」


「竜也さん…それ、凄く重大な事ですよ…」


「あ、あれ?俺なんかまずいこと言った?」



笑いながら言った竜也の言葉にクレアと詩織の表情が固まる。



「これは話し合わなければならない事が増えたな」


「ええ、早く香織の家に行きましょう」


「お?おお」




少しだけアクセルを踏み込んだクレアは、ナビに従って先を急いだ。



「こ、こんにちは…」


「よ、よう…」


「こんにちは、颯太さん」


「やっほー!」



颯太の家にやってきた香織とアルテミスは出迎えた颯太とレーナとあいさつを交わす。

だが、2人の神器は颯太と香織の様子がおかしい事に気付く。



「アルテミス、こっち」


「はい」



アルテミスを呼んだレーナは2人に声が聞こえない距離までやってくる。



「どうしたの…?あの2人」


「いえ、私にも分からないのですが、昨日からあんな調子です。混沌こそ2人の事情を知っているのではないですか?」


「ううん、あの後考え事するために外に出ていたんだけど、戻ってきたらアルテミス同様に颯太もあんな調子」


「何があったのでしょうか……」


「…………――――気に入らないね」


「はい?」


「気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない気に入らない……―――――」




「れ、レーナ達はどうしたんだ?」


「さ、さぁ……」




お互いの顔を見れない2人はしばらく無言の時間が過ぎる。



「レーナ?ほら、そろそろ行こうぜ」


「颯太」



何やらアルテミスと話していたレーナは颯太の前まで戻ってくる。そして今まで見たことがないような笑顔で微笑むと――――



ドス―――――ッ!!!



「がはッ!?」


「きゃあっ!!!?」


「混沌!?」



真っ黒に染まる刃が颯太の腹部を貫いていた。

血は出ていない。だが、颯太の身体は激しく痙攣してレーナに寄り掛かるように倒れる。



「颯太、最近だらしないよね。私もね、颯太に怒られてから極力怪我させるような事はしたくないんだけど、颯太はどうしてかなぁ?どうしてそんなに私を怒らせるような事をするのかなぁ?ホント気に入らない奴ばっか集まって嫌になる」



『気に入らない』と言ってレーナは一瞬だけ香織を睨み、視線を颯太に戻す。



「レーナさん何をしているの!?」


「ん?あぁ、お仕置きだよ。颯太が私から離れないようにするための。あ、香織が思っているような危ないことじゃないよ?颯太が怪我すると色々面倒だし、いつもより混沌を多く流して颯太の精神を苛めているくらいだから」


「目から血が出ているじゃない!やっぱりこの前颯太くんが学校で血を流していたのはあなたのせいだったのね!」


「あぁ、あの時かぁ……あの時はまぁ、私が悪かったかな。それで颯太に怒られたわけだし」


「混沌!今すぐ颯太さんを離しなさい!」


「なぁに?私とやるの?」



光の弓矢を構えたアルテミスが香織の前に立ってレーナと相対する。



「神器破壊はやったことないけど、ちょっと興味があるね」


「確かに私では2世代目の神器であるあなたには敵わないでしょう。ですが、相打ちに持ち込む事なら出来ます!」


「ちょっとアルテミス!?」



颯太から視線を外してゆらりと振り返ったレーナの手には颯太がいつも使う大剣が握られていた。



「どうしようか。神器コアをすぐ破壊するのはつまらないし、とりあえず足から斬っちゃおうか。そして動けなくなったところで体中のありとあらゆる骨を全部折って反応を楽しもうかな」



レーナの威圧に一瞬アルテミスは怯んだが、後ろに香織がいる事を思いだして自分を鼓舞して落ち着きを取り戻す。



「待て……レーナ」


「あ、颯太。3日くらい意識失う量の混沌流し込んだのに凄い精神力だね」


「アルテミスも俺は大丈夫だ……行こう、クレアさん達が待っている…」


「颯太くん本当にそれでいいの!?ねえ!?」


「俺が悪かったから……すまん、レーナ」


「うん!分かってくれればいいんだよ!」



ヨロヨロと歩き出した颯太の腕に抱き付いたレーナの表情は先ほどとは似ても似つかないほど可愛らしいものだった。



「アルテミス、もういいわ」


「……はい」


「颯太くんがいいと言うのならそれでいいわ。でも、あなたはいつでも射る覚悟でいて」


「承知しました」



光の弓矢が光の粒子となって消えていくなか、アルテミスは静かにそう答えた。

神器にはコアと呼ばれる心臓があります。

まぁ颯太たちが呼ぶカードと呼んでいるものですね。それが破壊されたりすると神器は再起不能となって完全破壊状態になってしまいます。


颯太が文庫本を開いたときに落ちたあの透明なカードはいわば神器を入れるための器です。

そこに神器のデータを入れることで初めてそのカードは肉体として機能します。

ランゲージバトルの戦いが終わればカードは自動消滅し、神器も元あるべき場所へ戻り、次の戦いまでしばしの休息を得ます。

ですが、完全破壊されてしまうとその神器の試験管は欠番となって永久にその試験管に神器が入ることはありません。


神器に肉体はあるのか、という事ですが、もちろん彼女らにも肉体はあります。

それはもう少し先のお話で語らせていただきますが、今は肉体がある。という事だけご理解いただければ幸いです。

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