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敏捷値が高い=強い(旧題ランゲージバトル)  作者: また太び
1章 ランゲージバトル
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初めてのパーティー戦

「よし、ログインっと」



今回も前の黒服に強制的に着替えさせられた颯太に合わせて黒で統一されたゴスロリ衣装を着て二人は再びやってきた。



「帰って来たね。昨日はゲート付近で終わっちゃったから今日は街探索にでも行こうか」


「そうだな。いつでも街全体の地図が見れると言っても自分で覚えた方がいい」


「颯太、手」



颯太は差し出された手を苦笑しながら握ってカナリアに第一歩を踏み出した。



「まずは街の中央に行ってみようか。露店も開かれているし、今度運営が実施するイベント内容も載っている掲示板もある」


「了解。さっきから注目されるのはやっぱり…」


「うん、私のせい」


「やっぱりか……ボッチにはなりたくないんだけどなぁ…」


「ごめんね……颯太には迷惑を出来るだけかけないようにしたかったんだけど…」



悲しい表情をするレーナに颯太は『慣れるしかないか』と思うしかなかった。

別にPVPを仕掛けて来られないのなら好都合だ。



「まぁなんて言うのかな。クマ避けみたいな、役割か?俺もまだ初心者なわけだし、他のプレイヤーから勝負を仕掛けて来ないのなら逆に儲けものだよ」


「面倒事に巻き込まれないのもいいかもね…」


「きにすんな。ギルドとか入れそうにはないけど、ソロプレイヤーとして生きて行く事にするよ」


「うん…」



いつも明るいレーナの反応に颯太は困ってしまった。



「元々俺と兄貴は一人で黙々やるようなゲーマーだったし、フレンドとかの付き合いもない。ただ結果だけを求めてランキングバトルに参加してたりしてたし、今回のゲームもそう変わらないさ」


「颯太は優しいね。私を必死に励まそうとしてくれたんでしょ?ありがとう」


「いや、その……まぁどういたしまして」



ぱあっと明るくなったレーナに颯太はほっと安心した。



「人が多いな」


「露店があるのはここの場所だけ。NPCに店番を任せてプレイヤーはレベリングかな」



中央エリアには魔物で言うドワーフのような小人が店売りをしていた。

颯太は何が並んでいるのか見て行く。



「強化結晶ばかりだな。これは神器を強化する結晶だろう?」


「神器を強くすることができる結晶。最大上限は20段階だけど、なかなか20段階の人はいないね。そもそも結晶を手に入れる事が難しいから、改造に手が伸びるようになるのは先かな」


「高いな。こんな小さな結晶一つ50万Gか」


「昔からこの相場は崩れないね。たまにイベントで入手できる時は相場が崩れたりするけど、大体この値段」


「露店を見て歩けるようになるのは当分先だな。何しろまだ俺は1万Gしか持っていない」


「それはクエストをこなすしかないね。報酬金でお金を増やしたり、クエスト中にある宝箱で一括千金くらいかなぁ」


「とりあえず今はレベルの事だけを考えよう。これから毎日同じクエストをこなしたりする可能性もあるから、退屈に思うかもしれない。だからって左目弄るのはやめてくれよ…」


「颯太と傍にいれば左目は弄らないよ。私だって颯太が強くなるのには協力するし、そんなクエスト中邪魔したりしないよ~」


「それが聞けて安心だ」



颯太は地図を操作してクエストを受けられる城に向かった。



「おりゃあ!!」



雪原に住む巨大なオオカミを斬り伏せると何百回目かのクエストを終了した。



『凄いやる気だね、颯太。一日だけで43まで上げるなんて』


「初心者は早く上級者に追いつかなきゃいけないんだよ。それで、皆の平均レベルはいくつなんだ?」


『大体60ちょいだよ。今年の参加者の募集を締め切ったばかりだし、まだ始まったばかりなんだ』


「へえ、追いつけそうだな」


『一番高い人で76ちょい。でも、始まったばかりだから制限がかなり厳しいと思う』


「運営も初心者の配慮が優しいな。俺もまだ低レベルだからこんなにガンガン上がるんだろうね」


『颯太はやりすぎなだけ…』


「そうか?結構面白くてまだまだ行けそうな気がする」


『でも、そういう表情が見られるから私もまだ付き合ってあげる』



子供のように剣を持って笑顔を浮かべる颯太に刀身に移るレーナが微笑む。



「帰ろうか。次はもっと相手のレベルが30レベルくらい上でもいい」


『私の剣の混沌流し込めばいちころだもんね』


「余りその能力に頼りたくないけど、モンスターには絶大な力を誇るな」


『たまに私の能力を無効化してくる奴もいるから侮れないけどね』 



颯太が何故ここまでレベルを上げられたかと言うとレーナの能力が大きい。

どんな相手でも剣に触れただけで死んでしまうこの能力の前にレベルも何もない。

たまにレーナの混沌が効かない相手もいるが、颯太の初心者とは思えない動きで無事乗り切る。



「ボスが一発で死んだときは笑えたけど」


『それだけ私の能力が強いんだよ。だから、運営側は何としてでも私を封印しておきたかっただろうし、ランゲージバトルに新規で参加するプレイヤーからも遠ざけたかった』


「でも俺はお前の封印を解いてしまったと」



城に戻った颯太はクエストを受注できる受付と酒場が一緒になっているテーブルに座る。



「封印を解いてくれた事は嬉しかった。でも、私の混沌を受け止められる人なのか確かめたかったの」



剣から人間の姿に戻ったレーナはNPCの店員にジュースを頼む。



「今まで俺の他に一緒に冒険した奴は何人いるんだ?」


「二人。でも二人とも私の能力を怖がってろくに反応もしてくれなかった。だから、殺した」


「そうだったのか……」


「颯太は優しい。私と会話してくれるし、能力も怖がるどころかむしろ有効活用してくれている。何度も言うようだけど、私は本当に幸せだよ」


「そうか……」



颯太はそう言ってレーナの頭を撫でた。

気持ちよさそうに目を細める彼女を見ていると、とても悪さをするような子には見えなくなってきた。



『レンジャートライアルの開始1時間前になりました。2名のパーティーを組んでいない方はモニターの「パーティーを組む」を押してください。既にパーティーを組んでいる方は「参加する」を押してください。なお、イベントに参加しないプレイヤー方は「参加をしない」を押してください』


「イベントか?」


「掲示板に載っていた奴だね。お金が儲かるイベントらしいけど」


「参加してみるか?お金はいくらあっても困らないしな」


「そうだね。恐らくパーティーを組んでいない私達はランダムで決まるのかな。相方は」


「俺達と組む人に少し同情しそう…」


「まさか混沌と組むとは思わないよね」



颯太は遠慮がちにパネルを押した。

押した瞬間場所が移動するのか、視界が真っ白に染まる。


キラン―――という音と共に誰かとパーティーを組んだ颯太は目を開ける。


そこは宝石が輝く洞窟だった。



「ここは洞窟か」


「いかにも一括千金が出来そうな場所だよね」


「パーティーよろしくお願いしま――――ってお前はまさか混沌!?」



後ろに振り返るとそこには腰を抜かす男がいた。

年齢は自分とそう変わらないと見る。身長は颯太よりも若干高い程度で、髪は燃えるように赤い。

その髪色に合わせてか、服装も赤色のものが多く、なんだか派手だなという印象を受けた。



「あぁ、よろしくお願いします。こっちはパーティー組むのは初めてなので、どうぞお手柔らかに」


「よ、よろしくお願いします」


「ね、颯太。これが普通の人間の反応なの。私が話を持ちかけようとすると怯えて話もしてくれないし、触ると震えるし、もう嫌になるの」


「そうだな……お前の気持ちが少しわかったよ」



颯太の服を掴むレーナは寂しそうに顔を逸らす。



「えっと、タツヤさんですか。タツヤさん、強制的なパーティーとは言え、俺達と組むのは嫌でしょうし、こっちはこっちで好き勝手やらせて貰います」


「あ、お、おう……」



馬鹿でかいランチャーを携えるタツヤは颯太の声にびくりとする。

その反応が寂しかった。



「でも、俺このイベントに参加するの初めてなので、少し教えてくれませんか?」


「あぁ、いいぜ。このイベントはな、道中のモンスターをいくら倒せるかで報酬の金額が増える。たまにキラキラ光るレアモンスターがいる時もあるから、出来るだけ殲滅して進むのは基本。最後は奥にいるでっかいモンスターを倒して終わりだ」


「なるほど、ありがとうございます」



颯太はタツヤというプレイヤーに礼を言うと彼とは離れた位置に座った。



「殲滅系か」


「私もこのイベントは初めてだからよく分からない」


「楽しそうだ」


「颯太本当に楽しそうだね」


「やっぱ表情を隠すっていうのは難しいな。どうも顔に出てしまうというか…」


「颯太は分かりやすいからね」



颯太とレーナが笑いながら話し合っている様子をタツヤは神器ボルケーノと見ていた。



「あれが混沌……普通の女の子じゃねえか」


『だが、あの小娘にやられたプレイヤーは多い。噂では気に入らない主すら殺すとか』


「少なくともあのソウタっていう男とは仲好さそうに見えるけどなぁ」


『アプローチをかけてみてはどうだ?興味があるのだろう?』


「まぁいきなり殺されるっていうのはないだろうし、せっかくパーティー組んだんだ。何かの縁だと思って話しかけてみるか」



タツヤは立ち上がった。



「地形が気になるな。足場が多かったら壁走りも出来そうだ」


「なぁソウタさん」


「はい?どうかしましたか?」



タツヤが話しかけてくるとレーナは颯太の後ろに隠れてしまった。



「あ、敬語はいらないぜ。パーティー組んだのも何かの縁だ。少し話してみたいと思ってさ」


「なるほど。皆はレーナに怯えているせいで正直ソロプレイは覚悟していたんだが、まさか話しかけられるとは思わなかった」


「その、混沌と一緒にいて何かされないのか?」


「何もされていないよ。まぁ最初眼球抉られたけど」


「抉られた!?」


「颯太を試しただけ。後は何もしていない。私、颯太のこと好きだもん」



背中から顔を出すレーナは頬を赤くしながら答える。



「ね?特に害はない。それにレーナのおかげで初日から結構レベルを上げられた」


「イベント聞いてきた事からソウタさんは始めたばかりなのか」


「まぁ本格的に動くのは今日が初めてかな」


「それでいきなりレベルが43だと!?化物かよ…」


「レーナの能力でどんなに強いモンスターだろうと一撃だしな」


「す、すげえ………もしかするとこのイベント一括千金出来るかもしれねえぜ…」


「ん?どういうことだ?」


「ここのイベントのモンスターは初見殺しでさ、とにかく硬いんだ。防御力が恐ろしくて、レアモンスターも諦めるしかないプレイヤーが多い」


「私なら防御無視の即死だから、いくら硬かろうと貫通するよ」


「俺のボルケーノは熱でモンスターを溶かしていくんだが、やっぱり時間がかかってさ」


「あ、ボルケーノなんだ。ボルケーノも久しぶり」



ひょっこり颯太の背中から出てきたレーナはタツヤの持つ真紅のランチャーを見て挨拶をした。


その声に反応したランチャーは姿が武器から人間に――――ならなかった。



「え!?ドラゴン!?」


「ボルケーノは私と同じくらい昔からいる神器。颯太は覚えないかもしれないけど、私の前にあった試験管にボルケーノの名前あったんだよ。中身はカラだったけどね」


「まさか主殺しの混沌がここまで懐くとは……」



それは真紅のドラゴンだった。

人間のように2本の足で立つボルケーノはレーナの姿を見て驚いていた。



「颯太は特別なの。私の混沌を流し込んでも平気な顔をする人」


「悪魔め…」



嬉しそうに語るレーナをボルケーノは侮蔑が混じった目を向ける。



「今回の戦いでは人を絶対に殺めない。殺しちゃうと颯太は悲しむ。私は颯太の悲しむ顔がみたくないの」


「どうやら今回の混沌は無害のようだ。よほどその男に心酔していると見える」


「ほう、俺はいい年に選ばれたもんだなぁ」


「選ばれた?あぁ、確かこれって募集した人数が全国で5万人だったか」


「選ばれた理由があるとか、ないとか」


「さぁ、私には分からない」


「我も分からん」



颯太とタツヤは自分の神器を見るが、一人一体は知らないという。



『まもなく、スタート5分前になります。皆さん、準備をしてください』


「おっと、そろそろ準備しようぜ」


「了解。レーナ、よろしくな」


「うん!」



颯太の左腕に抱き付くとレーナは剣に変身した。

タツヤの方もボルケーノを巨大な大砲に変身させてスタート地点に並ぶ。



「よし!無事親睦も深めたということで、俺は見ての通り後方支援だ」


「分かった。俺は前衛で斬り込む」


「改めてよろしく頼むな、ソウタ」


「あぁ、こちらこそ」


『颯太嬉しそう。声が弾んでた』


「あ、やっぱり?」


『それでは開始します。5・4・3・2・1―――スタート』


「うっしゃ――――ってはや!?」


「レーナ、どこまで速度は出せる?」


『颯太が望むのなら私はそれに応えるだけ』


「流石だ!」


「そこは大広間になっている!上がって来れないようになっているから気を付け――ってええ!?」


「いや、このまま蹴散らす!俺に構わず撃て!」



崖から飛び降りると宝石が一斉にこちらを向いた。

いや、暗くてよく分からなかったが、どうやらカニが宝石を背負っているらしい。

紺色のカニは赤やら青やらカラフルな宝石を揺らしながら颯太に迫る。



「ジュエリークラブか。数は――」


『数は50体。どうやらここで脱落する人が多い初見殺しみたい』


「なるほど」



颯太は地を踏み砕いてジュエリークラブの群れに飛び込んだ。



「おおおおおッ!!!」



ジュエリークラブが剣に触れた瞬間砕け散る。

青いポリゴンエフェクトを発生させながら颯太は暴れに暴れまくる。


ジュエリークラブが颯太を挟もうとした瞬間にはもう彼の姿は消えている。



「せいッ!!」



宝石の煌めきのように砕けるポリゴンが洞窟を華やかに彩る。



「こ、これが初心者の動きかよ……ありえねえ…」


『あの者、プレイヤースキルが恐ろしい程に高いな』



ランチャーを構えたまま固まっているタツヤは颯太の動きを茫然と見ていた。



「レーナ!一気に片づけるぞ!」


『了解!ガンモードで一気に薙ぎ払って!』



まだまだ洞窟の奥から沸いてくるジュエリークラブを見た颯太はレーナに呼びかける。

黒い電流が大剣を包むとまるで巨大な魚が口を開くかのように大剣がバックリと開く。

中から顔を出したのは巨大な砲身。既にエネルギーが充填されているのか、撃つのは今かと今かと待つようにバチバチ紫電を散らす。



「薙ぎ払えええええ!!」



撃ちだされた混沌の紫電の奔流を颯太は薙ぎ払った。

触れるだけで消滅する力を颯太は躊躇なく振るう。



「終わったな。タツヤ!次行くぞ!」


「おう!いや~すげえな!硬いも何も関係ないな!」


「たまに効かない奴がいてひやっとするけどね」



崖から降りてきたタツヤは颯太の活躍に感激しているようだ。



「タツヤ、次の場所は分かるか?」


「次からは狭い道がずっと続く。待ち伏せや地面に埋まっている奴には気を付けて行こうぜ。制限時間はないんだしよ」


「そうだな。クリアするまでじっくりやって行こう」



どうも周回プレイを基本としている颯太は急ぐ癖があるようで、走り出そうとした足を見て苦笑いをする。

話すことなくなってきましたね。

いや~連続投稿もなかなか考え物です。まぁ大切な出だしですし、頑張って後書き書いていきますけどね。

私もネトゲは3つくらいやっているのですが、廃人ってわけではないです。

ただまぁ周りが廃人だらけなので自然と知識が深まってしまうわけで、「あぁ、なるほど」って理解できる自分がたまに怖いです。

一番ガチでやっているのはネトゲでも何でもないのですが、ポケモンですかね~。

あれは飽きないです。

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