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周回は基本プレイスタイルです

「あははは!家庭教師をやり始めたのか!」


「何もそんなに笑うことはないじゃないですか…」



その後、ランゲージへやってきた颯太は、皆と更新されたアップデート情報を確認するため、中央にある掲示板へと向かっていた。


先頭を歩くクレアと颯太は、彼の話を聞いて笑い出した彼女をジト目で見る。



「颯太が人に教えるようなタイプに見えなかったらな、つい笑ってしまった」


「それは自分がよく分かっていますよ」


「これもレーナのためか?」


「ええ、そうです」


「私のため?」


「あぁ、今度遊園地に連れて行ってやるからな。楽しみにして待っていろ」


「わーい!CMとかでやってたけど、すっごい面白そうなところだよね!」


「おい、我の肩に乗るのはあれほどやめろと言ったはずだ」



颯太の腕に抱き付いたと思ったら、すぐさま後ろにいるボルケーノの肩に乗ったレーナは嬉しそうだ。



「だってボルケーノは大きいんだも~ん!」


「諦めた方がいいと言ったでしょう?いい加減諦めて乗せておきなさい」


「ぬぅう……」



アルテミスにまでそう言われてボルケーノは唸るが、どうやら納得が行かないらしい。



「それで颯太、一日目の家庭教師はどうだったんだ?」


「ある意味疲れましたね」



颯太は歩きながらクレアに今日起こった出来事を大雑把ながらも話して聞かせた。



「それはまた大変なところへ送り込まれたものだな…」


「最近の小学生は敬語も使えないのかとがっかりしましたよ」


「いや、皆がそうじゃないと思うぞ?聞いた限り、その子は我がままで高飛車な性格なんだろう?」


「ええ、まぁ何を言うにしても必ず上から目線で物を言うというか……とにかく自分が中心のように考えている子でして…」


「それはもう仕方ないものだ。一人息子、一人娘というのは高い確率で我がままな性格になってしまう。だからこそ親がしっかりしなければならないのだが、父親は単身赴任で母親も働いているそうじゃないか。我がままな性格になるのは必然だったかもしれんな」


「どういうことです?」


「誰もその子に構って躾をしてやれなかったということだ。今更どうこう言った所で直らんよ。その子自身がこの先、自分のルールのみでは生きられないような世界になった時、初めて自分が間違っていたと自覚するのだろうな」


「人に言われても五月蠅がるだけかもしれませんね」


「そういう事だ。颯太がいくら彼女にその性格を直せと言っても、聞く耳を持たないだろう。なに、君と彼女は幸いバイトという関係だ。バイトの期間が終わればその子との関係も終わるのだし、今は我慢してレーナのために頑張るといい」


「はい!」


「うん、颯太はやっぱりいい男の子だな。とても返事がいい」


「あ、そうですかね」



クレアに微笑まれて頭を撫でられる颯太は満更でもないように頬掻く。



「ねえ香織……」


「なにかしら」


「あれ、どう思う」


「どうもこうも、完全に姉が弟を可愛がっているようにしか見えないけれど」


「だよね」



その様子を詩織と香織はジト目で見ていた。




「やっぱり皆次のイベントが気になるようだな」



竜也は中央広場に集まった人の多さに驚きながらそう言う。



「それもそうだろう。オンラインゲームってのは情報を知っているか知らないかで差が出るゲームだからな」


「イベントに向けて戦い方も変えなくちゃいけないしね~」


「さてと、次のイベントは~?」



既に19時も過ぎている事から、アップデート情報が掲示板に映し出されている。


今回のアップデート情報は、フリーエリアの解放とエネミーテイムシステムの導入となっていた。

詳しい情報は新しく城の中に設けられたフリーエリア受注クエストカウンターと城の中に新たに出現したワープゲートの先にエネミーテイムシステムに関する情報があるらしい。


そして最後に今月のイベント。

それはバトルアリーナと統合された長期間イベントだった。



「皆FDにイベント情報をダウンロードしたか?」


「あぁ、ちゃんとしたぞ」


「俺もしたぜ」


「私も出来たわ」


「問題ないよ」


「それじゃ、一度アジトに戻ろうか」



一度アジトに戻ると、皆一斉にFDを弄り始めた。

レーナは颯太の膝に座って一緒に見ている。他の神器は誰一人としてそんな事はしていないが。

いや、物理的にも精神的にも無理に決まっているか。



「一通り読んだか?」



颯太が声を出し、皆に呼びかけてみた。

それぞれが顔を上げて頷き、颯太は口開く。



「今回は勢力戦らしいな」


「そのようだな。2つの団体に分かれて領地を攻め合うらしい」


「チーム決めは早い者勝ちとなっている。人数が溢れてしまう前に早く参加チームを決めてしまおう」


「それでどっちのチームに入るの?青チームと赤チームあるけど」


「どっちでも一緒だろ?俺はどっちでもいいぜ」


「私も兄さんと同じ意見よ。色で強弱つくわけでもないし、颯太くんの好みの色でいいわ」


「ん~………―――なら、青で行こう」


「決まりだな。よし、早速登録しに行こうではないか」



クレアが立ち上がり、それに詩織、香織、竜也、颯太と続いて行く。



「参加登録ありがとうございます!」



参加登録を済ませた颯太達は、そのまま城へとやってきた。



「なんだろうね!エネミーテイムシステムって!」


「そのまんまの意味ならば捕獲とか、そういう意味になるが」


「ふふ、行ってみるのが一番だろう」



先ほどから興奮している詩織を先頭に颯太達は城の中に新しく出来た緑色のワープゲートの中へ飛び込んだ。



「わぁ……綺麗ね」


「牧場だ!」


「っと、牧場だな」


「ふむ、颯太、あれを見ろ」



クレアが指差した方へ目を向けると、そこには巨大なモンスターが自由に牧場の中を闊歩していた。

プレイヤーが隣を通っても攻撃してこないのは、手懐けられているせいだろうか。



「香織!早くいこ!」


「ちょっとティア!引っ張らないで!」


「いつの間に呼び捨てで呼び合うようになったんだ?」


「俺に聞くな」


「女の子にも色々あるということだ」



不思議そうに首を傾げる竜也の隣を大した興味もなさそうにした颯太とどこか楽しそうにしているクレアが通り抜けて行く。



「どういうことだ…?」



竜也はそう呟いてから、置いて行かれないように駆け出した。





建物の中には流石実装初日という事もあり、多くのプレイヤーが訪れていた。


人をかぎ分けてやっと受付まで辿りついた颯太達はNPCによる説明を受けていた。



「モンスターを旅のお供に出来るのがモンスターテイムシステム。通称MTSと言います。ボスクラスのモンスターは残念ながら仲間にすることは出来ませんが、依頼モンスターなどの特別なモンスターを除き、道中に出現するモンスターなら全て仲間にすることが可能です」


「おお!すげえぜ!!いや~!モンスターを仲間にするとか憧れていたんだよな!」


「ドラ○エの世界のようだな。悪くない」


「あぁ……どんなモンスターを仲間にしようかなぁ……」


「楽しみね。ティアは大体決まっているの?」


「まぁ大体ね。前からあのモンスターかっこいいと思っていたし」


「ふむ、モンスターの戦闘力が気になるが、そこはどうなのだ?」


「モンスターにレベルはありません。仲間にした当初こそ弱いですが、冒険に何度も連れて行くことで確実に強くなっていきます。プレイヤーの能力、性格に合わせて個体差が生まれますので、モンスターとコミュニケーションを取りながら育ててくださいね。うまく育てる事が出来れば、きっと頼もしい味方となってくれるでしょう」



クレアの質問にNPCの女性はそう答えた。



「サイズが大きいモンスターほど仲間にしにくいので、お気を付けください」


「質問だが、モンスターのレベルが高いとテイムする確率に変動が起きるか?」


「はい。高レベルのモンスターほど仲間に出来る確率が下がります。しかし、例え何度も失敗しても根気強く頑張ってくださいね」



受け付けのNPCはそこまで説明すると颯太達に一冊の本を渡してきた。

アイテムストレージに入ったその本は、MTSに関するマニュアル本だった。



「レーナは何か知っているか?」


「ううん、こんなの初めて」


「我も知らぬ」


「右に同じ」


「私も知りませんね」



神器達も知らない新しく実装されたシステムのようだ。

颯太達はとりあえずモンスターを仲間にするために必要なエサを所持限界数である100個購入して建物を後にする。



「仲間に出来るモンスターは1人につき1体のみか。それに手放すと1か月間モンスターを仲間にすることが出来ないようだ」



牧場の草むらに座って本を読んでいる颯太達は、皆どんなモンスターを仲間にしようか考えているようだ。



「じっくり考えて仲間にしないとな!」


「あぁ、そうだな」


「よし!あたし決めた!」


「え?ホント?」


「んじゃ、颯太!しばらく一人行動するね!」


「了解。何かあったら連絡をくれ」


「は~い!」



詩織は琥太郎を連れて行ってしまった。



「ティアもああ言ったし、しばらくは各自バラバラで行動しよう」


「おう!俺も早速見つけてくるぜ!ボルケーノ!行くぞー!」


「私も行くわ。アルテミス、行きますよ」



本をストレージにしまった香織はアルテミスを連れて、竜也はボルケーノを連れて牧場を後にした。

残されたクレアと颯太と言えば、二人ともまだ本を読んでいる。



「ふむ、ところで颯太」


「どうしました?」


「あの3人がいるときに言い忘れたのだが、クエスト途中で現れるレアモンスターというのは知っているか?」


「なんですか…それ」


「私は一度しか出会ったことがない。そいつは他の魔物とは明らかに違う色合いと凶悪な力を持ったモンスターだった。私も危うく死ぬところだったのだが、何とか勝てたよ」



「……まさかクレアさん…」



立ち上がったクレアを颯太は茫然と見つめる。



「私が出会ったのはウルフタイプのモンスターだ。スノーウルフのレアモンスターだと記憶している」


「やっぱりクレアさんは俺の一歩先を行く人だ」


「ふふ、では、私も行くとしよう。颯太も探してみるといい。出会う確率は恐ろしく低いがな」



会話の流れから察した颯太はそう呟き、対するクレアは不敵に笑ってその場を去って行った。



「レーナ、俺達も行くぞ」


「は~い!颯太良い顔してるう!」



そしてクレアが去ってから数分後、颯太は狙うモンスターを決めて立ち上がった。






『いないね』


「次だ」



古城の中を徘徊していた颯太は、目的のモンスターに会えずクエストをクリアする。


颯太が狙っているモンスターは『ソードタイガー』という白銀の鎧を纏ったタイガータイプのモンスターだ。

顔に装着された兜から突きだす青い紋様の入った剣が特徴的なモンスター。

通常種は灰色の虎が白銀の鎧を纏っているのだが、さてレア種はどんな色合いをしているのやら。



『これで89回目。なしだね』


「ふぅ、100回目で一旦休憩しよう」



レア種は現れずレベルだけ上がって行く颯太は息を吐きだす。



『どしたの?』


「ん?何がだ?」


『今、颯太が笑ってたから』


「あぁ、多分ゲームをしているなって思ったからかな」


『どういうこと?今もゲームをしているよね?』


「まぁそうなんだが、俺の言うゲームってのは周回プレイなんだ。目的の物を得るまでひたすら愚直なまでに回り続ける。これが楽しいんだ。次は出るかもしれない。そう思うから何度も回り続け、目的の物が出た瞬間の喜びというのは言葉では表せない感動がある」


『廃人ならではの発言だね』


「俺は自分をそこまで廃人だとは思っていないけどな」

颯太くんがハムる回でした。


実は2話分一気に収めようとしたら収められなく、次の回で語らせていただきますw

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