乱入者
「やけに人が多いな」
「負けたとしても試合観戦が出来るからな。それが目的だろう」
広場に着くなり、人の多さに竜也は驚いているようだった。
颯太は竜也にそう答えて立ち止まっている彼の脇を通り抜けて行く。
「皆、2回戦開始までもうすぐだ。1回戦に比べて強敵が数多い。だから、気を抜かず、そして確実にポイントを稼ぎに行くんだ。まずは仲間と合流し、出来るだけ単独行動を取らずに行こう」
颯太は最後の確認として皆の前で言葉を口にする。
「勝とう!自分の力がどこまであるのか、それを示すためにも勝ち続けよう!」
「うっしゃあ!やってやるぜ!」
「勝とうね」
「うん!あたしやる気出てきた!」
「颯太と私が組めば無敵だ」
「よし!皆行くぞ!」
『フラッグファイト2回戦とお時間となりました!ご自分のFDに表示されたブロック番号に従ってワープゲートにお進みください!』
NPCのアナウンスに従って颯太達は一度別れた。
「緊張しているか?」
「まぁしていないと言ったら嘘になりますね」
ゲートへ向かって歩きながらクレアは颯太に声をかける。
「その適度な緊張を忘れずにな。緊張感のない者ほど先に死ぬ」
「はい」
颯太は師となったクレアの言葉に力強く頷き、白い閃光に包まれた。
「雪原…?いや、雪山か」
目を開けた颯太は周りを見渡す。
視界は吹雪きにより全く先が見えない。
寒さは感じず、この雪はただのエフェクトのようだ。
『颯太、私はBの5にいる。そちらは?』
クレアからメールが届く。
颯太はパネルを操作して地図を出した。
地図には一定間隔ごとに四角形の大きなマスが9つあり、そのマスには領域を示す英数字と更に小さなマス目には細かく位置を示す数字が振られている。
上から順に横へと進んでいく英数字に颯太は目を走らせ、クレアが大体左上らへんにいることが分かった。
「俺はDの3だから結構近いな」
真ん中の左に位置する颯太は早速クレアにメールを打つ。
『了解した。すぐに会いに行くからな』
FDをポケットにしまいながら颯太は、近くの洞窟へ身を隠す。
『魔物が出現するのは10分後だよね。あと3分しかないけど、クレア間に合うかな?』
「大丈夫さ」
岩陰に身を潜めている颯太はレーナの言葉にちっとも心配していないように答える。
「颯太!」
「な?」
「あぁ、君の顔が見られない時間が苦痛以外の何者でもなかったよ!」
「あの、離れてくれませんか…」
颯太の姿を見つけるなり抱き付くクレアに颯太はうんざりした顔で抗議する。
「私に何を言っても無駄なことくらいこの短い期間でも理解しているはずだ」
「ええ、そうですね……」
『私もいちいち指摘するのも疲れて来たよ』
レーナすらも諦めてしまっているこの状況は颯太も諦めるしかないようだ。
クレアと和彦の年齢がそう違わない事から、歳の離れたブラコンな姉と考えれば納得できるかもしれない。
いや、納得はしたくないが。
「ところで颯太、ワープゲートは発見したかな?」
「いえ、見つけていませんが」
「私はここに来る途中で2つ発見した。無駄かもしれないが、一応ゲート周辺を氷の檻で封印しておいた。それで颯太、何が出て来るか見たくはないか?」
「出てきた敵を視認する事が出来ればマップに敵の位置が載りますし、見ておいて損はないですね」
「では、そうと決まれば行くとしよう。恐らくこの洞窟の奥にもワープゲートがあると思うが、何せ時間がない。バッタリ鉢合わせなどしたら、この洞窟の構造上逃げ切る事は不可能だ」
「ですね。行きましょうか」
颯太とクレアは洞窟を抜け出した。
「準備は出来た?」
「あぁ、問題ない」
颯太と同じブロックに分けられた少年と少女の姿をした神器が雪原に立っていた。
短い銀髪を後ろに流しているどこか強めの印象を与える眼差しを持つ少年は、拳を強く握る。
「そう、良かった」
その様子を見た銀髪の少女はどこかレーナと似ている雰囲気を持っていた。
「行こう。リーナ」
「ええ、行きましょう。滉介」
白く輝く大剣に姿を変えたリーナを滉介は背中のホルターへしまい、雪原を駆けだした。
『あれ?』
「ん?どうかしたか?レーナ」
モンスターが出現するワープゲートへ向かっている最中、レーナが何かを感じ取ったらしい。
『…………何か嫌な予感がする…』
「また1世代目か2世代目の神器がいるって事か。次から次へと酷いもんだ」
「仕方ないだろう。上を目指せば目指すほど強敵が立ち塞がるのは必然だ」
「他の世代の神器使いとぶつかり合って負けてくれると嬉しいのですけどね」
「それはないだろう」
「冗談ですよ」
そんな話を続けていると、赤いワープゲートのある場所に到着した。
「時間は?」
『あと10秒だよ』
「ギリギリだったか」
「出てくるぞ」
ワープゲートが赤い光に包まれた。
そしてそこから現れたもは巨大なオオカミだった。
蒼銀の毛並みをしたオオカミは4m近くあり、首元は返り血を浴びたのかせっかくの美しい毛並みが赤黒く染まっている。
「グルルルル」
「キングスノーウルフ……」
「速いな……あれは絶対に相手してはいけない…」
右目が見えないキングスノーウルフはしばらくの間キョロキョロと辺りを見渡していたが、やがて雪山を駆けだして行った。
「モンスターの倒されたプレイヤーはポイントをモンスターに奪われる仕組みになっている。終盤になればなるほどモンスターが蓄えたポイントを一気に奪い取る事も一つの作戦だと思っていたが、あれでは手が出せん…」
「速すぎますね。正直俺でも厳しいです」
「颯太でも厳しいと思ったのなら私でも無理だろう。私達は地道に稼いでいくとしよう」
キングスノーウルフが走って行った後を颯太は苦々しく見ていた。
いくらモンスター界最速のウルフタイプとは言えど颯太の足元にも及ばなかったのだが、どうやらあのキングスノーウルフは運営の後押しを受けてブーストがかかっているらしい。明らかにモンスターが出せる速度を軽く超えている。
「最初に出現したモンスターを確認して、その後にポイント稼ぎと行きましょう」
「そうだな。モンスターの位置が分からなければおちおち狩りも出来ん」
颯太とクレアは草陰から抜け出して移動を始めた。
『まぁまぁ!このブロックにいたのね!』
「ん?何のことだ?」
歓喜の声を上げるリーナに滉介は表情も変えずに問う。
『混沌よ!レーナがこのブロックにいるわ!』
「そうか。それは良かったな」
『良かったな、じゃないわよ!さぁ!今からわたくしが指示を出しますから、そこに向かいなさい!』
「正直俺はどうでもいいんだが……」
『わたくしは良くないの!ほら!さっさと動く!』
「面倒だなぁ……」
この滉介という男。相当な面倒臭がり屋である。
『ん…?相当速いわね。追いつくか怪しいわ』
「そんなに速いのか。なら、やめておくか」
『やめませんわ!』
「……はいはい」
『もうどうしてあなたはそんなにやる気がないの?』
「………さぁな」
『今答えるの面倒だなって思ったでしょう』
「よく分かったな」
『もうあなたって人は!』
神器が苦労するとは一体どういう事か。
滉介はリーナの怒声を受けながら渋々颯太のいる場所まで走り始めた。
「くそ!かてねえ!ぐはぁああ!」
「おいおい、逃げるなよ」
背を向けて逃げ出したプレイヤーに対して颯太は、大剣を投げつけた。
背中に突き刺さるなり雪原に倒れたプレイヤーはポリゴンを散らし、また颯太へポイントが入る。
「颯太は剣の使い方が荒いな」
「そうですか?」
4人を相手していたクレアが帽子を被り直しながらやってきた。
「自分の愛剣を手放すとはあり得ない事だぞ」
「投げても手元に戻ってきますが」
「まぁ…私が口出しする事ではないか。戦い方は人それぞれだしな」
プレイヤーがいなくなったことで地面に突き刺さった大剣が、回転しながら颯太の手元まで戻って来るのを見てクレアが嘆息する。
「み~つけた!!!!!」
「うお!?」
突然空から飛来する弾丸のような物体を颯太は躱す。
「颯太とクレアみっけ!」
「ユキナか…?」
「そのようだな」
舞う雪を爪で切り裂いて姿を現したのはユキナだった。
アドレナリン出まくりのように興奮した表情を見せるユキナは、今にも颯太へ襲い掛かりそうだ。
「ねえ!もう襲っていい!?」
「その勝負、待ってもらおうか」
「ん?だぁれ?」
ユキナが振り返るとそこには白い大剣を持つ滉介の姿があった。
「誰…?ビャッコが知らない神器って言っているけど」
興奮が一瞬で冷めたユキナは滉介を睨む。
「うふふふふふ、見つけた!遂に見つけたわ!」
どうもまた太びです。
9月ももう終わりに近いですね。
そんな中私はスマブラを購入しました。ホントはWiiU版しか買わない予定だったのですが、周りに影響されてつい買ってしまいました。
まぁ当たり前というか、今まで大きなテレビでプレイするのが普通だと思っていたことから見づらいと思うのは必然でしたね。
ボタン配置もゲームキューブのコントローラーが当たり前になっていたものですから、急遽格ゲーの配置に並び替えたら結構やりやすくなりました。




