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四神ゲンブ

6月25日フラッグファイト当日。



「竜也、大丈夫か?」


「あぁ、大丈夫だ」



ここ最近竜也は特訓に身が入っていないように思えていた。


広場に集まった5万人の参加者の中で颯太達は開始の時を待っている。



『ボルケーノに前聞いたけど、竜也ってボルケーノの能力1つしか使えないんだって』


『え…そうなのか?』


『颯太にも前言ったけど、ボルケーノって私と同じ2世代目だから他の神器と違ってスペシャルなの。だから、能力も4つあるし、ボルケーノの4つ目の能力使えば私と張り合えるようになる力を手に入れられるよ』


『竜也はまだ使いこなせていないんだったか……』


『それかな?悩んでいるのは。でもね、1世代、2世代目の神器は予め最初から適合者が決まっているんだよね。だから、私は最初から颯太の頭に直接話しかけられたし、ボルケーノだって竜也を呼んだはず』


『なるほどね』



力の伸びに悩んでいた竜也は、どうすれば伸びるか分からず自己嫌悪に陥っているらしい。



「竜也、焦らずゆっくり強くなって行こう。ボルケーノがお前を選んだ理由はきっと潜在能力があるから選んだはずだ。お前とボルケーノの相性が悪いはずがない。神器を信じろ」


「颯太……わりい…最近お前達と特訓をする度に自分が足手まといになっている気がして、お前達を避けてしまっていた…」


『竜也よ、目の前の男が異例なのだ。最初から2世代目の神器の能力を3つ扱える人間など過去でも数人しかいない。だからな、我らは我らで一歩ずつ確実に強くなろうぞ。この劫火の魔神を葬る赤き龍がついておるのだ。何も心配などいらぬ』


「声をかけるのが遅いっていうんだよ……」


『すまぬな……我はどうも不器用らしい』


「うし!この戦い、絶対勝ち残ってやる!」


「その意気だ。香織さん、ティア、竜也。絶対勝つぞ!」


「ふふ、でも、優勝するのはあたしだよ?」


「頑張ろうね。今の自分がどこまで行けるのか分からないけど、精一杯頑張るから」


「気合は十分のようだな。よし!」



颯太は手を出す。

そこへ香織、詩織、竜也が手を重ね。そして神器から戻ったレーナ、琥太郎、手が余りにも大きいボルケーノは指を重ねた。



「何が何でも勝つ!まずは今夜の一戦は絶対に!」


『おー!!』


『時間になりました!皆さん、ご自分のブロックを確認しながらワープゲートにお進みください!』



輝光の騎士団の団結力が高まったところで時間になった。

ゾロゾロと5万人が移動を開始するなか、颯太と竜也は悪寒が走った。



「今のは…」


「竜也もか。いるな、どこかに1世代目か2世代目の神器使いが…」


『気を付けて、二人とも』


『恐らく今ので我らの存在もバレただろう。気を付けられよ、竜也、颯太』


「あぁ、十分警戒するよ」


「香織は大丈夫か……」


「ティアがいる。そう簡単にはやられないはずだ。それよりも今は自分の事を心配しろよ。相変わらずのシスコンだな」


「妹想いで悪いかよ」


「誰も悪いとは言っていないが、自分の事も考えておけって事だよ」


「はいはい。軽く30人に入って見せるぜ」


「期待している」



颯太と竜也は拳と拳を合わせて20番と21番のブロックに入って行った。



『5分後にスタートします。それまでしばしお待ちください』


「この空間慣れそうにないな」


『え~?私は慣れたけどな~』



景色が高速で過ぎ去っていく空間。

颯太が初めてランゲージバトルにログインした時に見た景色だった。



「ステージも開始と同時に見るとなると、最初の行動がカギとなるか」


『相当広めに設定されているらしいよ。少なくともカナリア並みかな』


「それは広いな。5万人が悠々と歩ける場所をたった2千人か。戦略性も求められるな」


『神器だけに明かされている情報によると、オブジェも脆いみたい。隠れる場所も結構少なくなりそう』


「いつまでも隠れていないで戦えって事だろ」


『間もなくスタートになります。10……9…――――』


「レーナ、暴れるぞ!」


『あいあいさー!』



視界が真っ白に染まり、颯太は犬歯を見せながらこれからの戦いに胸を躍らせた。



「都会ステージ……」


『カナリアとはまた違う街だね』



視界が開け、そこは大きなビルが立ち並ぶ都会だった。

どこか東京に似ているような気もしなくもない。


道路の中央に立っていた颯太は、気配を消しながら路地裏に飛び込み、状況を確認する。



「左目を解放する」


『長時間使うなら、こっちで混沌を調整するね。その代わり索敵範囲が狭くなっちゃうけど…』


「どこまで索敵できるようになる?」


『ん~……半径1km範囲かな…』


「十分だ」



颯太は疾風の如く走りだした。


既に一番近い敵は見つけている。

気配を殺し、そして一撃で仕留める。



「うおっ!?なんだお前!?」


「遅い!!」



路地裏に隣接するビルの壁を蹴りながら颯太はプレイヤーの真上から一気に首を斬り落としにかかる。


ギャキンッ―――!!


クリティカルダメージにより、颯太は相手のプレイヤーを一撃で仕留める事に成功し、断末魔もなく相手のプレイヤーはポリゴンを散らして退場した。



「まずは1ポイントだな」


『流石だね、颯太』


「まぁな。それにしても皆最初は隠れる事を優先しているようだ」



パネルを操作して現在のランキングを見てみると、現在の1位は颯太のようだった。



『普通は皆隠れて、相手の出方を窺うはずだよ』


「なら、俺はそれと逆の事をしにいこうか」


『うわ、颯太悪い顔している。でも、そんな颯太もかっこいいよぉ…』


「あぁ…えっと……全員が守りに徹しているのならば、そのうちに点数を稼がせてもらう」



颯太はビルの壁を蹴りながら屋上に上がり、左目で次の得物を探す。



『ここから800m先の建物の中に神器反応あり、だね』


「あぁ、行こうか――――おっと!?」



いざジャンプしようかと思った瞬間に、颯太の足元へ鳥の羽が突き刺さる。



「得物見っけ!誰だか分からないけど、やられて貰うよ!」


「そっちからやってきて貰えるとは嬉しい限りだ。でも、左目が反応しなかったが、どういう事だ…?」


『上空はノーマークだったよ。今度は空にも範囲伸ばしてみるね』


「あぁ、頼んだぞ」


「喋っている余裕はあるのかな!」



鷲と一体化したような神器使いの攻撃を躱し、颯太はカウンターで剣を身体に打ち込んだ。



「ぎッ―――くそ!卑怯だと思うけど、空から攻撃させて貰うよ!」



恐らく一番攻撃力がある爪で攻撃したかったのだろう。

だが、颯太の見切りが余りにも早いため、安全策を取って空中に切り替えたと思える。



「あぁ、別に構わないが、これは避けられるか?」


「あ?何を――――ひい!?」



高度を取っていた鳥の男は振り返る。

するとそこには激しい紫電を散らす銃を構えた颯太がいた。



「はん!そ、そんな大技当たるか――って…の?あれ…身体が…痺れて…」


「もう勝負は最初から決していたんだが、理解出来たか?」


「う、わああ!?ぼ、僕のステータスが!?」


「レーナを知らないとは…」



颯太はため息を吐きながら紫電砲を発射した。


雲すらも引き裂く稲妻の奔流は鳥男を貫き、一瞬でHPバーを全て持っていく。



「よし、撃破だ」



颯太は銃をくるくる回しながら大剣に戻して、そのまま背中のホルターにしまう。



「この調子でどんどん行こう」


『は~い!』



颯太の活躍を見れてご機嫌なレーナは元気に返事をした。



「早く香織ちゃんと合流しなくちゃ…!」



詩織は颯太と同じくらいの速度で道路を駆けていた。


あの日から颯太に似合っていると言われてからサリアの服を纏うようになった詩織は、コートの中から赤いお札が付いた苦無を取り出す。



「爆陣…!」



壁に隠れている神器使いを先に発見した詩織は苦無を投擲した。



「発火!」



壁に刺さると同時に詩織は顔の前で印を組む。


次の瞬間壁が凄まじい爆音と共に弾け飛んだ。



「1ポイントゲット♪脆いプレイヤーさんだったのかな?」



牽制のつもりが、まさか一撃で仕留めてしまう事に詩織は驚いた。



「いや、それはないか」


「おらぁ!」



同じ忍者タイプの神器使いのようで、先ほど吹き飛ばしたのは分身だったようだ。

真後ろから襲い掛かって来たプレイヤーに反応した詩織は息を吐き、こちらも分身を生み出してやり返す。



「なに!?こっちも分身!?」


「どう?結構イラつくでしょ」


「ぎゃああ!」



黒い布を脱ぎ捨ててまるで虚空から現れたように見えた詩織は、首の頸動脈を狙って苦無を振るった。



「もう1発!爆陣!発火!」



そのままその場で1回転して苦無を心臓に突き刺した詩織は、消えるように一瞬で離れて今度こそ爆陣発火を決めた。



「うん、1ポイント今度こそ入ったね」



パネルを開いて自分のポイントを確認した詩織は先を急いだ。




「貴様が混沌使いのソウタという男か」


「そうだが」


『颯太!こいつ!ゲンブだ!』


『なに!?』



またプレイヤーを葬った颯太は野太い声に振り返る。

そこには身長2mはあるであろう屈強な男が立っていた。


岩の鎧を着こんだ男の腕には岩石を削りだしたような爪が装着され、背中にはトゲトゲの甲羅が装着されている。


口元のマスクからは蒸気のような煙を吐きだし、この男から凄まじい闘気を感じた。



「オレの名はガイエン。ゲンブの神器使いだ」


「俺の事を四神キラーだと知らずに勝負を挑むわけじゃないよな」


「知っている。ゲンブを目覚めさせた時から貴様の事はよく知っている。故に、貴様の力を知りたくなったのだ」



『相手のポイントは30!?こんな序盤で30人も倒したというのか!?』


「へえ、アンタを倒せば相当楽できそうだな」


「抜かせ。貴様も20人も倒しておいて何を言う」


「現在1位のアンタを倒せばこの戦いの底が見えてくる」


「最もな言葉だ。さぁ!来い!」


『颯太!ゲンブにはステータス異常が全く効かないから気を付けて!』


『分かった!最初から本気で行くぞ!』


「ぬん―――!!!」


「おッ!?」



ガイエンは四股を踏むと颯太とガイエンを囲むように岩山が現れ、これで負けそうになったとしても逃げられなくなった。



「悪いが、最初から本気で行かせてもらう!」


「そうこなくてはな」



元前の速度を生かしながら颯太はガイエンの身体に剣を突き立てた。


ガキン―――!!!



「くッ!硬い!」


「おおッ!?なかなか良い突きではないか!」



振るわれた爪を後ろに飛びながら躱した颯太は舌打ちをする。



「レーナの刃が通らない…」


『ゲンブは防御が取り柄なの。尻尾の蛇も厄介だけど、何よりあの硬さをどうかにしない限り話にならない』


『何か策はないのか?』


『関節を狙うしかないかなぁ……私のステータスを無効化してくる珍しい神器だから何とも…』


『切断がダメなら……』


『颯太!前!』


「そらそらァアア!!」


「ちッ!」



生み出される岩石を疾走しながら颯太は避けて行く。



「オオオオオッ!!」


「流石に速いな!」


「レーナァアア!ハンマーだ!」


『了解!』


「食らいやがれええええ!」



飛び上がった颯太はガイエンへ巨大なハンマーを振り下ろした。


ゴオオオオオオン―――――!!!!


クレーターが出来るほどの衝撃が辺りを襲い、ガイエンの身体が地面に沈んでいく。



「なるほど、切断ではなく衝撃を与えに来たか。だが!このガイエンを落とすにはまだ甘いぞ!」


「ぐはッ!」


『颯太!?』



ハンマーを掴んだガイエンは空いている右手で颯太を殴り飛ばした。



「だ、大丈夫だ。なんつう拳だよ……今ので4割削れたぞ」



相手のHPバーはまだ8割以上も残っている。

それに対し、こちらは残り6割。ポーションを飲んでいる暇など与えてくれるとは思えないし、実質このまま戦い抜くしかなかった。



『岩の鎧をはぐ事が出来れば状態異常が通るのに…』


『剥げば毒が通るんだな…』


『うん……前のご主人もそうしていたから…』



颯太は口元の血を服で拭って立ち上がる。



「さぁ、第2ラウンドと行こうじゃないか!」


『今の一撃で篭手にヒビが入っている。なら、ヒット&アウェイで確実にその鎧を壊す!』


「ほう?まだスピードで撹乱しようとするか。それもよいが、余りにも芸がないと思わんか?」


「思わないね!何せ俺は走る事が大好きだからな!」


「く…!効かぬぞ!」


「逆にアンタの攻撃は遅すぎて当たらない!」



ワザと腕でガードするように正面から攻撃を仕掛ける颯太に、ガイエンは彼の策に気付いていない。



「オラァ!!」


「だが!貴様の攻撃も見えるぞ!」


「なら、もう少し速くしようか」



嵐の如く攻め立てる颯太にガイエンは防戦一方だった。



『ガイエン、篭手の鎧が壊れそうじゃの……あの小僧、ただ者ではない』


『やはりか……ゲンブの鎧すらも破壊するあの力。混沌とはここまで強いものなのか…』


『今回の混沌使いは恐ろしく強いな。我ら四神が集まったとしても勝てるかどうかじゃ…』



しわがれた声でガイエンと会話するゲンブは嵐の如く攻める颯太を見ていた。



『流石……我ら四神を一人で相手してでも勝てるよう設計された神器よ』


「おおおおおお!!!」


「なに!?オレの鎧が!?」



颯太の一撃が遂にゲンブの鎧を破壊した。



「そのまま吹っ飛びやがれえええええ!!!」


「おぐはァッ!?」



フルスイングで放たれたハンマーの一撃はガイエンを岩山の壁に衝突させる。



「こいつはおまけだあああ!」


「ぐふッ!」



ザグッ――――!!!


胸に突き刺さった混沌の剣はガイエンにありとあらゆるバッドステータスを寄付し、痺れも入った瞬間ガイエンは岩山にはりつけにされた。



「俺の勝ちだな、ガイエン」


「ふっ……鬼神の如き強さだな」


「アンタの拳だって効いた」


「オレは最後まで貴様の動きに翻弄された。全く、四神使いあろう者が情けない事だ」


「そんな事はない。もし俺の取り柄であるスピードに追い付かれたりしたら、諦めていたよ」


「ふん、言いよる…」


「ゲ~ンブ!聴こえているでしょ~?結局、カウンターとして作られた私には勝てないって事だよ。で、今回は誰がいるの?」


「今回はわしとセイリュウとビャッコが蘇った。惜しいのう」



仙人のような爺さんが現れた。

木の杖には緑色の蛇が巻きついており、チロチロと舌を出している。



「さらばだ、混沌使いよ」


「今度は負けぬぞ」



そう言って毒の蓄積が最大まで回ったガイエンはポリゴンを散らして消えた。

ガイエンを倒したことにより、彼が今まで倒していたプレイヤーのポイントが一気に颯太へ加算され、現状1位に躍り出る。



「時期に会うだろうな。それまで腕を磨こう」


「うん、負けないようにね」



ガラガラとガイエンがいなくなった事により、岩が崩れ始めた中で颯太は歩き出した。



『俺の願いのためにも絶対に負けられない』



そう、心の中で思いながら。

どうも~また太びです。

今回は四神ゲンブ戦でした。本気の対人戦という事で、いかがだったでしょうか。

颯太自身短期決戦が好きという設定ですので、結構短めでしたが、今度はもう少し長いバトルにしようかと思っています。

どのくらい長いかと聞かれればお答えにくいですが……。

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