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敏捷値が高い=強い(旧題ランゲージバトル)  作者: また太び
1章 ランゲージバトル
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彼女の本性

「分かった。えっと、早速だけどレーナ……服を着てくれないかな…」


「おっと、そうだった」



全体的に黒色のデザインのパンクな服を生み出したレーナはくるりと回る。



「どうかな?」


「あぁ、似合っていると思うよ…」



何だか先ほどから現実ではあり得ない光景を見せられて颯太の頭のキャパシティはそろそろ限界だ。



「んじゃ、次いこっか」


「次?」


「まだ神器選び終わったばかりでしょ?次は私の能力説明」



颯太はそう言えばチュートリアル的なのはまだ終わってなかったな、と思い出す。

その事を思いだすなり、パネルがスライドして颯太の前に現れる。

システムメッセージには『次の説明に移行しますか?』と書かれており、『はい』か『いいえ』のどちからを押すようだ。


まぁ既にここではやる事がないので颯太は迷わず『はい』を押した。



『では、改めてようこそ。ソウタ様、神器様』



再び最初に来た時に見た景色が広がり、颯太の隣にはレーナがいる。



『あなた様にはこれからチュートリアルの戦闘をしてもらう事になります』


「戦闘?」


「ホントに説明書読まないでここに来ちゃったんだね」


「まぁ俺はゲームするにしても説明書なんて読まないからね」


「やって覚えるタイプか。それもありだね。それじゃ、こんな説明スキップしちゃおう」


「お、おう」



『先に進む』を押した颯太達の視界は真っ白に染まった。


そして目を開けるとそこには猪のような生き物がこちらを見ていた。



「ってなんだこの服!?―――――いや……そろそろ頭で理解するのも限界だから何も考えずに楽しむ事だけを考える」



黒いレザーコートを着た自分に驚く颯太だが、いい加減驚くのに疲れたのかため息を一つ吐いて諦めの言葉も一緒に吐きだす。



「それでいいと思うよ。詳しい話は私が現実世界に戻ってから説明するから」


「了解。それで武器は?」


「ん!」



レーナは自分を指差した。



「え?レーナなのか?」


「インストール!って言ってみて」


「い、インストール!!」



颯太が叫ぶとレーナの身体は黒い光の粒子となって消える。

その粒子は颯太の手に集まり、形成されて行くのは刃渡り2mはあるであろう巨大な大剣だった。


柄の部分も恐ろしく長く、鍔にはまるで斧のような刃まで備わっている。



『私は混沌を生きる者』



颯太の頭に直接レーナの声が響いてくる。



「重さは感じないな」


『颯太だからだよ。颯太以外の人は絶対に持てない。持ったとしても私が呪殺しちゃうもん』


「うわ、さらっと怖い事を言ったな……それでレーナ。どうすればいい?」


『颯太の肉体は頭が思い描く通りに動くようになっているよ。だから、本当にゲーム間隔でやっちゃえ』


「了解!」



ゲームという言葉に颯太はにやりと笑う。

剣を構えた颯太を認識した猪は突進を仕掛けてくる。



「当たったら?」


『痛いね。そりゃあ、すんごい』


「おっと!」



颯太は右に転んで避けるが、猪はターンして再び颯太目掛けて突っ込んでくる。



「ゲーマーの力を見せてやる!」



颯太の身体が掻き消えた。

次の瞬間猪の大角が綺麗に斬れる。



「ホントだ。角だけ斬ろうと思ったら、ホントに角だけ斬れた」


『そうだよ。それを実行するには頭に思い描く事が出来るビジョンが必要なの。そこまでどうやって動くのか、どうやったらその攻撃が出来るのか、とかね。でも、颯太は凄いね。私の説明なしに動いちゃうんだもん』


「まぁゲーム脳ならではかな」


『ちなみに猪の突進を躱せなくて当たる人の統計が出ているんだけど、聞きたい?』


「あぁ、いくらだ?」


『100人中97人!』


「なるほどな!だけど!俺はその97人には入らない!」



角を失っても突進をしてくる猪を紙一重で躱して颯太は大剣を一閃した。



『ひゅ~!やるう!』


「こんなもんか。まぁチュートリアルだしな」


『以上でチュートリアルを終了します。あなたの夢が叶う事を祈っております』


「夢?」



颯太は大剣を背負ったまま光に包まれた。



「うわ!すっげえ!」


「ここはランゲージバトルに参加する人達の街、カナリアだよ」



大きな首都のようだ。

ファンタジーの世界にあるような煉瓦の家、どこかで見たことがあるような魔法使いの衣装や武器屋。

そしてその先にある大きな城に颯太は目を奪われる。



「なんだかオンラインゲームっぽいな!」


「いやうんと……その認識は間違っていないけど、まぁ颯太がそれで理解出来るのならいいか…」


「さて、今日はここでおしまい。何も知らないまま街を歩くのも危険だし、帰ろう?」


「そうだよな……なんだかバトルっていうタイトルからしてPVP上等っぽいし、システムの何も把握しないで歩くのはまずいか」


「うんうん。んじゃ、ログアウト。でいいよ」


「あいよ。ログアウト!」



颯太は現実の世界に戻ってきた。

先ほどまで剣を握っていた感触が今でも蘇ってくる。



「くぅううう…!!」



つまらない日々に活力を見出せた気がした颯太は拳を強く握る。



「ちゃんと戻って来れたね」


「うおああ!?」



ベッドで寝転がっている颯太にダイブしてきたのはレーナだった。



「お、お前どうして!?」


「それはまず説明書を読んでから質問してね。もし説明書を読んでも分からなかったら、私の口から説明してあげる」


「颯太!もう7時よ!」


「あぁ!起きているよ!」


「颯太?」



レーナを退かして時計を見ると既に7時を過ぎていた。



「学校って分かるか?」


「うん。学び舎でしょ?もしかして颯太は学生?」


「あぁ、まだ高校2年生だ」


「そうなんだ。颯太の学校の制服いいなぁ……私も欲しい」



レーナは指を咥えながらそんな事を言う。

彼女の声と同時に服が光に包まれ、次の瞬間には颯太の通う学校の制服姿になっていた。



「ええええ!?見ただけで!?それに男用しか見てないよな!?」


「女の子用の検索した。後はそれをダウンロードして完了~♪」


「便利だな…」



颯太は今日持っていく持ち物を確認しながらレーナの便利さに呆れる。

ゲーム機を入れようと思ったが、颯太はやめた。ゲームを持っていけばきっと気が散って本が読めないと思ったのである。



「あれ?ゲーム機持っていかないの?」


「今日は持ち物検査の日なんだよ。それよりレーナはどうするんだ?流石に学校には着いて来れないだろ」


「うん。だから、颯太のお部屋で待っている」


「了解。食べ物は?」


「私はデバイスによって生成された精神体だから、食事は必要ない。でもちょっと興味はある。せっかくまた自分の身体で歩けるんだし…」


「ん?まぁよく分からないけど、帰り何か買ってきてあげるよ」


「ありがとう、颯太」


「んじゃ、兄貴に気付かれないようにね。あの人結構俺の部屋に入って来るからなぁ…」


「りょ~かい」



颯太は彼女を部屋に残して階段を下りて行った。



颯太は授業中もこっそりと本を読み続けた。

自習の時間は寝るつもりだったのだが、颯太は早くシステムを把握するために読み続ける。



「なるほど。あのカードは神器を収めるためのものだったのか。それを媒体としてレーナ達がこちらの世界に……一体誰が作ったんだ…」



本の出版社は載っていないし、ゲームを開発した会社も載っていない。


そしてページをめくると、昨日一番気になっていた言葉の詳細が書かれたページがやってきた。


願いごと。

ランゲージバトルはあなたの願いを叶えるものです。



「あった…!」



毎年冬にランゲージバトルの覇者を決める大会が開かれます。

その大会で1位になった方には運営からあなたの願い事を何でもお一つ叶えさせていただきます。

日頃から腕を磨き、是非あなたの願い事を叶えるためにも頑張ってください。



「こ、これだけ…!?おいおい……」



他の内容は結構ぎっしり詰まっていたことに対して『願いごと』だけは僅か数行で終わってしまった。



「天風君!あなた授業中も本をこっそり読んでいたでしょう!」


「ん?って委員長か」



朱色の長い髪をツインテールにしているこの少女の名前は道草みちくさ香織かおり。颯太が言ったようにこのクラスをまとめる委員長だ。


しかし、颯太はこの委員長が苦手だった。

何かと不真面目な颯太に突っかかってくる事が気に入らない。



「人の勝手だろう。俺の成績が悪くなったとしてもお前には関係ない。確かに委員長は立派だ。恐らく役割、仕事として不真面目な俺の事を気にかけてくれているんだと思うけどさ、正直迷惑だ」


「わ、私はそんな…天風君のために……―――もういい!」


「はぁ……」



他の人の場合はとりあえず謝っておけばすぐ引き下がってくれるのだが、委員長だけは別だ。

謝っても説教は続くし、挙句の果てには物を没収されかねない。それを知っている颯太は嫌でも強く自分の主張を言わねばならなかった。



「おい、颯太。少し言い過ぎじゃね?」


「あれくらい言わないと理解してもらえない事くらいお前だって知っているじゃないか。実際それで1ヶ月お前のゲーム機が帰ってこなかった前例がある」


「ま、まぁそうだけどよ…」


「俺だって余りクラスの雰囲気を悪くするような事はしたくない。でも、理解してもらえないなら仕方ないだろ」



いつもつるんでいる友達にそう説明して颯太は読書に戻った。

颯太はクラスで孤立してないと言う事ではないが、それでもどこか一線を引かれていた。

いや、彼自身は引いているのかもしれない。



「まだ友達がいるだけましか………」


『颯太余り楽しくなさそうだね』


「――――ッ!?」



危なく声を上げそうになった颯太は口元を手で押さえる。



『驚いた?私と颯太はもう繋がっているから、こういうお話も出来るんだよ。というか、私が剣になった時脳に直接呼びかけていたよね?あ、颯太も私とお話がしたいって思いながら喋ってごらん』


『あ、ホントだ』


『うん、颯太は覚えが早くて嬉しいなぁ。私結構イライラするタイプでね。余りイライラしちゃうと自分のご主人を殺しちゃうの』


『お、お前!?まさか!?』


『颯太は別。私の事を理解してくれているし、目をあげた時も死ななかった』


『はッ!?死ぬ!?俺の事殺そうとしてたのか!?』


『私の一部をあげたくらいで死ぬご主人ならいらない。でも颯太は耐えてくれた。私の混沌を受け止めてくれる器がある。ねえ、颯太。私今物凄く幸せなんだよ?』



颯太の背筋が凍る。自分はとても大変な神器を選んでしまったのではないかと。



『ひ、一つ聞きたい。他の神器は鎖なんかに繋がれていなかったが、お前だけ厳重だったよな……あれは?』


『それは、私がランゲージバトルで人を何人も殺したから』


『―――!?』


『普通は絶対に解けないグレイプニルの鎖で繋がれていたんだけど、颯太が解いちゃった♪今頃運営は大慌てだよ?だって、混沌の再来なんだもの』


『お前……俺に人殺しをさせるつもりなのか…?』


『ううん、違うよ。言ったでしょ?私今物凄く幸せだって』


『あぁ…言ったな』



左目がじくじくと痛む。

まさか本当にこの目はレーナのものなのだろうか。



『今も颯太に私の力を送り続けても発狂しないし、ただ少し痛むだけで済んでいる。私の混沌を真正面から受け止めてくれるご主人なんて初めてなの。だから、颯太の事は殺さない。むしろ愛している』



やばい、この女はやばい。

まさかゲーム中に絶対に勝てないイベントに出てくる敵を味方にしてしまったようなものだ。そりゃあ運営もビックリ仰天に決まっている。



『颯太は私の事を見捨てないよね?あのゲーム楽しいと思ったよね?』


『まぁな……あんな感覚のゲームは初めてだったし、とても新鮮だった。少なくともお前を見捨てるような事はしない…』


『嬉しい。ねえ、颯太。もう説明書大体読んだんでしょ?』


『一通りな。操作説明とか感覚に関する場所はやって覚えた方が早いと思ってすっ飛ばしたが』


『私が理解して欲しかったのはゲームの概要、趣旨』


『レーナが言っている事は恐らく願い事の件だろう?』


『それそれ!全然載ってなくて颯太の驚く顔が可愛かったなぁ…』


『あぁ…………なんで全然載ってないんだ?』


『載せてどうなるの?理解出来ない言語ばかり出てきて颯太の頭が余計に混乱するだけだよ?』


『なるほど……余計に混乱させないための処置か……今はそれだけ知っておけばいい。真実を知るのは優勝してからってこと?』


『うん、そういうこと。私もね、途中でイライラしちゃって何人ものご主人を殺しちゃってるから余り戦闘経験がなくて、初心者なのは颯太と一緒なんだ』


『殺されないように頑張るよ…』


『ああ、そんなに落ち込まないで。颯太は絶対に殺さない。たまにイライラする時もあると思うけど、颯太が傍にいればいつもの私に戻るから』


『あれって事はなに?今物凄くイライラしてる?』


『うん!だから、颯太とお話ししてるの。じゃないと私ランゲージバトルに行ったときに1人くらい混沌流し込んで殺しちゃいそう』


『あぁ待て待て!そういうの禁止だ!』


『颯太必死になってて可愛いね。うふふ、颯太の反応を見るだけで私のイライラは収まって行くよ』


『授業中も出来るだけレーナと話し続けるから、そういう物騒な事はやめてくれ』


『は~い。颯太が言うことなら何でも聞くよ』



一度そこでレーナとの会話を終えると颯太は机に倒れるように突っ伏した。

汗がどっと流れてくる。



「何て奴を俺は神器にしてしまったんだ……」



颯太は選んだ神器に後悔した。

とりあえず今書き留めてあるものを全て投稿していきたいと思います。

連続投稿なので正直後書き書くことなんもないんですよね~w

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