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対処方法

「お疲れさま、ティアさん」


「おつかれー!颯太さん!」


「ふう、大分戦ったよね」


「良い修行となったであろう」



4人は町中にある酒場で休憩していた。

時刻は23時。明日は休みなので一休みしたらまたクエストに出かけるつもりだった。



「颯太さんはもう64かぁ……早いもんだね」


「ティアさんが現状行ける最高のクエに連れて行って貰っているからな。俺がまだ行けないレベルの相手と戦っているからすぐ上がるさ」


「相手のレベル80後半だもんね~。宝の地図出てきたらあたしでも勝てないよ」


「宝の地図は見つけた人によってレベルが変わるのか?」


「違うよ、そのクエストから大体30レベル上がる設定になっているんだよ」



グビグビと牛乳を飲み干したレーナが答える。



「なるほどな。だから俺達が行ったところは70後半だったのか」



颯太が宝の地図のシステムを理解していると、FDが点滅する。

茶色の点滅からして香織だろうか。



「香織さんからだ」


「どうしたのかな?」


「えっと……――――これからこっちに来るってさ」


「あれ?入れないんじゃ?」


「難しいってだけで入れない事はないらしい。どうやら竜也と香織さんはキャンプ場にアルテミスを連れてきているそうだ」


「この時期にキャンプ?ちょっと早くない?」


「香織さんの家の親父さんが言いだしたようだ。ボルケーノは残念ながらお留守番だとさ」


「あれ?ボルケーノだって人の姿になろうと思えばなれるのに」


「え?そうなのか?」


「秘密主義の運営が何もしないわけないじゃん。多分ボルケーノが忘れちゃっているだけなのかな」



レーナは可愛らしく小首を傾げて見せる。



「竜也に教えてやるか」



颯太は竜也にメールを送る。



「よしっと。さて、香織さんがログインしたら、少し遠距離から矢を避けれるかやってみようか」


「矢を避ける練習かぁ……めちゃくちゃ怖いんだけど」


「そんなこと言っていたらフラッグファイトで負けるぞ。何事も経験だ」


「当たったら相当痛いと思うよ?」


「……覚悟の上だ」


「少し躊躇ったね」



バトルウルフに突き刺さった矢を思い出した颯太は一瞬、本当にこの特訓をしていいのだろうか、という気に刈られるが、対人戦で対処法を知らなかったから負けた。では済まされない。



「と、とにかくだ!香織さんが来るまでここで休憩!」



自分に矢が突き刺さった事を考えた思考を振り払って颯太は、頼んでおいたここの酒場限定のハンバーガーにありついた。





「うッ!」


「そ、颯太くん!?」


「だ、大丈夫だ!」



香織がログインしてから本当に矢を避ける特訓を始めた颯太と詩織は、彼女が放つ矢をなかなか見切れないでいた。



「あたし達が認識した時にはもう刺さっているようだね」


「そ、そうみたいだな…」



光の矢を胸から引き抜いて颯太は立ち上がる。

隣でも詩織が自分の肩に突き刺さった矢を忌々しげに抜き取って地面に捨てた。



「流石狩猟の神様だな。急所を確実に狙う正確さと圧倒的な速度」


『アルテミスは攻撃力こそ低いけど、そこは急所を狙う事で完全にカバーしているんだよね。今の矢だって颯太の心臓狙ったものだったよ』


「急所から逸らすことしか出来ないのか」


「あたしはこれ首だよね、完全に」


『だな。反応が遅ければ確実に一つ持っていかれただろう』


「二人とも本当に大丈夫!?」


「あぁ!続けてくれ!」


「大丈夫だよ~!」



遠くの建物から大声を出して心配する香織に、二人はその声よりも声を高く張り上げて答える。



「それじゃまた20秒後に撃つわよ!」


「見てからじゃ遅い。それはもう痛い程身に染みてきた」


「なら、もう少しこちらの速さを上げてバランスを取ればいい」


「なるほど。でも、矢と同等の速度って難しくないかな?」


「まぁ無理だろうな。でも、少し試してみたい事がある」



颯太は大剣を構えると左目を解放した。



「レーナ、視界をもっと細かく見れるか?」


『やってみる。でも、颯太の負担が増すから、余りおススメはしないよ』


「分かっている」



颯太は右目を閉じて左目を使う事だけに集中する。


キン――――!



『来た!』



煌めきの中に見えた一筋の光。

光の軌跡は真っ直ぐ颯太の額目掛けて飛んでくる。



『今なら矢の動きがよく見えるぞ!』



まるで視界がスローモーションになったかのように全ての速度が落ちる。


緑色の矢が颯太に迫った。


颯太は慌てる事もなく頭を低くして躱そうとした。



『なに!?』



だが、矢はまるで颯太を逃がさぬよう軌道を修正して、彼の額に突き刺さろうとする。



『ちょっと身体借りるよ、颯太』



レーナの声が響いたかと思うと身体が急に動き出した。

大剣を握っていた左手が顔の前に来る。



『お前まさか!?』


『ふふっ…』



バアアアアン!!


爆発に似た音と共に視界がいつもの世界に戻る。



「颯太さん!?」


「颯太くん大丈夫!?」



詩織の叫びは颯太を心配するものではなく、むしろ驚愕しているようだった。

彼女が驚いた理由は、なんと颯太の手に光り輝く緑色の矢が握られていたのだ。



「レーナが……やったのか…?」


『お手本。これを何度か繰り返して、そのうち左目なんか使わなくても反射的に行えるようになればいいと思うよ』


「ありがとう。正直さっきは我ながら焦ってしまった」


『まさかホーミング付きなんて誰が思うか~って話だもんね』


「あたしにはちょっと難しいかもなぁ……」


『何ならティアにも私の目、貸してあげようか?』


「い、いい!遠慮する!」



詩織はレーナの申し出に首を激しく振って拒否する。



「俺も感を掴めばティアさんに教えてあげることが出来るかもしれない。もう少し頑張ってみよう」


「うん。あたしも頑張るよ」


「香織さん!また頼む!」


「分かったわ!」



颯太と詩織は呼吸を整えて次の射に備えた。




「おとーさん!」


「うお!?れ、レーナか。どうしたんだ?」



日曜日、リビングでいつも通りテレビのニュースを見ながら新聞を読んでいる父さんに、レーナは後ろから抱き付いた。



「父さん、レーナは皆で出かけたいらしい。今日はどこかに行く予定もないんだろ?」


「ふむ……確かに用事はないが、一体どこに出かけるんだ?」


「デパートとかでいいんじゃないかな?確か長町に大きなデパートがあったはず」


「ねえ、お父さん行こうよ~」


「たまには家族サービスしても悪くないと思うが?」


「……まぁいいだろう。母さんを呼んできてくれ」


「やったー!お出かけー!」



腰を上げた父さんは車の鍵をズボンのポケットから取り出すなり、家を出て行ってしまった。

レーナの嬉しそうな顔を一瞬見た事から、レーナと出かけられて嬉しいのだろう。

なかなかなツンデレである。



「レーナ、母さんを呼んできてくれ。俺は寝ている兄貴を起こして来るよ」


「はーい!」



元気に走って母さんを呼びに行ったレーナを何となく目で追いかけてから、颯太は和彦を起こしに行った。



「わぁあ!人いっぱい!」


「レーナ、はしゃぐのはいいけど迷子にだけはなるなよ」


「颯太と手を繋ぐも~ん!」


「やれやれ…」


「颯太は随分とレーナちゃんに懐かれているのね。何をしたのやら」


「レーナがどうしてもお前と同室がいいと言ったから認めているが、まさかお前…」


「何を言っているんだよ!」


「まぁまぁ颯太も年頃の男の子だが、流石にレーナに手を出すような男ではない。だが、颯太は幼女好きという事を含めれば……」


「兄貴も何を言っているんだ!!!!」


「なになに?颯太の話し?私、颯太のこと大好きだから何でも聞きたいな」


「やっぱりお前……」


「見損なったよ…アンタ…」


「二次元だけにしておけとあれほど…」


「もうやだこの家族!!」


「あ!颯太!待ってよ!」



家族を置いて颯太はデパートの人混み中へ消えて行った。



「もう颯太の事なんて放っておきましょ。レーナちゃん、何か欲しいものある?」


「ほえ?ん~……本が欲しいな。颯太が学校にいるとき退屈なんだもん」


「本屋なら2階だ。俺も仕事場で少し使う本があるから、丁度良かったよ」


「ふむ。なら、最初に本屋に行くとしよう。私も月刊男の艦隊の続編でも…」


「アンタそれ自分で買うのよね?」


「ぎく!?も、もちろんだとも母さん!」


「小遣いを制限されている中で父さんは本を買う事が出来るのか。お酒と要相談だな」



勝手にどこかへ行った息子など放っておいて天風家は本屋を目指す。

レーナは少しだけ颯太の事が気になったが、念話で話せるかと思い出し、母さんと手を繋いで歩き出した。


私が書いているもう一つの話しである『龍の血を引く者』の話しなんですけど、初めて感想をいただいたんですよね。

普通に嬉しい、この言葉しか出ませんでした。アクセス解析とか、ブクマを見るだけで見ていてくれている人はいるんだなって分かりますが、やっぱり言葉にする。ホントこれだけで受ける印象は格段に変わりますね。


160話くらい書いていて本当に我武者羅に続けていた作品なだけに、評価が気になるところでした。面白いと言っていただけであと100話くらい作れそうな気がしました。いや、比喩ですが……w

まぁ100話作れるか、作れないかは別として、こんな作品でも見ていてくれている皆さんのためにもランゲージバトルも全力でこれからも走らせていただきます。

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