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ヒカルの神器の真名

「え?」



基本ヒカルに言われたことに関して全肯定するつもりでいた颯太だったが、彼女が発した言葉は彼が思い描く範疇を超えていた。



「だから、君のギルドに入れてよ」


「色々な対価を払う覚悟はしていた。でも、まさかギルドに入れて欲しいなんて言うとは思わなかったから驚いてしまった―――――えと……じゃあ、改めて聞くけど何故俺たちのギルドに?」


「うちに入るメリットも考えられないしね」



隣で話を聞くレーナも同意見のようであり、その表情は疑い。何を考えている?と言ったあくまで、敵対するグレイヴギルドとしてヒカルを睨んでいるようだ。



「君達のところに入れば退屈しなさそうという理由がまず一つ。で、ここが重要なんだけど、レギュンが命をかけて君を生かした理由を知りたい」


「レギュン...」


「レギュンはこのランゲージバトルの世界から去った。それもニヴルヘイムと決着をつけることでもなく、君ともう一人のプレイヤーを救うため。あの自己中心の塊のような女が何故君を見捨てることもせず、あろうことが自分を犠牲にしてまで助けたのか」


「いや、レギュンは自己中心的な女の人じゃないよ。あの人はただゲームが好きだったんだ」


「え?ゲームが好き?あのレギュンが?」



剣を教えて欲しいと言われた颯太以上にヒカルは驚いてみせる。



「いつも難しそうに、機嫌悪そうにランゲージバトルにいるようなやつだよ?」


「まあ見た感じは怖そうな人だけど、あの人はきっとランゲージバトルを心の奥底から楽しんでいたはずだ」


「そこ断言しちゃうんだ?」


「あぁ」


「へぇ...」



ヒカルはにやりと笑みを浮かべる。



「尚更君のことを知りたくなったよ。元から君のことは気になってたんだ。何故君の周りには凶悪な神器が集まるのかとかね」


「それは俺にも分からないって」


「それもボクが自分で観察して君を見極めて行くから覚悟しておいてね」


「お手柔らかに...って言いたいところだが、俺の一存だけでギルドには入れないぞ。一応俺はヒカルさんに剣を教えてもらう立場だから口添えはするけど、君はグレイヴのナンバー2だ。俺が許しても他のメンバーがどう言うか...」


「確かにボクのことを好ましく思う人は少ないだろうねえ……」



彼の言葉に頷くヒカルだが、その表情にはどこか含みがあるように見え、颯太は何か策があるのか尋ねる。



「ほら、君のギルドって今竜也が抜けてしまって戦力がガタ落ちしているわけじゃん?」


「そうだな。竜也が抜けてしまった穴は思った以上に大きいのは事実だ。宝の地図ダンジョンや高難易度のクエストへ行くときは火力担当の竜也がいたからな……」


「それ、ボクで何とかならないかな?」



ヒカルの提案に颯太とレーナは目を白黒させる。それはそのはず。朧げではあるが、ヒカルの神器は火力タイプではなく、どちらかと言うと手数を増やしてテクニックで攻めていく詩織タイプだと認識していたからだ。



「あーボクの実力を疑っているね?」


「いやだって君はテクニックタイプの神器じゃなかったか…?」


「君が言いたいことは分かるよ。ボクの能力の選択外のプレイヤーには認識を誤魔かす能力が発動して思い出すにも思い出せないんだし、ボクの真の実力を知らないのは無理もない」


「でも、それって回数制限があるよね」


「おや、鋭いね混沌ちゃん」


「レーナ、それはどういうことだ?」



レーナの指摘にヒカルは面白そうに口元を釣り上げ、颯太は不思議そうな顔をする。



「ヒカルと初めて接触した後は何も思い出せないほど強力な力を発揮していたけど、今の颯太ならある程度のことは思い出せるんじゃないの?ほら、朧げだけどどこか確信めいた記憶がさ」


「ああ!」


「そういうこと。君の神器ちゃんが言うようにボクの神器、ファンタズママゴリアはありとあらゆる幻想を見せ、それは現実すら侵食する最強の幻術神器。だけど、この認識阻害の能力は何回も同じ相手と会っていると効果が薄れていっちゃうんだよね~」



ヒカルの神器の名を聞いた瞬間颯太とレーナは寒気を感じた。その感覚は覚えがあり、それは――――



「第1世代神器…!!!!」



レーナが目に分かるほどの殺気を放った。



「さいってー!!颯太!!こいつ出しちゃいけない神器を持ってる!!」


「ちょ!レーナ落ち着けって!」


「過去にファンタズママゴリアが参加したランゲージバトルは2回だけ。でも、それだけにファンタズママゴリアは凶悪過ぎて皆から嫌われた神器なんだ」



レーナの殺気をどこ吹く風のように受け流してヒカルは勝手に喋りだす。



「いつしかファンタズママゴリアは自身すら幻術の一部だと思い込み、そして存在を失った」


「ボルケーノから聞いたことがある…!バハムートとゲオルギウスの大戦争で何故少数しかいなかったバハムート側がゲオルギウス側と対等にやりあえたのか」


「それはバランスブレイカーが多かったとかそういう話じゃなかったのか?」


「確かにそれもあるんだけど、ゲオルギウス側にだって頭のおかしい性能をした神器はたくさんいた。でも、その猛攻を掻い潜って殴りあえたのが、このファンタズママゴリアがいたからだってボルケーノが言っていた」


「彼女の記憶によれば『ただ隠しただけ』だそうだよ」


「そう、消したんだ。撤退時には必ず霧のように消え、襲撃時には霧のように突然現れるって」


「まあ過去のことなんてどうでもいいじゃないか。神器がどう動くかなんて所詮主次第だし、たとえどんなに清廉潔白の神器であれ主の言葉一つで悪に落ちる。ほら、うちのマスターが良い例だと思うけどね」


「レーナ、アルカディアスってどういう神器なんだ?」


「アルカディアスは数少ない竜型神器の1角で、物理で殴る竜型神器が多い中でも異例の射撃と統率を得意とする神器だね。主なスキルとしてはトイウォーズって言って機械で出来た玩具の兵士を大量に生み出したり、フィールドに大砲や機銃を出現させて自由自在に操ったりするよ。神器の中身は私くらいの銀髪の女の子。ボルケーノによればくっそ生意気で高飛車な性格だそうだよ」


「会ったことはないのか」


「ないね。そもそも竜型神器は1度の戦いに2体現れたら優勝を諦めろって言われているくらい凶悪で出現確率が低い神器だから、今回の戦いがおかしいんだよ」


「くっそ生意気だけど悪は絶対に許さない信念がある神器だね。ま、どんな理由でうちのマスターがPKギルドのギルマスなんてやっているかなんて知る必要もないし、知りたくもないけど、そういうこと」


「俺もいまいちレンのことは分からないしな。とにかく話を戻すとして、どううちのメンバーを説得するんだ?」


「竜也の空いた穴を埋めるほどの火力と実力があればいいんだよね?」


「極論はそこだな」


「なら、実力を示せばいいわけだ」


「それをどう――――」


「君のギルドメンバー全員ぶっ潰せばいいんじゃない?」


「え……」



颯太は眉をひそめ。レーナは大きなため息をついて呆れていた。


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