表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
敏捷値が高い=強い(旧題ランゲージバトル)  作者: また太び
続 8章 現実世界での戦闘
166/172

最後の攻撃

レーナとリーナの神器耐久値が回復し、残りの時間も3分になった時、颯太と竜也はアジダハーカの猛攻を掻い潜り、遂に反撃へ転じた。



「竜也!やるぞ!」


「おうよ!!」



竜也が提案した作戦は至ってシンプルなものだった。



「は?なんて?」


「だから突っ込むんだよ。それでお前は俺が投げるまでじっとしていろってこと」


『あなたは本当に馬鹿なのかしら?忘れたとは言わせないわよ。アジダハーカの能力は神器を吸収する。そんなことしら―――』


『神器ごと竜也も吸収されちゃうよ!』


「んなこと分かってるさ。まあでも、何とかなるんじゃねえの?」


『そんな楽観的な……』



レーナとリーナが竜也のことを想って心配するが、それを彼は笑って大丈夫だと言う。



「ボルケーノとバハムートもサポートしてくれるらしいし、お前らはあいつを倒すことだけ考えていろって」


「………分かったよ」


『颯太!!』


「2人とも今はアジダハーカを倒すことだけに集中するんだ」


「へへ、流石颯太だぜ。男の覚悟ってもんを分かっているな」



そして竜也は翼を広げ―――



「さあ!!行くぜ!!」



雄叫びを挙げた。






翼を広げて方向転換した竜也は、更に大きくなってもはや竜の面影などなくなってしまった邪竜へ突撃した。



「お前らは力を温存しておけ!触手は全部俺が蹴散らしてやるからよ!!」



大気が震え、空間が悲鳴をあげるほどのブレスが放たれた。触手は一瞬にして燃え、一直線に伸びるブレスはアジダハーカへ届く。

凄まじい衝撃が巻き起こった。隕石の衝突に等しい衝撃は、周りの触手を薙ぎ払い、それを好機と見た竜也は翼を折り畳み、次のスキルを発動させる。



「しっかり掴まってろよ!!」


「あ、ああ!」



翼は前に展開され、まるでランスのようになった竜也は黒炎を纏い、その時流星と化した。



「タイラントディザスター!!」


「んおっ!?」



天空を突き進む黒炎の流星は襲い来る触手など物ともせず、一気にアジダハーカへ接近する。



『あと300mだ』



ボルケーノが冷静にアジダハーカまでの距離を口にする。だがその声は、どこか覚悟を決めたような、そんな意思を感じた。



「ああ、ぜってえ颯太をアジダハーカまで送り届けてやるからよォ!!」



颯太はもう悟っていた。左腕に抱えられ、翼で覆われたこの状況で外では一体何が起きているのか分からずとも、音でおのずと何が起きているか分かっていた。



「ははっ!」



時々鈍い音がする。それはきっと吸収することを諦めたアジダハーカが本格的に竜也を殺すべく、硬度を増した触手が彼を貫いているのだろう。

だから、ここで颯太が言うべき言葉は――――



「竜也」


「なんだよ」


「頼んだ」


「は―――――ははは!!ああ!任せろよ!!」



一瞬呆気に取られた竜也だったが、彼は真っすぐ前を見据えて力強く頷いた。



「なんて言ったって俺はお前の先輩だからな!!」


『あと200mだ』


『おいおい、オレ様の翼を貫通するとかやべえな』



アジダハーカへ近づけば近づくほど攻撃は激しくなる一方であり、触手は次々と竜也の身体に突き刺さる。



『ここが踏ん張りどころだ。バハムート、貴様も分かっているだろうな』


『言われなくても分かってるんだよ!!でも、こいつらの攻撃がオレ様の硬度を上回ってんだ!!』



遂に触手に絡めとられ、タイラントディザスターが解除された竜也は力ずくで触手を振り切って前へ進む。



「あともうちょいなんだよ!!コンチクショウがアアアアアア!!!!」



竜也の周辺に幾重もの魔法陣が現れ、迫りくる触手へ反応するかのように魔法陣から青白いレーザーが飛び出し、触手を迎撃していく。


だが、タイラントディザスターよりは威力が劣るようで、破壊することはできず、触手の速度を落とす程度しか出来なかった。



「はは――――」



竜也の乾いた笑い声が響く。きっと今も彼の身体は幾重もの触手に貫かれているのだろう。だが、彼は笑う。



『竜也、100mだ』


「俺の――――勝ち―――ぐはっ!?」


「竜也あああああああ!!!!」



颯太を投げるべく防御の構えを解いた瞬間だった。四方八方からこれまでとは比較にならないほどの触手が現れ、竜也を串刺しにしたのだ。



「―――――」



まるで時が止まったかのようだった。

微動だにしない竜也とそれを貫く触手の嵐。竜也の身体はもはや血で真っ赤に染まっており、颯太を守る左腕以外全て穴だらけだった。


竜也を貫く触手が抜かれ、ゆっくりと彼は落下していく。颯太は涙が出るのを必死にこらえ、彼を信じる。



「――――」



もはや意識などほとんど残っていない彼は、最後に残った自身の力を込めて左腕を動かして颯太を掴む。



「後は俺に任せろ!!!!!」



彼は投げた。


瀕死の状態とは言え、竜也の手によって投げられた颯太は凄まじい速度で空を駆けあがっていく。


まさかの反撃に勝利を確信していたアジダハーカは慌てて触手を伸ばしはじめ、颯太は巨大な触手を1回転してぎりぎりで回避すると、それを足場にして昇っていく。



「邪魔だ!!!」



黒い稲妻を纏った片手剣を振り、雨のように降り注ぐ触手を焼き払う。



『残り時間1分よ!!走って!!』


『颯太頑張って!!!』



リーナとレーナが悲鳴にも似た声で颯太を激励した瞬間、足場の触手が本体の方へ引き戻されて行く。



「これだッ!!!!!」



颯太は剣を触手に突き刺した。刺さるか賭けでもあったが、ここの賭けに勝利し、自分が走るよりも早く本体へ近づくことが出来た。


これにアジダハーカは焦りを覚え、颯太を必死に振り払おうと触手を激しく揺らし、他の触手も颯太へ襲い掛かる。



「リーナ!!頼む!!フォートレス・ガーディアンシールド!!」


『任せなさい!!竜也が繋いだこの一手!!絶対無駄にはしないんだからあああああ!!』



リーナの盾と数えるのがあほらしくなるほどの触手が衝突した。



「おおおおおおおおおおお!!!!」


『颯太!!3秒後に弾くわよ!!レーナ!!後は頼んだわ!!』


『分かった!!颯太!!行くよ!!』



ヴァルハラ発動による追加効果でリーナの防御力が一歩アジダハーカの攻撃を上回り、全ての触手がまるで熱湯に手を突っ込み、反射的に手を引っ込めるかのように下がった瞬間、足場の触手のうねりを利用して颯太は大きく跳躍した。


全ての演算を終え、オーバーヒートしたリーナは強制的に颯太とのリンクが解除され、大空を真っ逆さまに落ちていく。



「ここで決める!!!!」


『決めよう!!颯太!!』



心の中でリーナに感謝し、颯太は剣に稲妻を纏わせて眼前に迫ったアジダハーカを見下ろす。


アジダハーカはパリィを取られ、一瞬。ほんの一瞬麻痺し、颯太への対応が遅れた。それが彼の命運を左右した。



「End of Chaos!!!!」



剣に纏った稲妻によって超高速で落下してきた颯太は、肩に剣を担いで一閃した。



「いっけええええええ!!!!」



開かれた次元は、アジダハーカを飲み込み―――――



「なにッ!?」


『そんなっ!?』



なんと触手を空間に固定して、耐えていた。



「くっそ!!」



空を飛ぶことが出来ない颯太は重力に従って落下し始めてしまっている。更に最悪なのが覚醒能力の時間が来てしまい、世界が崩壊してきているのだ。



「このまま耐えられたら次元の扉が!!」


『閉じちゃうよー!!』


「くそ!」



慌てて銃モードへ変形して紫電砲を準備するが――――



「間に合わない…!」



紫電砲を発射する前にアジダハーカはこちらに出てきてしまうだろう。



「あと少し…!!あと少しなんだ…!!!」


『あとちょっと…なのに!!』


「くそおおおおおおお!!!!」



その時、落下していく颯太の隣を真紅と漆黒の炎が突き抜けて行った。



「え?」


『うそ……』



ブレスは最後の最後で耐えていたアジダハーカの顔面に直撃し、アジダハーカはゆっくりと次元の世界へ落ちて行った。


颯太くんの口癖は『くそ』です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ