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敏捷値が高い=強い(旧題ランゲージバトル)  作者: また太び
続 8章 現実世界での戦闘
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暗黒竜と紅蓮の竜

ボルケーノの特殊能力である破砕龍撃は自身の攻撃にレベル依存の追加固定ダメージを与える能力であり、これによって竜也は何とか アジダハーカと渡り合うことが出来ていた。



「ははっ!」



小回りが利くように小さく、そして2丁の大砲に変形した大砲を握りながら半ば精神がおかしくなりつつある竜也は、一歩も後ろへ引かぬ戦いをしながら笑っている。



『………』



ボルケーノは既に竜也の精神パラメーターが限界を振り切っていることに気付いていた。普通の神器ならば即座に戦闘を終了し、自身の主へ撤退を進言するところなのだが、ボルケーノはここまで来たのならば最後まで彼の好きにさせることにした。


それが彼に破滅をもたらすものだとしても。



「ボルケーノ!今何分だ!」


『戦闘開始から10分が経過した。この調子で行けば30分は余裕だろう』


「オッケーオッケー!」


『竜也の精神汚染が進んでしまっているようだが……この炎は一体……これではまるで……』



黒炎を操る龍などランゲージバトルの過去を紐解いても1体しか存在しない。


その名は『魔龍バハムート』かつてプレイヤー同士の大戦争が起きた際にPKギルド側のリーダーの男の神器として活躍した最強にして最悪の竜型神器。


竜型神器にはそれぞれの色が与えられており、バハムートは黒。ゲオルギウスは白。ボルケーノは赤。アルカディアスは黄。セイリュウは青。ヴリトラは紫。アジダハーカは虹のように他の色と被ることは決してあり得ない。


だが、今の竜也が握る大砲から溢れる炎はボルケーノの赤い炎に混じって時折黒炎が噴き出し、その黒炎の砲弾が発射され、アジダハーカに着弾したその時だけ固定ダメージではなく、純粋な耐性を上回る破壊力でアジダハーカを押し返しているのだ。



『奴は滅びたはずだ………だが、何故今になって我に力を貸す……』



ボルケーノは竜也の精神状態よりもバハムートの方が気になって仕方がなかった。



「よっと!なんだか身体が軽いぜ!おいおい、こんな状況だってのに過去最高のコンディションじゃねえか!」


『竜也……それは……』


「言うな。分かってるさ、この力はお前のもんじゃねえってことくらい。だけどよ、誰か知らねえけど、この力のおかげで俺はようやく皆の役に立てるんだ」



触手を砲弾で吹き飛ばしながら竜也は黒炎を滾らせながら前を向く。目の前で触手を吹き飛ばされたアジダハーカは、先ほどから何が起きているのか分かっておらず、何故神器使い1人にここまで手こずるのか不思議で仕方がないようだ。



「名前は分からないけど、お前に感謝するぜ」



竜也の言葉に気を良くしたのか、黒炎は笑うかのようにごうごうと更に炎の勢いが増す。



『………貴様の考えは分からぬが、竜也に何かしようと思えば我が黙っていないぞ』



そしてボルケーノの言葉を聞いて更に炎は燃え盛る。


アジダハーカはこのままでは竜也に勝てないと悟ったのか、身体の一部を変形させて翼を生やす。



「はは、まさか飛ぶつもりか?」


『射程外から攻撃するつもりかもしれん』



乾いた声を出す竜也は大砲を持たない左手の拳を握る。それは明らかに彼自身が意識してやっているような様子ではなく、何かに操られているかのようだった。



『竜也……?む!?』


「オラァ!!」



握った拳から黒炎が巻き起こり、竜也は拳を突き出した。突き出された勢いと共にアジダハーカへ飛んで行く黒炎は邪悪なドラゴンの顔へ変形し、今飛び立とうとするアジダハーカの翼へ食らいつく。



「-------!?!?!?!!」



ほとんど理性など残っていないアジダハーカではあるが、その時初めて心の奥底から恐怖した。

恐怖を与える側に立つアジダハーカはバハムートという強大で、凶悪な存在に怯えたのだ。



食らいついたドラゴンが爆発し、アジダハーカは爆風を受けて転がる。



「はははははは!!!!」



そして竜也は狂ったように笑い、自分の神器である大砲を投げ捨てる。



『竜也!?何を!?―――まさか!?既にバハムートが!!』



投げ捨てられたボルケーノは武器状態を解除して竜也に駆け寄ろうとし、そこで凶悪な神器反応を感じ取って足を止める。



「貴様……!!!!」



ゆらりと竜也の背後から現れた黒炎をボルケーノは睨む。炎は徐々に形を変えて一体のドラゴンへと変化していく。



「やはりバハムート!!なぜ貴様が生きている!!!」


「そう殺気立つな、同じ竜型神器同士仲良くしよう」



ボルケーノと似たフォルムを持つ黒いドラゴンは竜也の体内から現れ、ボルケーノの前に立つ。


漆黒の鱗を身に纏い、バチバチと紫電を散らし、剛腕で腕を組むバハムートとボルケーノは睨み合う。



「我の質問に答えよ」


「なぁボルケーノ。神器が壊れるとどうなるか知っているか?」


「その言葉と我の質問に一体何の関係がある」



バハムートは右手を無造作に振る。すると突如として地面から噴き出した黒炎がアジダハーカを飲み込み、ドーム状の結界を作り上げた。



「いんや、関係はある。で、わかるか?」


「分かるはずがないだろう」


「ま、それもそのはずだ。なんせそのことが分かる奴は実際に死んだ奴にしか分からないからな」


「何が言いたい」


「まぁまぁそう急くな。答えだが、死んだ神器は廃棄データとして捨てられるのさ」


「廃棄データだと…?」


「そう、廃棄データ。で、だ。あのアジダハーカって奴の正体、お前らは分かっているのか?」


「それは………」


「んだよ、お前らあんな一生懸命戦っていてあいつの正体何一つ分かってねえのかよ」


「あやつと戦闘をしたことがあるプレイヤーが少なすぎるのだ」


「イレギュラーもいいとこだしなァ………ま、時間もあまりねえから答えを言うけど、あいつはその廃棄データの集合体だ」


「なに!?いや、薄々は気付いていた。他の神器のコア反応が多数あることから、もしやとは思っていたが……―――まさか貴様も……だが、お前は意識が……」


「オレ様を他の神器と一緒にすんな。最初こそは廃棄データとして狭間を彷徨っていたが、あの泥の竜が来てからは話が変わった。あいつは自分の主の願いを叶えようとしているらしくてな。持ち前の神器を吸収する能力で、辺りに漂う廃棄されたデータを全部取り込んで行ったわけよ」



バハムートは語る。


凶悪な神器が故に破壊された後でも自我を保ち続け、いつか復活する機会を窺っていたことを。


そこで丁度アジダハーカが落ちてきて、吸収された後でも機を見て脱出してやろうと思っていたらしいのだが、神器はプレイヤーあって存在することが出来るというシステムを覆すことが出来なかった。


自分の依り代となるプレイヤーは条件として同じ竜型適性を持つプレイヤーに限り、尚且つ純粋さを持つ影で闇にも傾く才能を持つ者。

そもそも竜型神器などあまりにも少なく、その中で闇属性を得ている竜型などヴリトラしか存在していない。そして肝心のヴリトラも既に破壊されており、同じく廃棄データとして虚ろに彷徨っているだけ。


もうこのまま自分がここで一生過ごすのかと思うと気が狂いそうだった。しかし、バハムートはじっと諦めることもなく、復活のその日をひたすら待ち続けた。


そしてようやく復活の時が訪れたのだ。

まさかいきなり現実世界にやってくるとは思わなかったが、目の前にボルケーノを操る少年がおり、バハムートは声にならない雄たけびを上げた。そして自分も入れるに十分値する器も持っていることが分かったその時、彼は動いた。


ボルケーノに気付かれないように、アジダハーカの精神汚染に混じって自分の存在を竜也の中に植え付けていく。

ガンドレアに気付かれる可能性も考慮したが、幸い解析に忙しいのか、全くこちらに気付く様子もなく難なく竜也の中に潜り込むことが出来たのだ。



「だが!プレイヤーには1体の神器しか操れないはず!」


「くははは!!ああ、そうとも。だから、お前の枠に取って代わるように侵食した」


「なにっ!?」


「今竜也の中にはオレ様とお前の神器がせめぎ合っている状態だ。気を抜いた瞬間お前を廃棄データとして追い出してやるからな」


「バハムート貴様!!!」


「――――!」



竜の姿へ変わったボルケーノは翼を羽ばたかせてバハムートに襲い掛かる。


バハムートは紅蓮の炎を纏う右こぶしをぎりぎりで躱し、同じく漆黒の炎を纏った右こぶしを繰り出す。



「――――っ!むん!!!」


「ははっ!!」



ボルケーノは頬を掠めながら過ぎる右腕を掴むと、そのままバハムートを大地に叩きつける。だが、バハムートはただ叩きつけられたわけではなく、がら空きとなったボルケーノの腹部を薙ぐように強烈なテイルアタックを繰り出していた。



「ぐふっ!!」


「おいおい、今はそんなことしている場合か?」


「だが、貴様をここで消さねば竜也の身が危ういこともまた事実!」



掴まれた腕を強引に振りほどいたバハムートは空中に飛び上がる。



「お前が続けるって言うのならオレ様は一向に構わないが、あいつは待ってくれないぜ?」



バハムートの視線の先を追えば、そこには結界を打ち破って怒り狂うアジダハーカの姿があった。



「おい、2人とも。今の俺には何だかよく分からねえが、俺はあいつらの先輩として時間を稼がなくちゃならねえんだ」



そこへ今まで荒い息を吐いて地面に膝をついていた竜也がしっかりと大地を踏みしめて立っていた。



「竜也……身体は大丈夫なのか……」


「おう、なんだかそこのドラゴンが来てから頭の中でうるさかった声が和らいだんだ」


「オレ様の精神汚染で無理やりアジダハーカの精神汚染を上書きしているだけだ」


「貴様、そんなことをすれば竜也の脳が崩壊してしまうぞ!!」


「ならどうすればいいんだよ?どの道アジダハーカの精神汚染で脳が崩壊するぞ?」


「くっ……それは……!!」


「ボルケーノ、気にすんな。俺は大丈夫だ。2人とも、今はあいつを止めるのに協力してくれ」


「竜也!?それはこやつがどんな神器か知ってのことか!?」


「ああ、想像がつくぜ。竜型で黒い炎を操るドラゴン……そんなの1体しかいないからな」


「ほほう、オレ様の存在を分かった上で協力を求めるか。面白い、お前面白いな」


「はは、それは光栄なことで」



そこで竜也は迫るアジダハーカを一度見てから真剣な表情で2体の竜を見据える。



「協力、してくれるか」


「…………竜也の言葉に従おう……」


「いいだろう。どの道あいつは邪魔だ。ボルケーノ、続きは後にするとしよう」


「貴様の存在は許さぬ。だが、今は―――」


「ああ、共にぶっ潰そうではないか」



2体の竜は炎となって竜也の体内に入っていく。そしてそれと同時に竜也の神器データに変化が起きた。




???世代目型神器『暗黒炎竜』

 攻撃:EX 耐久:EX 敏捷:A 幸運:C

 能力 1:武器変形D- 2:逆鱗B 3:破砕龍撃A 4反逆する竜王EX 5:始まりの暗黒EX 

     6:プレッシャーC 7:魔竜の加護EX 8:神器連結システム


 覚醒能力 1:ダブル・ハドロンブレスA 2:顕現する始源の竜EX

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