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運営の手先

「お前!?何を言っているんだ!?」


「ちょっとレーナさん!?」


「え!?どういうこと!?」


「混沌、まさかお主…」


「うん。颯太達、これ見たら多分消されるよ?」



今度こそ颯太達は絶句する羽目になった。

レーナと初めて出会った時のように身体の一部が侵食されて行く悪寒。

6月の穏やかな気温が一気に凍りつく。



「それでも見たい?私は颯太を守るために全力で人だろうと機械だろうと戦うけど、流石に厳しいよ?」


「ま、まだ殺されると決まったわけじゃ…」


「琥太郎は分かるよね?颯太も分かるよね?外に神器の反応があること」


「なにッ!?ほ、本当だ……混沌…これは…!」


「くッ…!神器の反応が10!?」


「琥太郎どういうこと!?」


「まさかもう運営が…?」


「多分、このファイルを見たら飛び込んでくるよ。騒ぎになるのはあちらとして困るけど、運営の秘密を知られるのも困るってことだね」


「…………詩織さん…恵理さん…」


「どうやらここの家は前から監視されていたっぽいね。やっぱりこのファイルがあるせいかな。琥太郎は感じなかったの?」


「妙な気配は常に感じていた。だが、こちらが赴くわけにも行くまい」


「それもそうだね。颯太、燃やすよ?」


「レーナの言う通りにしよう……このままでは」


「うん……危ないね」


「そうだね。これはちょっと洒落にならないなぁ…」


「レーナ、処分してくれ」


「うん!」



その答えに満足したのかどす黒い表情を消して、レーナの表情は太陽のように明るくなる。

レーナは周りをキョロキョロ見渡してシュレッターハサミを見つける。



「ちょきちょきっと」



ファイルの紙を全部切り刻み、皆を連れて台所へ行く。



「んじゃ、燃やすね」



ガスコンロの火で念入りに燃やすとレーナは何とあろうことか消し炭となった紙を食べてしまった。



「これでオーケー」


「外にいる神器の反応も消滅した。どうやら我らの目を介し見ているというのは誠のようだな」


「とりあえず部屋に戻ろ?」



部屋に戻っても皆は無言だった。

まさかここまで運営の手が早いとは誰が思っただろうか。



「ちなみに私達を放り出してファイルを見てても同じ事だね。きっと不審に思われてざぐっと刺されちゃうね」


「レーナ、もしかしすると今のお前の話しから聞いていた限りでは、あのブログを書いた人は……」


「殺されただろうね。過去に参加した人の名前とかは検索できないけど、ネット何て上げてしまえば拡散し放題なんだから、消されて当然だよ」


「やっぱりか……だが、そのブログの内容は見れなかったが、運営の秘密主義の徹底っぷりは分かった。自分で答えに辿りつくのはありなんだな?」


「ありだと思うよ。他者から得た答えはきっとダメ。それに颯太。分かったとしても絶対に喋っちゃダメ。私にも」


「あぁ……」


「運営から独立出来ないか私も探ってみるけど、私はブログの最後のページまで見てしまった」



その言葉に颯太達の顔は驚愕に変わる。



「でも、言えない。言ったら颯太達が死んでしまう。そんなのヤダ。だから颯太、あんまり無茶しないで。ゲームは楽しむものだよ?変に探って消されたりなんかしたら、私はランゲージバトルを混沌で包む」



レーナは本気だった。

本気で颯太がいなくなったらランゲージという名の将棋盤をひっくり返す――――いや、それどころか破壊してしまうだろう。

普通の神器には不可能だ。だが、全てを呑み込む混沌の力を持つこの少女ならば、本当にやってのけてしまう。



「運営はもちろんこの話の内容を聞いているはず。だから、私の本気も伝わったと思うし、さっきの神器を差し向けるような下手な接触は避けると思う」



颯太達もレーナの忠告を固唾を飲んで聞いていた。



「んじゃ、私の忠告、颯太への愛。その他もろもろ二人と運営さんには伝わったという事で私喉渇いたな~。ここの近くにスーパーとかないの?」


「あぁ、あるわよ。レーナちゃん。私といこっか?」


「うん!いくいく!琥太郎も行こう?」


「ふむ…まぁよかろう」


「うわ、珍しい。琥太郎が自分の意思で動くなんて」



その時、レーナは琥太郎に意味ありげな視線を送っていたのが分かった。

そして目線は恵理に向けたまま、颯太の服の袖を引っ張る。



「………」



颯太はレーナの手からFDを受け取る。



「ほら!いこ!」


「やっぱり皆飲むから2リットルが良いわよね」


「私はお茶をお勧めする」


「えー!やだ!炭酸ジュースがいい!」



3人は何を飲むか話し合いながら部屋を出て行く。レーナはその時颯太にだけ見えるように左手を背中の腰に当てて手を開いたり、閉じたりしてみせる。



「気を付けていくんだぞ!あと、恵理さんに迷惑かけるなよ!」



颯太はいつも通りに母さんと買い物に行くレーナに言っているセリフを口にして、3人が家から完全に出て行ったことを確認する。



「詩織さん、今日は眩しいからカーテンを閉めてくれないかな」


「え?あぁ、うん。確かに眩しいよね」



詩織が立ち上がって部屋のカーテンを全部閉める。



「部屋のライトは消したままでいい。詩織さん、こっちに」


「え?えと……ど、どういうこと…」


「いいから早く!」


「え!?あぁ!はい!」



颯太のすぐ隣に座って詩織は目を瞑る。

が、いつまでも何もしてこない颯太に詩織は目を開けると、颯太は汗を流しながら左目を使っていた。



「颯太さん?」


「よし、周りに神器の反応はない。いいか、もし声が漏れる可能性を考慮してこれからは小声で喋る」


「う、うん……」


「実はレーナが俺に誰にも気づかれないようにFDを渡して行った。もちろんネットワーク回線は切ってある。もちろん怪しまれる可能性もあるから、すぐに読んだら証拠隠滅にかかる」


「分かった……」


「タイマーは10分にセット。レーナがさっき俺にパーを2回見せたのはきっと5分と5分。つまり10分間時間を稼ぐから、その間に読みきれってことだ」


「あ、ただ手を握っているだけかと思った」


「詩織さんには見えていたか………でも、琥太郎は既に恵理さんと一緒に出て行った後だから大丈夫か……」


「颯太さん、大丈夫?」


「もしものためにも常に混沌の目は発動させておく。こうでもしないと落ち着かないんだ」



汗を流す颯太は携帯のタイマーを起動させる。



「よし、読むぞ」


「う、うん…」



FDのメモを開き、更新された時間帯で最新のものを開く。



「なんだこれ……」


「え、なにこれ……」



開いたメモにはやけにカタカナが多い文だった。



「詩織さん、紙を」


「分かった」


『やけにカオスモーメント・レーナの名前が多いが……』



ところどころに散りばめられたレーナの名前。



「持って来たよ」


「ありがとう。この紙もレーナ達が帰って来る前に燃やしてトイレに流す」


「証拠隠滅だね。分かった。それにしてもレーナさんの名前が多いね。ひらがな少ないよ」


「レーナは最近推理アニメにはまっていたからな―――――あッ!そうか!詩織さん、昨日の名探偵カレンの事件解決編見た!?」


「見た!」


「あの手がかりの解読方法を知らないか?丁度その時俺は風呂に入っていて見逃したんだ」


「えっと、確か自分の名前をカタカナにしてそれを抜き読み――――あッ!」


「それだ!詩織さん、俺が紙に書くからレーナの名前を抜いた字を言ってくれ」


「分かった!」



颯太は紙にペンを走らせた。

時間は残り少ない。証拠隠滅に使用する時間は大体2分。そして今の残り時間は5分。

読むこと、そしてその意味を理解するのに3分しかない。

レーナに時間引き伸ばしなど無理だ。元からこれは神器にばれてはいけないもの。

尋常じゃない焦りが颯太を襲う。



「書いたッ!」


「読み上げるね!」



ジンキ ハ ウンエイ ノ テサキ ダ シンヨウ スルナ。


オレ ハ ジンキ ニ コロサレタ。



「詩織さん!今はいい!とにかく燃やせ!」


「はい!!」



颯太はメモ用紙を乱暴に引きちぎり、詩織に渡す。

彼女は陸上選手がバトンを受け取るかのようにメモを受け取って階段を落ちるように降りて行った。



「残り時間は…!あと1分…!やばい!思った以上にかかってしまった!詩織さん!早く!」


「燃やしてトイレに流してきた!!」


「なんだ!?じ、神器反応が1つ!?」


「えッ!?来ているの!?」


「あぁ!や、やばい!この家だ!」


「颯太さん!FDの方は!?」


「もう消した!ネット回線に繋いでいないから復元は不可能なはず!」



バタン―――!!!


玄関の扉が開かれた。



「か、隠れよう!」


「ど、どこに!?」


「―――――!もうベッドの下しかない!」


「ええッ?!」



颯太は詩織をベッドの下に押し込んで自分も中に隠れる。


コツコツコツ―――と階段を上がって来るのがはっきりと分かる。


混沌の左目の力を解除し、颯太は震える詩織を抱きしめて、恐怖を出来るだけ和らげようとした。



『入って来た…!』


「ギチギチ…」


『虫…!?』



詩織が目を見開いて息を呑むを感じる。


足しか見えないが、明らかにこの世のものではない。

あんな2足で歩く虫なんて見たこともない。



「ギ―――ギギギ?」


『どうやら俺達を探しているようだな』


『颯太さん…!』


『大丈夫…大丈夫だから…!』



出来るだけ詩織の視界に虫の姿が入らないように颯太は、彼女の顔を強く抱きしめる。



『レーナァアアアア!』


『ふふ、うふふふ』


『レーナ?それよりやばいんだ!!エーリアンみたいな虫が!』


『な~るほど。パラセクトソルジャーを送ってきたんだぁ………ねえ颯太ぁ』


『な、なんだよ』


『運営さんはね?颯太が何をしているのか気になっているみたいだよ?状況を説明してくれないかなぁ?』


『え?どういう状況?その虫が必死に俺達の事を探しているようだが』


『そうじゃないそうじゃない。そうじゃないんだよ~。ねえ、詩織と何をしているのか聞いているの、分かるかなぁ?』


『……だ……』


『だぁ?』


『抱きしめ合っています……』


『なぁんで?』



恐らくレーナは颯太を助けようとしているのだろう。

かなりこわ~い私情も入っていそうだが、それでも彼女は自分の大好きな主を救おうとしている。



『その…二人でいたらムラっとしてしまい、勢いで抱きしめてしまったというか…』


『へえ?詩織はどんな感じ?』


『お……お、俺の事を受け入れています…』


『虫がいなかったらどうなってた?』


『大人の階段を昇っていたと思います……虫が本当に良いタイミングで邪魔してくれてさ……』



そこまで言うとパラセクトソルジャーは初めからいなかったかのように消えて行った。



『後でお仕置きだね』


「き、消えた?」


「あぁ、レーナが俺達を助けてくれた」


『ありがとう。レーナ、後で抱きしめてやる。何なら一緒に今夜寝てあげてもいい』


『ホント!?なら許してあげる!お風呂も一緒にはいろ!』


『え!?あ、あぁ…』


『入ろうよ』


『入ります!』



一気にテンションが低くなったレーナに颯太は何も考えず答えた。



「虫は…本当にいないみたいだな」


「危なかったね…」


「これは俺達だけの胸にとどめておこう。それに余り秘密にしては悪い気がするが、竜也と香織さんにも絶対に言ってはいけない。君のお姉さんも同様だ」


「うん。分かっているよ」



ベッドから這い出た颯太と詩織は二人だけの秘密にした。



「もちろんランゲージの中でもご法度だ。あっちは運営が管理する世界。声が聞かれたとしてもおかしくはない」


「これは颯太さんとあたしだけの胸にとどめておくね」


「うん。よし!後はもう気にせずゲームなり、何なりして楽しもう!」



颯太は部屋のカーテンを開けて外の空気を入れ替えようとした瞬間―――――



『ギギギ?』


「うわあああ!?」


「颯太さん!?どうかしたの!?」



驚いた颯太に詩織が駆け寄って同じく窓を見る――――



「ってただバッタが窓にいただけじゃない」


「み、見間違いか…?」



だが、今の会話が例え聞かれていたとしてもセーフだと思う。

虫を見ていたことを秘密にしようとしていただけだし、レーナの文について一切触れていない。


そう自分に言い聞かせて颯太はどっと噴き出した汗を服の袖で拭う。



「すまん……どうも…やっぱりあれは男の俺でも怖かったみたいだ…」


「あたしも夢に出てきそうで怖い……」



同じ光景を見た者だからこそ言える感想だった。

余りにも非現実的すぎて頭に強くこびりついてしまっているようだ。



「颯太さん…」


「お、おい!」



詩織は颯太の胸に手を置いて密着した。

颯太は彼女の身体が震えている事に気付く。



「あの、ベッドの下で抱きしめてくれた時心強かった……あのおかげであたしは叫ばずにいられたし、颯太さんがいるだけで恐怖が和らいだ」


「俺だって詩織さんがいなかったらきっと叫んでいた。お互い様だよ」


「でも、それでも……嬉しかった」



詩織が颯太の顔を見上げてきた。

それはまるで恋をしている少女のようで、颯太は思わず顔を近づけて――――



『ただいまー!』


『帰ったわよー!』


『ただいま戻った』



その瞬間二人は光の速度でテーブルまで戻って座る。

颯太はわざとらしく携帯ゲームで遊び、詩織は髪を弄っている。



「炭酸ジュースとお茶両方買っちゃた。あとお菓子も買って来たから、これでど~んと夕方まで遊びましょ!」


「颯太ぁ」


「は、はい!」


「うふふ」



怖い。レーナが怖い。


この時レーナは颯太と今夜寝れること、お風呂に入れること、抱きしめて貰えることで頭がいっぱいであり、余りの嬉しさについ彼の名前を呼んでしまっただけだったのだ。

だがしかし、颯太は左目を共有している事から、さきほどの一部始終をレーナに見られていたと勘違いしており、内心で汗が滝のように流れる。



「さて颯太くん!君の腕を見せてもらうよ!さぁ!私と勝負だ!」


「お!これはいいゲームを持っていますね。いいですよ。これ結構やりこんでいましたし、お相手しましょう」



颯太は恵理から渡されたコントローラーを握るとレーナのような悪魔地味た笑みを浮かべてゲームに臨んだ。


自分で書いていて鳥肌が立つってどんだけ私恐怖系の耐性がないんだと。

そこまで怖いもんじゃないんですけど、私の耐性が低すぎるだけですよね。

だから、途中コメディっぽいことも入れてますし、レーナがこういうキャラだから仕方がないんですけどね。こういう話になってしまうのは。

まぁ私が書いてきた中で新しいキャラですから、結構話がポンポン作りやすいですし、動かしやすいんですよ。

ヒロインかと聞かれればまぁ一応レーナもヒロインなのかなぁw

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