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会議3

「颯太、少しいいか」



トイレを済ませて部屋に戻る途中、携帯電話を片手にクレアが現れた。何やら事情がありそうな雰囲気を出しており、竜也とボルケーノは事情を察して先に部屋へ戻っていった。



「どうしたんですか?」


「尾崎の件で進展があったと和彦君から電話があった」


「え、尾崎の件で何かわかったの?」


「それ本当ですか!?って兄貴も一緒に調べていたんですね…」


「私一人で頭を抱えていたら和彦君が手伝うと言ってね。本当ならば出来るだけ一般人である彼を巻き込みたくないのだが、流石君の兄さんと言ったところか。気付けば協力を承諾していたよ。無茶のところも君そっくりだ」


「まぁああ見えて兄貴も内で燃えるタイプですからね」


「そんなところも……彼のいいところなのだが……」


「はい?」


「え?クレアって…」


「あ……ごほん!とりあえず場所を変えよう。ここでは少し話しずらい」



クレアの赤面する顔を初めて見た颯太は目を白黒させ、レーナはクレアをどこか怪しむように見ており、そんな2人の視線を受けてクレアは強引に話題を変えてすたすたと廊下を歩いて行った。



「もしかしてクレアさんって…」


「ま、和彦に惚れているんだろうね。ちょっと驚きだけど」


「兄貴もクレアさんのこと嫌っていないし、このまま行くと…」


「もしかすると将来颯太のお義姉さんになるかもね」


「ははは……」



颯太はレーナの言葉に乾いた笑い声をあげることしかできなかった。




「いい風だな」


「そろそろ秋ですし、涼しい風が吹くようになってきましたよね」


「私は夏の夜に吹く風の方が好きかな~。あのからっとしてる風が好き」



クレアの後をついてきてやってきたベランダには秋の到来を感じる涼しい風が吹いていた。春とはまた違う冷たさを感じる風。そんな風はクレアとレーナの美しい金髪を優しく撫でるようになびかせた。



「颯太、五十嵐いがらし 慎二しんじという名前に聞き覚えはないか?」



ベランダの手すりに背を預けてこちらに振り返ったクレアはそう話を切り出した。



「ええ、知っています」


「五十嵐…?颯太その人誰?」


「レーナが知らないのは無理もないな。五十嵐さんは俺の周辺地区を担当する宅配業者なんだよ」


「あ~たまに荷物持ってきてお母さんにぺこぺこ頭下げている人か~」


「ん、まぁその認識で間違ってはいないかな………それで五十嵐さんが尾崎とどんな関係が?」


「直接的な関わりはないと思われるが、尾崎の家とは親戚の関係にあったそうだ」


「え!?マジっすか!?」


「今和彦君が五十嵐慎二について調べているが、これが面白いことに何一つとして五十嵐慎二に関する情報が出てこないらしい」


「妙ですね。ですが、五十嵐さんも宅配業者という職種に就いているのですから、その会社に履歴書なりある程度の個人情報は開示していると思うのですが」


「もちろんそこも調べた」


「え…?どうやってさ」


「和彦君の知り合いにハッカーがいてな。私が資金提供する代わりに少々その宅配会社にハッキングをして情報を見せて貰ったのだ」


「なかなか強引な手を使ったねえ……大丈夫なの?」


「痕跡は残すようなヘマはしていない」


「ならいいんだけどさ。で、ハッキングしても結局のところ分からなかったわけでしょ?」


「そうだな。そこで和彦君がよく颯太は五十嵐慎二と会話していたと聞いたので、こうして呼び出したというわけだ」


「なるほど。ですが、俺も五十嵐さん本人の事情は知りませんよ。よく家庭用のゲーム機でオンライン対戦をしたり、ボイチャでゲームのことについて話したくらいで…」


「ん?颯太、五十嵐慎二をフレンド登録しているか?」


「え、あぁ、はい。五十嵐さんとはお互いフレンド同士です」


「ふむ………伊澄をもう一度仙台に呼ぶ必要があるな…」


「どうするつもり?」


「もう少し考えがまとまった時に話す。さて、一度部屋に戻るとしよう」


「あ、完全に忘れていました……皆待っていますよね」


「香織には遅れるから先に食べていていいと言っておいたが、早めに戻ることに越したことはない」


「香織とか皆の性格からして待っていると思うけどね」



3人は急いで話を切り上げて会議室に戻るのであった。




それからやっぱり3人の帰りを待っていた香織達と食事を取り、食後のデザートをいただき終わったところで会議は再開された。



「さて、会議を再開しようか」


「あと何か話すことありましたっけ」


『颯太……いい?』


「伊澄さんどうぞ」


『シンの神器は破壊しないの…?』


「ふむ、それも検討せねばなるまいな」


「神器の破壊……か…私、考えたことなかったな」


「俺たちもリアルで襲われたわけだし、その首謀者がシンなんだろ?放っておくとまた面倒なこと起こされるしなぁ……」


『危険な男に変わりはない。四神達には悪いが、セイリュウは破壊するべきだ』


「四神達はああ見えて仲が悪い」



ボルケーノの言葉にレーナ以外皆驚いた。



「んだね~。スザクとビャッコは仲がいいけど、ゲンブとセイリュウは最悪だよ」


「なんで仲が悪いんだ?昔何かあったのか?」


「昔、一度だけ四神達が奇跡的に揃って合体したことがあったんだけど、それワタシの過去のご主人がぶっ潰しちゃってさ。それからというもの、司令塔のセイリュウは神器コアに異常が発生したのか、闇雲に力を求めるようになったし、ゲンブもセイリュウの言いなりになっちゃった。唯一無事なのは悪を絶対許さない~とかほざいているスザクとビャッコだけかな」



と、青い瞳になっているレーナが椅子の背もたれに背を預けながら言う。



「流石四神のカウンターとして機能しているだけあるね……あたしなら真っ先に逃げちゃうよ…」


「四神が合体したとき、その身体を操作するのはセイリュウの神器使いだ。セイリュウの神器使いが四神合体をうまく使いこなせなければ所詮木偶の坊に過ぎぬ」


「つまりその敗北をきっかけに四神達の仲が崩壊し、お互いに敵対しあうようになったわけか?」


「そうなるね。セイリュウに戦闘を任せるくらいなら自分らで戦った方がまだ勝ち目はあると悟ったんだろうね。まぁんなことしてもワタシには勝てないけど」



そこでレーナは一度身体を起こして目を閉じる。すると次に目を開いた時にはいつものワインレッドの赤い瞳に変わっていた。



「んえ……」


「また変わっていたぞ…」


「え…いつの間に……」



寝ぼけたような声を出したレーナに耳打ちするとぎょっと目を見開き、ぎりっと奥歯を噛んだ。どうやら勝手に出てきてことが許せないらしい。



「セイリュウの神器破壊は私がやろう。今後のことを考えて障害となるべきものは排除すべきだ」


『んじゃクレアに任せる……他のギルドメンバーは?』


「ダンジョン形式になっているのであればHPバーがあるでしょうから、倒してカナリアの中央噴水広場送りにしてやりましょう」


『倒した奴らがまた戻ってくる可能性もあるから今回は電撃戦か』


「リアルのユキナの身体も心配だ。出来るだけ早めに決着をつけることにしよう」


「ランゲージバトルに拘束されているってことは現実世界に帰れていないってことだし、結構やばい状態だよね…」


「恐らく既に病院に搬送されていることだろう。ユキナが誘拐されていなければ、だが」


「ユキナちゃん……大丈夫かしら…」


『起きたら全然知らない場所にいた、とかなら洒落にならないわね』


「いや、ユキナは多分病院にいると思うよ」


「どうして颯太はそう思うの?」


「ユキナが誘拐と考えると、まず誘拐された日付は俺たちがキャンプに行った日だ。でもさ、考えてみてほしいんだが、一般の人間が病院にあるような点滴を用意出来ると思うのか?それも今の今まで」


『わたしの家なら可能な話だけど……環境を整えるのと機材の発注だけでかなりのコネを使わないといけないから、まぁあまり現実的な話じゃない……


『出来なくもないが、現実的ではない、か。もしそれが可能だったとしたら相当有名な金持ちだろうしな。足はつくだろう』


「えっと、つまりリアルのユキナちゃんは無事ってことでいいのね?」


「あくまで推測だけどな」


「んじゃなにさ、あの襲撃があった日ユキナちゃんはランゲージバトルの世界で襲われたってこと?」


「そうなるだろう。そして何らかの手段を用いられてユキナはランゲージバトルからログアウトすることが出来なくなった、というところか」


『……わたし達のFDにユキナの名前が載らなかったのは、ユキナの反応がカナリアの外にあったからログアウト状態なのか、ログイン状態なのか分からない曖昧な状態になっていて、結果としてFDに表示されたのがログアウト表記なんだと思うよ…』


「伊澄さんはどうやってユキナちゃんを見つけたの?カナリアの外ってそれもうゲーム内で行ける範囲を軽く超えているんだけど…」


『ガンドレアの索敵レーダーにたまに反応があった……でも、カナリアの外だったし、ビャッコの反応が余りにも小さ過ぎてクレアの話を聞かなかったらずっと気のせいだと思っていた……』


「流石伊澄ちゃんとガンドレアだな。やっぱそういうとこ頼りになるぜ」


『えへへ……竜也に褒められた……やったね、ガンドレア…』



竜也に褒められた伊澄は傍に控えるガンドレアに話しかけると、ガンドレアは皆にも聞こえるくらい大きな声で鳴いた。



「ユキナの居場所も役割分担も決めた。あとは…」


「突入時刻…かな?」


「香織さんの言う通りだな。いつシンのアジトに乗り込みますか」


「そこはグレイヴのギルドと話し合ってみなければならないだろう。グレイヴとの話し合いには颯太、私、伊澄、滉介の4人で行こう」


『何故俺なんだ』


「番外世代の神器に詳しいのは滉介とリーナしかいないからな。当然だ。伊澄もそれでいいな?」


『問題ない。常に臨戦態勢で待機しておく…』


『全く物騒な話だな…』


「あたし達はどこで待機していればいいですかー?」


「詩織達はギルドアジトで待機だ。何かあるとは思わないが、もしもの時に備えて常に動けるようにしておいてくれ」


『了解!』



大体の議題を話し終わったところで颯太は一息ついた。

どうもまた太びです。


今回のお話しで会議編は終わりですかね。前回の話で今後の話の流れを大雑把に書いたような気がしますが、次はグレイヴマスターと幹部を交えた話し合いになります。さて、竜也とヒカルの出会いはどうなってしまうのか…

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