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空間の歪み

それから数日後、ランゲージバトルのアップデート日ということで、今月のアリーナ内容やらを皆で確認しに行くためギルドのアジトに足を運んだ颯太であったが、アジトにいたのはクレアと伊澄だけだった。



「あれ、竜也達いないんですね」


「竜也はフレンドと先に見に行ったぞ。香織は今日家の用事でログイン出来ないそうで、詩織は遅れてくるそうだから先に行っていてくれとのことだ」


「なるほど……」



横目でチラリと伊澄の様子を窺えば、案の定彼女はむすっとしていた。伊澄とは余り話したことがないが、それでも彼女が竜也のことを好いていることは分かっていた。

自分と行くよりフレンドのことを優先した竜也に憤慨しているのだろう。彼女だって竜也について行きたいはずなのだが、まさかギルドのことを優先して――――



「あぁ、伊澄か?伊澄は竜也についていこうとして断られたんだ。特に気にしないでくれ」



あ、やっぱりか。ギルドを優先―――そんなことあるわけもなく、颯太は自分の思考を振り返って苦笑する。



「さてと、颯太も来たことだし行くとするか。ほら、伊澄。いつまで拗ねているつもりだ」


「………拗ねてない…」



あからさまに口をへの字にしている伊澄が椅子から降りると無言でスタスタ歩いてアジトを出て行ってしまった。

クレアに目を向ければ彼女の大げさに肩をすくめて見せ、伊澄に続いてマントを翻しながらアジトを出て行く。颯太もまたクレアに続いた。



「あの、クレアさん」


「ん?なんだ?」



中央広場に向かう途中、颯太は行方が分からなくなったユキナのことをクレアに聞いてみた。彼女と考えるのではない、颯太は今彼女の中にある考えを聞きたかったのだ。



「ユキナか………―――どうやら君は既に自分の中で答えが出ているようだな」



いつものどこか余裕のある口調ではなく、鋭く突き刺さるような口調に変わったクレアに颯太は息を呑む。



「では、余計なことを話さず結論だけを言おう―――――ユキナが自分の力でここに来ることはないだろう」


「……やっぱりですか」


「うむ、私と颯太の考えが合っていて何よりだ」


「そう……ですね…―――クレアさんはその考えにたどり着くまでいつ頃までかかったんです?」


「君達がユキナの行方が気になり始めた時だ」


「あっ!あの時ですか!?クレアさんなんだかずっと黙っているなって思ったら…」


「厳密に言えば辿りついたわけではないが、あの時は信じたくなかった。だが、ユキナはランゲージバトルを我々よりも好きだった。颯太も知っているだろう?いつも我々よりも先にログインしているユキナのことを」


「そうだ……ユキナはいつも誰よりも早くログインしてこのアジトにいた……そのユキナが…」


「何か勘違いしているようだが、ユキナは殺されてはいないだろう。そしてビャッコも破壊されていない」


「―――え!?どういうことですか!?」


「………分からないのだ。どれだけ考えようともビャッコを破壊する理由がな」



クレアは『まぁ私の憶測に過ぎないがな…』と申し訳なさそうに言葉を漏らす。それからクレアは眉間にしわを寄せ、難しい表情を作ると颯太を突き放すように言った。



「颯太、君は腕を磨くことだけに集中しろ。ユキナの件は私に任せておけ」


「と、突然なんですか!納得行く説明をしてくださいよ!」


「これ以上私に語ることはない。ユキナは大丈夫だ。ビャッコも生きている」


「いやだから―――」


「この話題は終わりだ」



何故ユキナ達が大丈夫なのか。何故そんなに自信ありげにクレアは言うのか。さっぱり分からない颯太を置いてクレアは先を行く伊澄と何やら話を始めるのであった。



「あなたは一体何を知っているというのですか…」


『…………話を聞いていたけど、この件は全部クレアに任せよう』


「レーナまで!?」


『もう1人のワタシもこの件は手を引けってさ。クレアが全部解決してくれるらしいよ』


「はぁ!?何を言っているか分からないって!」


『さぁ、私もよく分からないけど、クレアに任せたほうがいいと思うよ』


「…………どういうことなんだよ…」



1人だけ分からない颯太は胸の中の苛立ちを発散させることもなく、悔しげな表情を浮かべるだけだった。





時刻は0時を過ぎて午前2時。クレアはランゲージバトルのギルドアジトで伊澄を待っていた。



「きたよ……」


「よし」


「アップデートの情報見る前にこっそり耳打ちしてきたと思えばこんな時間に呼び出して……―――それで用件は?」



クレアが腰掛けるソファとは反対のソファに座り、クレアと自分以外誰もいない静まり返ったアジトにため息を漏らす。

いつもなら竜也の元気な声が常に響いているというのに。



「ユキナとビャッコの件だ」


「あぁ………セイリュウのシンのアジトにいるよ…」



クレアの一言で全てを察した伊澄は以前から気付いていたことを口にする。



「話が早くて助かる。それはガンドレアの索敵能力か?」


「まぁね……反応が薄いのか消えたり現れたりしてるから気のせいかなって思っていた。でも、クレアの言葉でわたしの勘違いじゃないって確信した…」



で、と伊澄は言葉を続け―――



「殴りこみに行く…?」


「もちろん」


「わたし達だけで…?」


「十分だろう」


「そうだね」



いつも無表情な伊澄がクレアの言葉で初めてにやりと口元を吊り上げ、意地の悪い笑みを浮かべる。



「我々の妹に手を出したのだ。伊澄、本気でりに行くぞ」


「ふふ、いいね……いつも手加減しているけど、クレアがそういうのなら本気出さないと…」



瞳のライトがグリーンのガンドレアの瞳がまるで危険を示すように赤く光だし、伊澄はそんなガンドレアの頭を優しく撫でる。



「場所は分かっているのだろう?」


「うん……でもね、そこカナリアのマップからかなり外れている…」


「どういうことだ?」


「さぁ……こればっかりは行ってみないと分からないね…」


「そうか。ならば、事は慎重に運ぶ必要があるな。下手をすれば私たちが足元をすくわれるかもしれん」


「そうだね……慎重に、そして大胆に行こう…」


「了解だ」



クレアはフェンリルを召喚してその背中に跨り、対する伊澄は覚醒能力によってガンドレアと一体化する。



「行くぞ!」



暗闇に閉ざされたカナリアの街を駆け抜けていく2人はガンドレアが示す位置に向かって走り出した。

伊澄は背中のブースターを使って建物の屋根へ昇っていき、クレアが駆るフェンリルも負けじとその脚力を生かして跳躍すると一気に伊澄と同じ建物の屋根へ躍り出る。



「余り意識したことはないが、こうして見るとカナリアから見る星空も綺麗なものだな」


「まぁ……ランゲージバトルの朝と夜の交代は短いしね………ゆっくり見る時間なんてなかったな…」



星空満点の夜空をクレアは見上げて関心するが、伊澄はあまり興味が無いようだった。



「お前ももう少し女の子らしくしたらどうだ」


「それどういう意味…?」


「おお、怖い怖い」



クレアがそんな軽口を叩けば即座に苛立ちと殺気が篭った言葉を伊澄が備え付けられた機銃と共に放つ。それをクレアは特に気にした素振りもなく氷の大剣で銃弾を切り裂いて見せ、伊澄は舌打ちをする。



「クレア……殺すよ」


「機銃をぶっ放しておいて言う奴のセリフじゃないな」


「ごめん、言葉より先に手が出た…」


「全然謝罪の意を感じられないな」


「今の完全にクレアが悪い…」


「いやなに、君が竜也の気を引きたいのならもう少しお淑やかに、女性らしく振る舞うべきだと助言をしたまでだ」



そこでまた機銃が飛び、クレアは涼しげな表情で銃弾を大剣で受ける。



「クレア嫌い…」


「ははは、悪い悪い。さ、そろそろ目的地だな」



空中でフェンリルの召喚を解除したクレアと伊澄が地上に着地し、まず目の前に広がったのは異様な景色だった。



「なんだ………空間が歪んでいる…?」


「……一応マップとしてはカナリアの一部だけど、構造上ダンジョン扱いで間違いないね」


「ここにユキナが?」


「もう反応が感じ取れないくらい微かだけど、ここにいるね」


「急ごう」


「危険だけど、いいの?」


「伊澄らしくない発言だな」


「ふむ………まぁいいや、行こう」



そうしてクレアと伊澄は空間の歪みの中へ足を踏み入れてカナリアから姿を消した。

どうもまた太びです。


遂に4月も始まり、これから社会に出る人や新たな学校へ進む人もいることでしょう。

あ、ちなみに私は大学生です。JDです(大嘘)。

私ももう少しすれば社会を動かす歯車の一部となって働くわけですが、何とも憂鬱な話ですね。さて、そんな湿っぽい話はやめて私が話したいことというのは、この小説家になろうというサイトがそんな社会や学校での疲れを得てしまった人達の楽しみになればと思っているんです。

何も私の話を読めと言っているわけでもなく、色々な作品を読んでていただいて『あ、これ面白いな。続きはまだかな?』と自分が好きな作家さんを見つけて通勤、通学の電車や昼休みになどに好きな作家さんの話の続きを読んで元気になって貰えたらなって思うんです。


私の作品を皆さんが読んでいただいて感想やご意見をくれたりすることが私の喜びであるように、私の作品が皆さんの元気の源の一部となってくれれば幸いです。

なんだかくさいことを書きましたが、これからもランゲージバトルをよろしくお願いします。

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