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消えたユキナ

「――――ってことがあったんだが」



それから颯太は自分のギルドのアジトに帰り、全員に召集をかけてレンと会話したこと全てを話した。



「なるほど。やはりあの男は襲撃に何の関わりも持たない男だったか」


「シン……ユキナちゃんと同じ四神の神器使いだよね…」


「で、颯太。分かったのはいいんだが、どうするつもりだ?報復なんて俺たちの柄じゃないだろう」



滉介にそう言われて颯太は頷く。



「報復はしない。ただ警戒だけはしておいてくれ。街中でも常にペアを組んで行動し、危なくなったらすぐにログアウトするんだ」


「犯人が分かっているっつうのにやられっぱなしってのもなぁ……」


「兄さん、我慢しましょう。襲撃の時の人数を考えれば相手側のギルドは相当な人数で構成されているわ。下手に手を出して反撃を貰ったりしたら、たとえボルケーノでも大人数だと分が悪いわ」


「だよなぁ……我慢するしかねえか」


「ユキナちゃん……大丈夫かな……あたし、心配だよ」


「無事を祈るしかあるまい。颯太の話でもあったようにユキナの神器はビャッコだ。相手が1世代目の神器でない限り負けはしないだろう」


「クレアさんの言うとおり無事を祈るしかねえよ。リアルじゃユキナちゃんどこにいるかも分からないんだし…」


「そうね……いくらビャッコと言えユキナちゃん自身はまだ小さいのだから心配よ…」


「ここで話していても何も変わるわけでもあるまい。ただ今はユキナの無事を祈りつつ我々は我々でやるべきことをしよう」



クレアはそう締めくくり、フェンリルを連れて外へ出て行った。



「なんかモヤモヤしてんなぁ……ちょっくらフリーエリアでも行ってレベリングしてくるわ」


「竜也……付き合う…」


「颯太、PVPの練習相手になってくれ」


「あぁ、いいよ」


「あ!あたし、2人の戦い見ていい?」


「いいぞ」



竜也、伊澄、滉介、颯太、詩織もまたアジトを出て行き、ギルドのアジトには香織だけが残された。



「いいのですか?颯太達についていかなくて」


「うん、いいの。なんだか今はそんな気分じゃないから…」


「そうですか。なら、今夜はもうログアウトした方がいいかもしれませんね」



1人になった瞬間颯太達が出て行った入り口を見ながらアルテミスが現れた。



「……ユキナちゃん…」


「彼女ならきっと大丈夫ですよ。さ、香織。今日はもう寝ましょう」


「うん…」



香織はアルテミスにそう促されて1人ランゲージバトルの世界を後にした。





それから数日経ってもユキナはランゲージバトルの世界に現れることはなかった。

フレンドになった颯太達がユキナのFDにメッセージを送っても返事が返って来ることはなく、ただただ颯太達は彼女の無事を祈りながらランゲージバトルの世界で己を鍛えていた。



「くっそ!やっぱりやられちまったんじゃねえのか!?」



9月も上旬を過ぎて中旬に入ろうとした翌朝の学校の屋上に颯太、レーナ、竜也、ボルケーノはいた。

竜也はやるせない感情を拳に乗せて金網を力いっぱい殴りつけて金網をそのまま両手で掴む。



「竜也、拳が痛むからやめるのだ」


「でもよ…!!くそ!くそ!あのシンって野郎絶対許さねえ!」



ボルケーノに止められて竜也は握っていた金網から手を離して叫ぶ。



「まだユキナがやられたと決まったわけじゃないだろ。竜也の怒りも最もだが、感情に身を任せてどうにかなる問題じゃない」


「でもさ、もし竜也の言うことが本当ならシンって奴は相当馬鹿だと思うよ?」


「なんでそう思うんだ?レーナ」


「だって、四神は合体して本当の力を発揮する特殊な神器なんだし、もしビャッコを破壊したとしたら一生合体できなくなるんだよ?」


「うむ、混沌の言うとおりだな。セイリュウ単体でも相当厄介な神器に変わりはないが、それでも破壊するメリットを見出すことが全く出来ない」


「竜也、ユキナはきっと大丈夫だ。だから、今は12月に向けて鍛えよう」


「……そうだといいんだけどよ…なんかやるせねえ…」


『颯太、実際のところこの件に関してどう思っているの?』



ユキナの件を自分の頭でまとめているとレーナが脳内で話しかけてきた。

颯太は皆に話してはいないが、実際のところユキナはもうランゲージバトルに復帰することは出来ない状況に陥ってしまっていると考えていた。


そもそもリアルでのやり取りが出来るように支給されたFDでの連絡がユキナからないこと事態既に深刻な状況にあると見ていいのだ。

何もFDが操作出来ない年齢でもあるまいし、傍にはビャッコもいる。となると自然に導き出させる答えは――――



「いや……余りにもそれは早計だな…」


『もう1人のワタシもユキナのことは諦めろって言っているし、ちょっとやばいかもね』


「………でも、それにしたっておかしい」


『何が?』


「ビャッコが普通の神器に負けるはずがないんだ」


『ん、まぁ確かにそれは変な話だね。ランゲージバトルの参加取り消し条件は、招待状、ログインパスともなる神器の消失。または違反行為をした場合による運営からの追放処分』


「後者はユキナがするとは思えない。ユキナはランゲージバトルの世界をかなり気に入っていたし、自らログイン出来なくなるようなことを起こすとは思えない…」


『となると神器の消失になるわけだけど、話は戻ってビャッコが普通の神器に負けるはずがない。そういうことなんだね?』


「そうだな………話が堂々巡りになってしまう…」



颯太は頭を悩ます。己の頭にビャッコが負けるビジョンが全く浮かばない。しかし、だ。もしもビャッコが負けることがあれば―――



『ねえ、もしビャッコが負けたとしたら………話が全部繋がらない?』


「………あぁ、恐ろしいほどに話が繋がる」



ビャッコが負けたとすればそれはもう今まで暗闇に閉ざされていた解が瞬く間に開け、今まで悩んでいたのが何だったのかと思うほど簡単な話である。

だが、颯太はその解を信じたくなかった。目の前でフェンスを力いっぱい握り締める竜也も心の奥底では分かっているのだろう。しかし、それを颯太、竜也や皆は信じたくない、認めたくなかったのだ。

まさかあのユキナが、ビャッコが神器の襲撃で脱落するような奴らではない。ひょっとしたら今日の夜らへんにアジトにひょっこり何でもなかったかのように顔を出すかもしれない。

そう、気持ちばかりが前に出て薄々気付いている真実を押し殺そうとしていた。



「レーナ……俺達だけはユキナがやられたものと見て調査を進めて行こう」


『分かった。でも、ユキナを守りながらとは言え、よくビャッコを倒したもんだね』



こういう時レーナは同情とかそういう感情は一切抱かない。まぁ姉のリーナもかなりドライな性格ではあるが、レーナはそのドライとかそんなこと関係なしに興味が無いのである。

人が死んでも、身内が死んでも全く表情を崩さず、颯太のこと以外関心が無い。

それが彼女の性格であり、個性でもあるのだが、どうも颯太は慣れない様子。



「それだけ相手が強かったってことなんだが……ビャッコは凶悪神器の部類に入る…」


『つまり相手もビャッコを倒せるくらいの凶悪神器ってことでしょ?』


「必然とそうなるな」


『んじゃまぁユキナ襲った神器はあいつかなぁ……』


「………やっぱりレーナもそう思うか」


『そいつしかいないもん。ビャッコを倒せる弱点を知ってて、ユキナに恨み持っている奴は』


「そいつの名は…」


『シンだ(だね)』



颯太とレーナの声が被り、お互いの意見が一致したことに颯太は安堵を覚えるが、やはり解せない。



「だが、数日前にレーナが言ったように何故シンが同じ四神のビャッコを殺す…?」


『そればっかりは分からないね。まだビャッコが死んだわけじゃないから仮の話しだけど、ビャッコを倒す時セイリュウも止めなかったのだろうから、きっと自分にメリットがあってやったことだと思うよ』


「そう、そこなんだ。あいつ自身のためになる点……それさえ分かれば全てが解ける気がする」


『本人に聞いてみる?』


「はっ、まさか」


『にへへ、そうだよねぇ』



冗談めかしに言ったレーナの言葉を笑うと彼女もやっぱり冗談のようで、無邪気に笑う。



「――――………大体の考えはまとまった。おい、竜也。そろそろ冷えるから校内に戻るぞ」


「ん、あぁ、先に行っていてくれ。俺はもうちょい頭冷やすわ」


「そうか。竜也、釘を刺すようだが、間違っても変な気を起こすなよ。ボルケーノも竜也のこと頼んだぞ」


「了解だ。竜也のことは我に任せておけ」



なんだか危うい雰囲気が漂う竜也に一瞥をくれてから颯太は屋上を後にした。

どうもまた太びです。


なんだかご無沙汰してしまいましたね。どうも4月近くなると忙しくなるもので、東京とかあちこち行って回っていました。

さてさて、今回は物語の進展ですね。

ユキナ消失ってことでこれから物語が動いていきます。颯太達を襲った者達の正体とその首謀者の名前が分かり、颯太達は警戒を強めていきます。

グレイヴとはまた違った勢力の登場にこれからのお話にご期待ください。


えっと、ご意見いただきました人物紹介のほうですが、もう少しお待ちください><

忙しくてなかなかそちらまで手が伸ばせない状況なんです。お待ちしている方々には本当に申し訳ないです><

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