肝試し
「はぁ……酷い目に会った…」
「あれは事故みたいなものだよ~」
シャワーを浴びた後、颯太とレーナは皆と別れて2人でゆらゆらと海を泳いでいた。
「…………ん?」
「んお?どうしたの?」
レーナの浮き輪を押していた颯太は前方に変な渦潮が出来ていることに気付いた。レーナもまた空を仰いでいた顔を戻して彼の視線を先を見る。
「………渦潮?」
「だな」
「…………――――変だね」
「なんだって?」
「颯太、左目を」
「あぁ……」
颯太はレーナに言われて左目を解放する。するとそこには――――
「え?」
解放した左目が映し出す視界には現実ではありえない”ノイズ”が走っていた。
「なんでだ…?ここは現実世界だろ…?」
「……………現実世界への侵食…」
「レーナ?」
ランゲージバトルの世界をよく知る青い瞳のレーナが厳しい表情をしながら語る。
「エニグマンは一体何をしようとしているの…?」
「どういうことだ?」
「………分からない。でも、この現象はランゲージバトルの世界によって引き起こされたものってことは断言できる」
「………何が起きているんだ…」
「今回のランゲージバトルはおかしい……何かが変わろうとしている…」
「レーナ、このことは…」
「まだ確証は持てないから話さない方がいいかも」
「そうか…」
渦潮はゆっくりと消えていき、颯太の視界にはいつも通りの現実世界が映っていた。
それから颯太達はクレア主催の対抗ビーチバレー、スイカ割りなど海で出来るほとんどの遊びを行った。
もちろん海から上がる頃には既に皆くたくたに疲れており、元気なのは神器であるレーナ達くらい。
「はぁ~日焼け止め塗っても少し焼けたね」
「うん、今日は思った以上に日差し強かったのかも」
「詩織、香織殿、夕飯の支度は私に任せて貰おうか。そなた達はテントで少し休むといい」
「ありがとう琥太郎、あたしちょっと張り切り過ぎて疲れちゃってたんだ」
「ありがとう、琥太郎さん」
「2人の代わりに私がお力になります」
「助かる、アルテミス」
「そう言えばさっきクレアさんが今夜は楽しみにしているといいって言っていたけど、まだ何かあるのかな?」
「内容を教えてくれなかったわよね。2人は何か聞いてない?」
「我々神器一同はその内容を知っているが、クレア殿から口止めをされていてな。すまないが、言うわけにはいかないのだ」
「夜になれば分かりますよ。今は楽しみにして待っていてください」
「なんだか怪しいな~。クレアさんの企みってろくなことないんだけど」
「うむ、楽しみにして待っているといい。恐らく神器をこういった催しに使うのはクレア殿が初めてだろうな。確かに知識としては知っているが、まさか自分がそれをやる日がこんな早く来るとは思わなくてな、実は私も楽しみにしているのだ」
「私もそうですね。何十年と神器をやっていますが、此度の戦いは新しい発見ばかりで興味が尽きませんね」
パラソルやらベンチを持つ琥太郎とアルテミスはそう言ってくすくすと笑い、香織と詩織はそんな2人の様子に首を傾げるのであった。
その日の夜、颯太は晩御飯を食べて終えて1人海岸へ来ていた。その理由としては昼間の出来事が気になってまた異変が起きていないか見に来たのである。
「………」
左目を解放するが、夜の海に異変はない。そこにはただ暗く、広大な海が広がっているだけ。
『颯太なにしているの?』
『あぁ、昼間のことが少し気になってさ』
『あれね。ワタシから聞いたけど、ランゲージバトルの世界の影響がこっちの世界にまで及ぶなんて考えられないって言っていたよ』
『何十年とランゲージバトルをやっているレーナが言うんだからよっぽどのことなんだろうな……』
『勝手に出てこられて正直うざいんだけど、こればっかりは私の知識じゃ少し厳しいからね』
颯太に別れを告げたくせにこうやって何かと本来のレーナの意識を勝手に奪って出てくる青い瞳のレーナはやっぱり寂しいらしい。
まぁ颯太としては喧嘩しないで仲良くして欲しいところなのだが、赤い瞳のレーナは余り面白くないようだ。
『その件はクレアに任せよう?颯太がやるべきことはランゲージバトルの覇者になることでしょう?』
『…そうだな』
『あのね、クレアが颯太を呼んで来いって』
『なんでだ?』
『それは集まってからの秘密ー!早く来てねー!』
『ん?おう、分かった』
レーナの答えに釈然としない颯太はもう一度暗闇の海を見てからキャンプ場へ戻っていった。
竜也の車に揺られること数十分。クレアの後に続いてやってきたのはどこかの山の駐車場だった。数少ない街灯が車から降りた颯太達を照らし、風で揺れる山の鳴き声がより一層山の不気味さを際立たせていた。
「あのクレアさん……これは一体どういうことですか」
既にびくびくしている詩織はライトと紙を持ったクレアに尋ねる。
「どうもこうもない。夏と言えば肝試しだろう」
「ですよねー……そうだと思いましたよ…」
「では神器の諸君!指定の位置につきたまえ!」
『了解!!』
「脅かし役は神器ってことか」
打ち合わせをしていた神器たちは次々と山の中に入っていく姿を追う滉介がそう言い、クレアがそれに頷く。
「肝試しか。そいつは楽しそうだな。で、クレアさん。ペアはどうすんだ?」
「それは事前にくじを作ってきた。無論、男女ペアになるのはお約束だ」
『ええ!?』
「なんだその素っ頓狂な声は。男子同士が組んでも何も面白くないだろう」
「え、でもあまりますよね?クレアさん入れたら」
「何を言っているんだ竜也。私は監督役に決まっているだろう。さて、くじは女子引いて貰おうかな」
「…………」
「…………」
「…………」
「なぁ颯太、俺には見えない火花が血走っているように見えるんだが」
「お前分かってて聞いているだろ」
「ふふ、まぁ伊澄の場合狙いはお前じゃないようだが」
「ふぅん……竜也がね…」
目の前で繰り広げられる見えない戦いに戦慄しながらも正式なじゃんけんでくじ引きを引く順番が決まる。
1番目は伊澄、2番目は香織、3番目は詩織となった。
皆が固唾を飲んで見守る(主に香織と詩織)中で伊澄はクレアが持つ3枚のカードのうち1枚を引く。
「伊澄のパートナーは滉介だ」
「おお…?ん~?」
「この機会に仲良くなっておけ。お前、滉介とろくに話したことないだろう?」
「そう言えばそんな気がする…」
いつも通りぼけーっとしながら伊澄は滉介の隣にまでやってくる。
「よろしく…」
「あぁ、よろしく」
「次は私の番ね」
伊澄が引いたことで次は香織の番となった。香織は力んだ様子でクレアの前に立ち、じっくりと2枚のカードを見る。
「鷹の目に透視能力でもあったか?それならまずいが」
「あ、いえ!そんな能力はないですよ!」
「そうか、なら引きたまえ」
「………はい!!」
香織は勢いよくカードを引き抜いた。
「君のパートナーは竜也だ。兄妹仲良くするんだぞ」
「ええええ!!兄さんとおおおお!?」
「そんなに嫌なのか……なんかお兄ちゃんショックだぞ…」
「あ、ごめんなさい兄さん!嫌ってわけじゃないんだけど…」
「では、残ったペアは颯太と詩織。この2人で決定だな」
「よし…ッ!」
「よろしくな、詩織」
「うん!!」
という組み分けでペアは成立した。
「では、男子にルートが示された地図とライト、そして万が一のためにコンパスを渡しておこう。まず目的だが、地図のゴール付近に私が事前に作っておいた氷のお社がある。そこに琥太郎が書いた本物の陰陽札があるからそれを各自取ってきて欲しい」
「何しているの琥太郎……」
「何でも彼の力作だそうだ。ちなみに取り扱いを間違うと爆発したりするそうだが、くれぐれも落としたりしないようにな」
「危険物じゃないっすか!!」
「冗談だ、安心して欲しい」
「全く安心できねえ……」
「熊とか出ないよね…」
「そこは大丈夫だ。ガンドレアが常時モニタリングしているから何か異変があればすぐ彼のマシンが迎撃にあたる」
「あ、それなら安心だね」
「レーナも脅かし役か……危険だな…」
「リーナもだな。あいつら何して来るんだ……」
「それは各自自分の目で確かめて欲しい。彼らも張り切っていたから本物の霊より怖いかもな」
『…………』
「どうした、もっとテンションを上げていこうではないか」
「肝試しでテンション上がる人っているんですかね?」
「限りなく少数派だろう、それは」
「まぁいい。では、神器達の準備も整ったようだし、出発してくれ。まずは伊澄と滉介のペアだな」
「行くか」
「うん…」
「香織と竜也のペアは前の2人が出発してから20分後だ」
「分かったぜ」
「分かりました」
こうして神器たちが本気で驚かしに来る肝試しが始まった。颯太は無事レーナの脅かしから逃れられるのか!!
そんな次回予告をしたい気分である。
どうもまた太びです!
最近新作を書いていたのですが、なんだか1年ぶり?くらいにしっくり来るものが出来たので、それの設定や話を煮詰めている感じです。
もしこのまますんなりストーリーを書けて書き溜めが出来ましたらツイッターか近況報告であらすじらへんでも公開しようかな~なんて思っています。
さて、皆さんは夢占いというものは知っていますか?
夢というのは大雑把に言いますと寝ている間にその日あった出来事などの整理を行う際に見るものなのですが、見る夢にはある程度共通点を持つことがあるようです。
私が最近見た夢は何者かに追いかけられて逃げ切る夢でしたね。
周りは真っ暗で私はなぜか道路に立っていました。その道路は私もよく知る地元の道路なのですが、車の通りも全くなくただただ静寂だけが立ち込めていました。
そこで当然後ろから足音が聞こえてきて振り返るとコナンに出てくるような真っ黒の男が無言で走って追いかけてきたんです。
もうそれを見た私はパニックになってとりあえず逃げなきゃ逃げなきゃという一心で走っていました。途中車が何台か通り、私はその度に声のあらん限り助けて!助けて!殺される!と叫ぶのですが、車はそんな私の声、姿が全く見えていない聞こえていないかのように素通りしていくんです。
何故私はその時あの男に殺されると思ったのか、何故追いかけられていたのか、それは分かりません。私はその恐怖のあまりに朝早くに目を覚ましてしまいました。
余りにも鮮明なその記憶に私は漠然とした恐怖を抱き、ちょっとネットで調べてみたんです。そしたら私と同じような体験をしている方が大勢いたようで、そこで夢占いというのを見つけたんです。
私の場合、確かまだ物事に向き合う力が身についていないとかそんなことだったような気がしますね。
皆さんもよろしければ調べてみてはいかがでしょうか。まぁ占い、ジンクスなので調べるのもいいですが、余りのめりこむと大変なことになってしまうかもしれません。と、ぬ~べ~先生がおっしゃっていましたね。タブンネ




