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グレイヴ幹部

「颯太もっと早くー!」


「了解!!」


「うきゃー!」


「ちょっと滉介!レーナに負けているわよ!」


「何の勝負をしているんだ……」


「いいから早く!」


「分かったよ…」



現在颯太達はそれぞれ海で遊んでいた。颯太は浮き輪に乗ったレーナを押して海を泳ぎ、滉介も颯太同様にリーナの浮き輪を押していた。


そしてパラソルの下で肌を焼いているクレア以外は皆砂浜で遊んでおり、伊澄とガンドレアに至ってはお城を作っていた。



「琥太郎!ボルケーノ!ここに後で戻ってきた滉介と颯太を落とす落とし穴を作るぞ!」


「それは構わないが、手で掘るのか?」


「当たり前よ!ほら、やろうぜ!」


「手で掘るのか。よし、ならば我に任せろ」


「お?お前何するつもりだ?」


「まぁ見ておけ」



ボルケーノは琥太郎と竜也を少し離れるよう指示を出すと、その場に肩膝をついて握りこぶしを作り、そして右腕の間接を曲げながら血管が浮き出るほど力を込める。



「おい、まさかボルケーノ貴様!?」


「え?お?」


「むん!!」



弓の弦を引くようにギリギリと引かれた右腕が解放され、拳が砂に直撃すると凄まじい轟音が響き渡って辺りはまるで地震が起きたかのようにぐらぐらと揺れた。



「え!?うお!?ボルケーノお前何してんだよ!?」


「何をって穴を掘っただけだが?」



しれっとクレーターのような穴を作ったボルケーノは拳を砂から抜きながら立ち上がり、竜也達のほうへ振り返る。



「もっとやりようがあるだろう……全くこのドラゴンは…」


「ちょっと兄さん何をしているの!?皆驚いているじゃない!」


「ふえ!?なにこの穴……」


「竜也……あなたのせいでお城が崩れた…」


「え!?お、俺のせいなの!?なんで!?」


「それはボルケーノを止めなかった兄さんの責任です」


「ボルケーノも何をしているんですか……海だからと言って余りはしゃいではいけませんよ」


「う、うむ……」



その場に正座させられて香織とアルテミスに怒られる2人を残し、詩織は穴を覗いた。



「うわぁ……ボルケーノのパンチで4mくらい掘ったんじゃないのこれ…」


「幅はおよそ5mほど。して、深さもっとあるだろう」


「あ、琥太郎」


「ふむ、全く人目があるというのによく神器の力を解放出来るものだ。いつも冷静なボルケーノらしくない」


「ああ見えて内心ここに来れて凄く嬉しいんじゃない?」


「そうかもしれぬな」


「琥太郎は?」


「ん?」


「琥太郎は楽しい?ここに来れてさ」


「………あぁ、楽しいとも」


「うん、それなら良かった」


「お、おい!さっきの地震なんだよ!?津波来るんじゃないのか!?」


「そ、颯太前まえーーーー!!」


「ん?ってうおああああああああ!?なんでこんなとこに落とし穴があああああああああ!?」


「あ……颯太…」



海から急いで上がってきた颯太はレーナの制止に気付く前に今先ほどボルケーノが作った巨大落とし穴に落ちていった。



「………颯太殿、砂に埋もれているが」


「ちょ、ちょっと見てないで颯太助けてよ!!」


「あ、あぁそうだね。琥太郎、引き上げて」


「あぁ、了解だ」


「なんだ?颯太の悲鳴が聞こえたが―――ってなんでこんなところに穴が…」


「うわぁ…凄い穴ね。あら、颯太落ちたの?」



その後颯太を引き上げているところに滉介とリーナが帰って来て颯太が落ちた穴を覗いた。



「誰だよ!!こんな穴作ったの!!」


「ボルケーノだ。ちなみに先ほどの地震もボルケーノが起こしたものだぞ、颯太殿」


「え!?ボルケーノ!?」


「あぁ、ボルケーノが砂目掛けてメガトンパンチをかました。その結果地響きが起きてな」


「なんつう奴だよ……」


「それより颯太、一度シャワー浴びてきたら?砂だらけだよ?」


「あぁ、そうさせて貰うよ…」



穴から出てきた颯太は正座させられているボルケーノと竜也を見て怒る気が失せたのか、詩織の提案に乗ってとぼとぼとシャワールームへ歩いていった。



「あ、颯太お金ー!あと私もシャワー浴びるー!」


「あぁ、一緒に浴びるか」


「え!?一緒に浴びるの!?」


「何をそんな驚いているのだ?詩織」


「え?いや、でもレーナさんだって女の子だよ!?いいの!?一緒に浴びても!?」


「私に聞かれてもな…」



談笑しながらシャワールームへ消えていく2人を詩織は呆然と見送った。





「………」



ここはグレイヴのアジト。一応最上級クラスのギルドアジトなのだが、全体的に薄暗くそして床に散らばる瓶の破片やジョッキの壊れた後であろう木の破片。部屋の中央には大きなソファが2つあり、そこにむすっとした顔でレギュンが座っていた。


そう、この瓶の破片などは全て彼女の手によってもたらされたものである。まぁ元からこのアジトは薄暗いのだが。



「カレラとユーノがいなくなってから姐さん機嫌が悪いっすね…」


「バカ…ッ!お前死にてえのか…!!」


「………あぁ?なんか言ったのかよ」


「ひいい!な、何でもありません!」



部下の声を聞いてレギュンはぎろりと鋭い眼光を向けて睨むと汗が滝のように流れる部下は何度も頭を下げて謝り、それを見たレギュンは舌打ちをする。



「やぁ、レギュン。いい加減その機嫌直しなよ。皆怖くてアジトに入って来れないじゃないか」


「てめえか……」



部屋の明かりのせいでレギュンに話しかけてきたプレイヤーの顔は分からないが、レギュンはどうやら分かったらしく、面倒くさそうに一瞥する。



「まぁ僕もさ、君みたいな素行の悪い人とは極力関わりたくないんだけど、そうも言っていられなくてね」


「誰の差し金だ」


「そんなもんマスターに決まっているじゃないか。レギュンの悩みを聞いてやって欲しいって言われてホント困っているんだよ」


「おい、本人を目の前にしてよくそんなこと言えるなてめえ」



レギュンはハエでも払うかのように左手を水平に振ると天すらも焦がす劫火が発生し、彼女の前のソファに座るプレイヤーを焼き払った。



「あっぶないなぁ……」


「………」



炎が消えるとそこにはけらけらと笑うプレイヤーが座っていた。今の行為に関して何も気にしていない様子で笑うそのプレイヤーにレギュンは汚物でも見るような目を向ける。



「気味が悪い野郎だ…」


「ははは、僕は野郎じゃないんだけどなぁ」


「んなこと関係ねえ」



そのプレイヤー―――いや、幹部は後ろでガタガタと震える部下にリンゴジュースを頼むとどっかりとソファに腰かけて機嫌が良さそうに体を揺らして鼻歌を口ずさみ始めた。



「お前、最近アジトにいないみたいだけどよ。何してんだ」


「え?それレギュンに関係なくない?」


「………」


「わわ、そんな睨まないでよ。怖い人だなぁ…」


「てめえがイラつかせることを言うからだ、馬鹿が」


「別に大した理由じゃないよ?ただ普通にフレンドさんと遊んでいるだけだよ」


「フレンド?お前が?」


「え?不思議?」


「いやだって……あたしらはグレイヴの幹部だぞ?」


「ん、まぁ確かにランゲージバトルの世界だと厄介者扱いされているギルドだけど、幸い僕は表立った行動はしていないから街中歩いてても普通だよ」


「あぁ…まぁお前の場合は神器が特殊だからな。確かに隠蔽は出来るだろうよ。だが、それ抜きにしてもお前、今までマスター以外のフレンドなんかいなかっただろ」



レギュンが酒を飲みながらそう尋ねるとその幹部はもじもじと股を摩り合わせて急に照れ始め、レギュンのイライラゲージが溜まっていく。



「そ、それは…」


「きめえ、やっぱいいわ」


「えー!?これから話そうと思ったのにー!?」


「急にもじもじすんな、きめえ」


「ひ、酷いなぁ……いいもん、勝手に喋るから」


「あぁ、勝手にしろ」


「ほら、この前の勢力戦でレギュンは炎龍と戦ったじゃない?」



レギュンは忌々しげに目を細めてその時の光景を思い出す。自分の炎を吸収したあの炎龍を。そこでレギュンははっと目を開いて幹部を見た。



「まさかてめえ―――」


「うん、僕炎龍とフレンドになっちゃった」


「………」



幹部―――そう、ヒカルはにこにこと笑いながら開いた口が閉じれないレギュンを見ていた。



「おい、まさかあたしらのことは言ってねえよな」


「言うわけないじゃん。僕だって竜也とは良好的な関係を築いて行きたいし」


「……良好的な関係ねえ……言っておくが、あたしのヘルヘイムとボルケーノには切っても切れない因縁がある。お前がグレイヴの幹部であり続ける限り衝突は免れないぞ」


「そんなこと分かっているって。ま、レギュンはしばらく休んでいなよ」


「あんでだよ」


「カレラとユーノがいなくなって相当ダメージ受けているみたいだし、次のイベントは無理かもね」


「はぁ?それはマスター直々の命令か?」


「そうだよ。僕がわざわざこんな汚い場所に来るなんてマスターから命令がない限り来ないよ」


「………」


「ま、そういうことでレギュンはしばらく休暇を満喫したら?色々とコキ使われていたみたいだしさ」



ヒカルは立ち上がる。



「他の幹部の連中は今回の一件で混沌や氷の女帝達を目の敵にしている感じがするから、もし衝突するようなことになったらちょっとやばいかもね」


「なに…?あたしに断りもなくクレア達とやりあうってのか?」


「さぁね。僕はあくまでマスターの伝言役だから、他の連中なんて興味もない。でもまぁ、あいつらが竜也を殺しに行くのならちょっと怒るかも」


「あたしだって反対だ。おい、そのことマスター知っているのかよ」


「知っているよ。だからわざわざ1人1人制止の声をかけて回っているようだけど」


「んなことで聞くような連中かよ」


「だからどうせ力づくで捻じ伏せていると思うよ」


「ふん、それが妥当な手段だな。で、なんであたしのとこにはお前が来たんだ?」


「なんだって――――」



部屋を出て行くときレギュンの問いかけにヒカルは足を止めて振り返った。



「荒事になったら君を捻じ伏せるのは僕しかいないからね」



ぞっとするような冷たい眼差しにレギュンはにやりと笑う。



「でも、話し合いで解決してよかったよ。それじゃ、またね~」



一瞬にしていつも通りのにこにこした表情を浮かべたヒカルはアジトを出て行った。



「ピエロが…」



部屋に1人残されたレギュンは小さくそう呟いてソファに寝そべって昼寝を始めた。

どうもお久しぶりです!


新作やら何やら執筆していたらこちらを少し疎かにしてしまいました。結局新作も賞に間に合わず見送る形になってしまい、正直残念と後悔の念で気持ちがいっぱいです。


さて、今回は何とヒカルちゃん?くん?はグレイヴの幹部でした!というお話になっていましたね(何故他人事)

これから竜也とヒカルの関係はどうなるのか、一体ヒカルの実力はどれくらいのものなのか、どうぞご期待ください!

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