一息
「お、帰ってきたか」
「ただいま戻りました!」
それから時刻が16時を回った頃に詩織たちが帰ってきた。
「クレア!ザリガニ!」
「おお、なかなか大きいザリガニだな」
「ふふん、その一番大きいのはわたくしが取ったのよ」
「どうやら楽しんできたようだな」
「楽しかったよ!」
「うん、そいつは良かったな」
アメリカザリガニが入ったケースを持ってニコニコと笑うレーナの頭をクレアは優しく撫で、そして本をバッグにしまうと立ち上がった。
「さて、颯太達が帰ってくるまでバーベキューの準備をしようか」
「兄さん達まだ帰ってこないんですか?」
「どうやら熱中しているようだ。幸い琥太郎はここにいる。火起こしは彼に任せて我々は食材の下準備と行こう」
「火起こしは任せよ。既に炭は買ってきたから、後は起こすだけだ」
「おお、流石琥太郎は準備がいいね~」
「ねね、私とリーナはどうすればいい?」
「レーナ達は疲れているだろう?自分のテントで少し寝ているといい」
「うん、分かった」
「そうね、少し眠いわ」
クレアの服の袖を掴むレーナにクレアはそう優しく言うと2人は欠伸をしながら颯太と滉介のテントへ入っていった。
「ただいま」
「おかえりなさい」
「お、もう火を起こししていたんだな」
詩織たちが帰ってきてから1時間後ほどの時間をおいて颯太達も帰ってきた。
「これから火が強くなる。その前に竜也殿達が釣ってきた魚をさばくことにしよう」
「なかなか釣れるとこだったぜ」
「クレアさん、流石に刺身に出来るサイズの魚は釣れませんでしたよ…」
「ははは、あれは冗談だ。まさか本気にしたのか?颯太も律儀だな」
「何釣ったの~?」
「気になる……」
詩織たちは料理する手を止めてボルケーノが持つクーラーボックスに集まり、ボルケーノは肩からクーラーボックスを下ろした。
「う~んと、ハゼ3匹、カレイ2匹、アジ2匹ってとこかな」
「なるほど…」
「ささ!琥太郎シュフはこれをどうするつもりかな?」
「ふむ………串に刺してシンプルに塩焼きと行こう」
「おお!やっぱ塩焼きだよな!」
「シンプルなのが一番よね。食材のうまみを一番に出せる気がするわ」
「では、琥太郎が起こしていた火はボルケーノ達に引き継いで我々は作業を再開しよう」
『はい!』
クレアのてきぱきした指示を受けて颯太達はバーベキューの準備を着々と進めていった。
途中香織は料理がしたことがないことが発覚して颯太と滉介は青ざめていたような気もしたが、恐らく気のせいだろう。
「肉が焼けたぞ」
「うっしゃ!その肉もらい!」
「あー!!竜也それ私のー!」
それから無事準備が終わったところでバーベキューが始まった。
トングを持つのはボルケーノと琥太郎。この2人が焼くのを仕切っており、颯太達は会話をしながら野菜や肉や魚が焼けるのを待っていた。
そして野菜も食べずに肉が焼けるのをじっと待っていた竜也は真っ先に紙の皿を持って琥太郎とボルケーノの下へ駆けつけ、肉を貰った。
「へっへーん!早い者勝ちだぜ!」
「むー!」
「拗ねるな、混沌よ。ほら、貴様の分もある」
「わあ!肉だー!」
「レーナ、野菜もちゃんと食べるんだぞ」
「分かっているって」
「さぁ、わたくしの肉を寄越しなさい」
「何故お前は常に上から目線なんだ……」
レーナが肉を貰って頬張る横でリーナはいつも通りの態度で琥太郎に肉を要求し、彼は珍しく額に眉を寄せながらリーナの皿に肉を乗せる。
「あたし達の分もあるかな?」
「これからどんどん焼きあがる。肉はまだまだあるから心配するな」
「それならいいんだけど、竜也さん凄い勢いで食っているからさ」
「恐らく竜也は先にダウンする。見ろ、焼きおにぎり用に作ったおにぎりも食べている」
「兄さん、そんなにお腹減っていたのね」
「俺達はゆっくり食べればいい。肉はまだまだあるのだろう?」
「あぁ、私達はともかくとして大量に食いそうな男がいるからな。余っても次の日に使えばいいと思ってかなりの量を買ってきた」
「いっぱいあるね……」
滉介の質問にクレアはちらりと竜也とボルケーノを見ながら言い、テーブルに乗った肉のパックを見て伊澄はぼーっとしながら答える。
「さぁ!どんどん焼くぞ!魚はもう少し掛かりそうだが、先に肉と野菜を食べてくれ!」
「もう少し食べたら焼くの代わるよ」
「すまないな、颯太殿。だが、私は最後でいい」
「そうか。なら、ボルケーノ後で代わるよ」
「うむ、実は我も腹が減っていてな、助かる」
「兄さんにも手伝わせるから、颯太くんもいっぱい食べてね」
「あぁ、そうするよ」
バクバクと肉を食べる竜也を見て香織と颯太は共に苦笑いを浮かべるのであった。
それから食事を終えた颯太達は片づけをさっさと済ませて一息ついていた。
真ん中に折り畳み式のテーブルとそのテーブルの上には周りを照らすランタンが置いてあり、颯太達男子組は竜也が用意したこれもまた折り畳み式の椅子に座って琥太郎が入れたコーヒーを飲んでいるところだった。
一方女子達と言えば現在お風呂に行っていて、颯太達は留守番というわけなのだ。
「ボルケーノ、今何時だっけ」
「20時を回ったところだ」
竜也は携帯ゲーム機で対戦をしている颯太と滉介には聞かず、隣で頬杖をしながらテーブルに置かれたランタンに視線を注ぐボルケーノに尋ねた。
「竜也殿はシャワーの時間帯を気にしているのか?」
「いや、そういうわけじゃねえよ。なんつうか、こんなにゆっくりしているのは久しぶりだなと思ってさ」
「ふむ、確かに普段の我々は今頃ランゲージバトルのダンジョンなどに潜って腕を磨いている時間帯だろうな」
「なんかな、ランゲージバトルにログインしないと気がすまないっていうか…」
「それは俺も一緒だ」
一試合終えたのか、そこで颯太も顔を上げて竜也達の会話に混ざった。
「もうランゲージバトルは俺達の生活基盤に深く打ち込まれているようなもんだからな。あれにログインしないと1日が終わらない」
「そうだな。俺もあのマスターが作るジンジャーエール飲まないと1日が終わった気がしないな」
「やっぱ思うところは一緒だよな」
颯太と滉介の言葉を聞いて竜也はにやりと笑う。
「なら、後でランゲージバトルに行くか?」
「神器である我が言うのもおかしな気もするが、明日起きられなくなるぞ?」
「ボルケーノ、ほんとそれ今更過ぎるぜ。それによ、今は夏休みなんだぞ?遊んで遊んで遊び尽くすに決まっているじゃないか。んな、寝る暇惜しんでやるゲームこそ最高なんだぜ」
「竜也も分かってきたな。レーナの睡眠時間を削るのはあまり気が乗らないが、起きててもらおう」
「どうせうちのリーナもレーナと張り合うだろうから俺もランゲージバトルに行くか」
「んじゃ決まりだな。なら、今夜はどこ行くよ?フリーマップひたすらぐるぐるするか?」
身を乗り出す竜也に颯太と滉介は携帯ゲーム機電源を切ってバッグにしまいながら何をするかを考える。
「そいつは飽きるだろ。どうせなら難易度が高いダンジョンに行きたいな」
「颯太が求めるレベルってどれくらいだよ……」
「ん?まぁ、即死が効かないレベルかな」
「そうだな。即死が効く相手はつまらん」
「くそ、このチート神器使い共め!」
『最高の褒め言葉だな』
「ふむ、ダンジョンに行くことは結構だが、颯太が求めるクラスとなると宝の地図ダンジョンくらいしかないぞ?」
「そして宝の地図はレアリティが高い。露店でも100万Gはする」
ボルケーノと琥太郎にそう云われた3人は口を閉ざし、額に眉を寄せる。
「誰か金持っている奴はいねえの?」
「俺は金が溜まればすぐ神器強化に勤しむから懐はすっからかんだ」
「俺も颯太と同じだ。竜也は?」
「残念ながら俺も持ち合わせはない」
『はぁ……金が欲しい…』
3人はそうしてがっくりと深いため息をつきながら肩を落とした。
お久しぶりです、どうもまた太びです!
少し期間が空いてしまいましたね。その理由としては埼玉にあるはとこの家に泊まりに行っており、PCも触れない状態だったということにあります。
久しぶりにPCに触れればホコリが溜まってたり、自分の部屋を掃除などしていたら意外と期間が空いてしまっていました。
いつも読んでくださっている皆様にはご迷惑をおかけしました。また読んでくださると幸いです。




