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敏捷値が高い=強い(旧題ランゲージバトル)  作者: また太び
1章 ランゲージバトル
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颯太の香織嫌い

「――――ということで俺達はギルドを立ち上げる事にしたんだが、名前何がいいと思う?」



颯太は自分より早く帰って来ていた和彦に相談していた。



「レーナのためのギルドか」



ちなみにレーナは下で母さんの料理を手伝っているため、颯太の部屋にはいない。



「俺達がこれから活動し続けてどんどん人が増えて行けば、レーナを悪く思っている人たちもレーナを避けなくなるかもしれないんだ」


「そううまく行けばいいがな。そうすると余り混沌とかレーナに関する名前にしない方がいいな。ただでさえお前の話しを聞いている限りでは、もう避けられているっぽいからな。なら、ここはむしろレーナとは真逆、対になる言葉を付けてみるのもありかもしれない」


「真逆か……そうすると明るい感じの名前がいいか…?」


「そうだな。聖、希望、光、それらを混ぜて考えてみるといい」


「分かった。少し考えてみるよ。サンキューな兄貴」


「あぁ、困ったことがあったら何でも聞けよ」



和彦は部屋を出て行った。

颯太と言えば机と睨めっこをしている。



「明るいと言ってもなぁ……俺のボキャブラリーじゃ厳しいかも…」



苦虫を噛み潰したような顔をした颯太は、FDを取り出して香織にメールを打った。

こういう時は頭のいいお方に相談した方がいいのだ。


『レーナとは真逆の、明るい感じのギルドにしたいと思っているんだが、どういう名前がいいかな』


そう打って数十秒後返信が来る。



「はや!」



颯太はFDを再び手に取ってメールを確認すると、そこにはこんな文章が書いてあった。


『友達と近くまで遊びに来ていて、今帰る所なんだけど会って話せない?メール打ちながら帰るのは危ないから』



「委員長は真面目だなぁ……まぁまだ時間はあるか」



香織の真面目さに呆れながらも颯太は時間を確認した。

晩御飯が例え出来たとしても、父さんが帰ってくるまでご飯にはありつけない。

現在時刻は午後4時。そして父さんが定時で帰ってくるとしても午後7時になる。十分時間はあった。


『了解。近くって事は表通りか。駅前で待っていてくれ。すぐ行く』



颯太はFDを操作しながら部屋を出た。



「颯太どこに行くの?」


「ちょっと野暮用だ」


「早く帰って来てね?」



母さんと一緒に料理を手伝っていたレーナは少しだけ寂しそうな顔を見せる。



「すぐ帰ってくる。母さん、ご飯前には戻るよ」



颯太が住む街、宮城県にある仙台の青葉区だ。

少し家を出て表通りに出れば人で溢れかえる。



「こっち来たのは久しぶりか。ゲーム買うくらいしかこっちに来ないんもんな~」



それも最近になってからというもの、颯太は大体の物は通販で取り寄せてしまう。

ゲームも例外ではなく、学校に行っているからまだいいが、軽い引き籠り状態だった。


颯太に自覚はないだろう。彼自身がレーナと出会った事によって少しずつ変わりだしているのを。



「香織さん」


「あ、颯太くん。こんばんは」


「こんばんは。ホトバシのフードコードに行こうか」


「分かったわ」


「香織さん、結構買い物するんだな」



香織の手提げバッグにぎっしりと入っている買い物袋を見て、颯太は唖然とした。


颯太は量に驚いたわけではない。

ただ『そんなに金があるのだったら、たくさんゲーム買えるだろうなぁ…』という至極どうでもいい事から呟かされたものだった。


実際香織はれっきとしたお嬢様なわけだし、金はいくらでもあるだろうなと颯太は自己解決する。



「まぁね。でも、今日は流石に私も買いすぎだと思っているわ」


「なに買ったんだ?」


「女の子が何買ったか聞いて楽しい?」


「いや、全然楽しくないな…」



ジト目でそう言われれば颯太は黙るしかない。

颯太は今でも香織の事が苦手だ。だから今も何気ない話題から話を繋いでいこうという作戦だったのだが、全くうまくいかない。



「………」


「………」



香織本人も黙っているわけだし、颯太もそこまでお喋りではない事から彼は黙っている事を選択した。


しかし―――



「あの、颯太くん…」


「……あぁ?なに?」



ギルド名を頭の中で考えようとした矢先に颯太は隣を歩く香織に話しかけられた。



「正直に言ってほしいんだけど、私の事をどう思っている?」


「な、殴らない…?」


「な、殴らないわ!」


「に………にが――――」



顔を逸らしながら『苦手』と言いかけた瞬間颯太は凄まじい殺気を感じて何とか言葉を飲み。



「ク、クラスの親しい友達であります!香織軍曹殿!」


「だ、誰が軍曹よ!」


「つうッ!い、一時期俺の中でブームだった完璧な敬礼を無視しやがった…」



足を踏まれた颯太は踏まれた足を抑えてその場にうずくまる。



「そっか……苦手のままか…」


「何か言ったか?」


「ううん、何でもないわ。ほら、行きましょう」


「足を踏んだ本人が言うセリフじゃねえぞ…」



まだ痛かったが、何だか置いて行かれそうな気がした颯太は香織の後ろを着いて行った。




「兄貴と話し合った結果がメールで送った事なんだが、やっぱり名前を考えるのは難しいな」


「なるほどね。確かに良い案かも知れないわ」



何故か香織の分までジュースを奢らされた颯太は香織とギルド名について話し合う。



「そこで学年成績2位である委員長に―――」


「香織」


「―――香織さんに意見を窺いたいと思ってメールを送ったんだ」


「ちょっと整理させてね。私も考えるから」


「よろしく頼む」



颯太の内心は汗だくだった。

恐怖が颯太の身体を瞬く間に支配し、滝のように汗を流させる。


『怖い』


この女から早く離れて家に帰りたい。

だが、香織の兄は竜也だ。彼は良い奴だ。

颯太は出来る事ならばこの関係を長く続けて行きたいと考えている。竜也とフレンドになった時から既にそう考えていたのだ。しかし、まさか竜也の妹が香織だと誰が思っただろうか。


颯太は彼女を見た。

彼女は今も足を組んで拳を顎に当てて思考を巡らせている。

彼の握った拳から汗が出る。


昼間見た彼女のあの表情は何だったのだろうか。


あんなエロ―――いや、艶っぽい表情には危うく颯太も落ちそうになった。



「颯太くん?どうしたの?私の顔に何かついているの?」


「………」



今はいつも通りの彼女の顔が目の前にある。



『昼間の行動には何か意味があったのだろうか……セクハラで訴えることも出来たはずだが彼女訴えないどころか、むしろ――――いや、待て!決めつけるのはまだ早い!』


「ねえ、どうしたの?お~い」



颯太も先ほど香織がしていたような態勢を取ってみる。



『なるほど、これはなかなかに考えやすいではないか。いかんいかん、こんなふざけている場合ではないのだ』



「香織さんは考えていてくれ。俺も考えるから」


「あ、うん……分かった」



香織は今まで見たことがない颯太の顔に不覚にもドキッとしてしまった。



『わ、私も考えなくちゃ。颯太くんが私を頼ってくれているわけだし、精一杯応えないと………あぁ…でも―――』



香織はチラリと颯太を盗み見る。

そこには腕を組んで至極真面目な表情をした颯太がこちらを見ていた。



『うわっ!目が合っちゃった!な、なんで私の事見ているの!?』



反射的に顔を逸らしてしまった香織は顔が熱くなるのを感じる。

そして颯太は―――



『まさか!?俺の事をもてあそんでいるのか!?』



少し戻って香織が颯太を盗み見る前に戻り、彼女が見るほんの少し前に颯太は自分の考えに驚愕し、香織を見る。



『顔を逸らした…だと!?まさか俺の思考を読んで…その考えが当たりだったから思わず顔を…………何てことだ!!くそ!やっぱり委員長は侮れん女だ!俺の純情をもてあそびやがって!』



物凄く感情が食い違っていた。


しかし、自分の考えが余りにも馬鹿げていると気付くのは晩御飯を食べている時であった。



「それで香織さんは何か思いついた?」


「あ、えっと……」



まさか自分は『颯太くんの考えている表情がかっこよかったから、何も考えていなかったの』なぁんて言えるわけがない。


そんな自分を軽く罵って、咄嗟に思いついたのが昔自分がよく読んでいた絵本のタイトルだった。


『確か光の国の王子様だったかな………でも、流石に王子様はないからそこを何か……』



「流石に難しいか?」


「あぁ!ちょっと待って!」


「ん?おう」



『王子と言えば王様がいて、王様と言えば国の長。その王様を守るのが兵隊……あ!』



「明るい感じになればいいんだっけ?」


「あぁ、明るかったらそれでいい」


「適当になってきてるじゃない……」


「すまん、俺の頭ではもう限界だ…」


「なら、一つ思いついたんだけど」


「お!どんなのだ?」



香織は学校帰りという事もあり、鞄からノートとペンを取り出して新たなギルド名を書きだした。



輝光きこうの騎士団よ!」


「明るいな……輝きと光がつくのか………それに、香織さんって案外ファンタジーな思考をお持ちのようで」


「なに!?私に意見があるのならこれより良いもの出してみなさいよ!」


「す、すみませんでした」


「輝光の騎士団か………まぁゲームだし、こういう名前もたまにはありか」


「私の採用?」


「あぁ、採用だ」


「良かった。颯太くんの期待に応えられて」


「正直本当に手詰まりだったからなぁ……香織さんがいて助かったよ。まぁそのジュース代は考えて貰ったお礼ってことで」



颯太はジュースを飲み干して帰ろうとした瞬間テーブルが強く叩かれた。



「な、なに?」


「ジュース代」


「は?」


「ジュース代払うって言っているの」


「あ、どうも…」



香織の手の平がテーブルから離れて残されたのはジュース代の120円。

颯太は彼女の考えが読めずに、出されたお金を受け取る。



「その代わりなんだけど、今度一緒に出掛けない?」


「えっ……お、俺っすか?」


「他に誰がいるっていうの?」


「兄さんから聞いたわ。レーナさんと遊園地に出かけようとしているのよね?」


「そうですが?」


「一緒に行こ」


「は、はい」



颯太は有無を言わせぬ笑顔に『はい』としか答えられなかった。


『やった…!颯太くんと遊園地に行ける!言ってみるもんだね。何着て行こうかなぁ…』


『な、なんで委員長がついてくるんだよ………レーナと二人っきりで遊ぼうと思っていたのに…』



外も内も笑顔になった香織。

外も内もげっそりになった颯太。


今日は颯太の香織嫌いが凄まじく加速した日であった。


ツンデレが理解できなく、好意どころか恐怖を植え付けられていく颯太。

自分がツンデレである事に自覚がなく、何故颯太に苦手意識を持たれているか理解出来ない香織。

食い違ってますね。面倒息いことに。


現実では……ないかな……。まぁ私の身上のだけの話になりますけどね。

もしかしたらこういう状況になったことがある人もいるかもしれません。

私が中学生の頃、何故か分かりませんがあの頃はアニメみたいな展開を日頃から期待していましたね。

自分の周りで事件が起きたり、そんなどうしようもない事を毎日思っていた自分が今では恥ずかしく思えます。

やっぱり中学生は黒歴史ですね………。まぁもちろん私が生きていく上で色々な刺激を受けたのも中学生でした。自分の小説が書きたいなァ、なんて思っていたのも中学生の頃でしたし、ホント色々思考が豊かだったんですね。

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