そして神器化へ
「2人とも、身体に異常はないかい?」
「大丈夫だよ」
「問題ないわ」
「よし……」
レーナとリーナの神器化が最終段階へ進み、明日遂に2人は神器になる時が来た。尾崎はしゃがみ、2人の肩に手を置く。
「明日でお別れだ。2人と過ごした時間はとても短かったけど、2人は僕を最後に1人の人間に戻してくれた」
レーナとリーナは尾崎の声に耳を傾ける。
「僕が今までしてきたことは許されないことだ。罪滅ぼしというわけではないけど、2人にこの先神器にされる人たちの命運を託す」
「尾崎…」
「オザキ…」
「大丈夫だ。きっと僕みたいな勇気ある者が君達の声に耳を傾け、そして皆を救い出してくれるだろう。それがいつになるのかは流石の僕にでも分からない。でも、安心してくれ。きっと君達は助かる」
「あなたは…?」
「僕かい?僕はもうこの人生に悔いはない。明日レーナとリーナを神器化したらエニグマンに辞職でも出そうかな」
尾崎はリーナに微笑む。
「尾崎……ありがとう…」
「何を言っているんだい。本来ならば君達はこんなところへ来るはずもなかったんだ。謝りはあれど、感謝されるようなことではない」
「リーナお姉ちゃん……?尾崎、どうしてお姉ちゃんは悲しそうなの?」
「……きっと僕との別れが寂しいんだよ」
「………」
「あぁ、なるほど。確かに私も尾崎と会えなくなっちゃうのは寂しいな」
「そうだね。僕もレーナと別れることが寂しいよ」
これから尾崎の身に起きることを既に分かっているリーナに対し、何も分からず笑顔を浮かべるレーナの頭を尾崎は撫でる。
「さぁ、最後の薬だ。この睡眠薬を飲み、次目を覚ました時はゲームの世界の中だ。まぁこんなことを言っても僕との会話や思い出は全て消去されてしまうんだけどね」
尾崎はテーブルに置いていた睡眠薬と2つのコップを2人に手渡す。
「尾崎、さようなら…」
「オザキ!ばいばい!」
「あぁ、さようなら。レーナ、リーナ」
2人は睡眠薬を飲むと、与えられた部屋へ戻っていった。2人はやがて深い眠りにつくことだろう。
「さぁ、僕も最後の仕事と行きますか」
尾崎はパソコンに向かい合い、レーナとリーナに関する情報データの改竄を始めた。
もう彼が太陽の光を浴びる日は来ないだろう。しかし、未来へ繋ぐ布石を打った。
「こんな感じかな……私が覚えている尾崎との会話は…」
「なるほど…」
レーナの話を一通り聞き終えた2人は彼女の声を逃すまいと聞いていたせいか、肩に力が入っており、後ろのソファに背を預けて力を抜く。
「それでレーナ、尾崎のメッセージは解読出来たのか?」
「これがね……無理やり解放したせいか、誤作動が起きていて解放されてないんだ……」
「え!?マジで!?………そこが一番肝心な内容なんだよな…」
「ふむ……どうやら、リーナの覚醒能力も解放せねばならないようだな…」
「でも、リーナは何も覚えていませんよ。いきなり覚醒能力を解放しろだなんて言ったところで…」
「そうだな……こればかりはどうしようもならない…」
「ごめんね…」
「レーナは悪くない!むしろこっちが感謝したいくらいだ!ですよね!クレアさん!」
「もちろんだとも。ランゲージバトルでの謎は解かれているが、現実世界での情報が全く出てこない状況なだけにレーナの情報のおかげで色々調査が捗りそうだ」
「ほんと…?なら良かったんだけど…」
「とりあえず私は尾崎という人物を追ってみる。レーナの話しを聞いた限り死んでるだろうがな…」
「幹部クラスの人間が抜けられるわけがありませんよね…」
「やっぱり尾崎は死んじゃったんだ…」
「あぁ…口封じに殺されたさ。でも、彼の足跡を辿ることは出来る。レーナの話から気になるキーワードがあった」
クレアはメモ帳のページを破り、それをテーブルに置く。
「東洋人が多かったこと、飛行機での移動があったこと。これに焦点を置きたい」
「クレアさん…もしかして…」
「あぁ、ランゲージバトルの本部は日本にある可能性が高い」
颯太の発見にクレアはにやりと口元を吊り上げて頷く。
「颯太も不思議に思わなかったか?ランゲージバトルの参加者の9割は日本人だということに。まぁ残り1割は私のような日本に住んでいる外国人も混ざっていたが」
「あ、言われてみれば…!全世界ならもっとごちゃ混ぜになるはずなのに、なんで日本人だけが」
「運営がプレイヤーに送りつけた招待状は日本のどこからか送られてきたものだ。私はその件と尾崎の足跡を調べる」
「俺はどうすれば?」
「颯太はランゲージバトルの覇者になるんだ。そしてその刃で全てを終わらせろ」
「……分かりました」
現実世界にまで影響を及ぼす混沌支配で全てを終わらせろ、とクレアは言った。
「君は負けてはいけない。やれるな?」
「最初から俺はレーナを救うつもりでいましたから。もう迷いはありません」
「上出来だ。それじゃ、私は家に戻ってこれを調べる。また夜にランゲージバトルで会おう」
「了解です。クレアさんもお気をつけて」
「うむ。あぁ、そうだ。このことは内密にな。皆に心配をかけてはいけない」
「俺もそう考えていました」
「ではな。レーナ、また私の家においで」
「う、うん」
「うん、よしよし」
クレアはバッグを持って立ち上がると、最後に笑顔でレーナの頭を撫でて天風家を後にした。
どうもまた太びです!
今回のお話は少し短い内容となっていますが、物語の区切りもいいのでここで切りました。
やっと現実世界でのランゲージバトルの情報を掴んだクレアは遂に動き出します。
ですが、それは結構あとの話になることでしょう。今は皆との夏休みを過ごすつもりでいます。
えっと、評価をつけていただき大変恐縮ですが、ありがとうございます!
こんな場所での謝辞となりますが、もう1度だけ言わせてもらいます。本当にありがとうございます!
最後に小説家になろう専用のツイッターアカウントを作りました。@hiroki12256
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