別の世界に行ったあとは油断するのだろうか?
神が行ったので研究を再開しよう。
なにせあと72時間しかないのでやりたいことをてきぱきとやらなければならない。
まずパワードアーマーを強化する。その間にスキルの習得や、新たな研究材料の取得をポイントで行えばある程度無駄が少なくて済む。
では、始めよう。
パワードアーマーをアイテムボックスから出して、魔術的効果のある紋章を刻んでいく。
不思議なものでどこを強化したいかを考えるだけで、それに適した紋章が頭の中に描かれるのだ。
楽ではあるのだが、いつか自分で規則性や法則を見出したいものだ。
では、スキルの習得に移る。
違う世界に行くと仮定した場合、行った人はその世界での戸籍が無いのでなかなか信用されにくい。
信用されるためにはどんなスキルを習得すればよいか考える。
正直街とかに出る気はないからパッシブの<誠実>や<人が良い>は習得しなくてもよいだろう。
僕に必要なのは限られた場面で本当のことを言っていると思わせるようなスキルだ。
ただ、<洗脳>とかの手段は好きではないので却下だ。いざという時にスキルの効果が解けそうでもあるし。
そう考えるとこの<契約魔法>というスキルが最適だと思われる。
というわけで習得しておく。
あとは、戦闘や不意打ちに使えそうな<隠蔽><見切り><銃術><剣術><時空魔法>を習得しておく。
こんなものでよいだろう。では、研究しておくべきものの取得に移る。
<聖人の左腕><英雄の左足><魔人の右足><魔人英雄の右腕><王の頭蓋骨><歩兵の指><魔族の角>を取得した。
これらをダンジョンコアに一度入れたあと、DNAの鑑定と魔力の計測を行っておく。
鉱石類も一応取得しておき<オリハルコン><ミスリル><ヒヒイロカネ>を取得し組成の解析に回した。
あとはパワードアーマーの強化をしながら研究成果が上がってくるのを待つばかりである。
◆◆◆◆◆
そして、神との待ち合わせである72時間後に無事神と会い、天使たちとの交渉も済ませ、異世界に赴くこととなったのだ。
交渉の結果は成功だったものの、交渉の過程は思い出したくもない。
そのとき神はこう言っていた。
「そういえば、その世界は崩壊が迫っているよ。君の目的を達成するためにはそれを退けることも必要だよ。じゃあ頑張ってね」
それはもっと早く言うべきことだろう。
神も天使もこんな性格では僕のもといた世界が問題だらけだったのも納得できるものだ。
そんなことを思いながら、世界を移動した。
◆◆◆◆◆
僕が目を覚ましたのは洞窟の中だった。
大体上が三メートル横が二メートル程の幅で、入口までの距離は百五十メートルほどだ。
何かを燃やしたような跡に、ついさっきできたような足跡もあるということは僕がここに来る少し前には誰かがいたと考えられる。蝙蝠などの生物がいないということは来ていた誰かが殺したと考えるのが妥当か。
誰かが来るということは、それなりに街や村のような拠点になる場所もそれなりに近いのだろう。
そんなことを考えている前にとっととここをダンジョンにしてしまおう。
アイテムボックスからダンジョンコアを取り出しここをダンジョン化させる。
魔力の量を見てみたところ、ここにある魔力は神のいたところ並みとは言わないが、それでもかなり多い。
これは当たりを引いたようだ。早速ダンジョンを大きくして、時間当たりに溜まる魔力の量を増やしていこう。
重機などもダンジョンコアに入っているのだが、重機を出すには少々狭いのであたりの壁をダンジョンコアに吸わせ、重機を出すのに十分な空間を確保した後に重機を出して、自動操縦であたりを掘り進めていく。
そうして作った空間に研究所を出し、空間を掘った土でできた壁で区切れば、迷路の完成だ。
即席ではあるが、ひとまずはこんなところでよいだろう。
次に、僕の肉体を100体ほどダンジョンコアから出し、<武具生産>で作った鉄でできた防具や武器を装備させ、<人形術>で操りダンジョン内を徘徊させれば当面のところは大丈夫だろう。
では、ダンジョンコアの機能を確かめて……。
そう考えた刹那、敵襲を示すアラートが鳴った。