うたかたの恋
会話がほとんどなく、見にくい話になってしまいました。それでもいいという方、読んでくださると嬉しいです。
道端に咲いた花をみて、愛しさを感じた。嫌いなはずの雨降りも、憂鬱な休日もいいと思った。
いつもは気にもしない好きに思ったりしないのに、貴方への想いに気付いただけでこんなにも世界が美しく尊く感じた。毎日が楽しくて自然と笑みも溢れる。
「恋をすると変わる」
っていうのは本当みたいで、いつもいつでも貴方を想っていた。
きっかけはほんの一瞬、一目みただけで気になるようになってしまった。名前も住んでる所も知らない、いつも窓際で外を見ていることだけしか知らない。気になって見ていただけなのに、いつの間にか好きになってしまっていた。
私達の距離はとても遠い。たまたま同じ建物にいて、同じ空間にいるだけ。
「どうか、少しでも近づけますように…」
でも見ているだけは嫌で。
神様にも何度もお願いした。占いもおまじないも試した。可愛くなろうと努力もした。
―――――――――――
「新藤さん」
貴方に呼ばれ振り向く私。やっと縮まった貴方との距離。
笑顔を見る度に締め付けられる胸、貴方に呼んでもらえるだけで自分の名前が宝物になる。
貴方に私を知って欲しくて、貴方にも私と同じ気持ちになってもらいたくて…。
――周りが見えなさすぎたのかな?
ある日街でみた、貴方と一緒に歩いてる、貴方の“大切なひと”。
貴方のこと何も知らないのに、なんで“大切なひと”だかわかったかというと、貴方を見る彼女の目を見たから。貴方も彼女も同じような目でお互いを見てた。
二人で手を繋いで歩く姿は私が思い描いてたもので、でも貴方の“隣”は私じゃなくて。
「―――…っ!!」
私は走った。
雨が降ってきたけど、とにかく走った。
幸せな貴方を見るのは――、私じゃない誰かといて幸せそうな姿を見るのは嫌だ。
私を一番に見て欲しかった。
降り続く雨、濡れて重くなる服と心。雨に頭を冷やされ私は気づく。
「私達は付き合ってる訳じゃない…」
そう、貴方は私に話しかけてくれた人。誰も付き合うなんていってない。
「…っく」
わかっていたけど、貴方の一番になれないってわかると悲しかった。
でも人を想うこの気持ちを知った私は幸せだと思う。今の切なさと距離が縮まった時の嬉しさ、輝いていた毎日を次への肥料に。
今、この瞬間だけ貴方を想わせて。締め付けられる胸の痛みも、今だけ噛み締めさせて。
想いはちゃんと胸にしまうから、貴方を困らせないから。
―頬を伝うのは雨なのか涙なのか。
いつの間にか街には野良猫と私だけしかいなくて、ずぶ濡れたまま時間を忘れて空から降り続く雨を見ていた。
最後まで読んで下さり、ありがとうございます!感想など下さると嬉しいです。