第5話
何かあんまり月光の民の話になってない気が・・・・(汗
そもそも月光の民は黒髪黒目だ。
ただ、純血の月光の民の髪と瞳は、大きな魔法を使ったとき銀色に変わる。
何がどうしてそうなったのかは分からないが、「純血の月光の民は銀髪銀目」という常識ができていたらしい。大きな魔法を使った後しばらくは黒色に戻らないので、きっと魔法を使った後の銀髪銀目を見た者がそんな噂をして広まったのかもしれないが、こちらには好都合だった。
知られるわけにはいかない。
王妃になって一生を王宮で過ごすなんてまっぴらごめんだ。王妃として王宮で暮らすことは、後宮に住む女たちにとっては憧れかもしれない、何しろ皇帝の一番近くで過ごすのだから。でも私はごめんだ。
後宮の住人になり、居もしない「純血の月光の民」を探し、魔力の低下や精霊の減少の原因を探る方が、外に出て色々な精霊にも会えるだろうし、そして妹にも・・・今はどこに居るのか分からないが魔法を使えば皇帝にバレずに会いに行きやすいかもしれない。安易だがそう思った。
私の妹は、実は半分しか血が繋がっていない。でも月光の民であった母の血を継ぎ、見た目は立派な月光の民だ。ただ・・・魔法はほとんど使えなかった。だが火をおこしたり、精霊に伝言を頼んだりと魔法がほとんど使えなくてもそれほど苦労はしていなかった。
そもそも魔法とは、私たち自身が持っている魔力に精霊たちが持っている属性の力を乗せることで使えるものだ・・・少なくとも月光の民の魔法は。だからハーフであり魔力が少ない妹は小さい魔法しか使えないが、自分の魔力を最大限使った魔法が使える。だが大抵の魔術師は自分の魔力で精霊を使役することで魔法を使っている。色々な呪文を駆使し、自分の魔力を使い精霊を使役し、精霊に魔法を使わせる。術者は自分の魔力より高い精霊は使役することが出来ないので、必然的に自分の魔力より低い精霊を使役することになる、だが呪文で無理やり使役される精霊が本来の能力を発揮できるはずもなく、結果自分の魔力の3分の1程度の魔法しか使えないことになる。月光の民は自分の魔力を100%魔法に生かせるが、大抵の魔術師は生かせない。
話がそれたが、つまり、魔力の低下や精霊の減少の原因はその辺にあるのではないか?と私は考えていた。だがそれも知らせるつもりはない。知らせたらどうだというのだ。魔術師は今更魔法の使い方を変えないだろうし、しかしだからといって魔法を使わないわけにはいかない。結果何の解決にもならないなら言わなくても同じだ。
そう、私は側室として皇帝のために働くことに決めた。
表面上だけでも平和に暮らせるのならいくらでも嘘をついてやる、そう思った。
「分かりました。」
その声は、以外に部屋に響いた。
「側室として後宮に上がり、皇帝陛下のために原因と純血の君を探しましょう。」
その言葉に、皇帝は少しだけ目元を和ませた。
「ただし、側室として上がったとしても、私に妾としての仕事をさせないでいてくれるのなら。」
「ただし」という言葉に一瞬緊張が走ったものの、そんな仕事は他にいくらでもやる女がいる、ということで了承してもらえた。
そして目の前に一枚の羊皮紙が差し出される。製紙産業は飛躍的進歩を遂げている、そんな時代に羊皮紙を使うとは・・・・正式な契約ということか。どこかの残念な陛下の国とは大違いである。前は形だけだった。
ガルシア皇帝が署名をし、皇帝の印章を捺印した。
次は私の番だ。
皇帝はずっと私を見ていた。碧い瞳に散っている金は太陽の光を思わせる。懐かしい、温かい光だ。
「お前は、私が守ると約束しよう。」
視線を私と合わせたまま、皇帝が言った。私が居なくなっても妹は役に立たないと知っているからの言葉なのか。真意は測りかねた。
だが、人を信じさせる何かがあった。
多少粗野なところはあるが、やはり大国の皇帝というだけある。
「では私は、あなたを守ることを約束しましょう。」
「レティシア」と公爵邸で呼ばれていた名を契約書に記しながら言った。そう、あなたが居なくなってしまったら、今度こそ私たちはどうなるか分からない。だからこそ私が、あなたを守る。
かつて月光の民で歴代最高の魔力を誇ると言われた、私の真名にかけて。
そして契約は結ばれた。
純血の娘の真名は明かされぬまま・・・・・。ガルシア皇帝に、17人目の側室が誕生したのだ。
次はガルシア皇帝視点にしようかガルシアに着いてからにしようか迷ってます。