第3話
調子に乗って1日で書いてしまいました。急いで書いたので誤字脱字等ありましたら報告お願いします。
今、あの人はなんと言ったんだろう?
それが、今私の頭を占めているものだった。
「結婚して欲しい」
確かにそう言われた。
私の瞳を見つめながら。
いや、今も見つめられ続けている。
大きな魔力を有する私は、人の感情を読むのに長けている。それなのに、彼の人の感情は読めなかった。
『何を考えている?』
挑むように彼を睨んだときだった。
「まあ!私に求婚するなんて!!私を誰だと思っているのです!無礼でしてよ!」
パトリシアが空気を一掃した。どうやら自分に求婚したものと思っているようだった。
でも違う。彼は私を見ながら言ったのだ。それも、月光の民としての私に。
「でも、名前ぐらい聞いてあげても良くてよ。爵位さえ問題なければ第二候補ぐらいにはしてあげますわ。」
「第二候補」とは嫁ぎ先だろうか。何とも高慢なことだ。
どうやら彼の人の美貌と男らしさに酔っているらしかった。
「これは失礼しました。私はガルシア帝国皇帝、カイル・デル・ガルシアと申します。あなたではなく、そちらの黒髪の女性を迎えに来ました。」
「!!」
今度こそ時が止まった。この大陸、いや、世界最大の国、ガルシアの皇帝がなぜここに。こんな小国の公爵家に、迫害された月光の民を迎えに来たというのか。何のために。
頭の中は疑問ばかりでよく働かない。公爵もそうらしく、彼の皇帝を凝視したままだった。ガルシア皇帝を連れてきたわが国の陛下でさえ、空気を読んでか何も言い出せず、彼の皇帝の発言を待っている。だが、空気を読めない人間が一人だけいた。
「まあ!!ガルシア皇帝ですって!?陛下がお連れになっているのですから本人でしょう!?」
「まあぁぁぁぁ!私がガルシアの王妃に!?」
「何て素敵でしょう!カイル様なら私と並んでも・・・「そこの女!」
勢いづいたパトリシアには皇帝の言葉の後半は聞こえなかったらしい。ガルシア皇帝の名前を口に乗せた時、公爵が止めようとしたがもう遅かった。
ガルシア皇帝が侮蔑の瞳でパトリシアを見ながら無理やり言葉を止めさせたのだ。そこに至って初めて、パトリシアは失敗したと悟った・・・。失敗ではすまされない失敗ではあったが。
「誰が私の名前を口にして良いと言った!」
もっともな言い分だった。公爵とわが国の陛下が必死に取り成している。
あたりまえだ、良く考えれば分かる。いや、良く考えなくてもガルシアとわが国の力の差は歴然だし、それ以前に他国の客人に対しての対応としては最悪である。普段はパトリシアを甘やかしている公爵だが顔を真っ赤にしてパトリシアを叱り、謝罪に必死だ。
私はその光景を、どこか遠くから見ていた。
「とにかく、約束どおりその黒髪の娘は私が貰い受ける。いいですね、レフィルド陛下。」
「あ、は、はいぃ!!」
ガルシア皇帝はわが国の陛下に無理やり了解を取り。私の手を取った。
その時になって初めて、私に焦りが生じた。「どういうことですか陛下!」と公爵が陛下に詰め寄っている。ということは、公爵は知らなかったのだ。でも陛下は了承しているらしい。公爵に説明しようと必死な様子からそれが分かった。陛下が了承したことを公爵が今更、しかもガルシア皇帝相手に覆せる訳がない。それが余計、私の焦りを煽った。
「どういうことですか公爵!!契約を違えるおつもりですか!!」
公爵に言い募っても仕方のないことだと分かっているが、他に話が通じそうな相手はいない。このままではガルシアに連れられていく!!妹のいるこの地から引き離される!!私が必死に抵抗している間にもガルシア皇帝にずるずると引きずられ、公爵邸では魔法の使えない私はなす術もなく、公爵邸の玄関前に付けられた馬車に無理やり乗せられる。白地に金でガルシア帝国の紋章、王冠を戴き、翼を背にもつ獅子が描かれ、同じく金で豪華で繊細な模様が描かれた豪奢な馬車だった。
「ガルシアまでは馬車でも1週間かかる。ガルシアに着いたらすぐに後宮に入ってもらう。一月後には民への披露だ。それまでにお前を嫁る意味を説明する。」
「今この場で説明して下さい!!私はこの国を離れたくありません!!」
「今から話しても良いが、この馬車にはお前の魔法を無効化する結界が張ってあるし、歴代最高の魔力を持つと言われる俺から、どのみちお前は逃げられないぞ、月光の民の娘。」
その言葉に、ガルシア皇帝の本気と逃れられないことを知った私は俯き、唇を噛むしかなかった。走り出した馬車に、遠ざかる妹の気配を感じた気がした。
頭の中の話を文章にするって難しいです!