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月の娘、太陽の王妃  作者: 如月 四季
月光の民の娘
3/19

第2話

これで早々とストックも無くなりました・・・。

あと一週間で王城に上がるというある日、公爵の長女パトリシアは、何故か朝から興奮していた。


いつもは昼前まで寝ていて、私が起こしに行くまで絶対に起きないのに。

まあ、起こしてもすぐには起きず、必ず一回は意地悪をされるのだけれど。



「ちょと聞きなさいよレティシア!今日の昼に誰が来ると思う?」



と、早朝にもかかわらず大声で言った。そして私が何かを話す前に、「陛下よ!!」と答えを披露してくれた。

それだけで、この早朝からのパトリシアの興奮具合と屋敷の慌ただしさに得心した。

私は一度も会った事はないが、この国の国王陛下はそれはそれは美形なんだそうな。国王という国一の権力者な上に美形!まさにパトリシアの理想のタイプだ。むしろ彼女は王妃になることしか考えてないと言っても過言ではない。

そんな自分の理想のタイプ(むしろ彼女にとっては獲物だろうか)が自分の家に来ると分かればそれは興奮もするだろう。今日一日はこの興奮が続くだろうと思うとゲンナリするが、機嫌が悪いよりましだ。



「そうですか。それはようございましたね。陛下はお嬢様に夢中でございますから。」



と持ち上げるようなことを言っておく。これは本当のことで、陛下はパトリシアに夢中だ。

権力も財力も顔も良い陛下だが、一つ残念なのは性格、と言われている。本当に為政者かと思うくらい気弱で、自分の臣下はおろか、民に一言言うだけでも何度舌を噛むのかというくらいらしい。だがパトリシアにとっては自分の思うとおりに動かせるのでそれほどマイナスではないようだし、案外うまくいっているようである。

性格はまるで正反対の二人なのに不思議だ。

と、これらはすべて公爵家の使用人たちの噂を私がまとめた結論だが。



「あたりまえでしょ。(わたくし)を誰だと思っているの!!この国の王妃となる女よ!」



本当に今日は絶好調である。婚約したわけでもないのにパトリシアが王妃になっている。しかし私も伊達に一年もこの公爵家でメイドをしていたわけではない。



「そうですね。では王妃様とお呼びした方がよろしいでしょうか?」



と、返しておく。「機嫌が良い時間を少しでも長く」という一年間で身に着けた教訓を生かすために。




「まあ、気が早いわね。そうね、呼ばせてあげても良いけれど、今日は陛下がいらっしゃるから止めておきなさい。」


「かしこまりました。」




どうやら今日は「王妃様ごっこ」はしないようである。

と、その時部屋にノックの音がした。部屋の主であるパトリシアの許しなく部屋に入ってきたのは、この屋敷の主である公爵その人であった。



「パトリシア!!陛下がお着きになったぞ!」

「まあ!こんな早朝に?」

「何でも火急の用事があるそうだ。一緒に来なさい。」

「火急の用事?何かしら?」



と、そこで何かを思いついたパトリシアは満面の笑みを浮かべた。




「きっと私に早く会いたくて火急の用事なんて言ってるんだわ!そんなに私のことを・・・!きっと今日、私はプロポーズされるのよ!」




なんておめでたい頭なんだろう・・・と思いつつこっそりため息を吐く。そして陛下がいるであろう応接間に向かう公爵親子の後ろについていく。私はパトリシア付きのメイドとなっているためパトリシアにどこまでも付いて行かねばならないからだ。ただ、私は屋敷からは出られないので屋敷の敷地内に限るが。








応接間に入るとはじめに目に入ってきたのはやわらかい金色の髪に水色の瞳の青年だった。「王子様」という言葉がとても似合う美形。その美形はパトリシアが入ってきたとたん立ち上がりもじもじし始めた。



「ぱ、ぱ、パトリシア・・・。ひ、久しぶりだね。あ、あ、朝早く・・・ごめんよ。」

「まあ陛下!!(わたくし)こそご挨拶が遅れて申し訳ありませんわ。」

「そ!そ!そんなことありません!・・・あ、会えて、嬉しい・・・です。」

(わたくし)もですわ陛下!」



どうやら(くだん)の国王陛下らしい。噂どおり残念な方だ、と二人の世界を公爵と傍観しているときだった。




「そろそろ私も彼女と話をしたいのだが。」




二人の世界に割って入る声がした。陛下の影になって見えなかったがもう一人お客様がいるらしい。そのお客様がソファから立ち上がった時。応接間の時間が止まった。


なぜなら、美形と言われている陛下など目に入らないくらいの美貌を携えた青年がいたからだ。

陛下と同じ金の髪に青い瞳、だが陛下のやわらかい色合いと違ってこちらは髪は黄金(きん)で瞳は深い海の(あお)に光の加減で金が散り、ラピスラズリのようだった。さすがのパトリシアも目を見開いて固まっている。

そして、その青年はさらに驚くべきことを口にした。公爵でもパトリシアでも他の誰でもなく、私を見つめながら。唐突だが、と前置きした後に。




「私と結婚して欲しい。」と。

次はゆっくりの更新になると思います。

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