第11話
おまたせしました!長いと見せかけて文字数はそんなに多くないかも!!みたいな・・・。
楽しんでいただければ嬉しいです!
居並ぶ精霊たちの真ん中で優雅に微笑む娘は
月の銀色の光を受けて、髪も瞳も銀色に見えた
まるで、純血の月光の民のように・・・
レティシアの機嫌が悪い事は、もちろん分かっていた。
他ならぬ自分がその機嫌を損ねたことも分かっている。
そもそも、契約である「妹の保護」が叶っていないのである。レティシアの機嫌が悪いのは当たり前で、さらに「自分で探す」というレティシアの主張を自分が却下したことで、さらに機嫌を損ねてしまった。
彼女の妹を保護しなければならないことは分かっている。自分が言い出したことだし、何しろ契約書にも書いてあることだ、反故にはできない。
でも・・・
「彼女の中には妹のことしかないのか」
とそう思ってしまったのだ。
妹のことを思っているからこその契約だったのに、いつのまにか妹のことを思っているレティシアが気に入らないなんて、自分は何を考えているのか・・・・。
妹を見つけるのは良い、あの笑顔がまた見れるかもしれない。でもそれは自分に向けた笑顔ではない、それが気に入らない。
そもそも彼女は、夫である自分のことは何とも思っていないのか?少しくらい関心を持ってもバチは当たらないと思うのだが・・・。
・・・・思考がずれたが、とにかく
「妹を見つけてやりたい」と思う自分と
「妹を見つけたくない」と思う自分
その矛盾に挟まれて、その時カイルは気付かなかった。
どちらもレティシアを想っているがゆえの想いだということに・・・・。
側室達のいつもの『お遊戯会』を見ながら、隣のレティシアを窺えば、宴の始めより機嫌が悪そうだった。まあ、宴自体はまだしも、側室達の『お遊戯会』はレティシアにはさぞ無意味に、そしてつまらないものであろう。彼女達にはレティシアは見えていない、皇帝である自分が獲物だからだ。地位、権力、財産、どれも最高の自分は彼女達にはさぞいい獲物だろう。もっとも、狩られてやるつもりは毛頭ないが、この『お遊戯会』は早く終わりにして欲しい。毎度毎度ご苦労なことだ。
と、お決まりの『お遊戯会』にうんざりして側室達の視線の半分が何処を向いていたのか気付かなかったのが間違っていたのか。
はたまた『早くお開きにしてレティシアと話し合わなければ』と、この後のレティシアとの事に考えがいっていたのが悪かったのか。
気が付いたら第一妃のイゾルデがレティシアに喧嘩を売っていた。
「月の民の魔法でも見せていただけませんこと?」
「さぞ大きな魔法を使えるのでしょうね?」
「まあ、純血の月の民には負けるのでしょうけど」
「踊りや歌は出来ないでしょうから、やはり魔法を見せていただきたいものですわ」
「でも、純血ではないのなら魔法も大したことないのではなくて?」
イゾルデに便乗して側室達が騒ぎ始める。
うんざりしながらも騒ぎを鎮めようとしたときだった。
椅子が耳障りな音を立てた。隣に座っていたレティシアが勢い良く立ったのだ。
下から見上げる形になったカイルにはレティシアの表情は良く見えなかったが、先ほどまで感じていた怒りの感情が消えていることは感じ取れた。そしてレティシアは無表情に言ったのだ。
「ならば魔法をご覧に入れます。」
と。そしてそのまま2、3歩歩く。
誰もが息を呑んだ。イゾルデも、まさか本当にこの場で魔法を使うとは思わなかったのか目を丸くしている。彼女自身も相当な魔力を持ってるため、月の民とはいえ純血ではないレティシアはたいしたことはないと思っていたのか、馬鹿にしたかっただけのようだった・・・少なくともカイルにはそう見えた。イゾルデにやっていた視線を表情の見えないレティシアの背中に戻し、止めようとした瞬間だった。
『天つ空翔る君』
澄んだ謳声が響いた。
『天つ空翔る君
優しき揺りかごより請い願う
穏やかな風にこの想いを乗せ
荒れる風にこの願いを乗せ
どこまでも遠くへこの声を乗せる
我の声聞こえたならば馳せ参じ
我の願いを叶えたまえ
自由を司る風の精霊の王よ
我の真名は『二つの月』
どうか願いを叶えたまえ』
謳声に合わせ、レティシアが舞う。魔力をその身に纏わせながら。
魔力は風の属性を持ち、銀色に光る。
広間の天井はすべてガラス張りになっていて夜空が良く見えるようになっているため、目視できるほどに強大な魔力は、月光を受けさらに輝いて見えた。
キラキラと輝く銀色の魔力が、レティシアのドレスを揺らすのが、まるで風にそよぐ赤い薔薇の花びらの様だ。
やがて、1人また1人と半透明な羽を持った大小様々な人間に似た者たちが集まり始めた。
それは、初めて見る精霊たちの姿だった。
赤、黄、青、緑、さまざまな色を持つ彼らが何の精霊か、初めて見るカイル達広間にいる者には分からない。だが、皆一様に笑っていた。謳い、舞いながら、いつまにか広間の中央に居たレティシアを中心に輪のようになり、思い思いに舞っている。
そして、レティシアも笑っていた。
レティシアが謳い終わった瞬間、何処からともなく突風が吹いた。
精霊たちが頭を下げ左右に一列になり、レティシアへの道をあける。
その道を、1人の青年がゆったりとした足取りで歩いてくる。
銀色の髪が、月光を受け蒼く輝く。ゆったりとした服は空色で統一されていた。
春のあたたかい日の空を思わせる、淡い空色の瞳が優しく細められる。
一目で人間ではないと分かるほど、それほどの美貌の青年だった。
いまだに広間の人間は呆然としている。
今目の前に居るのが、精霊王に次ぐ力を持つといわれる7大精霊の王の一人、風の精霊達の王であることに気付かぬまま。
行き当たりばったりで書いているので次が思いつきません(汗)
でも書かないで居ると何を書いていたか忘れるので、忘れないうちに次話に取り掛かろうと想います!!
次は今回登場した風の精霊の王様のターン!かな?