第10話
あんまり期待したほど話が進まない・・・(汗
側室や貴族達が集まった大広間にて、私の機嫌はすこぶる悪かった。
17人目の側室として皇帝の横に座り、人々の視線を集めていることも。
一段下にずらりと座った16人の側室達の憎悪の視線を受けることも。
貴族達の好奇の視線に晒されることも。
そしてなにより、妹を保護することが叶わなかったことが、私の機嫌を底辺にまで下げていた。
「レティシア・リ・デ・エンフェライエル様へ、ぜひご祝福の言葉を・・・・」
いつまで貴族の挨拶が続くのか。ほとほと辟易している。
『何て無意味。時間の無駄。私には何の特にもならない。妹に会いたい。』
私の頭にはこれしかなかった。
きっと妹は精霊が保護している。それは分かっている。他ならぬ私が、精霊に頼んだのだから。
でもだからこそ、きっとこのままでは一生ガルシアの騎士には見つからないだろう。
きっと精霊は、私がガルシア皇帝と契約を交わしたことを知らない。
だからガルシアの者達から逃げるのだ。妹を害するものとして。
『私が探すしかない。』
それが、私が出した結論だ。
または、精霊と話が出来るよう、この王宮の結界の外に出られるだけでも良い。
精霊を呼べれば、すぐに解決するだろう。
なのに・・・・
と、レティシアは隣に座るカイルに目を向ける。
先ほどその案は他ならぬガルシア皇帝であるカイルにに却下されていた。
そして、そのカイルを説き伏せる術を、レティシアは持っていなかった。
『逃げると思われている?』
契約を交わしているのに?
『人に頼るのが嫌いとか?』
皇帝として命令はするのに?
『力がないと思われてる?』
月光の民なのに?
『そもそも私のことが嫌いだから・・・とか?』
これが一番ありそう。
とにかく、早く妹を保護して欲しい!!
居場所が知れないことが一番嫌だ!!
そう叫べたらどんなに良いか・・・・。
実際は皇帝の隣に黙って座っているしかない。
何て無力。
レティシアは唇を噛み、震える手を膝の上で強く握り、怒りを抑えるしかなかった。
宴は進み、側室達による『出し物』の時間になっていた。
『出し物』とはレティシアが勝手にそう思っているだけで、実際には彼女達は皇帝と第17妃であるレティシアへのお祝いと称して歌や踊りを披露しているのである。
だがそれは『称している』だけであって、誰がどう見ても皇帝の気を引こうと自らの得意なことを披露しているにすぎなかった。
もっとも、他の事で頭がいっぱいのレティシアには、皇帝に向けられる熱の篭ったまなざしも、自身に注がれる憎悪のまなざしも、イライラが募るだけで大したダメージを与えはしなかったが・・・。
だがそんな宴は、最後の側室の出し物が終わったことで、緩やかに終了に向けて進もうとしていた。
「エンフェライエル妃にも何か得意なものをお見せいただきたいですわ。」
この言葉がなければ。
発したのは第1妃『イゾルデ・リ・デ・イルマーレン』
王妃に一番近いと言われている側室だった。
ちなみに、レティシアの正式名「レティシア・リ・デ・エンフェライエル」は
『リ』=側室
『デ』=公爵
『エンフェライエル』=家名
です。
なので、『リ』を抜かすとエンフェライエル公爵令嬢ってことです。
エリアの『ル・フラーレン』は『ル』=子爵でフラーレン子爵令嬢です。
ルルとリリの『ラ・ベル』も『ラ』=男爵でベル男爵令嬢。
のちのち増えていきます。