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月の娘、太陽の王妃  作者: 如月 四季
新しい側室
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第8話

続けて更新です!

レティシアの表情はガルシアの後宮に来た当初より柔らかくなっていた。

エリア、リリ、ララの存在はそれだけレティシアに大きな変化を与えた。


ただ、以前としてレティシアの妹の行方は知れなかった。












「妹の方はまだ見つからないのか?」



ガルシア皇帝カイルの執務室には宰相であるノアティードが捜索の報告に上がっていた。歴代皇帝の執務室だったそこは、豪華だが執務を執る場所ということでシックで落ち着いた雰囲気の部屋だった。




「はい。レティシア様にも以前として心当たりはなく、フラーレン子爵家やベル男爵家も総出で探していますが未だ見つかっておりません。」




ノアティードの報告に、執務室の中に沈黙が落ちた。

レティシアがガルシアに来てからもうすぐ一月。新しい側室である月光の民のお披露目はもうすぐだ。彼女は契約を守り後宮に居るというのに、自分は彼女の妹の居場所さえも分からない。契約を果たす以前の問題だ。




「あれはどうしている?」


「レティシア様はお披露目のための準備で忙しいかと。」


「そうか。」



女官や侍女とも打ち解けたと報告で聞いていた。元気であるならそれでいい。



「ただ・・・」


「なんだ。」


「少しずつですが、食欲が落ちているとエリアから報告が上がっています。もともとレティシア様はお育ちになった環境が環境だけに食の細い方でしたが、もうすぐ妹君が行方不明になり一月ですから・・・。」


「・・・・そうか。」




カイルにはそう返すしかなかった。自分に何もできないのは分かっている。それに、契約を何も果たせていないのに彼女にばかり契約を守らせている自分が卑怯に思えてならなかった。





















その頃レティシアはといえば、明日に迫ったお披露目の儀式のための最終確認をしていた。お披露目の儀式は王族が婚姻するときに王宮前の広場に面したバルコニーに姿を現し挨拶するものである。歴代皇帝の側室、とりわけ王妃を迎えるときは盛大なものになるが、今回はその比ではないと言われていた。民が王妃以上に望んでいた月光の民である。本来なら晴れ晴れしい儀式であるものの、その主役の1人であるレティシアの瞳は晴れなかった。



どんなに綺麗なドレスも、靴も、宝石たちも、心を慰めてはくれない。

エリア達がいてくれるので自分を保っていられるが、お披露目の衣装を選ぶときも上の空で、花嫁の色である白のドレスならどれでも良いと言い3人を困らせた。

食も日々細くなっている。

ガルシアの後宮に入り、規則正しく豪華な食事を取っていたレティシアは娘らしい曲線を取り戻しかけていたが、このままでは逆戻りだ。




一月も妹の行方が知れないとは・・・・。

いっそ契約を破棄してしまおうかとも思ったが、ガルシア皇帝のあの瞳の輝きを信じたのは自分だ。あの人なら信じられると、心のどこかで思ったのだ。それにエリア達のことも出来るなら裏切るようなまねはしたくない。







そしてレティシアの心が晴れないまま、お披露目の日を迎えたのである。
































その日は、雲一つない快晴だった。



暖かい春の日差しが降り注ぐバルコニーに待ち望んでいた人物が現れたとき、広場に集まった民衆は歓喜した。花が舞い、賛辞が飛び交う。かつてないほどの人数の民衆に騎士達も大慌てである。その民衆の視線を浴びているカイルは、バルコニーから民衆に手を振っている。傍らに白いドレスを身に纏ったレティシアを連れて。




花嫁の衣装である白いドレスはレティシアの黒髪に良く映えた。レースやリボンのあしらわれた白いドレスからのぞく肌も白く美しい。黒髪はアップにして白バラがさしてある。ただ、黒い神秘的な瞳だけは輝きを失ったように曇っていた。





レティシアの腰に左手を置き右手を振っていたカイルは、横目でレティシアを観察し不意に、笑えばさぞ美しいだろうと思った。



薄く化粧を施され白いドレスを着たレティシアは、もともとの神秘的な美しさも相まって、陽光の下だがまさに月のような美しさだ。









ただ、表情がないことを除いては













それを、少し残念に思った。



















だが次の瞬間、何かを見つけたように一瞬驚いたレティシアは、





晴れやかに微笑んだのだ。花が咲くように。

カイルの腕の中で。カイルではない誰かを見つめながら。

次はあまりお待たせしないように頑張ります!!

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