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無能才媛と蔑まれた私の魔力が【聖癒】だと誰も知らない~婚約破棄されたので、隣国の不治の病に苦しむ皇子をこっそり救いに行きます~  作者: 九葉
第1章

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最終話

グランデール王国が、エルミットの条件を呑んだという報せは、すぐに届いた。

ルーファス殿下は王位継承権を剥奪され、マリアベル嬢と共に辺境の修道院へ送られたと聞いた。彼女の『現代の聖女』という称号も、瘴気の前になんの力も発揮できなかったことから、ただの虚名であったことが露見し、実家である男爵家も没落したという。


そして、ヴァイスハイト公爵家。

わたくしの父親は、国を危機に陥れた元凶として爵位を返上。領地は王家預かりとなり、事実上、公爵家は崩壊した。

自らの過ちの大きさを、彼らはこれから生涯をかけて償っていくのだろう。


(でも、もう、わたくしには関係のないこと)


わたくしは、エルミット王城の、陽光が降り注ぐ美しい庭園にいた。

グランデールの瘴気を浄化するためだ。

もちろん、あの国に戻るつもりはない。レオルド皇子とエルミットの宮廷魔術師たちが協力して、わたくしの力を遠隔でグランデールの地脈に届けるための、大規模な魔法陣を準備してくれた。


魔法陣の中心に立ち、静かに目を閉じる。

左手首の腕輪が、温かい。これはもう、力を抑えるための枷ではない。わたくしが力を正しく制御するための、道標だ。


(届け、わたくしの力。苦しんでいる人々の元へ――)


イメージするのは、枯れた大地に再び緑が芽吹き、病に苦しむ人々に活力が戻る光景。

手のひらから放たれた金色の光は、魔法陣に吸い込まれ、遥か彼方の祖国へと飛んでいく。

民に罪はない。

彼らが、再び穏やかな日々を取り戻せるように。


力を解放し終えたわたくしの身体を、そっと支えてくれる腕があった。

振り返るまでもなく、それが誰のものか、分かっていた。


「お疲れ様、セレスティア」

「レオルド様……」


彼の胸に、安心しきって身体を預ける。

彼の逞しい腕が、優しくわたくしを抱きしめてくれた。


「……後悔は、ないか?」

「はい。ございません」


きっぱりと答える。


「辛い過去でした。けれど、あの過去があったからこそ、わたくしはここへ来ることができました。……貴方様に、出会うことができました」

見上げると、彼は愛おしくてたまらない、というような顔で、わたくしを見つめていた。


「俺もだ。お前と出会うために、神は私にあの病という試練を与えられたのかもしれないな」


彼は、わたくしの左手を取り、古びた銀の腕輪にそっと触れた。

「それは、もう外さないのか?」

「はい。これは、唯一わたくしを信じてくれた祖母の形見であり、わたくしが歩んできた道の証ですから。それに……」


わたくしは、彼の胸に顔を寄せた。

「これからは、この腕輪だけでなく、貴方がそばで、わたくしを支えてくださるのでしょう?」


いたずらっぽく微笑むと、彼は一瞬目を見開いた後、たまらないといった様子で、わたくしを強く抱きしめた。

「……ああ、もちろんだ。生涯をかけて、お前を守り、愛し抜くと誓う」


唇が、優しく重なった。

陽光が、祝福するようにわたくしたちを照らし、庭園の木々が風にそよいで、さわさわと優しい音を立てている。


一年後。

エルミット王国は、美しく聡明な、新しい妃を迎えた。

彼女は伝説の【聖癒】の力を持ちながら、決して驕ることなく、常に民に寄り添い、国王となったレオルドを支え続けた。

彼女の微笑みは、陽だまりのように国中を温かく照らし、人々は彼女を心から敬愛し、『太陽の妃』と呼んだ。


かつて『無能才媛』と蔑まれ、誰からも愛されなかった令嬢は、もういない。

わたくしは、自分の本当の価値を見つけ出し、心から愛してくれる人の隣で、今、世界で一番の幸せを噛み締めている。


見せかけの価値に惑わされず、その人の本質を見抜くこと。

そして、自分を信じて一歩を踏み出す勇気。

それが、わたくしの物語が、後世に遺す、たった一つの真実。


――無能才媛と蔑まれた私の魔力が【聖癒】だと誰も知らない。

けれど今は、たった一人、愛する貴方が知っていてくれる。

それだけで、もう十分すぎるほど、幸せなのだから

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