それから
私が桜我と付き合い始めて、半年が過ぎた頃久しぶりに高校の同窓会があった。
もちろん、私も桜我も咲弥もスケジュールを調整して参加した。
そこには、今も同じ業界で活躍している子、高校卒業してこの業界に飛び込んだ子、
独立して社長になってる子など、みんな様々なお仕事をしていて、仕事のことを誇らしげに話す同級生たちは輝いていた。
その同窓会で、久々に顔を合わせたのは井上愛美ちゃん。
「愛美ちゃーん!」
手を振り声をかければ、いつもと同じように手を振り返してくれた。
「久しぶり、井上さん」
「井上ちゃん、久しぶり。」
「咲弥くんも、桜我くんも久しぶり。いつも活躍しているのをテレビや雑誌で見ているよ。」
「ありがとう。」
「なっちゃん、そろそろ離してあげなよ。よく遊んでるんでしょう?」
「仲良しだもんね~。」
「ね。それは本当。急に連絡してもタイミングが合えば、ご飯食べに行ったりとかしてるもんね。」
「あぁ、それで最近ご飯食べてくるーが多かったのか。おかげで、俺も楽だけど。」
「ちょっと、ご飯はいつも俺が準備してます感出さないでくれる?私だって作ってるじゃん。」
「相変わらず、仲良しだね。」
なんて、4人で固まって離れていれば、他に仲が良かったメンバーなどが声をかけてくる。
あとは、同級生の中にファンの子だっているから、その子達からお話を聞いたりして同窓会は楽しく過ごせた。
企画でビンゴ大会があって、実物と同じくらいの三毛猫のぬいぐるみをゲットした。
「梛月、そろそろぬいぐるみも断捨離してね。どんどん増えていってるじゃん。」
「えー?」
「いや、あなた寝室のベッド周りぬいぐるみだらけでしょう?実家に送るのは禁止だから。寄付するなり何なりして、お気に入りの子だけ残してください。」
「善処します。」
「してください。」
ニッコニコの私に対して、咲弥がチクリと悩んでいるところを突いてくる。
「でも、咲弥くんは強行しないでしょう?」
と愛美が隣から言えば、ポツリとそうだけど。
こぼした。咲弥の腰に手を回して、にこーと破顔した。
「愛だね、愛。大好き。」
「はいはい。俺も好きですよ。」
「え?俺今何見せられてんの?ちょ、なっちゃんも俺の事構ってよ。」
「桜我のこともちゃんと、大好きだよー。」
と猫のぬいぐるみごと同じく、腰に腕を回してひっつけばクレームはなくなる。
「相変わらず3人は仲良しだね。」
「私は愛美ちゃんの事も大好きだよ。いつも遊んでくれてありがとう。」
「いいえ~。私も梛月ちゃんの事大好きだから、お互い様。」
最後に愛美ちゃんに抱きつけば、ちょうど同窓会自体は終了。
その後仲のいいメンバーで二次会に行く人もいたけれど、愛美ちゃんを含めて一緒に会場を出た。
咲弥と桜我が車を取りに行っている間に、私は愛美ちゃんには桜我と付き合っている事を報告しようと決めていた。
「あのね、愛美ちゃん、報告があって。」
「桜我くんと両思いになった?」
「え?そんなに分かりやすかった?」
「分かりやすかったと言うか、桜我くんが梛月ちゃんの事大好き何だろうな~とは在学中思っていたし、仕事関係なく3人に直接会ったら、桜我くんのヤキモチ焼き度が上がっていたから、付き合い始めたのかな?って思っただけ。」
「え?じゃあ私の態度が分かりやすかったという事ではない?」
「だって在学中、私咲弥くんと付き合ってると思っていたもの。従兄弟と知るまでは。咲弥くんも梛月ちゃんの事すごい気にかけてたし、動画とか見出したらこの環境下だと距離のバグり具合は納得って思っちゃったもん。」
「あははは。とにかく桜我とはお付き合いし出したし、桜我的には結婚前提って言ってたからね、私のペースに合わせてもらってるの。」
「それが良いかもね。だって両思いだと思ったとしても、友達期間が長かったわけだから。もう、恋通り越して愛だよね。」
「恋心に気づくまですごく時間がかかったけれどね。」
「それでもちゃんと気づいて、相手の事をずっと好きでいれた梛月ちゃんと桜我くんの気持ちは本物でしょう?」
「・・・確かに。」
「とにかく、おめでとう。次からは私の相談にも色々乗ってね。」
「愛美ちゃんからの相談なんて桜我放っておいて全然優先して聞くわ!」
そんな会話をしている内に車に乗った2人が戻ってきて、愛美ちゃんが車内で桜我にもおめでと~って伝えてたくさん会えなかった間の話をした。
愛美ちゃんを家まで送り届けて、私と桜我も桜我の家で降ろしてもらって久々に迎えた明日のオフ、どこ行くか話しながら、ふと感じたことを桜我に伝えた。
「初恋は実らないっていうけれど、私桜我と両思いになれて、少しずつ一緒にいられる時間が増えてすごく幸せ。これからも沢山の思い出作りたいしって思うなんて恋心ってすごいね。」
「なっちゃん、それは恋心というより、もう愛だよ。」
なんて、笑いながらひっついて過ごした。
それから、従兄弟や友人たち、私たちがどうなったかはまた別のお話。




