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「そういえばさ、桜我昨日のドラマ観てくれた?」
と、爆弾を落とせば飲み物でむせる桜我。“大丈夫?“と聞きながらこの反応は見たな。と確信をする。
「ちょ、待って。昨日のってアレだよね?」
「昨日放送の分です。咲弥からは感想もらったけど、桜我から珍しく感想がこなかったから。今日聞こうかと思って。」
と聞けば、見る見るうちに耳まで真っ赤になる。
はい、確定。でも、この反応から見るに話すまでには時間がかかるな。と冷静な脳内と桜我の赤面につられて私も顔が熱くなるのを感じた。
「ごめんちょっと待って。後でもいい?事故る。」
「私が運転しようか?」
「それは、だめ。今日は俺が一日運転する感想もちゃんと今日伝えるから、待って。」
「感想もらえるなら。」
と、一度この感想を聞くという話題は、後に回すことになった。
水族館の次に来たのは、咲弥リクエストの海岸。
水族館からは少し離れた場所にあって、穴場スポットらしい。
車を降りて、ぐっと背伸びをする。
「運転ありがとう~。」
「いいえ~。」
穴場スポットだけど、人はまばらだ。
「ここ、アクロの練習場所に良さそう。」
「えー、そっち?」
「サーフィンでもできるの?」
「俺、サーフィンできないけど・・・・。」
「ん?泳ぎに来たかった?」
「いや、それもあるけど。」
「けど?」
「なんでもない。」
とアヒル口になった桜我の顔を覗き込んでみたが、その後特に話すことなく砂浜を歩くことにした。
しばらく歩いて、大きめの流木の上をバランスをとりながら歩いてみたりして最近あったことを話す。
私の予定では、告白は今日の別れる際に伝えようと思っている。
だって、その方が振られた時のダメージが少なくて済むから。
という理由だ。
その前に、昨日のドラマの感想聞きたいよね~。振られた後なんて私今までと同じように接するようになるまで時間がかかると思うのよ。
そのあたり、自分の性格はよく分かっている。
「ねぇ、なっちゃん。昨日のドラマがファーストキスだったの?ベッドシーンも?」
「は?え?ちょっと落ち着こうか桜我。私、ドラマの感想は求めたけど、そのファーストキスとかちょっと関係なくない?あと、ずっと私の初出演からドラマ観てくれるじゃん。思い出して?」
「昨日のお話俺の中でかなりの衝撃で、感想どころじゃなかった。」
「どうしたのよ?」
「なっちゃんが、毎回身内のキスシーンに衝撃を受けるという事を理解した。」
「う、うん。それは、理解してくれてありがとう?」
「ちなみに咲の感想はなんだったの?」
「え?咲弥は、“めっちゃエロく表現できてよかったね。”だったけど。従兄弟たちは、“琥珀くんを締める”ってグループが賑やかに動いてた。」
「エロさを求めてたの?」
「エッチさと、想いが伝わって幸せなんだよ。っていう幸福感と意識して、演技はしたし咲弥とどんな表情が、セリフの言い回しがいいかってお互い意見出し合って、収録日は挑戦した。」
と自信満々に伝えれば、桜我の眉間に皺が寄るしアヒル口は酷くなる。
その表情は初めて見るというか、7年間で初めて見る表情でドキッと嫌な意味で心臓が跳ねた。
「・・・桜我・・??」
「・・・ごめん、今日は帰ろう。」
ぽつりと呟かれて、え?と思ったが来た道を戻る桜我の背中を急いで追いかける。
咲弥にはこっそり、今から帰ることになる、って連絡を入れて桜我の少し後ろを歩いて寮まで送ってもらった。
帰りの車内は通夜ですか?って言いたいほどの重たい空気でとても話を続けるような雰囲気でもなく、初めて沈黙した時間を過ごし、桜我に一緒に出かけてくれた事と運転をしてくれたお礼を伝えて、帰宅した。




