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恭弥くんを3人で見送った後、柊弥くんの案内でクラス発表を見に行く。
クラス発表がされている掲示板の間には、普通科、芸能科の新入生が多くいた。
人が少なくなるのを待ちながら、人混みの後ろから自分の名前を探す。
芸能科は3クラスあるらしい。
「大きい2人、名前見つけた?」
「何?梛月ちゃん小さくて見えないの?」
「見えません。無駄に身長あるんだから早く見つけてよ。柊弥くんあった?」
「あった、あった。咲弥も、梛月も7組だよ。」
一番大きい柊弥くんが、クラス発表の中から私と咲弥の名前を見つけてくれた。
「高校でも、今年一年同じクラスだね。」
「今年一年も安泰だわ。」
「安泰って何?」
「勉強に困らない。同じクラスだから課題も一緒。提出物も同じ。困らないよね。」
「そこは、素直に“嬉しい”と言って欲しいわ。」
「2人とも、教室まで案内するよ?」
「本当?」
「ありがとう、柊弥くん!」
とお礼を言いまずは昇降口に案内してもらって、自分の靴箱を探す。
上靴に履き替えた後自分の教室へ柊弥くんに案内してもらった。
下駄箱に鍵が付いていたのは、防犯のためらしい。
普通科の方も同様に鍵が付いているらしいので、この学校では普通のことらしい。
教室へ向かう途中、ヒソヒソと内緒話をしている生徒もいたけれど、咲弥も柊弥くんも人気俳優に、モデルなので2人のファンだろうと私は思う。
そんなことを考えながら教室へ入れば、テレビや雑誌で見た事のある生徒もいた。
黒板に書いてある座席表を確認して、自分の机に座ると入学式が始まるのを待った。
教室まで案内をしてくれた柊弥くんは、クラスメイトに捕まって体育館へ連れて行かれた。
しばらくして、担任の先生がやってきて入学式が始まった。
入学式自体は中学校と同じでスムーズに進んでいく。
入場の時も退場の時も、にっこりと笑みを浮かべて移動をする。
咲弥も同様に笑顔なのは、俳優・伊集院 咲弥として見せているからだろう。
私はまだ顔出しは完全にしていないが、それも入学式が終わるまでだし、好印象を与えるためには笑顔が一番だと、父も母も小さい頃から言っていた。
再び教室に戻ってくれば、年間予定表と時間割が配られる。
自己紹介も今日してしまうらしく、理由としては仕事が忙しい一部の生徒がいるかららしい。
クラスをぐるっと見渡して一番注目を浴びているのは4月クールのドラマに主演で出演している咲弥。
髪色も変わってるから、ドラマの中でのイメチェンか他のドラマの撮影が始まるか。など憶測ではあるがみんな色々思っているのだろう。
私個人としては前の席に座っている男子が気になっている。
私の記憶が間違っていなければ、実兄である月都と一緒によく仕事をしている子じゃないかと思う。
確か、“桜くん”と呼ばれている子だと思うんだよなぁ?
と、記憶を思い出しながらクラスメイトを観察をする。
自己紹介が始まれば、女子は雑誌の専属モデルやアイドルの研修生が多い。男子も女子同様アイドル研修生、俳優、モデルが多かった。
やはり、“声優”をしている同年代にはなかなか出会えない。
他のふたクラスに行けばいるのかもしれないけれで、この7組ではいなさそうだと思ってしまった。
「ムーンプロダクト所属、研修生の葉山 桜我です。 よろしくお願いいたします。」
と前の席の子が自己紹介をした。
その自己紹介を聞いてやはり、月都と一緒に仕事をしている子だと確信をした。
葉山くんが席に座れば、続いて私が席をたつ。
「サクラエンターテイメント声優部所属、長谷川梛月です。よろしくお願いいたします。」
と、ここでもしっかり口角を上げて挨拶をする。
声優は表にでて仕事する機会は少ない。けれども、知名度としてはアニメ好きであればある程度あって欲しいと正直思う。
簡単に挨拶をすれば、そのまま自己紹介は続いた。
このクラスですでにデビューしている子は大体、クラスの三分の一程度。
他は、うちの事務所と同様先輩のバックについたりアイドル雑誌に出たりしている子が殆どだった。
自己紹介が終わり、明日からの予定を担任の先生から聞いて今日は解散となった。
帰り支度をして、咲弥の方を見れば数人のクラスメイト(女子)に囲まれていた。
「咲弥ー、今日打ち合わせでしょ?急がないと間に合わないんじゃない?」
「えぇ!?ちょ、梛月待ってよ!」
「私は天音ちゃんのお迎えで、“少し急いで”と連絡が来ているから、帰りまーす。さよーなら。」
「置いて行く気じゃん!みんなまた明日!」
先に出た私を追いかけるように、咲弥が荷物をまとめて慌てて出てきた。
そのまま、私のマネージャーである天音ちゃんと合流をし、2人のツーショを何枚か撮影をして、事務所へと向かった。