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桜我の気持ち。

俺が長谷川梛月と伊集院咲弥に出会ったのは、高校の入学式の日。

とにかく2人は入学式が始まる前から非常に目立っていた。薄いピンクヘアのなっちゃんと、ハニーブロンドの咲。

桜ヶ丘学院には一般コースと芸能コースの大まかに二つのコースがあって、芸能コースは事務所の推薦、もしくはすでに芸能活動を始めている生徒が入学する。

一応校則で髪の毛を染めるのは禁止。ただし芸能コースの生徒は事務所からの申請があれば髪の毛を染めることができる。

理由は、仕事で髪の毛を染める事が必要だから。というもの。

なので、入学の時点で髪の毛がハイカラーだった2人は少なくとも入学式の時点で、仕事をすでにしていて情報解禁前なのだということは、芸能コースの生徒は理解していた。

どこの事務所で、どこのクラスだろうと思っていたけれどそれは入学式が始まる前、自身の教室についてすぐに分かった。

それから、なっちゃんとは席が近いことが分かった。

入学式当日はさすがに話しかけにくかったけれど、翌日から挨拶をして話しかけたらめちゃくちゃ気さくで、会話が非常に面白かった。

その後すぐに、なっちゃんの相棒である咲とも仲良くなった。

高校3年間3クラスある芸能コースで、ずっと同じクラスで仕事がなくても3人で一緒にいるのが当たり前になった。

各個人の仕事の情報解禁がされれば、自分のことのように喜んできれる2人の事を俺は大好きだし、一緒にいるのが心地よくて、素でいられる癒しの場所だった。

なっちゃんの性格上、来るもの拒まず、話しかけられたら一般コース芸能コース問わず対応をする。

そして、親しい友人に対しての距離感はバグっているというかかなり近いという事をこの3年間で俺は学んだ。

本人的には普通の事なのだろうが、おめでとうのハグは通常。眠い時のハグも通常、授業でわからなかった時の解説をする時の距離の近さも通常ときたもんだ。

でも、それが自分はなっちゃんにとって、親しい友人と呼べる位置にいるという事で嬉しかった。

だからか、俺もしくは咲以外の異性との距離が少し近かったり(なっちゃんは距離を取ろうとしていたけど)するとモヤモヤしてその会話にわざと入って行ったり邪魔をする事も多々あった。

邪魔をする俺の行動を見て、咲は笑うことが多く、なっちゃんがいない時に揶揄われたこともある。


「梛月の事、本当に桜我大好きだよねー。」

「咲だって、なっちゃんの事大好きじゃん。」

「俺の好きと桜我の好きは違うと思うけどなー。」


と会話をしたのがなっちゃんが仕事で休んだ高3冬休み前の話し。

咲のその言葉の意味を理解したのは、年明けに公開された動画のチャンネル“最強遺伝子たち”の初回を見てからだ。

年越しの歌番組にメンバーと一緒に出演していたら、昴くんと月都くんのふたり一緒にお知らせを始めた。

メンバーは動画を見てのお楽しみ。との事だったので、仕事が終わり久々のオフが続くからとそのチャンネルの動画を見て衝撃を受けた。


オープニングで現れたのは眠そうな表情のルテラの伊集院くん。再三“末っ子に怒られろ”とスタッフに言いながら家に入って行って、和室の襖を開いた。

カメラが布団で眠っているメンバーの寝顔を1人ずつ映していく。

その映像の中には、自分が所属しているフロンティアのメンバー2人も寝ていた。月都くんの隣で腕枕をされて寝ている人物を見て、自分でも驚くぐらい低い声が出た。


「は?」


和室の布団は全部で7つで、寝ていたのは6人。

クラッカーの大音量で目が覚めたのは、フロンティアのリーダーである昴くん。柊弥先輩、そして月都くんの3人。

月都くんは目を覚ました後、なっちゃんが起きていないかすぐに確認していた。

伊集院くんに言われた通り、悪態をついたリーダーに少し笑いが出たが、爆睡をしている“学生組”と呼ばれた3人の寝顔が再び映る。

学生組と呼ばれていたのは、月都くんの隣に寝ているなっちゃん、隣に眠るのはモデルの桃ちゃん、2人の頭もとに寝ていたのは咲だった。

それぞれ、伊集院くん、月都くん、昴くんが起こす。

完全に素で寝起きのなっちゃんと咲を見れたのは新鮮だが、カメラに気づいた2人の表情がシンクロしていて面白かった。

面白かったけど、やっぱりモヤモヤが消えなくて伊集院くんの説明に非常に驚いた。

全員従兄弟同士で月都くんとなっちゃんが兄妹という事だけれどそれでも距離が近い!と思ってしまった。


「はー、俺なっちゃんの事、恋愛対象として大好きじゃん。」


動画を一応最後まで見終わった後の感想は、なっちゃんに対しての独占欲と執着心。

それでも俺もアイドル、なっちゃんも声優、歌手、女優と大人気だ。気持ちを伝えたとしてもこの3年間でなっちゃんは自分のことになると物凄く鈍感ということも理解している。

少しずつなっちゃんにも俺の気持ちを知っていってもらおうと決めたのはこの時。

そして、俺の気持ちも咲には筒抜けだったという事も理解した。

学校では、咲の次に仲が良い異性は自分だと思っている。

とにかく、メンバーには迷惑をかけたくないし、とにかく身内にバレるまでは少しずつでも確実に今以上に距離を詰めていこうと思った年明けだった。

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