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「咲ーーーー。」
「はぁーあい。」
リビングのソファでテレビを観ていて、咲弥がお風呂から上がったタイミングで名前を呼ぶ。
名前を呼んで私の所にきた咲弥はナチュラルに、おでこに手を当てた。
「よし、熱はないな。で、どうしたよ?」
「名前呼んだだけで熱を測るってなかなかないよね?」
「いやあるよ。梛月が俺の事“咲”って呼ぶ時だいたい体調が悪い時か、言いにくいことを隠している時。で、何が言いにくいの?」
背もたれを乗り越えて隣に座った昨夜は、話を聞く体制に入っている。
くそ、これだから咲弥に沼るファンが増えるんだ。なんて愚痴るがまぁそこは置いておいて問題は、明日桜我を含めて観に行く映画の内容に関してだ。
「明日観にいく映画、ガチで私の映画にするの?昴くんの映画でもいいんだよ?」
「桜我が観に行く気満々だし、俺も梛月の映画は気になる。アクションシーン多かったんでしょう?」
「アクションは、頑張ったから見て欲しいです。じゃなくてね、桜我がどう反応するか分からないから先に咲弥に話すけど、キスシーンが何回かあるわけですよ今回。ファーストキスが映画かって思っちゃったけど。で、ちょっと激しめ?っというか、お父さんと月都くんがみたら絶句しそうな感じのね、キスシーンがあるわけですよ。だから、正直私はかなり、恥ずかしいから一緒に観に行くのはって悩むんですが・・・。」
「叔父さんと月都が絶句するって、どんなキスシーンだよ。」
「えー、大人のちゅーです。何せ今回のお相手は“年上の護衛”ですからね。7歳離れてるなんですよ。役柄的に。なのですこーし覚悟して観てほしいというか、グループチャットが荒れてないからみんな忙しくて観に行けてないんだろうな。って思ってる。」
「いいよ。俺普段からキスシーン梛月に観られてるから、逆のパターンって新鮮。いい勉強になりそう。」
「クレームは受けないからね?」
「むしろ、チャットでも覚悟して観に行って。って連絡は・・・。俺の感想次第でいいか。」
「いいと思う。」
「桜我はなー、多分大丈夫だと思うんだけど。一応予告でもキスシーンぽい雰囲気のシーン流れてるし、大丈夫じゃないか?それこそ、映画館で声出さない、クレーム受けない。って言っておけば。」
「そうするか。」
咲弥に話して少し吹っ切れたように返事をして、明日の準備をして早めに就寝することにした。
明日一日三人揃ってオフだなんて珍しいことだから。
翌日、映画館が入っているショッピングモールの前の待ち合わせ場所で桜我と合流をする。
今回は男が2人いるっという事で前回却下されたオフショルのワンピースが許可された。
うちの親族って男ばっかりなせいか、私と末っ子の女性へ制限というか“危ない”という基準が中々厳しいのではないか?
とたまに思ってしまう。
思ってしまうけど、お父さんがヤキモチ妬きだったからまだ私の中では許容範囲内ではある。最終手段はお母さんに小さい頃教えてもらったので、対処法も知っている。
そんな私の父に憧れた従兄弟達は、父の真似をするようになった結果女性へはめちゃくちゃ紳士で、必ず話を最後まで聞く。など世の女性は一度は憧れるような行動を素でやるようになったので、デビュー前から全員一定の女性ファンはついていた。
「桜我、おはよう。」
「はよ、桜我。」
「おはよう、なっちゃん、咲。映画初回の観るんだろ?早く行こ?」
と言う桜我に、昨夜言われた通り“騒がない”“声出さない”“クレームは受け付けない”の三つを厳重に約束をさせ映画館のチケット売り場でチケットを買い、飲み物とポップコーンまで買って最後尾の席に私を挟んで座った。




