冬の日
学園祭から1ヶ月ちょっと。
世間はクリスマス一色に染まっていた。
年末に向けて芸能コースのデビュー組は特に忙しさを増す。
はぁーと白い息を吐きながら教室にやってくれば、今日は一日普通科と合同の授業らしい。
桜我も咲弥も今日は朝から一日中仕事だと言っていた。
私は、年内の仕事はある程度ひと段落をした。
冬休みに入ってからの怒涛の歌番組だけだと思う。
事務所のカウントダウンコンサートは18歳にならないと出演出来ないので、私と咲弥はシーリオの4人と一緒に見学組の予定である。
指定された教室に入れば、教室がざわりとなる。
その空気に少しなれなくて、教室の後方にある芸能コース用の席に座る。
本日7組は1〜6組までの普通科に、芸能コースの生徒が振り分けられる。この、合同授業の時基本的に教室は指定されていて、私はいつも咲弥と桜我と3人一緒に合同授業を受ける。残念ながら今日は1人なので、窓際の席に座る。
平穏な、冬休みをゲットすべく期末テストに向けてのテスト対策をしないといけないと思っているので、学祭時に結成したチェリームーンというグループに今日あった授業内容を箇条書にして、ノートを添付する。
咲弥に関しては、家に帰れば私の復讐も兼ねて一緒に勉強をするし、少し不安な所があれば柊弥くんに質問をしにいく。
午前中の授業を受け、昼休みに入った所でグッと背伸びをする。
普通科の子達と会話をしてはいけないというルールはないが、気軽に話しかける子もいないだろう。
ちなみに私や咲夜のブログに桜我を登場させる時のは“チェリームーン組”と表示をしている。
流石に公式のSNSには登場したことはないが、私と咲夜のブログにはよく登場する。
そのせいか、最近私と咲弥と桜我の3人でバラエティなど出演するようになった。
事務所側も、桜我のみ共演が許可された。
それはブログやネットでの反響もあるのだろうなと、ネットの影響力すごいなと感心してしまった。
お昼ご飯を食べて、午後の授業は体育。
なんとペアを作っての授業らしく、ポツンと残った私に声をかけてくれたのは、私より身長が低い黒髪の女子生徒だった。
「長谷川さん、よければペア組まない?」
「んえ?いいの??」
「私もあぶれちゃって。」
「よかった。私、長谷川梛月。よろしくね。」
「私は、井上愛美。こちらこそよろしく。」
「私とペア組んで、クラスの子に何か言われたら言ってね。」
とこそっとしゃべれば笑いを堪えているような仕草をされた。
それから体育の授業が始まり、1時間一緒に行動してくれた。授業後更衣室にも一緒に移動してくれて、そこから他のクラスメイトの子達も気軽に話しかけてくるようになった。
表面上は仲良くしておこうとは思うけど、後は要観察と柊弥くんに言われた事を思い出しながら会話を続けた。
その日の授業は、咲弥と桜我がいない割には楽しく過ごすことができた。
学校から寮に帰宅して、部屋の掃除をする。少し寒いけれど窓全開にして掃除機と自室、共用部分の雑巾掛け、トイレ掃除、風呂掃除を完了させた頃、咲弥が帰ってきた。
「ただいまー」
「おかえり。手洗いうがい!」
そう言えば、咲弥はシューズクローゼットにコートとマフラーを直しに行ってから、洗面台に向かった。
その間に私は窓を閉めて回る。
「咲弥調子悪い?」
「んー?調子は悪くない。」
「一応熱測っとこ。」
と救急箱から体温計を取り出し、咲弥に渡す。
私はエプロンをつけて晩御飯の準備を始める。最近はお互い忙しいので休みの日に咲良ママに教えてもらった作り置きをしているので、汁物さえ作ってしまえばご飯はすぐにできる。
体温計の音が聞こえたので、一緒に体温を見ると平熱だった。
「今日一日中撮影だったからかな?」
「お風呂は、今貯めてるから少しゆっくりしてて。その間に晩御飯作っちゃうから。」
「ありがとう。」
と返事をした咲弥はどうも、眠そうだ。
一度仮眠をとらせて、ご飯とお風呂でも良さそうだななんて考えているうちに、ご飯を作り終わり咲夜を起こし一緒にご飯を食べる。
食事の時に話すのは今日の学校での事。
メッセージチャットでも軽く話していたので、明日学校へ行ったら話しかけて来る子が多いかもとは連絡をしていた。




