エンシャント・クルーレ ー超ド級チートバトル!! 異世界でめぐりあう3人の転生物語ー
ーー死の瞬間は、唐突に訪れる。
あたりまえのように毎日学校に通い、退屈な授業を受けて、代わり映えのしない日々を過ごす。そんな日々が、永遠に続いていくものだと思っていた。
でもそれらの日々は全然あたりまえのことじゃなくて、今まで積みあげてきたものはある日突然に奪われ、すべてを失う。人間の人生なんて、そんなもんなんだろう。
俺は死の直前にそんなようなことを考えながら、自分たちに覆いかぶさろうとする土砂を見つめていた。
死の直前には時間がとまって感じるとはよく言ったものだが、今は土砂のひと粒ひと粒までよく見えている。きっと、からだが生きようとして感覚が極限まで研ぎすまされているんだ。
ーーこいつらと、もっとずっといっしょにいたかったな。
最期にそう考えて、俺はまぶたを閉じた。平凡な人生に残された、ただひとつの未練。
……でも、自分が死んだその先に、また新たな道が続いているのなら。たとえこいつらとは別々の道になってしまっても、その道がいつかどこかで交わっているのなら。
俺たちの歩む道の先が、希望につながっていたらいいな。
そうして俺たちのからだは大量の土砂に押し潰され、人生を終えた。
◆
事件から、少し時をさかのぼる。
日本のとある地域。深い深い山間の奥に、小さな集落があった。
まわりを見わたせば、青々と茂った樹、樹、樹……。周囲は樹木に覆われた山々で、まるで緑の壁に囲まれているかのようだ。
樹々の枝や幹には蝉がしがみつき、けたたましい鳴き声をあげている。彼らは七年の時を経てようやく地中から這いだし、成虫として残されたわずかな命を謳歌しているのだ。
そんなわんわんと迫る蝉の大合唱に包まれながら。田んぼの畦道を、かったるそうに歩く少年がひとり。白い半袖のワイシャツに、黒のスラックス。学生鞄を手にぶらさげながら、両手を頭の後ろに組んでいる。
彼の名前は、小鳥遊恵介。この山間の村で生まれ育った、ごくごく普通の高校生だ。
中肉中背、学業もスポーツも普通。しかし、凡庸な自分を変えようとあくせくすることもなく、いつも落ち着いている。
そんな冷静な彼を周囲は信頼し、いつも生徒会長や委員長などの要職を押しつけられてしまう。いちいち断るのもめんどくさいし、小さいころからずっとのことなので、彼としても慣れたものだ。
「ふぁ~、かったりぃなぁ……。暑くてたまったもんじゃねぇよ」
彼は大きくあくびをして、誰が聞いているわけでもなく、そんな愚痴をつぶやきながら歩きつづけていた。八つ当たりするように、道に転がる小石を蹴り飛ばす。
べつに、暑いのを我慢して無理して学校に行く必要なんかないのだ。文句を言わずに親の家業を継げばよい。自分の親が作るお米はツヤツヤ光沢があって、びっくりするほどウマイ。
……だが、彼には学校に行く理由があった。
「「恵介ー!!」」
恵介は自分を呼ぶ声に振りかえった。気だるそうに、右手にぶらさげた鞄を肩に抱えたまま。
手を振りながら駆けよってきたのは、ふたりの少年と少女。
「お~い、恵介ぇ。なにチンタラ歩いてんだよ。遅刻しちまうぞぉ」
「そうよ! まだ若いんだから、チャキチャキ歩きなさい?」
大きなからだに、ノンビリしたしゃべりかた。彼は恵介の幼なじみの月野風太。
優しくて、ちからもち。勉強は得意じゃないが、頼りがいがある。地元で毎年開催されるわんこそば大食い大会では大人たちを押しのけて優勝したという強者である。
そしてもうひとりの幼なじみ。人差し指を立てて恵介に説教をしているのは花緒沙耶だ。
成績優秀でスポーツ万能の美少女。実家は空手の道場で、父親はわざわざ都会から弟子入りしに訪れる者がいるほど著名な武闘家だという。
恵介のもとに風太と沙耶が追いつくと、三人は並んで歩きながら、小競り合いを始めた。
「あぁ~? 遅れて走ってきたヤツらに言われたくねーっつぅの」
「フフン、今からボクたちが追い抜いちゃうから立場逆転だもんね」
「そうよ、これはウサギとカメ! あんたはノロマで鈍重なカメ、私たちは華麗に野を駆けぬけるウサギなのよ!!」
「……勝つのはカメのほうだろ」
「あ、そっか」と口に手を当ててポカンとした表情を浮かべる沙耶。その可愛らしい仕草に、恵介と風太は思わず腹を抱えて笑ってしまう。
……三人は小さいころから、いつもいっしょだった。家が近所で、家族ぐるみで仲良し。娯楽が少ないこの集落では、子供どうしで遊ぶしかなかったのだ。
ひとつしかないクラスでは毎日顔を合わせて授業を受け、運動会などのイベントでは互いに競いあう。
去年の夏祭り、三人で見た打ち上げ花火はため息がでるほど美しかった。
いつだったか、風太がわんこそば大会で喉を詰まらせて死にかけたときは、本気で慌てたものだ。
恵介、風太、沙耶はいつものように三人で、延々と続く畦道を歩いていった。こんな日々がずっと続いていくんだと、彼らはそんな風に思っていた。
◆
「俺と」
「ボクと」
「「付き合ってください!!」」
「……えっ?」
沙耶は動揺し、左と右を交互に見回していた。
左には恵介、右手には風太。それぞれ片手を彼女に差しのべ、深々と頭をさげている。
ーー高校二年生の夏、とある日の放課後のこと。沙耶は恵介と風太に、校舎裏に呼びだされていたのだ。
校舎裏は切り立った崖に囲まれているが、その中央には一本の大きな樹木が立っている。
樹齢百年は超えるだろうというモミの木で、幹の樹皮は年齢を重ねたことを示すようにしわくちゃだが、枝につく葉は蒼々として生命力にあふれている。
在校生からは『伝説の樹』と呼ばれており、「その樹の下で告白し、結ばれたカップルは永遠に結ばれる」と言われている。
そんな伝説の樹の下で、沙耶は告白を受けていたのだ。しかしまさか、恵介と風太の両名から、ふたり同時に告白されようとは。しかも、幼いころから見知った幼なじみたちから、唐突に。
樹の下は日陰になっていて、ひなたより涼しいはずだが、沙耶は頬を真っ赤に染め、ダラダラと汗をかきはじめていた。
「俺らふたりとも沙耶のことが好きだとわかったときから、同時に告白しようと決めてたんだ。そうじゃないと、フェアじゃないからな」
「さぁ、沙耶。ボクと恵介、どちらがいいかを選んでくれ!!」
「き、決められない……」
「「えっ」」
「そんな急に言われても、決められない……!」
沙耶のこの返答に、恵介と風太は頭をさげたまま顔を見合わせた。
しかし、ふたりは「フッ」などとカッコつけたように笑うと、顔をあげて肩をまわしたり、拳をゴキゴキと鳴らしはじめた。
「フッ、ふたり同時に告白すると決めたときから、こんなことになるんじゃないかと思ってたぜ」
「うん。こんなとき、男がやることといったらひとつだよね」
「……え?」
「「沙耶は、戦って勝ったほうのモンだー!!」」
「えぇ~っ!?」
そう言うなり、恵介と風太は取っ組み合いのケンカを始めてしまった!
戦って勝ったほうと付き合うなどと、沙耶はひと言も言っていない。彼女の意向を無視するつもりであろうか。
そもそも、戦闘力が高いほうが女性の恋人にふさわしいというのは、いったいいつの時代の価値観だというのだろうか。時代錯誤もはなはだしく、男ってほんとバカ。
しかし、当人たちはいたって真剣そのものだ。沙耶がとめるのも聞かずに、本気でケンカしている。
「いだっ! このデカブツが……! おらぁっ!!」
「ブッ!! 沙耶はボクのものだ……! たぁっ!!」
「ちょっ、やめてよ……!」
おどおどと戸惑っていた沙耶だが、不安と心配は徐々に高まり、そして……怒りへと変わった。
「あんたたち!! やめなさいって、言ってるでしょうがーーっっ!!!」
「あごっ!!」
「おぼぉ」
沙耶の正拳突きは恵介のみぞおちにめり込み、続けて繰りだした上段蹴りは風太の頭蓋の真芯を捉えていた。
沙耶の正拳突きは的確に人体急所を貫き、恵介の内蔵を破壊した。恵介はおおいに体力を削られ、地にうずくまりながらえづいている。
いっぽう、沙耶の上段蹴りによって風太は脳震盪を起こし、眼球を上転させながらガクガクと短時間の痙攣を起こしていた。
……結局、一番強いのは沙耶で間違いないのである。幼少のころより、道場の師範である父から直々に空手を教わっていた。
「う゛おえ゛えええぇぇぇ……」
「あっ、あっ、あっ、あっ……」
「何やってんのよ、ホントにもう……」
倒れる男どもをよそに、頭を抱えて嘆く沙耶。こうして、彼女をめぐる戦いは予想だにしない結末を迎えたかに見えた。
だが、しかし……!
恵介と風太はまるでゾンビのごとく立ちあがり、不気味な笑みを浮かべている。
いや、その立ちあがりかたはゾンビというよりむしろ、マリオネットに近かったかもしれない。操り糸で胸から引っ張られているかのような立ちあがりかた。身体力学的にどうやってるのか不明だが、とってもブキミである。
「ふふふ、こんな展開になることは、織り込み済みなんだよ」
「長年いっしょに過ごしたボクたちが、君のちからを見誤ると思うかい?」
「え……?」
イナバウアーのごとく胸を反りかえらせたまま話す恵介と風太(※イナバウアーは正確には足技です)。しかし、最後にグルンと頭を持ちあげると、その眼をギラリと輝かせた!
「「沙耶に勝ったほうが、沙耶の彼氏となる権利を得るのだ!!」」
「なんでそうなるのよーーっ!!」
恵介と風太は、束になって沙耶に襲いかかってきた!
一対二となっても、沙耶の優位は変わらない。沙耶はふたりのパンチやキックを華麗にかわし、的確にカウンターを打ちこんでいく。武道における『後の先』である。
しかし、恵介と風太は何度倒れても、あきらめずに立ちあがってくる。しかも……。
「風太、今だ!」
「はっ!!」
「くっ……!」
恵介が屈んだ瞬間に、後ろから風太がパンチを繰りだした。沙耶は一瞬、意表を突かれるも、持ち前の反射神経で風太のパンチをかわす。
ふたりは互いに互いをよく知っていることもあり、息のあった連携を見せてくる。さすがの沙耶も、油断はならないのだ!
「うおおおおおおぉっ!!」
「おりゃああああぁっ!!」
「はああああああぁっ!!」
息もつかせぬ攻防を繰りひろげる三人。戦いはいっこうに決着がつく気配を見せず……。
気がつけば三人とも、仰向けになって倒れていた。恵介と風太は顔もボコボコにされているが、沙耶も息があがって苦しそうに喘いでいる。
「ぜぇっ、ぜぇっ、ぜぇっ!」
「ふーっ、ふーっ、ふーっ!」
「はぁ、はぁ……なんなのよ、コレ。こんな告白、ある?」
呆れたように嘆く沙耶。そんな彼女の嘆きを聞き、恵介と風太は互いの顔を見合わせて……笑いはじめた。
「「あははははは!!」」
「ちょっ! あんたたち笑いゴトじゃないでしょ、せっかく初めての告白だったのに……プッ」
沙耶もはじめは怒っていたが、やがて恵介と風太につられて吹きだしてしまった。「アハハ」とお腹を抱えて笑っている。
ひとしきり笑ったあと、三人は自分たちの上に広がる『伝説の樹』の枝葉を真下から見上げていた。夏の日差しはまだ強いが、今は風が吹いて、枝葉をそよそよと揺らしている。
三人はちょうどベンツマークのように頭を寄せて、寝っ転がっていた。芝生に生える草が頬をくすぐって心地よい。
そうしてしばらく黙って上を見あげていたが、やがて沙耶が話しはじめた。
「……私、やっぱりふたりのどちらが好きかまだわからない。それに、どちらかと付き合ったら今までの三人ではいられなくなってしまいそうで……。それが、怖いの」
「沙耶……」
「ゴメンね、沙耶を困らせてしまって……」
沙耶を思いやる視線を投げかける恵介と風太。しかし、沙耶は気にしていないことを示すように、ふるふると首を横に振った。
「ううん、いいの。告白されたことはうれしいし、どちらかを選べなかったのは私の問題。ふたりのことが嫌なわけじゃないから、高校を卒業するまでには必ず答えをだそうと思う。だから……お願い、もう少し今のままの三人でいさせて?」
沙耶の言葉に、恵介と風太は静かにうなずく。
三人は、再び上を見あげた。今は陽も傾きはじめており、夏の日差しも少し弱まりつつあるようだった。
……やがて、恵介がポツリとつぶやいた。
「こうしてずっと、俺たち三人は仲間でいたいよな。大人になって結婚したり、離ればなれになることがあっても、絶対にまたこうして三人で集まろうな」
「ああ、約束だよ。ボクたち三人は、最高の仲間なんだから」
「うん、約束……!」
……いつかはこんな時間にも終わりがやってくることは自分たちもわかっている。人生にはさまざまな出来事が待ちうけているし、そもそも人間の寿命には限りがある。それでもどうか、彼らの絆が永遠に輝きつづけますように。
三人は陽が沈むまで、『伝説の樹』の下で寝転がっていた。
◆
恵介と風太が沙耶に告白してから、数日が過ぎたころ。夏休みまで、あともう少しといったころのことだ。
それまでのカンカン照りが、嘘のような大雨続きとなったのだ。
『低気圧は雨雲をひきつれて北上し、各地に記録的な大雨をもたらしていますーー』
朝の天気予報で、ナレーターが連日の大雨の被害情報を伝えている。
沙耶はその天気予報と窓の外の様子を見比べて、ため息をついた。
「はぁ、こんなに雨続きで嫌になっちゃうな。もうすぐ夏休みだっていうのに……」
「沙耶、雨続きで地盤が緩んでるかもしれないから、崖地には近づかないのよ? 土砂崩れが起きるかもしれないからね」
「はぁ~い」
沙耶は心配する母親からの忠告に素直にうなずき、カッパを着て家にでた。
その日も1日じゅう、大雨が続いていた。ここ数日は厚い雨雲で日差しも遮られており、真夏だとは思えないほどに気温もさがっていた。半袖で外にでると、凍えて震えてしまうほどだ。
生徒も教員もどんよりとした気分で授業が行われるなか、ようやくその日最後の授業が終わった。
すでに下校の時間になっているが、雨脚が弱まるのを待とうと、教室内に戸惑っている生徒は多い。外はまさしく、バケツをひっくり返したような大雨が続いていたからだ。
窓際の席に座る沙耶もまた、ぼんやりと窓の外を眺め、雨が弱まるのを待っていた。すると……。
「え……!?」
沙耶は自分の目を疑った。曇った窓を手で拭き、必死に窓の外に目を凝らす。
こんな雨のなかを、傘もささずに走る人影があったのだ。赤いフードを目深にかぶった、小さな女の子。顔はフードに隠れて見えないが、背丈は7、8才くらいのように見える。
女の子は校舎裏の『伝説の樹』のほうへと向かって、トコトコと走っていた。周囲の崖と校舎とのあいだにはじゅうぶんな距離があるが、さすがに近づいたら危険である。崖崩れに巻きこまれてしまう可能性があるからだ。
沙耶は、ガタンと音を鳴らして椅子から立ちあがった。
なぜ雨のなか、女の子が外にでているのかはわからない。だが、早く連れもどさなければ大変なことになるかもしれない。正義感の強い沙耶は、動きださずにはいられなかった。
そのとき丁度、恵介と風太も下校しようと沙耶のもとへとやってきていた。
「おーい、沙耶。雨がやむ気配がないから、あきらめて帰ろうぜ?」
「……あれ? 沙耶、どうかしたの?」
窓の外を見て立ちつくす沙耶の様子を見て、恵介たちも異変に気がつく。
沙耶は恵介たちのほうへと向きなおると、事態が緊迫してあることを伝えた。
「理由はわからないけど、校舎裏の崖のほうに向かっていく女のコを見かけたの! 崖崩れに巻きこまれる前に、連れもどさなきゃ!!」
「校舎裏の、崖のほうに……?」
「この雨のなかを? 見間違いじゃないのかい?」
「ううん、たしかに見たの! 私、連れもどしに行ってくる!!」
「あ、おい。沙耶!」
「沙耶、待って!!」
沙耶は恵介と風太がとめるのも聞かずに、教室を走ってでていってしまった。あわてて恵介と風太も、彼女を追いかける。
もともと人数の少ないクラスメイトたちが、騒々しく部屋をでていく三人を、何事かと見届けていた。
外にでてみると、まともに目をあけていられないほどの大雨だった。大きな雨粒が顔に叩きつけられて、痛みを感じるほどだ。
地面にも水が溜まり、あちこち池のようになっている。たちまち靴のなかがビシャビシャに濡れて、冷たい。
しかし、沙耶は雨のなかを走る、走る、走る……。手入れの行き届いたお気に入りのローファーが泥まみれになろうと、彼女は気にしない。
なにせ、人の命が懸かっているのだから。見かけなんて、気にしてる場合じゃない!
そんな彼女の背中を、恵介と風太も懸命に追いかけていた。
「ハァ、ハァ、ハァ……!」
大雨のなかを走るのはつらく、苦しく、冷たかった。走っているうちに沙耶自身もやはり自分の見間違いだったんじゃないかと不安になってきた。こんな雨のなかを、小さな女の子が平然と走っているのだなんて、信じられない。
……だが、沙耶はついにその姿を見た。
「あっ! いた!!」
血のように真っ赤なフードを被った女の子。女の子は、『伝説の樹』の幹にたどり着いて立ちどまっており、沙耶のほうからは後ろ姿を見せている。
その姿は、恵介と風太の視界にも入っていた。沙耶の見間違いではない。
「おーい! どうしてこんな雨のなか、ここまでやってきたの? ここは危ないよ、早くおうちに帰ろう?」
……そう、沙耶が女の子に声をかけようとしたときだった。女の子が振りかえり、沙耶たちは言葉を失った。
「えっ!?」
「おい、ウソだろ……!」
「なんで!?」
……いったい、いつから見間違えていたのだろうか? いや、絶対に見間違いなんかじゃない。
こちらを振りかえったのは、赤いフードを被った老婆だった。振りかえる瞬間まではたしかに十にも満たない女の子だったはずなのに、いつの間にか沙耶が見あげるほどの背丈となっていた。
老婆は隣に立つ『伝説の樹』の樹皮のように皺だらけの顔をニタリとゆがませ、そして嗄れた声で、こう囁いた。
『ようこそ。こちら側の世界へ』
老婆がそう囁いた瞬間、地が裂ける音がした。背後の崖に亀裂が入り、土砂崩れが起こったのだ。
どうして? なんで? 彼らは何も知らされることのないまま、運命を決定づけられる。崩れた土砂は『伝説の樹』を飲みこみ、沙耶と恵介と風太の身を飲みこんでいったーー。
また懲りずに『小説家になろう』の世界に戻ってきてしまいました!
本作は前作と違ってあまり細かいプロットを作らず、自分も楽しむことをテーマに書いています。整合性の取れない箇所も出てくるかもしれませんが、ノリで楽しんでいただければと思います。はたしてどんな物語になることやら。
明日から本編の第1部を投稿していきますので、よろしくお願いいたします!