14話 五貝は危険人物
「おはよう東堂くん、犯人を特定してきたよ!」
柚葉が朝の教室で誇らしげにしていると、隣にいる五貝が不思議に思った様子だった。
「犯人? 財布の落とし主って聞きましたけど」
「そ、そうそう! 財布を落とした間抜けな二人を見つけ出したから、これで解決だねぇ!」
柚葉は五貝にそう説明して協力を仰いだらしい。
「そ、それでね。五貝ちゃんと、この休日の間に調べてみたんだけれど、落とし主は三年二組の佐川キリトと、二年四組の水野ミクだって判明したんだよ!」
柚葉と俺で、教室と靴箱を見張ったあの日は金曜日だった。
彼女たちは二日間の休日の間に犯人の調査をしていたのだろう。
一人は上級生の男子、もう一人は別のクラスの同級生の女子だ。
「それはすごい。どうやって調べたの?」
「ふふん。実は私、柚葉先輩を守るために、この学校に危険人物がいないか入学前からチェックしていたんですよ! この学校の生徒や教師の顔写真や名前等の情報は既に私の手中に収まっています! 危険な人物をしっかり把握しておけば、もしなにかあっても安心です!」
「一番の危険人物は五貝さんなんじゃない?」
「!? なんですか、その言い草は! こっちは柚葉先輩がどうしてもと言うから仕方なく、あなたに協力してあげたんですよ! 大体この二人が落とした財布を、あなたがさっさと拾って渡していれば、こんなことせずに済んだのに! もたもたしてるから見失って、顔しか分からない生徒を探さないといけないなんて、面倒なことになったんじゃないんですか! そもそも、学校の落とし物ボックスに入れるだけでいいんじゃないんですか?」
「それはダメって言ったでしょ? 五貝ちゃん。お財布にはお金が入ってるんだから、もし盗まれたら大変だよ」
「むむむ。なにやら正論の香りがします……」
「それにね。見失ったのは、東堂くんを呼び止めた私のせいなの。財布を拾って、私に後ろから声をかけられて、私の方を一瞬、振り返っているうちにいなくなってたんだから。東堂くんを責めないで」
「むー……。それより、約束のご褒美をくださいよぅ」
「そうだったね。よーしよーしよしぃ」
「うふぇふぇふぇふぇふぇ」
柚葉が五貝の頭を撫で始めた。
それに伴い、五貝が気持ち悪い声を出す。
「それがご褒美?」
「そう。協力してくれたら、五貝ちゃんの願いを聞いてあげる約束だったんだけど、この子これがいいって、しつこくて」
「ふぁふぁふぁふぁぷぁぴ」
しばらく柚葉に頭を撫でられて、満足した後、五貝は自分の教室へ帰っていった。
「それでは、私は朝のホームルームがありますので!」
五貝が去った後、柚葉と、今後の相談をした。
「それで、しばらくはこの二人の監視をして、二人にどんな接点があるのか、探ろうかと思ってるんだけど」
「先生に言わなくていいの?」
「うん、犯人はこの二人だけじゃないかもしれないから」
「どういうこと?」
「実は三日前の夕方ごろ、俺の家の前に不審な男たちがうろついてたらしい」
「え? 三日前って、あの日だよね?」
「そう。妹が言ってたんだ。だから、さらに多くの敵がいる可能性がある。いち早く、そいつらの尻尾を掴みたい。きっとあの手紙を残した人物も、この二人じゃない」
「そんな……まだ、終わってないなんて」
犯人がこの二人だけなら、大人たちに言いつけるだけで済む。
柚葉の秘密を誰にもバラさないように、対処してもらうこともできるかもしれない。
だが、あの手紙を残したのがこの二人ではなかった場合、野放しになっているこの事件の黒幕に、柚葉の過去を暴露される。きっと多くの人が、柚葉の秘密を知ることになる。
それだけは避けなければならない。




