12話 犯人?
「コロスコロスコロスコロスコロスコロス」
「ゆ、柚葉さん? 大丈夫?」
「ダイジョーブダイジョーブダイジョーブダイジョーブダイジョーブダイジョーブ」
「何回も繰り返して答えなくてもいいんだよ!?」
俺は教室に入ってすぐさま、上履きに画鋲が入っていたことを柚葉に伝えた。
それを知った彼女は、壊れてしまったらしい。光を失った目は、まるで感情のないロボットのようだ。
さっきから、しきりに「コロスコロス」と早口で呟いている。
「そ、それで犯人はきっとこれからも何かしらの攻撃はしてくると思うんだ」
「……!?」
「でも現状、俺の私物がある場所はこの教室の机とロッカー、そして靴箱くらいしかない」
「つ、つまり?」
「犯人がどっちに仕掛けるか分からないけど、両方の可能性を考えて、教室と靴箱を手分けして張り込んでみたい」
「それでいきましょう!」
「今日の放課後、6時半までは粘りたい。門限とかは大丈夫?」
「親は夜遅くなるまで帰ってこないから平気だよ」
「よかった」
「私、犯人を捕まえるためなら、朝まで見張り続けてもいいよ?」
「あまり張り切りすぎないようにね……。それに、危なくなったらすぐに逃げて欲しい」
「うん、約束する」
そして放課後になり、柚葉は靴箱を、俺は教室を見張ることにした。
まだ人がいて騒がしい教室で、俺たちは話し合う。
「じゃ、6時半になっても犯人が現れなかったら、昇降口のところで待っててくれる?」
「うん、また一緒に帰ろうね」
そう言って、柚葉は教室から出ていった。
俺はしばらく人がいなくなるのを待ち、午後5時くらいになると教室に残っていた最後の1人が姿を消して、辺りは静まり返った。
教室の隅に置いてある掃除用具の入っているロッカーに俺は忍び込んだ。
ロッカーには横長の穴が3本ほど空いており、そこから外が見えるようになっている。
その穴は暗くて狭いロッカーの中に、少しばかりの光を与えていた。
……誰も来ない。
ロッカーに隠れてから、もう1時間ほど経つ。
何やってんだろうと、自分を情けなく感じ始めていた。
しかしその時、廊下の方から微かな足音が聞こえた。
足音が近づいてくる。
ゆっくり、ゆっくりと。
誰にも気づかれたくないかのように、音を立てないように歩いてるのが分かった。
それでもしっかりと聞こえてしまうほどに、ここは静かだ。
しばらくして、誰かが教室に入ってきた。
…………女の子?
スマホをチラチラ見ながら、俺の席に向かっていく人影。
そしてスマホをポケットにしまって、俺の席の椅子を引く。机の中身を全て取り出してその場に置き、手に持っていたらしい水の入ったペットボトルのキャップを取る。
ペットボトルを傾けて、俺の教科書やノートに水を掛けようとした瞬間、俺はロッカーから飛び出した。
ガタッ! という音が教室に響く。
「なにしてるの?」
「だ、誰?」
自分の知らない女子生徒だった。
スカーフの色が赤色ということは同級生だ。
校内で見かけたことがあるような気もするが、話したことは一度も無い、あったとしても俺は全く記憶にない。
「今、君が水を掛けようとしてる教科書やノートの持ち主だよ。……で、なにしてるの?」
「くっ!」
やっと犯人を追い詰めたと思ったつかの間、何故か遠くから柚葉の声が聞こえた。
「東堂くん! そいつ捕まえて!!」
しばらくして廊下を走る、謎の男子生徒が俺たちのいる教室を通り過ぎた。
すると、同じく廊下を走る柚葉も教室を通り過ぎる。
なにが起きている?
廊下に出て、様子を確かめてみる。
少し遠くの方で柚葉が男子生徒を捕まえたらしく、彼の腕を両手で掴んで離さない。
一方、その男子生徒は逃げようと必死だ。
またもや、知らない人だった。




