再婚してもなに一つ変わらない夫
自分で書いていてなんですが、なかなか自分勝手なやべーヤツになりました。
苦手な人はお気をつけください。
妻は完璧だ。外資系の商社でバリバリ働き、家事だって文句ひとつなくだってこなした。そんな完璧な妻のそばにいると息が詰まった。
そんな時に出会ったのが彼女だった。
彼女はいつも「さすが!」「知らなかった!」「すごいです!」「センスいい!」「そうなんですね!」と僕を褒めてくれた。
そんな彼女に、彼女の笑顔に僕は癒された。
喜んでくれるのが嬉しくて、彼女が欲しがったバッグやアクセサリーを買ったり頻繁に食事に誘って、旅行にも行った。
何かを買って、何かをすれば喜んでくれる彼女が僕の生きがいになっていった。
そんな彼女が突然こんなことを言い出した。
「正仁さんと結婚したい」
確かに、妻といるよりも彼女といた方が楽しいし、彼女と結婚できるとしたらとても嬉しい。でも、妻は許してくれないんじゃないかと思った。そう思うと妻にはなかなか言い出せなかった。
彼女には『妻が離婚を渋っていてなかなか話が進まない』と説明した。そう説明すると彼女はいつも『仕方ないか』とでも言うように引き下がってくれた。
面倒だとは思いつつ、僕にはこの状況が一番好ましかった。
息が詰まる家には着替えといった必要最低限の用事で帰って、生活を彼女の部屋でする。今の僕にとってベストな生活だった。
そう思っていたのに、そんなベストな生活が崩れるのは一瞬だった。
彼女が妻に離婚するようにと直談判をしたらしい。
それを聞いた時には、なんてことをしたんだと彼女を責め立てたくなった。妻に怒られる、許してもらえない!!
どうすればいいのかと悩んだが、妻はあっさり離婚を承諾した。
怒られるかもしれないと身構えていたから何事もなく済んで一安心だった。
家もどうしようかと思っていたら妻が子供達を連れて引っ越すと言って僕の自由にしていいと言うことだった。それに養育費も面倒がないように給料から天引きにしようと提案してくれたし、財産分与だって弁護士さんたちとテキパキ進めてくれた。丸投げされてしまったらそうしようかと不安に思っていたからとても助かった。
最後に近くの道路が拡張工事をするので二・三年で家を出ていかなくてはいけないことを弁護士さんたちがいる前で説明された。どうして今言うのだろうかと不思議に感じたが、二年以上あるんだから大丈夫だろう。その時によく考えればいい。
妻から元妻になった人と子供達が家からの引っ越しを終えた。
これからは息がしやすい快適な家での生活だ、と思っていたら彼女は元妻の乗って行った車をじっと見つめていた。
そういえば彼女はあの車で初めて迎えに行った時『すごい』『高いんでしょ?』『かっこいい』なんて言うことを言っていた。車が好きなんだろう。今度彼女が好きそうな車を買おう。
家に入ったと思ったら妻がワインを持ち出してからっぽになったワインセラーを見つめていた。彼女はワインも好きだった。僕と一緒に行ったお店ではいつもニコニコして『美味しいね』と言ってワインを飲んでいた。わかるよ、これから自分の好きなワインを入れられると思ったら嬉しいよね。
「ワインはまた買えばいいよ」
君の自由にできるんだから好きなワインを好きなように買えばいい。妻は、ワインはビジネスツールの一つだと言っていたからそういう考えでどんどん買っていけばいいと思う。
この時、家も車もワインも自分好みになっていくんだ。ここはもっと息がしやすい場所になっていくんだ、そう思っていたのに。
「正仁さん、この督促状はなに!?」
「近所の人がここは道路拡張のための調整区域になっているから近いうちに出ていかなくちゃいけないって言っていたんだけど!?」
「外資系の商社で働いているってウソだったの!?」
督促状?ああ、今まで使ってきたお金の足りない分のことか。お金が余った時はそっちに回しているから大丈夫だよ。
そうだよ?知らなかったの?こっちに引っ越して来る時に資料見せてもらったじゃないか。うっかりしてるねぇ。
ウソじゃないよ。外資系の商社で元妻が働いているんだ。
彼女の顔はみるみる青白くなっていった。
唇を振るわせて彼女は出した声。
「あなたはこの家に住んでいたわけじゃないの?」
なにを言っているんだろう。
「?そうだよ。住民票に登録してある住所はここだし」
この返答のなにが気に入らなかったのか彼女は『違う』と大声で叫んだ。そんな大声を出さなくても聞こえているのに。まあ、いいか。
「今までだって生活のほとんどは君の家だったじゃないか?まあ君の家にいる時と仕事の時以外はこの家にいたけど」
あ、あとジムの時間も抜いて欲しい。
僕は不思議だった。今まで一緒に生活していたのになぜか彼女は今まで僕と一緒に生活していた時間を忘れてしまっていたようだから。こっちの家で過ごしている時より、彼女の家で過ごしている方が長いことは彼女がよく知っているはずなのに。
どうしてそんなことを聞くのだろうかという疑問と共に彼女は変わってしまった。結婚したばかりの元妻と同じように口うるさくなってしまったのだ。
やれ借金を返せ、次の家を決めなくちゃ、お金は考えて使え。ついには、なんでこんなに給料が少ないのと文句を言われる始末だった。彼女より給料は多いのになんて失礼なんだろうか。そんな彼女の態度に僕はとっても腹がたった。
「なんで君にそんなこと言われなきゃいけないんだ!結婚したからって調子に乗るな!いやならどっかいけ!!」
そう大声で言うと、きゃんきゃんと話していた彼女は黙った。それでも気分は晴れず、その日は仕事の帰りに行きつけのバーに行った。そこの常連のお客さんと一緒に朝まで飲んでからジムでシャワーを浴びて会社に行った。家に帰らなかったことで僕が怒っていることを彼女はよくわかっただろう。彼女も今までの行いを反省してくれるだろう。
これでまた家は息がしやすくなるだろう、よかった。
(妻が)外資系商社で働いている。って感じで()の中を言ってなかっただけなんでしょうね本人の中では。
嘘をついてるって感覚もなかったのでしょうし、その時なんとかなればいいや、くらいの感覚なんでしょう。なんとかしていたのはきっと元妻さんでしょう。元妻さんもそんな尻拭いから解放されてきっと清々しい気持ちでしょう。
給料が少ないというのは養育費(二人分)が天引きされているからと元恋人さんはもっともらっていると思っていたのでしょうね、今までの金払い的に。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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