下の息子は離婚を少し気にしていた
「ごめんなさいね、こんな時期に離婚だなんて」
そう言う母さんは申し訳なさそうだった。まあ、今年高校受験の子供がいたら親はそう思うだろう。本心から気にしていない、そう言うと。
「美味しいもの食べて、旅行に行ってリフレッシュしましょうね」
そんなものだろうか、と思ったが俺を気遣ってのことだとわかるので黙っておく。
だが、“今まで離婚しようと思わなかったの?”と聞けずにいた言葉が出てきそうになった。ほとんど家にいなかったあの父親。家にいることの方が不思議に感じてしまうほど家にいなかった。兄貴の学校の宿題かなんかでお父さんについてという宿題がでた時にたまに家に来るあの人が父親、お父さんと言われるものであると知ったくらいだった。正直たまに来る親戚の人、くらいの印象だった。そんな人でもきっと別れたくない理由があったから離婚しなかったんだろうな。そう考えていたが。
「なんで今まで離婚しなかったの?」
自分の中でキレイにまとめられつつあった問題なのに兄貴はサラッと聞いた。おい、おい。いいのか兄貴。そんなにフランクに聞いて!
「あの人ほとんど家にいなかったでしょ?だから離婚届を書く時間はもちろん、話し合いだってするような時間がなかったのよ」
え、そんな理由なの?
「ええ」
とサラッと肯定された。でも本当に家にいなかったからなあの人。
そんな理由なの?と疑う気持ちと、ああなるほどと納得する気持ちで半々だった。
でも、引っ越しして家が変わっただけで特になにも変わらなかった。もしかしたら母さんが言ったことが全てで本当なのかもしれない、なんて考えつつもある。
離婚って結構大変なこと。当事者ではなくともストレスを感じます。え?私だけ?
ここまで読んでいただきありがとうございます。