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43話

一つ目の村を出て、今度はナミエさんとルージュと一緒に後ろの荷台に乗る。

村に着く前に「また馬車に乗るときに出して!」とせがまれたので、桜も一緒だ。


「ねえねえ!ルージュって言うのよね?あなたも西大陸出身?私は妖精の森ってところにいたんだけど!知ってる?」


「……生憎と知らないわ」


「じゃあどこにいたの?」


「北東地方のあたりよ……」


「わお!意外と近かった!私西大陸についても知りたいわ!結構危ない事が多くて、中々街とか寄れなかったの!」


「あんまり面白い話はできないんだけど……」


桜は初対面のルージュにかなりの興味を持ったらしい。同郷だからという事だろうか?ルージュの方はやや鬱陶しそうにしつつも、見た目も中身も子供である桜を邪険にしきれないと言った様子。


俺とナミエさんは、せっかく西大陸の事が知れるのだからと話を聞いている所だ。


「こっちの大陸と違って……権力争いが激しかったりするわ。暗殺とか簒奪とか、そんな事をしたら人魔になるから……直接的な事はそこまでないけど」


「ふ〜ん。でも戦争してるって聞いたわ。戦争ってなに?」


「ああ、あそこね。特殊な場所があるの。人同士が殺し合う事を許された場所が……理解できないわ。人を守るための力を、殺し合いに使うなんて」


聞くにあまり愉快な場所ではない様だ。ルージュ本人も辟易している様子だし……楽しい話題にでも変えてみようか。


「フェアリーとかもいたんだよね?ゴブリンとか……やっぱり最初は★1をみんなで狩ったの?」


「ええ。私はゴブリンが相手だった。餓鬼より弱いわ。群れやすく種類が多いから、餓鬼とは別方向の厄介さを持つんだけど……」


西大陸のモンスターについてや、ルージュの初陣について聞いたりした。俺も餓鬼との初戦闘、唐傘との戦闘を話したりして、多少は仲良くなれた気がする。


ただ一つ。気になったとすれば。

彼女は1〜2年前まで、剣術のスキルしか持っていなかった様だが……?

2つスキルが増えるなんて珍しい。一体何があったのだろうか?







「到着したわね。ここがヒコネよ」


「わ、結構大きい」


「行きに立ち寄った村とは格別の大きさでしょう?ハチマンとは比べ物にならないけど」


行きも特にトラブルはなかった。何度か戦闘の気配もしたが、特に馬車が止まるほどの事はなかった。

後から聞いた話、ヒヲリが化け骨を召喚して適当に足止めをし、その隙に逃げていたらしい。


夕方という事もあり、俺達はカズマさん達の指示に従って宿に泊まる。

明日は野営予定だし、突発で宿を探したりと色々パターンがあるが、今回は半分演習という事もあり既に予約済だ。


3人部屋でゆっくりと息を吐く。


「ふぅ……疲れたね……」


「う、うん」


「夕食まであまり時間がないのだから、荷物の整理をするわよ」


俺・ヒヲリ・ルージュの3人が同室。

護衛対象と一緒の部屋というのは流石におかしい。金持ちパーティーでもないのに部屋なんて分けるの?という事で同室だ。


実際、余裕があったり潔癖気味のパーティーでないと男女別になる事はあまりない。

騎士団はお役所なので、比較的男女別と聞くが……。


「あ、ここ……温泉だ……」


「普通のお風呂と何が違うの?」


女性陣が楽しそうに話しているうちに、お風呂に入ってこよう。室内にシャワーもあるみたいだけど、折角なら……ゆっくりしたいものだ。


「久しぶりの温泉〜♪」


宿の大浴場に入り、ゆったり浸かる。勿論掛け湯も忘れない。


「おお……これだよ、大衆が待ち望んでいたものは……」


意味不明な事を言いながら湯に浸かる。マジでいつぶりの温泉だろう……。少なくとも今世初なので、13年ぶりではある。


「ふぅ……ラッキーな事に人もいないし、最高だなこれ……」


温泉が貸切になってる時ほどテンションが上がるものはない。前世の高級旅館みたいな風格はないが、気持ちいいので全く問題なし。


「サウナとか……流石にこの規模じゃないか〜……」


貸切の特権として湯船を歩く。前世なら泳いでも許される年だったが、今世で13だと社会人もいるね、くらいの感覚だ。高校生くらい。


……いや、行けるか?多少泳いだ所で、誰にもバレやしない……。

最近班員に気を遣ってたからここらで子供らしさを取り戻しておきたい……!


葛藤している中、隣から声が聞こえてくる。


「わ、大きなお風呂が野外にもあるわ。こっちが貴族用?庶民は中のものしか使えないの?」


「ど、どっちも使えるから……」


ヒヲリとルージュだ……2人とも心なしか声が弾んでいる。

リラックスできている様で何より……じゃなくて!?


「俺は紳士だから……」


桜がいたらほんとにー?と言われそうだが、流石に話を盗み聞きするのもな……身体も洗ったし、後ろ髪を引かれる思いはあるものの部屋に帰った。


そうしてルージュとヒヲリが戻ってきた後、晩ご飯でカズマさんとナミエさんと合流して今後の話をする。


「帰り道は行きと違うルートだけど、大丈夫かい?」


「はい。ルートによく出るモンスターの確認もしています。ここ数ヶ月だとこの辺りで髪切りが確認されていますし、こちらでは一反木綿が」


「おお、感心感心。じゃあ大丈夫だね。でも何かあればすぐ言うように。先生方に言われたかもしれないが、あまりにも危険な場合は撤退する事も大事だからね」


「あ、ありがとう……ございます……」







翌日。昨日とは変わり、ナミエさんが御者を、ルージュが先頭の護衛を行う。


「ヒコネ、今度は旅行で来たいな」


「そうだね……私も、行きたいかも」


「良ければ一緒に行こうか」


「! うん!」


ヒヲリと会話しながら、カズマさんと3人で乗り込む。


朝からの出発。今日も帰りに別の村に寄って、そして夜にはハチマンに戻って依頼達成。

カズマさんも気楽そうだ。


「いやあ……昨日は手続きが早く済んで良かったよ。お陰で俺もぐっすり眠れた」


「自警団関係のお仕事でしたよね、確か」


「うん。村々を回って、足りないものがないか。緊急で必要なものがあれば多少物資を融通したりとか……そんな感じかな」


当然なのだが……オウミ領主がいると言う事は、この世界にも一応支配の仕組みというか、階級のようなものがある。


一番上に、人間にスキルを授けたとされる神。俺をこの世界に送ったのも多分この人(人?)。

次に大陸に1人ずついる王。

その元に領主。

その下に、町や村ごとに長が。


選挙なんてものはないが、私服を肥やせば基本的に民衆なり部下なりに引きずり下ろされる事が殆ど。

この世界特有の価値観と、人鬼・人魔というモンスターが密接に関連しているのだが……。


ともかく、自警団と言ってもボランティアで守らせるわけにはいかない。

建前上は自主的に作られた自警団でも、基本的には騎士団の下部組織や、代理組織として動く事が殆どだ。


「うちの領の騎士団、何人くらいいるか知ってる?」


「わ、わからない……です」


「俺もそこまでは……」


ハンターならともかく騎士団はな……ハチマンにめっちゃいるのは知ってる。


「おおよそ2000人弱を維持している。半分以上はハチマンで教練や護衛、他の人員はヒコネのような町に分散しているんだ」


「あ、思ったよりいる……」


餓鬼を倒せるだけで名乗ろうと思えば名乗れるハンターと違い、騎士団は入るだけでもハードルが高い。

それだけの精鋭を数揃えているなんて、やはりすごいな……。


2人して感心していると、急に馬車が止まる。聞こえるのはモンスターの叫び声。


「ヒヲリ!」


「うん……!」


ヒヲリとカズマさんと外に出る。

見ればルージュが、黒い塊の様なものと戦っている……?周りには餓鬼、そして一つ目小僧。あの老婆の様なモンスターは……見た事がないが、おそらく。


「砂かけ婆……?」


カズマさんと意見は一致。

一方ヒヲリは黒い塊を見て、驚いたように言う。


「あれ、髪鬼……!め、珍しいモンスターで、★3……」


「それは厳しいな……とにかく行ってくる。なるべく通さない様にするから、援護よろしく!」


「う、うん……」


多分だが。

俺・ルージュ・ヒヲリの3人ならばこのモンスターの群れを倒す事も、逃げる事もできる。


問題はカズマさんとナミエさんの2人だ。2人はあの群れから逃げられない。俺達の任務が護衛である以上、倒す以外に道はない……!


「行くぞ!」


まずは孤軍奮闘しているルージュの援護!群れを撹乱しようと、俺はモンスター達に突っ込んでいく。

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