40話
9月も終わり、10月。
俺達は採取の依頼を無事終えた。
オウミ湿原浅層の薬草をいくつか採取して、ギルドに提出。
「本来なら餓鬼を相手にする様な初心者の足しに取っておく依頼ですよ〜」とはツェルニ先生の談。
もしくは、採取スキルや薬草学スキルなどを持つものが行う事らしい。
中層深層になってくると話は変わるが、少なくとも俺達にとっては全く苦労する要素がなかった。
溜息をついて帰ろうとするルージュに、声をかける。今日は班員である俺達に当たろうとしなかった辺り、言えば直してくれるし根は悪い子ではないと思いたい。だから少しだけ深入りしてみる事にする。
「ルージュ、ちょっと聞きたい事があるんだけど」
「……それは必要な事?」
「ああ、絶対必要だ」
渋々といった様子でこちらを見る彼女に、直球で切り込む。
「ルージュは……何に怒っているの?」
「? 怒ってなんて……」
「じゃあ苛立っているのか、焦っているのか……分からないけど、それじゃあ何かあった時に命取りになるかもしれない。だから良ければ力になれないかなって。俺達仲間なんだから……」
「……」
彼女は僅かに目を伏せ、「冷静に見えなかったらごめんなさい。気をつけるわ」とだけ言い残し去ってしまった。
やっぱり……俺やヒヲリに敵意があるとかではないんだけど。なんというか。
「仲良くするのって難しいな……」
いつのまにかヒヲリは消えていた。
「はいはいはいはい〜皆さん朗報です〜」
翌々日。本来なら他の先生が担当する筈の時間に、ツェルニ先生が現れる。
不思議そうな顔をする俺達に、彼女は泊まりの依頼!と書き込んで俺達に依頼書を渡して行く。
「討伐・間引き・採取……討伐は好みかと思いますが〜、間引きと採取が合う方はあまりこの中にいないと思うんですよ〜、カリキュラム通りにやっているので仕方ないんですが〜」
まあ……確かにそうだ。頷くクラスメイト達に心中で同意する。
採取なんて専門スキルがあるか餓鬼を倒すのも苦労するやつが小遣い稼ぎにやるもの。薬草が調合系のスキルなしではほぼ使い物にならないからこその事情だが。
同時に間引き。
これも狩りなし固定給。何かあった時のみ格下を狩るくらいだ。
本来は騎士団や自警団がメインで行う業務らしいから、好みでもない限りやるハンターは少ないだろう。
「色々やってもらいたい事はまだまだあるんですが〜、一旦、そこそこ歯応えのあるものをお願いしておいた方が嬉しいかと思いまして〜」
ツェルニ先生の言葉を聞きながら、3人で依頼書を見る。
「護衛任務……」
「はい。依頼についてですが〜、時期を合わせてもらうために格安の依頼料になってるのは許してくださいね〜」
「護衛のコツはこれから数日で叩き込みますから〜、その後準備。次の次の土曜日が出発になります〜」
ルージュを見る。
今までより難易度の高い任務に、僅かに口角を上げている。
ヒヲリを見る。
普段と全く変わっていない。
ここ1ヶ月苦戦らしい苦戦をしなかった事もあるが、まだ彼女の強さを俺は測りきれていない。
「また顔合わせは当日でいいので〜、依頼書は閉まってくださいね〜。後でミーティングしてください〜」
俺達が机の中に依頼書を閉まったのを見て、ツェルニ先生がまた講義を行う。
「護衛ですが〜、今回は荷物を運んでもらいます。大体が近くの村とか〜、町です〜」
俺たちの依頼は近くの村を通りつつ町に進む。町で1泊して帰りは別のルートで野営。そして帰るというものだったな。
「破壊力の高いスキル持ちですとか〜、護衛向きじゃないなって班は物だけ。護衛向きとか強い子達しかいないみたいな班は〜人も付いてきます〜」
護衛向きではないが強い子達。
俺達の事か……。確かに役人の方が同行するとある。
ざっくりとした説明が終わると同時にチャイムが鳴る。
お昼休みだからというわけで、初めて3人でご飯を一緒する事になった。
「ピザ。ディアブロを」
「さ、さんま……焼きで……」
「焼き鳥定食で」
上からルージュ、ヒヲリ、俺である。
この学校、やけに学食のメニューが細かいんだよな。噂ではOBに領主の一族がいて、不自由させない様にした名残だとか……。
ともあれメニューは豊富、味もいいとなれば学食で食べる生徒は多い。
OBであれば休日に食べに来る事もできるらしく、養成校の生徒に地元に居てもらう政策では?等と冗談混じりに上級生が話していた。
注文後、席まで運んできてくれる形式のため今のうちにもう一度依頼を確認する。
「★2……依頼主はオウミ領主」
「す、すごい……ね」
ヒヲリがこくこくと頷くのに対して、ルージュはなんでもないかの様に言う。
「あくまで名目上の依頼主がそうと言うだけで、基本的にはオウミ領の公的機関が個別に依頼している筈よ。下に……ほら、ここ。自警団補正予算委員会って」
「あ、ホントだ」
割とこういった書類の読み方に慣れている様な……。
「日程は確認の通り。ルートに出るモンスターだけど、知ってる人いる?」
「私は知らないわ」
「わ、……い」
「じゃあ手分けして確認しようか。俺達に相応の難易度を振られてるわけだから、★2辺りは間違いなく出てくると思うけど」
そう話しているうちにご飯が来る。
今日の鶏肉は……多分これは普通の鶏だな。
再来週の準備期間までに出来ることはいくつかある。今のうちにパーティーの連携を少しでも強化しておかないと……。
まずは、片方だけでも。
ご飯を食べ終わり授業まで自由となった中。足早に去っていったルージュを見送って、ヒヲリと2人になる。
優しく接していた事もあり、そろそろ警戒心を解いてくれたかな?と思いたい。
「ヒヲリ、ちょっと相談したい事があるんだけど……」
「んっ……ん…………な、なに?」
話しかけただけで咽せられた……。
「実は、ネクロマンサーのヒヲリにしか聞けない事があって……」




